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ベビーシッターを利用する場合、国から一定の割引券という補助を受けることができる制度があります。この制度のことを「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」といいます。今日はこの制度のことをみていきましょう。

 このサービスを利用する前に二つのことを確認する必要があります。一つは、利用者自身が割引券の以下のような使用条件を満たしているかということです。

1 当該割引券は、承認事業主が対象者に交付したものであること。
2 対象者は、承認事業主に雇用されており、乳幼児等の保護者であること。
3 対象者は、配偶者の就労・病気療養、求職活動、就学、職業訓練等により、又はひとり親家庭であることにより、サービスを使わなければ就労すること(職場への復帰を含む。)が困難な状況にあること。
4 対象者にサービスを提供するベビーシッター事業者は、割引券等取扱事業者等であること。
5 割引券等取扱事業者は、対象者と請負契約を締結することによりサービスを提供していること。

次に、お勤めの企業がベビーシッター派遣事業の利用を予定しているかを確認する必要があります。

 割引券利用が可能なベビーシッター事業者を利用の上、利用料金の支払いにあたっては、必ず領収書を受け取り、保存することになります。
 割引券の交付後、利用したベビーシッター事業者へ領収書と割引券を提出の上、割引料金の支払いを受けてください。

割引券の利用は、1日(回)対象児童1人につき1枚、1か月に1家庭24枚までとなっています。ただし、例えば、きょうだいが2人の場合、1日2枚までとなっています。 割引券1枚当たりの割引金額は、2,200円です。また、また所得制限は特にありませんから、所得金額が高い方もこのサービスを利用できます。

割引券は、利用料金が1回につき2,200円以上のサービスを対象とします。なお、この場合における利用料金とは、ベビーシッター事業者から請求される料金のうち、純然たるサービス提供対価のことをいい、会費、交通費、キャンセル料、保険料等のサービス提供に付随する料金は含まないことになっています。また、自社のベビーシッターが自社の職員に提供するサービスについては、対象となりません。

割引券の対象となるサービスとしてはベビーシッター事業者が提供するサービスのうち、乳幼児又は小学校3年生までの児童、その他健全育成上の世話を必要とする小学校6年生までの児童の家庭内における保育や世話及びベビーシッターによる保育所等や認可外保育施設への送迎に限るものとしています。

また、保育等施設への送迎は、原則として家庭内における保育等のサービスに必要な送迎であって、次のものを充たす場合にのみ割引券の対象とします。

・家庭と保育等施設との間の送迎であって、保育等施設間の送迎ではないこと。

・同一家庭以外の複数の乳幼児等を同時に送迎するものでないこと。

・送迎の間の行程や乳幼児等の様子について、ベビーシッターが保育記録として記載しており、それにより保護者に報告していること。

・ベビーシッターの所属するベビーシッター事業者(法人格を有し、協会が実施要綱に定める割引券等を取り扱う事業者として認定した者)が運営する保育等施設の送迎でないこと。

次に割引券の発行には割引券利用手数料が必要です。手数料は割引券1枚につき中小事業主(労働者数が1,000人未満の事業主)は70円、それ以外の事業主は180円です。会社側はこの利用料金を支払う必要があります。金額は大きくありませんが、会社側の一定の協力も必要ということです。

また、このベビーシッター割引券はコロナ禍で拡充されています。

新型コロナウイルス感染症によって、小学校等が臨時休業等 になった場合に、保護者が仕事を休んだり放課後児童クラブ等 も利用できず、ベビーシッターを利用した場合の利用料金を補 助するものです。

コロナ禍の特例では、次の①~③に当てはまる方が特例措置の対象となり、ベビーシッターの利用券を利用できる対象となっています。

①個人で仕事をしている(自営業、フリーランスなど)

②配偶者が仕事をしていたり、ひとり親であったりして、ベビーシッターを利用しないと働き続けられない

③新型コロナウイルス感染症の影響で子供の通う小学校や保育 所等が休校・休園等になっている

また、割引券(2,200円/枚)は 平常時が1日の上限枚数:1枚/人 のところを、このコロナ禍の特例では、5枚/人になっています。また、平常時だと、1か月の上限枚数: 24枚/家庭となっていますが、このコロナ禍の特例では120枚/家庭 となっています。さらに、平常時の年間の上限枚数 :280枚/家庭 のところをこのコロナ禍の特例では上限なしとなっています。

さて、このベビーシッターの割引制度ですが、一点注意点があります。所得税や住民税が課税されるということです。割引を受けた分、確定申告して税金を支払わないといけないわけです。

たとえば、2,200円の割引券を上限の年間280枚利用した場合、2,200円×280枚=616,000円の補助が受けられます。 ただし、その616,000円は確定申告をしなくてはいけなくなります

所得区分は「雑所得」となります。給与のみだった場合、年末調整した源泉徴収票とともに申告が必要となるわけです。

また、所得税の確定申告が発生するのは給与所得者の場合、雑所得が20万円を超える場合です。このベビーシッターの割引制度を利用することで所得が発生する人であってもその金額が20万円以下(20万円ちょうども含みます)で、他に雑所得やそれ以外の所得がないようだったら申告はしなくていいことになります。

