手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

今日は顧問先からお問い合わせいただいたご質問の中から、年金と給与の調整という話、いわゆる「在職老齢年金」という話をしていきたいと思います。

「給与と年金の両方をもらうと年金額が減らされる」

この話自体は、皆さん、よくご存じのようです。

では、どうやったら年金が減らされるのか、逆にどういう場合に年金が減らされることがないのか、また、いくら減らされるのか、きちんと理解している方というのは私の感覚的にも少ないと思います。今日はその基本的なルールに絞って、なるべく平易な言葉でわかりやすく書いていこうと思います。

年金と給与の調整というのは、「年金+給与」が28万円(65歳以上の方は47万円)を超えると、年金の一部が減らされるという話です。これを「在職老齢年金」と呼びます。こういう年金の種類があるわけではなく、年金と給与の調整がされる場合の老齢年金のことを「在職老齢年金」と言っています。(老齢年金なので、障害年金や遺族年金と給与が両方支払われる場合、そもそもこれらの年金との調整という話はありません。老齢年金に限った話です。)「在職老齢年金」というのは「月額給与(「総報酬月額相当額」といいます)」+「月額年金(「基本月額」といいます)」の1か月あたりの金額が28万円(65歳以上の方は47万円)以上だと調整されるという話なのですが、この在職老齢年金の話を理解する上での主な部分はそのうちの「月額給与」という部分です。

まず、簡単な方から行きます。年金の方です。基本月額、つまり、1か月の年金の額というのは、これはあまり難しくはありません。これは2か月おきに支給される老齢年金の1か月分(通常は支給を受けた年金額÷2)の金額と考えていただければだいたいOKです。(正しくは「加給年金額」がある場合にはそれを除いた、報酬比例相当の金額です)

問題は「月額給与」の方です。私のこのブログでは「月額給与」と言っていますが、正しくは「総報酬月額相当額」といいます。これは1年の標準報酬月額と賞与の届け出額の金額を足して12で割った金額です。年金事務所側が把握している1年分の報酬を元に1か月の給与の額を計算しているわけです。

その月その月の給与をいちいち報告して計算していると思っていらっしゃる方もいるのですが、そうではないんです。すでに届出されている報酬額が計算元になっています。

この1年分の給与の額の「総報酬月額」と1年分の年金額を足して12で割った額の金額の「基本月額」の合計が、65歳未満の場合には28万円以上、65歳以上だと47万円以上だと調整されるというのが、いわゆる「在職老齢年金」の調整の基本的な仕組みです。

上記の内容を簡単に算式で示すと「給与+年金<28万円(65歳以上は47万円)」だと調整される、となるわけです。

次に「在職老齢年金」について、今までご相談を受けた中で誤解が多い点を3つご紹介いたします。

まず、この制度で計算する場合には、何か新たに届け出を出したり、現に支給されている給与の額をいちいち年金事務所に報告したり、そういうことはしないわけです。そう考える人は、たとえば残業代が増えるとどうなるのかとか、○○手当が増えると年金の一部が支給停止に係るのではないかとか、そのような話をされるのですが、それは全く違うわけです。あくまでも、この給与と年金の調整の仕組みは、要するに、給与の額も年金の額も年金事務所で現に把握が可能な数字を元に計算しているわけなんです。これが、誤解される点の一つ目です。

ただ、給与の額が増えて、月額変更に該当したり、算定基礎届によって報酬月額が増えたりすると、標準報酬月額が変更になった時点から年金額との調整が入る可能性はあります。給与が増えても全く関係ないわけではないです。月額変更に該当したり、年に1回の算定基礎届で標準報酬月額が増えれば影響はあります。その点もご注意を。

 

次に誤解される点、二つ目です。この制度は、当然のことながら社会保険の標準報酬月額の話が出てくるということは、厚生年金に加入していない方はこの調整の話はありません。あくまでも、厚生年金に加入している方が年金の支給を受ける場合に調整があるという話です。たとえば、個人事業主だったり、給与は受けていても社会保険(厚生年金)に加入していないのであれば、そもそもこの在職老齢年金は関係のない話です。

