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さて、今日は久しぶりのブログ更新です。

2月16日から確定申告が始まりましたが、基礎控除の話です。

 

私も実際、確定申告をやっていて気づいたことではあるのですが、不動産の譲渡があると基礎控除が受けられないケースがあるということです。

 

そもそも基礎控除というのは、というお話からです。

基礎控除は所得が2500万円以下の人であれば適用されるもので、所得の金額2400万円以下であれば、控除額の満額、48万円が控除されます。

納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

 

上記のような所得額によって控除できない仕組みは2020年の税制改正で導入されたものです。とはいえ、所得2400万円だから、基本的にはほとんどの人が基礎控除は適用されるわけですが、通常であれば所得が2500万円を超えるということはないのに、適用できない人がいます。それが、不動産の譲渡があった場合です。

 

実はこの基礎控除の合計所得金額というのは特別控除前の金額です

 

ですから、たとえば、居住用財産を譲渡した場合、3000万円を控除できるのですが、この3000万円の特別控除をする前の金額で判定します。

そのために、通常であれば所得が2500万円を超えるようなことのないサラリーマンでも、自宅を譲渡したといったような不動産の譲渡があると、基礎控除が使えなくなる可能性があるわけです。

 

たとえば、年末調整だけをしたサラリーマンが自宅を売却したとします。今、不動産は割と高く売れる傾向にあるので、売却額と取得費(購入時の金額から償却費を控除した金額等)で利益が出るケースも多いと思います。この場合でも、居住用財産の譲渡は3000万円の特別控除があるため、税金が出ないことも多々あります。しかし、年末調整した給与所得と譲渡所得の3000万円の特別控除前の金額を足すと2500万円を超えた場合、基礎控除が適用できないケースがあるわけです。

 

実際、私もそういうケースがいくつかあり、「不動産の譲渡があると基礎控除が使えないケースがあるんだ」と思った次第です。

 

申告書は自動で計算させるケースが多いでしょうから、自動計算させれば基礎控除が出てこないことになるでしょう。ですが、なぜそうなっているのか、ご自身で申告される場合、わからないケースもあり、「これって間違えている!?」と思う方もいらっしゃるでしょう。基礎控除がゼロになっていたら実は上記のようなことが絡んでいるのではないかと確認してみていただければと思います。

 

以上、今日は基礎控除の話でした。



現在の朝ドラは「舞い上がれ」です。空へのあこがれからパイロットを目指し航空学校を卒業した主人公が、父が急死したとことで、父が経営していたネジ工場を向上を引き継いだ母とともに立て直すという展開になっています。この中で、ねじ工場を投資家の兄に売却し資金を得てその資金で会社の立て直しを図るという話が登場してきます。これはいわゆる「セールアンドリースバック取引」と呼ばれるものです。今日はその概要を見ていきたいと思います。

 

いわゆる「セールアンドリースバック取引」とは何なのでしょうか?

簡単に言えば、今持っている土地や建物などの不動産は、見た目には手放さないまま売却(もしくはリース)している形にして資金を得て、貸主には毎月返済していくという取引のことを言います。つまり、見た目は不動産を今まで通りに使っていても問題はないのに、資金は得ることができるという非常に便利な取引なわけです。

 

これに似たものとして「リバースモーゲージ」というのがあります。「リバースモゲージ」は「セールアンドリースバック」との違いに注目すれば何なのかが理解できます。

大きく違う点は「資産の売却をしているかどうか」です。資産自体は売却する(所有権は手放す)のが「セールアンドリースバック」であるのに対して、「リバースモゲージ」は資産の売却はせず、資産を担保にしてお金を借りるという点です。お金を借りるというのが「リバースモゲージ」の特徴であるため、そのことから資金使途は事業資金などに制限されます。一方で「セールアンドリースバック」取引は資金使途に制限はありません。

 

さて、今日はこのセールアンドリースバックはどのように経理処理されるのかという話をしたいと思います。

 

「セールアンドリースバック」というのは名前からしても「リース取引」の一形態です。資産はいったん売却するという取引と、それとは別にお金を借りるという取引と、二つの取引を同時に行うものになります。二つの取引を別々に処理していけば、それほど難しくはないと理解できるはずです。

 