ただし、上記にご紹介したコロナ禍で拡充した特例制度でのベビーシッターの割引制度を利用した場合には、非課税所得となるため、申告は必要ありません。

コロナ禍の特例を使ったほうが有利になりますからその点、注意しましょう。

ちなみに、このベビーシッターの割引制度を利用した場合に課税されるという話は来年度の税制改正では非課税になるという話が出ているようです。この点は今後も注意してみていく必要があるでしょう。

それから、今回は国のベビーシッターの割引制度をご紹介いたしましたが、自治体によって独自に割引制度を設けているところもあります。お住まいの自治体でそうした制度があるかも確認してみましょう。

ということで、今日は「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」をご紹介いたしました。



以前に法人の代表者変更をした時の届け出の話をしました。

今回は法人の所在地の変更があった場合の税務、社会保険、労働保険などの届け出について書いていこうと思います。

法人の所在地変更の届け出関係は実は少し複雑です。

所在地の変更がどこからどこに変更したかによって、どこに届け出をするのかが変わってくるからです。税務署、年金事務所、労働保険など、統一性はないためちょっと、やっかいです。順番に見ていきましょう。

まず、代表者の変更と同じ点があります。それは、登記所への届け出を一番最初にすべきということです。登記所に届け出をして、本店所在地変更後の謄本を添付して様々な手続きをしていくという流れになります。

まず、登記の変更についてです。

本店所在地の登記の変更は登記所の管轄内の届け出か、管轄外への届け出かによって手続きの仕方が異なります。登記所にはそれぞれ管轄区域があります。管轄登記所の変更がない所在地変更と登記所をまたがって別の登記所への所在地の変更とで手続きの仕方が違ってくるわけです。管轄が変わると手続きが変わるというのは役所側の発想といえばそうなのですが、この管轄内の移転か管轄外の移転かという点は、本店移転の手続きを通して気にしないと手続きができない点ですから、まずはそこを気にするという点を頭に入れておきましょう。

登記所の管轄内の移転であれば手続きはそれほど難しくはありません。議事録等を添付して所在地の変更の手続きすればいいだけなので、以前に解説した代表者の変更とそれほど大きな違いはありません。もし管轄区域内の移転であれば、法務局の出している記載例などを参考にして議事録を作ってみてください。

ちょっと面倒なのが、管轄外への移転の場合です。管轄区域外への移転の場合、流れとしてはまずは移転前の登記所に移転する旨の議事録を添付して移転する登記をします。いったん移転前の登記所で登記をするわけです。そのうえで、移転した後の登記所に改めて登記されている内容の届け出をするという流れになります。登記されている内容というのは、「商号」(会社名のことです)「所在地」「目的」「資本金」「取締役の名前」・・・といった登記されている事項のすべてを新しい登記所で改めて登記しなおすわけです。

これだけでもなんだか面倒な感じがするかもしれません。

移転前の登記所に移転する議事録を添付し、移転しておいてから、新しい登記所登記事項のすべてを登記しなおす。その流れをまずは知っておきましょう。

そのうえで、この移転前と移転後の書類のすべてを移転前の登記所に出します。移転前・移転後、それぞれの登記所に書類を出すわけではないという点も注意点です。

新しい登記所では印鑑の登録もされていませんから、印鑑届も移転後の登記所への書類に添付が必要です。

移転前の登記所でこれらの書類をチェックして移転後の登記所へ書類を送付するようです。そのため、管轄外への移転の場合、登記完了までが通常よりも少し時間がかかります。

時間がかかるという点も知っておいたほうがいいでしょう。

さて、登記所の手続きが終わったとします。その後は税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所、労働保険、雇用保険とそれぞれ手続きしていきます。

まず、税務署ですが、これは税務署の場合も管轄をまずは確認してください。管轄の税務署が変わらないのだったら同じ税務署ですから「異動届」をその税務署に出せば終わりです。問題なのは税務署の管轄が変わる場合です。

この場合には、異動前の税務署に「異動届出書」を提出します。異動後の税務署には提出しなくてもいいです。この際に、登記簿謄本の提出は不要です。税務署への届け出は添付書類がいらないという点は、本店移転の手続きを通じて特徴点かもしれません。

次に、都道府県税事務所と市町村への届け出です。こちらは異動前・異動後の両方の都道府県税事務所・市町村に「異動届出書」を提出します。

ただし、東京都の場合、異動前の納税地に異動届を出せばそれでいいことになっています。また、都のHPによると異動後の納税地に出しても問題はないということです。

東京都の都税事務所の場合には異動前か異動後かどちらかの都税事務所に異動届を出すようにします。

税務署と異なり、都道府県税事務所や市町村への異動届は移転後の登記簿謄本の写しの添付が必要となります。忘れずに添付しましょう。

そして、社会保険の手続きです。

税務署や都道府県税事務所などと同じく、まずは年金事務所の管轄を確認しましょう。管轄内での移転だったら簡単です。「適⽤事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を出せばそれで終わりです。