 

この論点は、税理士の方にもこの点の誤解が非常に多いように思います。たとえば、実は、個人事業主の方だったとか、給与はあるが今の会社では社会保険には入っていない(国民健康保険に加入している)とか、相談を受けていてそういう話になることがあります。あくまでも、厚生年金に加入している方が給与と年金の両方を受ける場合に「在職老齢年金」として年金額が減らされるという話です。個人事業主や給与の支給は受けていてもそもそもその方が社会保険に入っていないのであれば在職老齢年金の問題は発生しません。この点もわかっている方には当たり前の話なのですが、誤解の多い点ですのでご注意ください。

 

それともう一つ、三つ目は、在職老齢年金の仕組みが適用されるのは65歳未満と65歳以上で調整される額が変わるということです

65歳未満の方ですと、年金と給与であわせて28万円ですが、65歳以上の方はこの28万円が47万円になります。年齢が何歳かによって調整額は異なりますのでご注意ください。

ちなみに、この65歳以上の支給停止基準が47万円になったのは、平成31年4月1日からの変更点です。(それまでは46万円でした)

 

 

さて、ここまでご理解できた方は、最後に、いくら調整されるのか、計算式を見てください。(ここまでで理解できた方だけで結構です。計算式を見るだけで訳が分からなくなる可能性があるので。)

 

調整される額は以下の算式によって計算されます。

{「基本月額(1年分の年金額を12で割った金額)+総報酬月額相当額(1年間の標準報酬月額の12ヶ月分相当額+賞与の額)÷12」-28万円(65歳以上の者の場合には47万円)}÷2分の1

 

この計算式がよくわからなければそれでも構わないと思います。この計算式で知っていただきたいのは、あくまでも調整される年金額は算式の超えた額の2分の1となっている点です。

よく、「年金が減らされるのだったら働かない」というようなことをおっしゃる方がいらっしゃいますが、手取り額が減るわけではないです。あくまでも年金額の一部が減額されるということです。年金額の半分も減らされると思っていらっしゃる方もいますが、そうではないんです。

 

「年金を満額受給できる」ことを考えるというより、手取り額全体をみて考えたほうがいいのではないかと思います。「減らされる」となると、「減らされる」ことにフォーカスされ、どうしても「減らされない」方法を考えるのですが、仮に年金額の一部が減らされても働いたほうが手取り額が増えるのであればその方がいいかもしれないですよね。要するに、年金額が減らされるというのは、働き方をどうするのかを考える際の参考事項の一つのはずです。

 

あとは、実際、どの程度減額されるのか、きちんとシュミレーションを出したいのであれば、面倒かもしれませんが、実際、年金事務所に行って「給与がいくらだったらいくら減額されるのか」をご相談に行かれるのが確実でしょう。たとえば、高年齢者雇用継続給付という雇用保険の給付金を受けている場合には、この在職老齢年金の仕組みはさらに複雑に調整されます。このような場合には、実際に年金事務所へ行っていくら減らされるのか、計算を出してもらったほうがいいでしょう。年金事務所で待たされたりという部分はありますが、その方が間違いは少ないと思います。

 

いわゆる「在職老齢年金」について、税理士の先生にも誤解が多いのは、解説されているものが正確には書かれていても専門用語などを使っているため、わかりづらくなっている点にもあるのではないかと思います。そのため、このブログではできるだけわかりやすく「在職老齢年金」の基本の部分の解説に絞って書いたつもりです。参考にしていただければ幸いです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

免責事項

当ブログで記載されている情報においては、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めています。しかし、誤情報が入り込んだり、情報が古くなったりすることもあります。必ずしも正確性を保証するものではありません。また、合法性や安全性なども保証しません。

当ブログに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。