問題なのはこの「セールアンドリースバック」は取引形態によって主に二つの会計処理に分かれるということです。実は会計基準と税務処理とで微妙に考え方が違うのですが、少し税務寄りにここでは解説していきます。今日はごく簡単にこの概要を以下で説明したいと思います。

 

まず、リース取引には主に「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の二つがあります。「ファイナンスリース」に該当するかは主に次の二つです。

①途中解約不能

②フルペイアウト

 

上記のうち①はいいと思います。リース契約の途中での解約はできない取引です。②のフルペイアウトというのは、たとえば固定資産税など、その物件にかかる経費負担をしているかどうかです。固定資産税を払っているのであればリースといっても実質的に所有権は残っているものだと判断されるわけで、それを「フルペイアウト」と呼びます

この①と②の要件を満たしていれば「ファイナンスリース」で、どちらか片方(もしくは両方)満たしていないのであれば、「オペレーティングリース」になります。

 

では、次にファイナンスリースとオペレーティングリースで取引がどう違うのか、簿記の仕訳で見ていきたいと思います。簿記がよくわからない方はここはざっと見ていただければ結構です。

 

ファイナンスリースの場合

<売却損の場合>

(預金)40000  (建物)50000

(売却損)10000

(長期前払費用)10000 (売却損)10000

<売却益の場合>

(預金)60000  (建物)50000

         (売却益)10000

〇オペレーティングリースの場合

<売却損の場合>

(預金)40000  (建物)50000

(売却損)10000

<売却益の場合)

(預金)60000  (建物)50000

         (売却益)10000

 

税務と会計が一致していないのですが、一応、ここでは税務上の考え方で処理していくこととします。

売却の場合に損が出たときは一度に経費計上はできません。リース期間で案分して費用に計上していくことになります。一方で、売却益が出た場合には、税務上は一括で収入に計上することになります。(会計の考え方だと、一度に収入に計上するわけでなく、いったん「長期前受収益」にしてリース期間に応じて収入計上することになります)

また、オペレーティングリースでは、売却時の差額は売却損か売却益かどちらかで処理することになります。

 

さて、上記は売却時ですが、次はそのあとはどうなるかです。

〇ファイナンスリースの場合

(リース資産)40000  (リース債務)40000

毎月の返済時

(リース債務)800  (預金)1000

(支払利息)200

〇オペレーティングリースの場合

毎月の返済時

(リース料)1000  (預金)1000

 

ということで、ごく簡単にしましたが、ご理解できましたでしょうか。

 

それから、消費税のことも少しふれておきます。消費税については売買取引と判定され場合には、売却価額が課税売上になります。一方で、金融取引とみなされた場合には、売却額は借入金と同じとみなされ、消費税は発生しないことになります。

売買取引か金融取引かについては、当事者間の関係やリース資産の内容等から総合的に判断されます(これは法人税基本通達12の5-2-1に載っている話となります)。

また、ファイナンスリースの場合には返済する際には、リース債務の返済や支払利息であるため消費税は関係しないのですが、ファイナンスリースの場合には支払額全体がリース料となるため、消費税は仕入れ税額控除できることになります。

 

ファイナンスリースなのか、オペレーティングリースなのかによって、会計処理や消費税の処理の仕方がガラッと変わります。これをお読みいただいているのが中小企業経営者の皆さんやその経理担当者だとしたら上記のような処理をするのだとざっくりとまずは理解しておいていただければと思います。

 

さて、朝ドラ「舞い上がれ」に出てくる工場をお兄ちゃんに売却するという話ですが、話の概要からすると、おそらくですが、セールアンドリースバック取引のうち、ファイナンスリース取引なのではないかと思います。お兄ちゃんが社長であるお母さんに「1度でも返済が滞ったらすぐに売りに出すからな」という趣旨の発言をしていることから、たぶん所有権自体はお兄ちゃんにわたっているのではないかと思われるからです。

ただ、このお兄ちゃんが将来的に社長になってこのねじ工場を継いだとすると社長個人に返済するという話になるわけです。その場合、例えば会社の状況が好転したら会社の資金でお兄ちゃんへの借入をいったん返済するというのもアリなのではないかと思ったりするわけです。お兄ちゃんがお父さんの遺志を継ぎ、ねじ工場を引き継ぐなんて話はどうなんでしょうか。