では、管轄外の移転だったら移転前と移転後のどちらの年金事務所に届け出をしたらいいのでしょうか。

これは移転前の所在地の管轄の年金事務所へ「適⽤事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を出すことになります。

年金事務所への本店移転の届け出は「事実発生から5日以内」となっています。しかし、登記簿謄本を添付しなければならないことから5日以内というのは実質的には難しいでしょう。実務上は登記が完了したら早めに届け出を出すということになるだろうと思います。

最後に労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きです。

労災保険と雇用保険の手続きは労災保険の手続きが先になります

まず、同一の都道府県内の移転の場合です。

同一都道府県内の移転の場合、管轄の労働基準監督署が変わるか、変わらないかで分かれます。管轄の労働基準監督署が変わらなければ簡単です。「労働保険名称・所在地等変更届」を移転後10日以内に提出します。ただし、登記簿謄本かもしくは賃貸借契約書など、事業実態のわかるものを添付する形です。登記簿謄本でなくてもいいことから、他に所在地移転のわかる書類があればそれで手続きしてもいいでしょう。登記簿謄本を添付するのなら、登記が完了した後の手続きになります。10日以内だと間に合わない可能性がありますが、その場合にはなるべく早めに出すようにすればいいでしょう。

同一都道府県で労働基準監督署が管轄外の移転の場合には、移転後の労働基準監督署に労働保険名称・所在地等変更届」を出します。

この場合も変更後の登記簿謄本もしくは賃貸借契約書を添付して提出します。労働基準監督署の管轄の変わる本店移転の場合、新しく労働保険番号が振られます。労働保険番号は以前のものは使えませんのでその点は注意しましょう。

そして、意外と面倒なのが都道府県をまたいだ移転の場合です。

前提として、営業所は本店所在地のみだったとします。

都道府県が変わると管轄の労働基準監督署はもちろんですが、監督署の一つ上の役所である労働局も変わります。管轄の労働局が変わる場合、手続きとしては旧本店所在地の都道府県の労働保険関係をいったん廃止して、新しい都道府県で新たに労働保険に加入するという流れになります。つまり、移転前の都道府県では労働保険料精算をして廃止をするわけです。移転後の都道府県では、「労働保険名称・所在地等変更届」で対応するのではなく、「労働保険関係成立届」と「概算労働保険料」の申告という形でまったく新しく事業を始めるのと同じ手順で手続きします。労働保険の場合、都道府県が変わる移転は意外と面倒なんです。

さて、労働保険の手続きが終わったら今度は雇用保険です。雇用保険の本店移転は、変更のあった日の翌日か10日以内に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。これも雇用保険の管轄を確認して管轄に変更がなければこの届け出を出せばそれで終わりです。

ハローワークの管轄が変わる場合、これは移転後の所在地を管轄するハローワークへ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を出します。この際に、「労働保険名称所在地等変更届」の控と本店所在地の確認書類を添えて、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。労働基準監督署と同じく、賃貸借契約書であれば登記が終わってからということはないのですが、登記簿謄本を添付して本店の所在地変更の届け出をする場合、やはり登記が完了してからの手続きとなります。

また、労働保険の「労働保険名称所在地等変更届」の控えを添付することが必要なことから、労働保険の手続きも終わらないと手続きできません

それから、上記の労働保険は雇用保険の手続きは一元適用事業(労災と雇用保険が一体となっている場合)を前提としています。建設業などの二元適用事業の場合には、労災保険については、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出し、雇用保険については、移転後の所在地を管轄する公共職業安定所に「労働保険名称、所在地等変更届」及び、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出することになります。

いかがでしたでしょうか。

本店移転した場合の手続きはなかなか複雑だと思います。

ちなみに、このブログでは支店等の複数の営業所があることを前提とせず、本店所在地のみに営業所がある場合を前提に進めましたので、その点、ご承知いただければと思います。

ということで、今日は本店移転をした場合の手続きについての話でした。



今日はまた最近、私の顧問先でもあった話です。

基礎年金番号がわからなくても社会保険の加入や喪失などの手続きができるのかという話です。

社会保険の手続きには以前は「基礎年金番号」が必須でした。

そのことはこのブログでもかなり以前に書いています。↓

このブログを書いたときは上記のような取り扱いで、原則、基礎年金番号が不明だと原則的には手続きできませんでした。ですが、この後、マイナンバー制度の普及に伴い、平成30年3月以降の届け出については、原則、マイナンバーがわかれば基礎年金番号が不明であっても手続きができるようになりました

マイナンバーの記載をして紙で社会保険の手続きを年金事務所に提出する場合には、その手続きの対象者のマイナンバーカードの写し、もしくは、マイナンバー通知書の写しと免許証等の本人確認書類の写しの提出も必要となってきます。

いまだに上記の「基礎年金番号が不明な場合の社会保険の手続きはどうするのか?」という私のブログを参照されている方が一定数、いらっしゃるようなので、このページをご覧になった方、気を付けてください。現在は変わっています!基礎年金番号が不明でもマイナンバーだけで手続きできるようになっています!!

