さて、今日は、知っていれば「こんなの知らないの?」と自慢できるかもしれない(?)というような話です。誕生日の法律上の考え方という話です。
NHKの人気番組に「チコちゃんに叱られる」という番組があります。この番組でも紹介された話なので、ご存知の方も多いかもしれません。
「学年」というのは「4月2日生まれから翌年の4月1日生まれまで」となっています。この番組にも登場していましたが、元ジャイアンツの桑田真澄さんは4月1日生まれです。(1日ずれて桑田さんのお誕生日が4月2日生まれだったらPL学園のKKコンビは誕生していなかったという有名な話です)では、なぜ「学年」が「4月1日生まれから3月31日生まれ」になっていないのでしょうか?
これは「年齢計算に関する法律」という法律で説明できます。それによると、法律上の年齢の数え方は、誕生日が起算日(初日)となり、満年齢(1歳年をとる)のは誕生日の前日となっています。誕生日を1歳とすると、1年ではなく、1年と1日になってしまうためです。
これによって、4月1日生まれの人は3月31日に満1歳となります。そのため、4月2日生まれの人は、4月1日に満1歳となるため、4月2日生まれの人が「学年」の一番最初の生年月日で、4月1日の人が「学年」の最後の生年月日となると解釈されています。
「チコちゃんに叱られる」の番組では、これは「うるう年」の2月29日生まれの人に配慮したものだと解説していました。誕生日が満1歳とすると、2月29日生まれの人は、4年に1回しか誕生日が来ないことになってしまうため、誕生日の前日を満年齢の日としているのだというわけです。これによって、2月29日の人は2月29日がない年であっても誕生日の前日、つまり2月28日が来た時に満1歳とすることができるというわけです。
私は「年齢計算に関する法律」のことは知っていましたが、これがうるう年生まれ(2月29日生まれ)の人に配慮しているとは知りませんでした。確かにそういう説明もできますね。私も勉強になりました。(少しボーッと生きていたのかもしれませんね・・・)
さて、この「年齢計算に関する法律」が給与計算や社会保険事務に影響するケースがあります。たとえば、5月1日生まれなど月の初日(1日)生まれの人が満40歳になって介護保険料を徴収するケースなどがそうです。いつの給与から介護保険料を徴収すればいいのでしょうか。
まず、社会保険料の徴収はその月の保険料は翌月の給与から徴収するのが原則です。ですから、たとえば、4月分の社会保険料は5月に支給される給与から控除します。
この考え方と「年齢計算に関する法律」の組み合わせで考えます。5月1日生まれの人は、4月30日に満年齢となります。4月に満年齢になるわけですね。ということは、5月1日生まれの人が40歳になって介護保険料を徴収するのは、4月分の社会保険料ということになります。4月分の社会保険料は5月に支給される給与から徴収されることになるわけです。
対比して考える意味でいうと、5月2日生まれだとどうでしょうか。
5月2日生まれの人は5月1日が満年齢に達する日です。5月が満年齢に達する月ですね。5月に40歳になったわけですから、6月に支給される給与から控除されることになります。
同じ5月生まれですが、控除されるタイミングは1か月ずれてくるわけです。
このケースは保険料を徴収するケースでしたが、たとえば70歳になって厚生年金の資格を喪失する場合はどうでしょうか?先ほどの例を使って考えてみましょう。
たとえば、5月1日生まれの人が70歳になったとします。70歳になるのは誕生日の前日の4月30日です。4月分の厚生年金から保険料が発生しないわけです。ということは、5月に支給する給与から厚生年金の保険料が発生しないということになります。
一方で、5月2日生まれの人が70歳になったとします。5月2日の人は5月1日が満年齢に達する日ですから、5月分の厚生年金保険料、つまり6月支給の給与から厚生年金が控除されないという話になります。
「年齢計算に関する法律」と社会保険料の徴収ルール、ちょっとややこしいですが、基本がわかれば、整理して考えていけばわかると思います。
次回も社会保険料のレアな徴収のケースの話をしていきたいと思います。