「舞い上がれ」は今後どのように展開していくのか見ものですが、このセールアンドリースバック取引をした工場はどうするのかも注目していくと面白いかもしれません。

 

以上、今日は朝ドラ「舞い上がれ」から見る「セールアンドリースバック取引」のお話でした。



今日はこの令和5年1月1日から改正のあった実務上の取り扱いの話です。

引っ越しなどの納税地の移動があった場合の話です。

 

従来、引っ越ししたりして納税地に変更が生じた場合、その異動前の納税地の所轄税務署長に対し、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出しなければならないこと とされていました。

 

これが、令和4年度税制改正に伴い、納税義務者が納税地を異動又は変更した場合の手続に関して見直しが行われ、異動後及び変更後の納税地については、国税当局において、提出された確定申告書等に記載された内容等から把握可能であることを踏まえ、令和5年1月1日以後は、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」について、その提出が不要とされました

 

令和5年1月1日以後に納税地の異動又は変更がある場合には、納税地の異動や変更がある場合は、異動後の納税地を所得税又は消費税の申告書に記載することでいいことになったのです。

我々納税者にとっては手間が一つ省けて少し楽になる改正といえます。

 

ちなみに、納税地の変更と異動は言葉の意味としては同じような意味ですが、税務上の届け出の際には違う意味として取り扱われています。

 

納税地の変更」は、主に所得税(個人の消費税)の場合、住所地を居所地に変更する場合や、 住所地又は居所地だった納税地を事業場等の所在地を納税地とする場合、あるいは、居所地又は事業場等の所在地だった納税地を住所地を納税地に変更する場合などに使われるものです

一方で、「納税地の異動」は、転居等により納税地に異動があった場合に納税地が変わることを言います。

つまり、引っ越しして納税地が変わるというのは「納税地の異動」になります。

 

また、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」について、提出することにまったく意味がないわけではありません。

たとえば、税務署から送付される書類は届け出を出しておけば原則としては届け出を出した納税地に送られてくることになります。

税務署からの書類の送付がされないと困る場合は届け出を出しておくというように考えていただければよろしいのかと思います。

 

ということで、今日は納税地の異動・変更の場合の届け出の話でした。



今日は私の顧問先からも何度かご質問いただいている出張に行った際の日当手当について書いていきたいと思います。

 

私の顧問先からときどき「出張に行った際の日当を会社からもらってもいいんですよね」「出張に行った場合の日当は1日いくらまでだったら計上していいのでしょうか」といったことを聞かれます。

こうしたご質問をされると私は多少の違和感を覚えるわけですが、そもそも「出張の日当」というのをこうしたご質問をされる中小企業の会社経営者はどのように理解されているのかを自分なりに整理してみました。だいたいこんな感じなのでしょうか。

 

〇出張旅費というのを規定すれば従業員であろうが役員であろうが1日当たり〇〇円で計上できる。

〇役員の場合には従業員よりも多く日当の計上が可能である。

〇1日当たりの日当の金額には税務上、認められる金額の範囲がある。

〇会社側は領収書もなく経費計上できて、もらう側の役員や従業員は非課税となる

〇認められうるぎりぎりの金額で計上して1年分を計上しても損金計上できる

 

だいたい、こんな感じで認識されているのだと思います。

要するに、出張の日当というのが中小企業経営者にとって都合のいいもので、節税に利用できるものだというような認識なわけです。

 

インターネットで「出張日当 相場」とか検索をすると複数のサイトで1日いくらくらいだったら認められるとか言ったことが細々と書かれているサイトも存在します。ですが、皆さんにくれぐれも認識していただきたいのはそもそもそのような金額に、税務上、法令の根拠となるものはないということです。

おそらくこうした金額はどこから算定しているものなのでしょうか。これは、一つは過去の出張の日当について争われたいくつかの税務訴訟が根拠になっています。あとは、いわゆる社会通念(世間一般の常識的な認識)から、だいたい国内だといくら、国外だったらいくらという一般的に旅費にかかるお金を判断基準としているようです。

 

世間一般の相場観というのも大事なのですが、ちょっとあいまいな部分もあるので、ここでは過去の税務判例の裁決事例というのを参考に「出張の日当」についての妥当性を考えていきたいと思います。

 