それから、電子申請だと、マイナンバーカード等の添付書類も不要になっています。その意味でも、電子申請で手続きすることをお勧めします。

マイナンバーでの手続きが主になっているということは、日本年金機構の下記のページも書いてあります。ぜひ、参照してみてください。

https://www.nenkin.go.jp/service/mynumber/1224.html



年末調整の時期が近くなってきました。職場でもこれから年末調整の書類の記入をするケースが多くなってくるはずです。今回の年末調整では今までにない書類が増えたり、「ひとり親控除」という新しい控除ができたりと、実に改正が多くなっています。

今日はその中から、「内縁関係」の場合にどのように変わったのか、見ていきたいと思います。

内縁関係の場合、税務は配偶者控除は取れませんが、社会保険の扶養には入れます。ここは変更はありません。変わるのは「寡婦控除」「ひとり親控除」の部分です。寡婦控除とひとり親控除については以前にこのブログでも書いていますので、下記を参照してみてください。

ここで問題なのは、従前はたとえば、寡婦であって内縁関係の夫がいる場合、婚姻関係にはないので「寡婦控除」は継続して取れました。ところが、税法改正で今回の年末調整から内縁関係の者がいる場合、「寡婦控除」もしくは「ひとり親控除」は取れなくなりました。今回の改正で事実婚の関係の者がいる「寡婦」もしくは「ひとり親」はこれらの控除の対象ではなくなったのです。

問題なのは、この「事実婚」というのをどういう形で確認するのか、ということです。「事実婚」というのは原則的には本人から申し出がなければわかりません。ただ、本人から申し出がなくても会社側で「事実婚」とわかるケースがあります。社会保険の扶養に入るために住民票に「未届の夫」「未届の妻」と記載するケースがあります。これらの記載のある住民票を添付して事実婚であるけれども社会保険の扶養に入るようなケースです。このような場合には、会社側でも届け出の書類を確認していますから、「事実婚」の関係にあることの把握ができます。この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書かれている場合には配偶者控除はもちろん、「寡婦控除」「ひとり親控除」が取れないということになります。

令和2年1月23日付で総務省から各市区町村へ向けて、住民票に「未届の夫」「未届の妻」と書いてあるケースで寡婦控除やひとり親控除を取っていないことを確認するようにという通知が出ています。またこの確認をした場合にはその情報を税務署と共有するようにということになっています。つまり、市区町村側で「未届の夫」「未届の妻」と書いてある住民票がある場合、かならず税務署にもその情報がいくようになっているわけです。

おそらく実務上、事実婚であるために寡婦控除やひとり親控除が取れないのは、本人からの申し出がある場合以外にはこのケースくらいなのではないかと思います。

ちなみに、この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書いて事実婚であることを示す方法ですが、住民票が同じでないとできないことになっています。住所が別の場合にはそもそもこの「未届の夫」「未届の妻」と記載はできません。法律上婚姻関係にある場合で社会保険の扶養となる場合、同居は要件とされていませんから、住民票の所在地が別であっても社会保険の扶養になることは可能です。この辺も事実婚と法律上の婚姻関係にある場合の違いとして認識しておきましょう。

実際、「未届の夫」「未届の妻」と住民票に書いてお子さんがいらっしゃる場合、社会保険の扶養は継続できますが、「寡婦」「ひとり親」を継続することはできなくなります。一方で、婚姻関係になったとすると、社会保険の扶養はもちろんできますし、(多くは「夫の方で」となるでしょうが)配偶者控除も取れますが、婚姻関係になった以上、「寡婦控除」「ひとり親控除」は取れません。

この年末調整を機にこうした状況にある方はどうするのがいいのか、検討が必要でしょう。

以上、今日は内縁関係の方の年末調整の話でした。



大塚家具の代表だった大塚久美子氏が社長を退任するというニュースが飛び込んできました。私の顧問先でも最近あった話ですが、今日は法人の代表者が変更したときの手続きはどうしたらいいのかという話です。

登記、税務、社会保険、労働保険と一連の手続きがどうなっているのか、見ていきましょう。

まず、法人の代表者が変更した場合、様々な手続きがある中で一番最初にやるべきことは登記です。登記が完了したあとに税務署や年金事務所に手続きすることになります。

登記の変更の時の注意点としては「印鑑カード」です。「印鑑カード」は以前のものを引き継ぐのか、新しく発行するのかというのがあります。「印鑑カード」とは印鑑証明書などを発行する際に必要なものです。前代表者の親族が代表者を引き継ぐ場合には、印鑑カードも引き継ぐ形を取ることが多いと思います。そうでないようなケースの場合、新たに印鑑カードを発行することになるでしょう。

この印鑑カードのことを記載した「印鑑届」のほか、代表者変更の登記には株式会社であれば「株主総会議事録」や「株主リスト」、旧代表者が辞任して代表者が変更するのであれば「辞任届」が必要となります。そのほかに、新代表の印鑑証明書も必要となります。

