さて、今日は今年だけの特例、天皇陛下の退位と即位に伴う10連休についてのお話です。
総務・経理の担当者は具体的にどうしたことを事前にしておかなければいけないのでしょうか。
その前に、この10連休を前にして、調査会社の各社がそれぞれ10連休についてのアンケートを取っています。それによると、10連休を休みが取れるかという質問に対し、10連休をきちんと休みが取れると回答した割合は約3割だったそうです。つまり、カレンダー上は休みでも7割の人たちは休めないというわけです。
休めると回答した人の多くは公務員のような公的機関の人のようです。
実際、私の顧問先の治療院や介護事業所などでも10連休をきちんと休みを取るとご回答いただいた会社は今のところ、ありません。実際にはなかなか休めないというのが実態のようです。
さて、この10連休ですが、休める休めないにかかわらず、いろいろと事前に考えておかなければならないことがあります。実際、今、保育園がこの期間、休みになってしまうのに、仕事は休みにならないので、預け先に困る方たちがかなりいらっしゃることが問題になっています。休める休めないにかかわらず、今回は前例のない公的機関の固まった休みとなるため、総務・経理担当者にとってはいくつか気を付けておくべきことがあるというわけです。どんなことが考えられるのか、挙げてみました。
① 4月末が期限の役所への提出書類、納付期限が4月末日のものは5月7日になる
これは、税務などの書類の提出期限が日曜・祝日に当たる場合、次の平日になるという今までのルールから照らしてお分かりいただけるものと思います。現在でも、提出期限や納付期限が日曜・祝日の場合、次の営業日になっています。これからしてお分かりと思います。
役所の提出期限は5/7になるので、ほぼ1週間伸びます。納付期限も同じように、4月末の納付期限のものは5/7になります。
② 社会保険の書類も5月7日になってしまう
たとえば、5月1日付入社の方がいたとします。仮に、5/1が出社であったとしても手続き自体は役所が休みですから、取り扱いは5/7となってしまいます。そうすると、何が問題なのかというと、10連休で休みが重なってしまった分、役所の手続きがしばらくストップしていたため、事務作業が重なっていることから保険証の交付が遅くなるという問題があります。
これについては、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」という書類を資格取得届と同時に出せば、保険証が届くまでその「資格証明書」が保険証の代わりとしてしばらく使えます。とりあえずはこれで代用するしかないでしょう。
また、たとえば4月末付退職の場合、離職票の交付は5/7以降の手続きになってしまいます。これについては、10連休に伴い、やはり手続きが遅くなってしまうことが予想されます。これについては、事前にその方にその旨をお伝えしておくしかないでしょう。
③ 金融機関の営業日も5月7日となってしまう
これは支払いや売上の入金に影響のある話です。要は資金繰りを考える際に、これらを考慮に入れる必要があります。金融機関もすべて10連休中は営業していませんから、4月26日までに銀行の手続きはしておかないといけません。また、通常、月末や月初になる入出金が全て5月7日もしくは4月26日という連休の前後に集中してしまう可能性があります。そうなった場合、通常は資金繰りに問題ない残高が不足するなどの事態が発生しかねません。事前に入金・支払いの資金繰り状況をよく確認したほうがいいでしょう。
④ 年払いの倒産防止共済の支払いは5月7日になってしまう
セーフティ共済(倒産防止共済)を4月中に年払いにしている場合、4月末の引き落としにはなりません。4月決算法人の場合でセーフティ共済を費用処理したい場合、通常は支払い時に損金経理となるため、支払いが5月7日になってしまうと損金処理できないという話になります。ですが、今回は、天皇の退位と即位に伴う特例として、4月末で支払いは終わっていなくても、5月7日に口座引き落としできれば、4月末での「未払金」として経理処理すれば損金算入できることになりました。この話は以前の私のブログを参考にしてみてください。↴
⑤ 10連休と労基法の関係はどうなっているのか
これは以前からご質問をいただくことの多かった論点です。
10連休は休ませないといけないのかというものです。
10連休のうち、まず、4/27は土曜日です。多くの企業では土曜日は「休日」とはなっていないものと思います。「休日」となるかどうかはその会社の就業規則の休日の規定に何と書いてあるかが問題です。「休日」に「日曜日」の他、「祝日」も入っていれば、4/29(昭和の日)、4/30(退位の日(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】 )、5/1(即位の日)、5/2(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】)、5/3(憲法記念日)、5/4(みどりの日)、5/5(こどもの日)、5/6(振替休日)は全て祝日となるため、「休日」扱いとなります。つまり、就業規則の「休日」に「祝日」が入っていれば、10連休とは言わないまでも9連休にはなるわけです。
一方で、就業規則の「休日」に「祝日」がなく、「休日」が「日曜日」だけなのであれば、4/28と5/5だけが「休日」となります。
この「休日」かどうかが問題なのは、時間外給与の算定です。休日労働となれば、平日の時間単価の1.35倍で計算しないといけないわけです。もし仮に、「休日」が「日曜・祝日」となっていて、これらの祝日中に出勤した場合、時間外労働となってしまうわけです。
一方で、1か月単位の変形労働時間制を採用していた場合で、「休日」がたとえば「シフトによる」となっていれば、祝日を休日とせずに取り扱うことが可能です。
今回は10連休という特殊な事情があったわけですが、たとえば治療院や介護事業所などの業種では、そもそも1か月単位の変形労働時間制を導入しておいた方が会社側は運用がやりやすいはずです。
会社側の考え方が優先されているようですが、冒頭のアンケートを振り返ってみてください。10連休をきちんと休めるとしているのは約3割です。ほとんどの企業が10連休の休みは取れないわけです。今回のような事態を想定して、従業員さんとの話し合いの上で、就業規則を変えることも検討したほうがいいでしょう。
ただ、就業規則は急には変えられないです。もし「休日」に「祝日」が入っていて、休みが取れない場合、たとえば、「4/30~5/2は出勤してほしい。その代わりに○○○の3日間を休みにしてほしい」というような形にする、いわゆる「代休」という形にすれば、休日の割増賃金の支払いの必要はないです。「代休」を成立させるには、事前に振替を認めてもらうことが必要なわけです。事後に振替をいっても「代休」は認められません。事後に言った場合、休日労働となってしまいますから注意が必要です。
⑥ 連休明けの役所への提出書類は「令和」になる
連休前は「平成」で、連休明けは「令和」になっています。特に、役所関係の書類はすべて「平成」から「令和」に変更になります。これは結構、手間な話です、会計ソフトや給与ソフトなどはこれらのソフトを扱うベンダーさんが対応してくれるのでしょうが、これ以外の様々な書類はすべて直して使用する必要があります。連休前に様々な書類をチェックしておく必要があるでしょう。
まだ他にもあるかもしれませんが、役所の手続きや金融機関の手続きを中心に考えると、上記のようなことが想定されます。10連休が休めるか休めないかにかかわらず、上記のようなことを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。