題材にするこの事例は期末に出張の日当を期末に一括で計上したことが否認された事例です。こんなことが裁決で書かれています。

「原告は、旅費支出につき従来実費支給制度をとっていたところ、係争事業年度末に旅費規程を制定してこれを定額支給制度に改め、原告代表者〇〇〇〇にかかる旅費につき遡及して新規程を適用し、期末に一括計算して右未払金を計上したものである。

しかし旅費というものは本来実費により支給されるべきものであり、(但し、旅費規程により定額制を定め、それによっている場合でもそれが本来の実費弁償に代るものとして社会通念上妥当な合理的基準に基づき算定されているならば、実費との間に多少の過不足があっても会社からみれば必要経費として認められるべき性質のものである。)右のように期末に一括計算して未払金処理をすること自体不自然なものであるのみならず、原告には出張命令簿、復命簿等証拠書類の備付もなく、右未払金の計上は期末において記憶等により旅費精算書用紙に一括記入したものに基づくものであり、出張事実の存在自体不確実なものである。」

 

この事例は、なんと昭和35年というかなり古い事例です。かなり以前から争いになるケースが多いということなのでしょう。

上記の裁決例の途中の文言に注意してほしいのですが、「旅費というものは本来実費により支給されるべきものであり、(但し、旅費規程により定額制を定め、それによっている場合でもそれが本来の実費弁償に代るものとして社会通念上妥当な合理的基準に基づき算定されているならば、実費との間に多少の過不足があっても会社からみれば必要経費として認められるべき性質のものである。)」とある点です。要するに、日当旅費が認められるのは実費精算したとしても違いがあまりないケースだと言っているわけです。

 

さらに、この裁決事例では、このあと公務員の出張旅費との比較に言及しています。

「そもそも旅費は職務を遂行するに通常必要な旅行をなした場合にその旅行実費を弁償するために受けるものである。

国はもちろん地方公共団体、企業等の旅費支給者の多くがいわゆる定額旅費制度を採っているのは、旅行経路、利用交通機関および宿泊施設等について個々にその実態を把握したりその実費費用を計算したりすることの困難煩累であるところから合理的な根基により社会通念上の実質に近い定額を予め規定して事務的手続を簡素化する趣旨によるものである。そこで税務の執行面においては、右定額が本来の実費弁償に代えて社会通念上妥当な合理的基準に基づき算定されているならばその定額と旅行実費との間に若干の過不足があってもそれは僅少の差に止まるであろうから社会通念および課税技術上敢えてその過剰分については課税を行わないわけである。

税法は、非課税所得としての旅費額の範囲あるいは損金として認められる限度については直接これを規定していないが、それは当該会社の規模、業態及び業績その他の諸状況からみて当該会社の業務遂行上通常且つ必要なものであると一般に観られる程度のものでなければならないのである。」

 

少し長いですが、引用したのは出張旅費が認められる根拠についてきちんと書かれているためです。要するに、出張した際にかかる様々な経費、たとえば食費であったり、電話代などの通信費、宿泊を伴えば宿泊費や朝食代など、様々なものがかかります。これらをいちいち計算して精算するのは煩雑であるために「日当」を認めると言っているわけです。こうした趣旨から実費精算した場合と日当の額に大きな差異がないことが条件だと言っているわけです。

 

また、公務員の日当手当が日帰りなのか、宿泊なのかとか、距離によって分けていたりといったことをしていることからこうした基準を設けて、代表者なら1日いくらまでなら認められるといったことを細かく書かれているサイトもあるようです。

しかし、上記のような裁決事例などからすると、いくらまでならいいと言い切れないと思います。つまりは、日当の金額の根拠もあいまいだということです。

 

これらのことから、私としては「日当旅費手当」ではなく実費精算をして、従業員であれば〇〇手当という形で給与にして支給するのが、まずは正攻法ですがいいのかなと思います。そのうえで「日当旅費手当」をどうしても計上したいということであれば、以下のような点に留意して取り扱う必要があるだろうと思います。

〇「日当手当」は通常かかる旅費や滞在費、食費等の実費を考慮し、その実費と大きな違いのない形で金額設定すること

〇宿泊の有無、距離、飛行機や新幹線などの公共交通機関のどれを使用したのかといった点を考慮した設定とし、たとえば宿泊費や交通費を実費精算を別にしている場合には、それらを控除した金額設定にする必要があること