さて、無事に代表者変更の登記が済んだとします。そうなると、次に、税務署や都税(県税・府税)事務所、市町村への届け出をするという流れになります。

税務署、都税(県税・府税)事務所、市役所といった税務関係の届け出は税務署だけ少し違います

税務署は「異動届」というのを出してそれで終わりです。付書類は特に必要ありません。

一方で、都税(府税・県税)事務所や市役所は変更後の登記簿謄本を添付して出します

添付資料に登記簿謄本が必要かどうかの点が変わってきますので注意しましょう。

さらに、社会保険に加入していたのなら、社会保険の「事業所関係変更(訂正)届」というのを出さないといけません。

事実が発生した日から5日以内となっていますが、登記簿謄本を添付しないといけないので、実際上は登記が完了してから手続きをすることになります。代表者変更の登記が済んだら早めに手続きすればいいでしょう。

それから、労働保険(労災保険や雇用保険)ですが、これは特に手続きは必要ありません。労働保険は代表者が誰というのは特に届け出を必要としていないのです。

ちょっと意外に思うかもしれませんが、手続きをしようとして届け出の方法がないのでそれで気づくかもしれません。労働保険は届け出しないという点も注意しましょう。

あとは、役所ではないですが、銀行などにも登記簿謄本の写しを通常は出すことになるはずです。これは銀行側からたぶん言われます。以前は通帳には「株式会社○○代表取締役○○」と代表者の名前まで入れていましたが、現在は会社名だけです。ですが、銀行は変更後の登記簿謄本を出すように言うのではないかと思います。

ちなみにですが、登記簿謄本というのは「全部履歴事項証明書のことです。たまに顧問先の社長さんから登記簿謄本って全部履歴事項証明書のことですか、と聞かれます。そうです。正式名称は全部履歴事項証明書です。同じことだと理解しておいてください。

また、たとえば結婚して姓が変わったりした場合も代表者の変更と同じ扱いとなります。手続き的には同じような手続きとなります。

ただ、登記に関しては姓の変更は株主総会議事録は必要ないです。代表者の変更といっても姓が変わっただけなのだったらそもそも株主総会を開いて承認を得るようなことではないですからね。

ということで、今日は代表者が変更した場合の手続きの話でした。



本政策金融公庫や商工中金などのいわゆる政府系金融機関からコロナの融資をうけた事業者の方は、「特別利子補給制度のご案内」というのが届いていると思います。

「この書類はどうしたらいいの?」というお問い合わせを私の顧問先からも数多くいただいております。今回はこの「特別利子補給制度」について、解説したいと思います。

まず、この政府系金融機関での新型コロナウィルス感染症特別貸付を受けた場合の利子補給制度の概要からお話を進めましょう。

新型コロナウィルスの貸付を受けた事業者に対して、借入した日から最長3年間の利子相当額のお金をもらえるというのがこの制度の概要です。

新型コロナウィルス感染症の影響で売り上げが減少した事業者向けの制度であるということがまずあります。

さて、この利子相当額の助成金を受けるにはどんな要件が必要でしょうか。

次の3つのうちのいずれかに当てはまることが必要となります。

①個人事業主・・・要件なしですべて該当します。

②法人のうち小規模事業者・・・前年もしくは前々年同月比で売り上げが15%以上減少していること

③②以外の法人(中小企業者等)・・・前年もしくは前々年同月比で売り上げが20%以上減少していること

個人事業者の場合には無条件でこの利子補給制度を使えます。法人の場合には②に該当するのか、③に該当するのかという判断が出てきます。

②に該当するのがどういう法人かがわかればいいわけです。

これは二段階あります。

まずは、業種です。これは「日本標準産業分類」というので判断します。法人の主たる事業がこの日本標準産業分類のどれにあてはまるのかを判断しないといけません。

これは、利子補給制度の「申告書A」の裏面に記載があるのでそれで確認しましょう。業種によって従業員数が20人以下なのか5人以下なのかが変わってきます。

②に該当すれば売り上げの減少が15%で要件クリアとなりますし、②に該当しない中小企業なら売り上げの減少が20%以上となります。

さて、この要件に当てはまったとします。次に、「申告書A」の「2 売上高減少判定」という部分でみなさん悩むようです。これは先ほど判定した売り上げの減少のところを確認する欄です。日本政策金融公庫等の政府系金融機関での借り入れの申し込みをしたときに売上の減少が15%以上もしくは20%以上となっているというのを確認するためのものです。

