手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

さて、今日は前回に続きです。

定額残業代を導入するにあたって、具体的にどんな点に注意したらいいのでしょうか?

098761_680

 

まず、前回の復習ですが、定額残業代導入に当たっては3点に注意する必要がありました

 

①雇用契約書にみなし残業代の金額とその残業代の時間数を明記すること

②就業規則や雇用契約書に実際に働いた労働時間数がみなし残業代の労働時間数を上回ったときは、その差額支給する旨が明記されていること

③給与明細書に、定額残業代の時間数とそれに対する定額残業代が明記されていること

 

この3点です。

それを前提にお話を進めていきましょう。

 

まず、大前提としてですが、従業員さんが個々にこの制度の導入に同意していることが重要です。個別に雇用契約書を結ぶ、従業員全員に同意書を書いてもらうなど、従業員さんが同意したうえでこの制度を導入していることが大事です。

 

会社が新しく「定額残業代」を導入する場合に、私がお勧めしているのが「従業員説明会」をやることです。簡単にレジュメを作って、制度について説明することです。

これは、説明会を通して、定額残業代についての説明があったという事実を残せるのでやってほしいと思います。実際、そこで質疑があれば受け付けたりすると、より理解も増し、効果的です。そこまでやっていてさすがに従業員さん側も「知らなかった」とも言えません。なにより、就業規則などの理解を深めることにつながることは経営者にとってもプラスの効果があると思います。こういうことに消極的な経営者も多いですが、従業員説明会をやることはむしろ経営者側にとってもプラス効果の方が多いと実感しています。

人数が少なくてもやる価値はあると思います。

 

さて、実際の導入にあたって、契約書等の具体的な内容はどういった部分に注意したらいいのでしょうか?

 

まず、みなし残業というのは何時間相当の時間外労働とするのかという点です。

これは、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定書)は1か月の労働時間を45時間を限度とすることもあり、45時間以内というのが一般的なようです。

60時間というのはギリギリセーフ、80時間の時間外労働を設定するのはダメ、というのが今までの裁判例からのおおよその見方です。

結局、みなし残業の時間が長いと、長時間労働の温床になりかねないというのが主な理由です。時間外45時間(最大でも60時間)というのを一つの目安としましょう。

 

次に、休日労働や深夜労働などがある場合です。

これも裁判例から答えが出ている部分です。通常の時間外労働の他に、休日労働や深夜残業がある場合給与明細や雇用契約書などには必ず、「時間外部分○○時間で××円、休日労働○○時間で××円、深夜労働○○時間で××円」というように、個々の内訳を明示しないといけません。これは、時間外労働や休日労働、深夜労働はそれぞれ時間外手当の単価が異なるからです。(時間外労働は1.25倍、休日労働は1.35倍、深夜残業は25%増しです)

そのため、きちんとその内訳を明示しないと、定額時間外として認められないことがあるわけです。休日労働などを含んでいるのであれば、その内訳を給与明細や雇用契約書などに明示しましょう。

 

さらに、手当の名称です。

これも、就業規則や雇用契約書で「定額時間外制度による時間外手当」である旨がわかる表現にしないといけません

たとえば、「『役職手当』となっているのが実は『定額時間外』だった」とか、「『職務手当』」とあるのが実は『定額時間外』だった」とか言っても、伝わりづらいです。本人に認識がないとか、就業規則や雇用契約書からもはっきり読み取れないなどとなると、そもそもその手当は「定額時間外」だったのか、疑わしくなります。

たとえば、「役職手当」というと「役職に対して支払われる手当」であって、時間外というニュアンスが伝わりません。「職務手当」というのも「職務(仕事)に対して支払われる手当」という感じがします。これが「時間外手当」だったと言っても、いざ争いになった時に会社側に不利に働く結果になりかねません。

一番すっきりするのは、はっきり「定額時間外手当」と書いてしまうことです

要は、本人にわかるように「○○手当」となっているのが時間外手当であることが明らかになっていなければいけないわけです。

 

最後にですが、経営者の皆さんに勘違いしてほしくないのは、「定額時間外制度」によって時間外手当を払わなくていい環境を作るわけではないということです。

中小企業にとって、残業代が増えることは死活問題になりかねません。ですから、一定程度、残業があってもその部分はすでに払っているよ、という形にすることは、経営的な観点からは、ある程度、やむを得ない側面もあると思います。しかし、だからと言って残業しても手当を全く払わないというのは法に違反しているだけでなく、長時間労働の温床となり、そういうことを常態化するといい人材が集まらなくなります。最近言われる「ブラック企業」というレッテルを張られてしまうわけです。いい人材が集まらなくなれば結果、経営を圧迫しかねません。

この制度は、ともすると、いわゆる「サービス残業」だったり、長時間労働を助長してしまうことにもなりかねない制度です。運用をしていく中で、時間外労働を少なくする努力も同時にしていくことが重要なポイントです。近年よく言われる「ブラック企業」とならないためにも、経営者には肝に銘じてほしいと切に願います。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

免責事項

当ブログで記載されている情報においては、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めています。しかし、誤情報が入り込んだり、情報が古くなったりすることもあります。必ずしも正確性を保証するものではありません。また、合法性や安全性なども保証しません。

当ブログに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。