〇可能ならば就業規則などで「出張旅費規程」を作成し、労基署に届け出をして受領印をもらえればなおよいであろうこと

〇旅費について、どこでどんな活動(業務)をしたのかというのを書いた滞在日誌のような記録をきちんと残しておくこと

〇日当手当の精算は決算時に年1回のような処理ではなく、随時処理をし、決算時に節税目的の調整のような行為が行われる余地がないようにするこ

 

思いつく範囲で書いてみると、上記のようなことがあげられるだろうと思います。

 

「日当手当」のすべてが否定されるわけではないとは思います。ですが、実費精算できるのであればまずは実費精算すべきと思います。そのうえで、日当を出す場合には、まずは規定を作り、その通りに運用すること、お金は後でまとめてではなくその都度精算していくこと、そしてできれば適宜、金額について見直しを加えることなどに気を付けてはいかがかと思います。

 

ということで、今日は「日当旅費手当」についての話でした。



あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

久しぶりのブログ更新となりました。今日のテーマは介護事業所の財務状況を開示が義務化されるという話です。

 

年末に社会保障審議会の介護部会での意見がまとまり、令和6年度の改正の概要がまとまりました。その中で私が注目しているのがこの「財務状況の開示」です。

 

これまでも、障害福祉サービス事業所には情報公表システムを通じた財務諸表などの公表が求められていて、また社会福祉法人には、財務諸表などの作成・公表・届け出が既に義務付けられています。こうした財務状況の開示が一般の介護事業所にも広がるという話なわけです。

しかもこの財務状況は全ての介護事業者に対して行われ、また、財務諸表など経営に関する情報を定期的に都道府県へ届け出るよう求めていく方向となっています。

 

建設業などの他業種ではもともと都道府県などへの財務諸表の提出が義務付けられており、その辺からしても私は違和感はないのですが、この話をすると驚かれる介護事業所の経営者は多いようです。

 

また、同時に介護サービス情報公表制度において、各施設・事業所の従事者1人当たりの賃金なども公表の対象とするとしています。これらの公表制度は何の狙いがあっても受けられようとしているのでしょう。ある意味、そこを知るのが重要なのかもしれません。

 

これは大きく二つあるのではないかと思います。

一つは「利用者のため」です。施設などの介護サービスを利用する利用者にとっては運営する介護事業所が長期的に経営が成り立つ会社なのかというのは、重要なことです。現状では長期的に運営が可能な経営状態にある財務状況なのかというのは、決算書を公表していない限り、難しいことです。それを決まった方法で開示されるのであれば、利用者にとっては有意義な情報といえると思います。

 

もう一つは「介護職員のため」です。施設に働く介護職員にとってはその会社の経営状況も重要だというのもありますが、今回の開示する情報に1人当たりの賃金額も対象にしていることがあります。これは処遇改善加算などの加算をきちんととってそれを介護職員にきちんと還元している会社なのかをチェックできるというわけです。

また、この財務状況の開示というのはサービスごとの開示となるのではないかと思っています。もともと介護事業所は、たとえば、デイサービスと居宅介護支援事業所や訪問介護を併設している場合、それぞれのサービスごとに売り上げと経費を分けないといけません。

人件費についてもわけて計上する必要があります。1人の職員がデイサービスと訪問介護に入っているのであれば、それぞれのサービスごとに給与を配分しないといけません。こうした処理は会計上は部門別会計といったり、本支店会計といったりします。このサービスの種類ごとに会計処理を分けるということをまだやっていない事業所はすぐにやらないといけません。介護の会計処理についてよく知らない税理士や会計士が関与している場合、このような部門別会計や本支店会計を導入していないかもしれません。というのも、そもそも税務署に提出する書類は部門別会計や本支店会計のように分けて計上する必要がないからです。財務状況の開示といわれて初めて分けていないと気付いてもそこから分けて経理処理をしていくのはなかなか難しい話になります。

いずれにせよ複数の介護サービスの提供を行っている事業所は部門別会計もしくは本支店会計によって経理処理をしないといけません。

その意味でも、税理士や会計士に丸投げという形でやっている場合、その税理士や会計士が介護の会計処理のルールを知らなければ、あとで大変なことになる可能性があるというわけです。

 