政策金融公庫で借り入れをする際、この売り上げの減少というのを確認しているはずです。それを書いていきます。

この利子補給制度の用紙の肝はここになりますから、くれぐれも売上の減少が要件を満たしているか、きちんと確認していきましょう。

それから、「申告書」のほかに提出する書類は2つ、全部で3つです。

「様式1」特別利子補給助成金交付申請書及び請求書

「別紙1」誓約・同意書

「別紙2」申告書

「様式1」と「別紙1」は記入していくだけです。問題はないでしょう。

「別紙1 誓約・同意書」と「別紙2 申告書」の右上に「取引番号」を記載する欄があるので記載を忘れないようにすれば他は問題ないと思います。

また、「申告書」ですが、業歴が1年1か月以上の場合は「申告書A」に書いていくことになります。ですが、業歴が3カ月以上1年1か月未満の場合には、「申告書B」個人事業主の場合には、業歴が1年1か月以上の場合には「申告書C」個人事業主で業歴が3カ月以上1年1か月未満の場合には「申告書D」となります。

業歴が1年1か月未満と短い場合、この利子補給制度が使えないわけではありません。「前年または前々年」との売り上げの比較になっているので、書けないとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、そもそも用紙が違うのです。また、個人事業主の場合、これも用紙が違います。政策金融公庫等から送付されてきた中にはこうした「申告書B」「申告書C」「申告書D」が入っていないこともあるかもしれません。自分がどれに該当するのかよく注意してください。

用紙がなければ、「新型コロナウィルス感染症特別貸付利子補給制度で検索すれば専用サイトが表示されます。そのサイトから探して印刷してみてください。

それから、申請書は出したら出しっぱなしです。控えはありません。コピーを取って提出したほうがいいでしょう。提出は専用の返信用封筒があるはずです。もし専用の返信用封筒をなくしたのであれば、お持ちの封筒でお送りすればいいでしょう。その場合、10月27日以降は送付先が変わっていますから注意しましょう。(10月27日以降も旧送付先に送っても問題はないようです)送付先はこれも「新型コロナウィルス感染症特別貸付利子補給制度」の専用サイトに記載されていますからそれをみて送ってください。

そして、この利子補給制度は申請期限があります。12/31までに提出が必要です。期限がある話ですから、間に合うように十分に留意しましょう。

その他、ここに書ききれなかった細かなことは下記の「新型コロナウィルス感染症特別利子補給事業について」を参照してみてください。

https://www.smrj.go.jp/news/2020/riho.htm

ということで、今日は政府系金融機関の利子補給制度の話でした。



さて、今日はよく顧問先等から質問される話です。

社員の住所が変わったのは社会保険の届け出が必要なんですか」というものです。

健康保険や厚生年金の届け出の際にマイナンバーを原則的には記載するようになりました。そのことと住所変更の届け出の有無は関係しています。

たとえば、入社時に基礎年金番号を書かずに届け出の用紙にマイナンバーを記載して届け出したとします。そういう方は社会保険とマイナンバーが紐づいているため、住所の変更に関しては届け出の必要はありません。

このようにマイナンバーと基礎年金番号が届け出などを通じてきちんと紐づいている方は住所の変更があったとしてもそのことを年金事務所等へ届け出る必要はありません

以前は住所の変更があると「厚生年金住所変更届」というのをその都度、提出していたのでそのことが頭にある方は「住所の変更があったので届け出をしてほしい」といったお話をいただくことがあります。ですが、原則的には届け出が必要なくなりました

ただ、マイナンバーと基礎年金番号が紐づいていないケースがあります。

たとえば、マイナンバーを有していない海外居住者、短期在留外国人、住民票住所以外の居所を登録する場合などがそうです。

実務上は、私の顧問先でもあったのですが、日本国内に住所があっても、住所変更がされていないケースがあるようです。ねんきん定期便が旧住所から転送されるといったことからわかることがあるようです。このような場合には、個別に「厚生年金住所変更届」を出す必要があります。

このように実務上はねんきん定期便等の郵便で届く年金の加入記録が転送されるような場合に届け出をしていくという対応になるのだろうと思います。

また、電子申請でも住所変更の届け出はできますが、第3号被保険者の住所変更の場合には電子申請できないので紙で郵送するか、直接、年金事務所へ提出することになります。

以上、社会保険の住所変更の話でした。



さて、今日は私の顧問先からいただいた質問を元に書いていきます。

こんなご質問でした。

○○さん(傷病手当金受給中の方)が、他社でリハビリを兼ねてアルバイトをしたいといってきています。主治医の先生もそれはいい方法だといっているようです。傷病手当金受給中で働いていても問題はないのでしょうか?

健康保険法第99条によると「被保険者が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。」となっています。病気で働けないから給与の代わりに受給するのが傷病手当金です。

そもそも働いていると傷病手当金はもらえない。これが原則的な考え方です。さて、上記のご質問のケースを考えてみましょう。

このケースは精神疾患で会社を休職中の方であるという前提があります。この方がアルバイトをするのは主治医のアドバイスもあり、要は、病気療養という目的で働くわけです。しかも自社ではなく、他社で働いて少しずつ療養していこうという理由なわけです。果たしてこの状況で傷病手当金を受給しても傷病手当金の受給に影響はないのでしょうか?

これについては、平成15年2月25日に厚労省から出ている次のような通達(保保発第0225007号)があります。全文を引用してみましょう。

健康保険法第99条第1項に規定する「療養のため労務に服することができないとき」(労務不能)の解釈運用については、被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。

したがって、被保険者がその提供する労務に対する報酬を得ている場合に、そのことを理由に直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかの判断をされたいこと。

ちょっと長いですが、全文を引用しました。この通達は健康保険法99条の傷病手当金の要件にある「労務に服することができないとき」というものの解釈のことを言っています。「報酬を得ている≠病気で働けない」と考えて、傷病手当金がもらえないと考えるのは違うといっています。あくまでも病気療養、つまり、リハビリ的に働いてその結果、報酬を得ていたとしてもあくまでも病気療養の一環なのだから普通に「働けない」状態であることには変わりないと判断して下さいといっています。

また、この「報酬を得ている」というのは自社で働いて報酬を得ているのか、他社で働いて報酬を得るのか、それは問わないともいっています。

通達なので、厚労省が実際に事務処理をする協会けんぽなどにあてて書いている文書ですが、この通達の解釈が実際にはそのまま実務上の解釈となります。

さて、では、病気療養的に働いて報酬を得ていても問題ないとされるのは、どの程度までを言うのかという点です。

解釈通達には、「軽微な労働」であることや本来の職場とは違う仕事であることなどと書かれています。

ここからは私見となります。判断の基準として、まず、本来の仕事とは違う簡単な仕事であることがあります。また、雇用保険に加入するのは週の労働時間が20時間以上である場合です。その辺から考えると、例えば、20時間以上労働時間があるような場合には病気療養の働き方とは言えないのだろうと思います。それから、この通達の想定しているのはあくまでも「一時的」なものです。何カ月も継続して報酬を得ているのであれば、これもこの通達からは外れてくるといえるだろうと思います。具体的に何カ月からだと「一時的」といえないのかまでは何とも言えませんが、あくまでも「病気療養」のための一時的なものというのが基本だということです。

加えて、報酬を得ている場合、傷病手当金の受給額に調整が加わる可能性があります。協会けんぽのHPによると「休んだ期間について、給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。ただし、休んだ期間についての給与の支払いがあってもその給与の日額が、傷病手当金の 日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。 」とあります。ただ、これは傷病手当金の受給中に有給の給与が出ている場合です。病気療養の一環で少し働いていてもやはり傷病手当金はその分、減額されるのかは書いていません。

そこで、協会けんぽにもこの点を電話で問い合わせてみました。その回答としては、自社で働いて一部、報酬が出ている場合、その分は傷病手当金は減額されるという話でした。ついでに、その傷病手当金受給中に他社でアルバイトしていても減額されるのか、というのも聞いてみました。回答としては「協会けんぽとしては4枚の傷病手当金の用紙からしか判断できないです。他社で勤務していることが問題になるのは、社会保険の調査があったりして、その際に他社で問題になる可能性はあります。」というような話でした。つまり、傷病手当金受給中の他社での勤務の場合、傷病手当金の申請ではわからないかもしれないが、勤務時間が多いとそれが原因で問題になる可能性があるという話です。

傷病手当金の受給中に報酬があるようなケースがある場合、注意してみてください。以上 、傷病手当金受給中に報酬を得ていた場合という話でした。



事業主宛にお知らせが順次届いているようなので把握されている事業主も多いことと思います。厚生年金の上限額が引き上げになっています

従来、厚生年金は上限額が620千円でしたが、上限額が650千円に引き上げになりました

適用となるのは9月1日からです。

9月分の社会保険料から変更になります。対象者がいる事業所には9月の終わりごろから個別に新標準報酬に該当する旨が通知されています。その通知で確認されている事業主も多いと思います。

もう一つのポイントはいつの給与から変更になるのかという点です。9月分の社会保険料、つまり、多くの事業所は10月に支給される給与から変更になります。

また、この変更に際しては特別な手続きは必要ありません。算定基礎届で提出された報酬に基づき、該当する者がいる場合には、個別に事業主宛に案内が郵送されま。

今月支給の給与から注意して給与計算をしましょう!



今日は顧問先からいただいた質問からちょっと考えてみたいと思います。

月末の前日を退職日とすると社会保険料がかからなくて得だ」という話についてです。

このことをちょっと考えてみたいと思います。

実はこの話は私が開業する前、会計事務所に勤務していたころからたまに聞いたりすることがある話でした。話の要旨としてはこのようなことです。

月末退職とするとその月の社会保険料がかかるから、月末の前の日に退職したとすれば社会保険料がかからなくなる。だから、顧問先にもそう話をして月末退職ではなくで月末の前の日に退職したことにして手続きするように話をしたほうがいい

こんなような話です。

これはどういう話なのでしょうか?まずは社会保険の仕組み的な話から確認していきましょう。

社会保険というのはそもそも退職日の翌日が資格喪失日となります。つまり、退職日の当日は保険証を使えるということです。その翌日(正しくは夜の0時を過ぎた時間)から保険証が使えなくなります。保険証が使えなくなった同日に別の保険に加入する形(法律的には、ほかの会社に就職したのから他の会社の社会保険に、そうでなければ自動的に国保・国年)となります。これを同日得喪といったりします。