今日は介護事業所の財務状況開示という話でした。



さて、今日は昨日、マスコミにも報道されたインボイス制度の話です。

 

自民党の税制調査会というのが通例としてこの時期に政府に対しての意見の取りまとめを行います。通常、12月中には自民党の税制調査会の意見を政府に提言することになっています。

この自民党の税制調査会の意見というのがそのまま税制改正に反映されることが多いため、税理士など税務にかかわる実務家もこの自民党の税制調査会の意見がどんな意見が出るのかをこの時期は特に注意深く見守っているといった状況なわけです。

 

さて、その自民党の税制調査会から出てきたのがインボイスのいわゆる「激変緩和措置」といわれるものです。免税事業者がインボイス制度の導入にあわせて令和5年10月1日から課税事業者になる場合、売上高の税額の2割を納税する形の制度を導入しようという話が出ています。

 

私もこの話をNHKのニュースで聞いて知ったのですが、正直、椅子から落ちそうになるくらいびっくりしました。

売上の2割にするということは、売上が1000万円を超えない事業者の場合、例えば売り上げが800万円の事業者だと、80万円の消費税を預かるわけですが、その80万円の2割、つまり16万円を納税すればいいという話となります。

現在もある簡易課税を選択したとすると、サービス業の場合、売上の50%なので、このケースだと40万円の納税額になるものが16万円で済むわけです。この違いは大きいですよね?

 

インボイス制度に伴って、現在、免税事業者になっている方は課税事業者になった方がいいのか、免税事業者のままがいいのか、正直迷われている方も多いかと思います。

ですが、この制度があるのだとすると、少し緩和されることは間違いなさそうです。

 

ただ、この制度、報道によれば、3年程度の時限的な措置で検討しているということなので、いずれは通常の方法で納付していくことにはなりそうです。

 

この制度を使う場合、届け出はどうするのかとか、すでに簡易課税を出してしまっている場合には適用できないのかとか、いろいろと疑問点はあるわけですが、それらはこれから詰めていくという話なのだろうと思います。

 

いずれにしても、一つ言えるのは、インボイス制度に関しては導入することは決まっているものの制度の詳細はまだ動きはありそうです。そうした動きを注視しながら届け出を出していく形でも遅くないのかなと個人的には思います。

 

以上、今日はインボイス制度の話でした。



さて、今日は中小企業経営者の皆さんが必ず知っておかないといけないことです。

月60時間以上の残業があった場合の割増賃金率の話です。

 

この改正は大企業にはすでに2010年4月から実施されているものです。それが中小企業にも2023年4月から実施されます。

 

割増賃金率は現在、次の通りになっています。

法定時間外労働・・・25%

深夜労働(夜10時~翌朝5時まで)・・・25%

法定休日労働・・・30%

 

したがって、たとえば、時間外労働でかつ深夜労働の場合、25%+25%で50%の割増賃金となります。休日労働でかつ深夜労働であれば、30%+25%で55%の割増賃金となります。

 

さてこの割増賃金率ですが、このうち時間外労働の場合が二つに分かれるというのが今回の改正です。

1か月60時間以下の時間外労働・・・25%

1か月60時間超の時間外労働・・・50%

 

したがって、たとえば、1か月60時間を超える時間外労働だった場合、60時間までが25%、60時間超が50%で、なおかつ、その60時間超の部分が深夜労働だと50%+25%で75%の割増賃金率となります。

 

また、休日労働はこの60時間超の算定の際には除いて時間数をカウントしていきます

休日労働といっても、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。たとえば、就業規則で「休日は日曜祝日のみ」と書いてあったら、土曜日の休みは法定休日ではないということになります。この場合、休みの土曜日に出勤したらこれは休日労働ではなく、時間外労働となります。そのため、60時間の計算には入れて計算していくということです。

 

また、1カ月60時間超の労働があった場合には、労働者の健康を確保するため引き上げ分 の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます

 

そして、注意が必要なのはこれらの規定を就業規則に落とし込む必要があるということです。つまり、就業規則の改正が必要となります。

厚労省はモデル就業規則として、以下のように変更することを例として挙げています。

 

第○条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法により支給する。

(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。

この場合の1か月は毎月1日を起算日とする。

① 時間外労働60時間以下・・・・25%

② 時間外労働60時間超・・・・・50%

 

そして、そもそも1か月の労働時間が60時間を超えるようなケースがあるということは働きすぎが懸念されるということでもあります。

国はそうした場合に、一定の費用をかけて業務効率を図った場合、そのかかった費用の一部を助成してもらえる助成金(働き方改革推進支援助成金)というのもあります。

この際にそうしたものを活用することを検討してみてもいいかもしれません。

 

いずれにしても、中小企業にあっても就業規則の改定など2023年4月から60時間を超える残業についての対応が必要となってきます。

今からその対応を検討するようにしていきましょう。

 

以上、今日は2023年4月から施行される労基法改正の話でした。



今日は顧問先からも質問の多い雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金)についてです。

令和4年12月以降はどうなるのでしょうか。

 

現在、雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金も同じですので、雇用調整助成金として書いていきます)は原則と特例に分かれます。

令和4年12月以降も原則、特例の枠組みは変わりませんが、地域特例というのはなくなっていますので注意してください。

 

さて、雇用調整助成金の助成内容ですが、原則的には令和4年12月以降は通常制度(従来の雇用調整助成金)に戻すことになります。ただし、業況が厳しい事業主については、令和4年12月1日から令和5年3月31日までの期間について特例が続くことになります。

「特に業況が厳しい事業主」という特例の場合には、生産指標が、直近3か月の月平均で前年、前々年又は3年前同期比で30%以上減少している事業主に該当していることが必要です。

 

では、売上要件について確認していきましょう。

原則は、最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少していることですが 雇用調整助成金の支給申請を初めて行う判定基礎期間の初日(対象期間の初日)が令和4年10月1日~令和4年11月30日までの間にある場合は、生産指標が1か月10%減少している必要があります。この1か月で10%減という要件についてです。令和1年から4年までのいずれかの年の同期または過去1年のうちの任意付きとの比較の要件は、12月1日以降も継続します。ただし、10月1日以降は5%減少の要件は10%以上減少となっています。

 

また、令和4年12月1日時点で対象期間が1年を超えている場合及び同日以降令和5年3月30日 までの間に1年を超える場合は、対象期間を令和5年3月末まで延長します。1年を 超えない場合は対象期間の延長はありません。

 

そして、経過措置期間の最初の判定基礎期間の申請時に生産指標の確認(1か月10%以上減少しているか)を行います。

それから、判定基礎期間の初日が令和4年12月1日以降の休業等については、令和4年11月30日以前に受給した日数に関係なく、 令和4年12月以降100日まで(対象期間の範囲で)受給できることとなります。ただし、判定基礎期間が令和4年12月1日をまたがる場合は、 その期間後に100日まで受給できることになります。(たとえば、11月16日~12月15日が判定基礎期間の場合、 12月16日以降の休業等から100日まで受給できることとします。)

 

そして、特に業況が厳しい事業主として経過措置を利用する場合は、申請月ごとに生産指標の確認 (3か月平均で30%以上減少しているか)を行います。これに当てはまれば、特例で申請することができます。

 

次に、支給額についてです。

原則で申請する場合には、中小企業の場合には、休業手当の2/3で1日当たり8,355円が上限(大企業は休業手当の1/2で1日当たり8,355円が上限)、特例で申請する事業主(特に業況が厳しい事業主)は、休業手当の2/3(解雇がなければ9/10)で1日当たり9,000円が支給額となります。

12月以降の雇用調整助成金についてはまだ決定事項ではありません。現状で厚労省から発表の出ているものになります。新しい情報については、今後の情報を確認するようにしてください。

 

以上、12月以降の雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金)の話でした。



さて、今日は登記の話です。

10月13日付で法務局から次のような通知が出されました。

 

〇最後の登記から12年を経過している株式会社、又は最後の登記から5年を経過している一般社団法人もしくは一般財団法人は、事業を廃止していない場合、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所にする必要があります。

〇公告の日から2か月以内(令和4年12月13日㈫まで)に、「まだ事業を廃止していない」旨の届け出がなく、また、必要な登記申請もなされないときは、令和4年12月14日㈬付で解散したものとみなされます

 

対象となるのは、12年以上登記がされていない株式会社または5年以上登記されていない一般社団法人や一般財団法人です。これらの法人には法務局から通知が発せられています。この通知が届いた場合には速やかに登記をするか、もしくは「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります期限は令和4年12月13日です。そしてこの令和4年12月13日までにこれらの手続きがなかった場合、その会社は「みなし解散の登記」が行われ、12月14日付けで解散したものとみなされてしまいます。なんといつの間にか会社がなくなってしまうんです!