たとえば、9月29日退職とすれば、9月30日資格喪失となり、9月30日の当日から保険証は使えなくなります。

また、社会保険料は月末の在籍に対してかかるので、9月30日にすでに資格を喪失しているのであれば、9月分の社会保険料はかからないということになります

このように、確かに9月29日退職とすれば、9月30日資格喪失となり、社会保険料は「会社側」ではかかりません。会社側からすると社会保険料がかからなくなり、一方で従業員側からしても社会保険料の負担が1か月分なくなるのでよさそうな話に聞こえるのかもしれません。ですが、あえてこのように誘導すると、本人にとって不利益になることがいくつかあります。

たとえば、9月分は国保・国年となる(9月30日にほかの会社に再就職しなければ自動的に9月30日に国民健康保険・国民年金となります)ため、国民健康保険・国民年金の保険料となります。保険料という点からはひょっとしたらそちらのほうが高くなる可能性があります。また、国保・国年の手続きをしなければ無保険となる期間があることもあり得ます。

また、年金についても影響があります。たった1日だからといって手続きを何もしなければ老齢年金の加入期間に空白期間が生まれる可能性もあります。つまり、たったの1ヶ月分ですが将来の年金額に影響します。また、仮に障碍者になって障害年金を受給することになってしまった場合、空白期間があると障害年金を受給できなくなる(障碍者認定される1年以内に保険料の未納がない等の要件があります)こともあり得ます遺族年金の受給できる場合も同様に、保険料納付要件があるのでそれに引っかかってしまい、せっかくもらえるはずだった年金がもらえなくなることもあり得ます。障害年金や遺族年金はその後の生活保障という意味がありますから、仮にたった1日のちがいでこうした年金がもらえなくなることが起こってしまったら重大な問題となります。

それから、実際に私が勤務していた会計事務所であった話ですが、前職で月末の前の日に退職した(たとえば9月29日退職として1か月分の社会保険料を逃れる形にした)方がいました。前職の会計事務所でその会計事務所の所長の税理士の先生から言われた(つまり、社会保険料が1か月分かからないから月末退職ではなく月末の前日を退職日としようといわれた)らしいです。その方は日をあけずに、つまり、この場合だと10月1日に別の会計事務所に再就職しました。ところが、その方がちょうど1年近くになったときに、病気になってしまい傷病手当金を受給することになりました。傷病手当金は同一の傷病で仕事につけないのであれば退職後も継続して受給できます。ただ、退職していても傷病手当金を受給するには加入期間が1年以上ないといけません。この1年以上の加入期間というのは、たとえば協会けんぽなら協会けんぽで継続して1年以上の加入であれば、途中で職場が変わっても継続しているものとして取り扱えます。この方の場合、再就職先の会計事務所でちょうど1年になる前に退職してしまいました。前職も協会けんぽだったため、通算すれば1年以上になり本当だったら傷病手当金が受給できたはずなのです。つまり、前職とこの退職した会社で切れ目なく社会保険が継続しているのであれば傷病手当金を受給できたのに、たった1日切れている日があったために退職後も継続して傷病手当金を受給できるという特例が使えなかったわけです。しかも、このケースは実態としては月末が退職日だったわけですから、問題があるといわざるを得ないでしょう。

このように、本来の退職日は月末なのに社会保険料がかからないからという理由で月末の前の日を退職日とすることで、本人に不利益になることがいくつかあります。会社側からすれば、単に1か月分の社会保険料がかからなくなるだけの話ですが、本人にとっては実は不利益なことが多い話だということです。

また、コンプライアンス上も問題がないかという点もあると思います。税理士の先生で「退職日を月末の前日とすると社会保険料がかからなくなるからそのようにしたらどうですか」と顧問先にアドバイスしている先生がいるとお聞きしたことがあります。先ほど例に出した前職の会計事務所での取り扱いのように社会保険料を逃れるための常とう手段のように考えている税理士も多いのです。問題なのは、その税理士の先生が上記のような本人にとってのデメリットがあることをきちんと説明し、本人がこうした不利益があることをきちんと理解したうえでやっていることなのかという点です。本人も了解しているからいいのではないかという意見もあると思いますが、生命保険であろうが、携帯電話の契約であろうが、本人にとって不利益なことがあるのであれば事前に説明をするのは常識的に行われていることです。件の税理士の先生も「1か月分の社会保険料がかからない」という点だけを会社側も本人に説明しているのではないのかと思います。このようなことで訴訟になることはないのかもしれませんが、もし仮に訴訟になったとしたらデメリットをきちんと説明していないという点について責任を問われかねないと思います。

そもそも、事実として退職日が月末なのに月末の前日を退職日として書類を作成するという行為自体、虚偽の公文書作成です。そのこと自体にすでに問題があります。得だとか損だとかという問題以前の話ではないかと思います。

このように月末が本来の退職日であるところを月末の前日を退職日とするのは問題となる点があるということです。そのことを十分に理解していただきたいと思います。


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