みなし解散の登記が行われた後は、その法人は存在しないことになりますから、印鑑証明書の発行を受けることができません。税務申告もできなくなります。当然、新たな借り入れやリースを組んだりすることもできません。

この「まだ事業を廃止していない」旨の届出をした場合にはとりあえず、令和4年度には解散されてしまうことはないのですが、必要な登記(役員重任登記など)の申請を行わない限り、令和5年度に再び解散登記の対象となります。「まだ事業を廃止していない」旨の届出というのはとりあえずみなし解散を免れるだけで、いずれにしても登記する必要はあるわけです。

「まだ事業を廃止していない」旨の届出書は次の事項を記載することとされています。

①商号、本店並びに代表者の氏名及び住所 ②代理人の場合は、その氏名及び住所 ③まだ事業を廃止していない旨 ④届出の年月日 ⑤登記所の表示を記載する(会社法施行規則139条

また、みなし解散の登記が仮に行われてしまった場合はどうなるのでしょうか。

この場合、登記を元の状態に戻したい場合は、3年以内に限って戻すことはできます。その場合、株式会社の場合には、株主総会の特別決議によって、一般社団法人又は一般財団法人の場合には、社員総会の特別決議又は評議員会の特別決議があれば、会社・法人を継続することができます。 この継続の決議をしたときには2週間以内に継続の登記の申請をする必要があります。

ただし、登記は元の状態に戻すことはできますが、登録免許税が新たにかかりますから、やはり通知が届いたら、速やかに手続きを済ませるようにしましょう。

 

また、そもそも株式会社の取締役の任期は原則2年(最長10年)、一般社団法人と一般財団法人の理事の任期は2年で、それぞれ任期ごとに登記が必要です。これらの登記をお忘れの場合は、早めに登記の手続きをしましょう。一応、本来申請すべき時期に登記を怠っていた場合には100万円以下の過料という罰金が科されることになっていますのでご注意を。

 

登記については、普段意識していない中小企業の経営者も多いと思います。

この機会に「うちの会社はどうなっているんだろう」と確認してみてもいいかもしれません。

ということで、今日は登記の話でした。



さて、今日は顧問先からあったご質問を元に書いていきます。社会保険の延滞金についてです。税金の延滞金と混同しがちですが、取り扱いが異なりますのでその辺を見ていきたいと思います。

 

ご質問いただいたのはこのような内容でした。

社会保険料と労働保険料の納付が未納になっているものがあります。これに加えて、賞与の社会保険料も未納になっています。まだ延滞金はかかっていないのですが、いつから延滞金がかかるようになるのでしょうか。

 

比較の意味で、まず、税金の延滞金についてみていきましょう。

税金については納付期限が基準となります。納付期限を1日でも過ぎると延滞金がかかります。延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて計算され、課されます。

 

その一方で、社会保険料の延滞金です。

これはまずは本来の納付期限まで納付がされないときは「督促状」が送付されます。実は社会保険の延滞金はこの督促状の発送がポイントとなります。督促状に「〇月〇日までに納付を要する」と納付の期限が記載されます。この督促状の指定する期限までに納付がされないときにはじめて延滞金がかかります。

逆に言えば、本来の納付期限までに納付ができなかったと言ってもすぐに延滞金がかかるわけではありません。本来の納付期限までに納付がされなくても、そのあとに発せられる督促状に従ってその督促状に記載されている期限までに納付がなされれば、延滞金はかからないことになります。

 

督促状に記載されている期限までに納付ができなかった場合には延滞金が課されますが、この延滞金の計算をする際は本来の納付期限の翌日から納付した日の前日までの日数に応じて課されます

つまり、延滞するときに計算する方法は税金を延滞したときと同じ計算方法となります。

 

この延滞金のルールは社会保険料だけでなく、労働保険料にも共通したルールとなります。

労働保険もやはり督促状が発せられてその期限までに納付ができなかった場合に延滞金がかかります

 

社会保険料と労働保険料の延滞金がいつからかかるのか、参考になさってみてください。


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