さて、今日は最新判例に基づいた話です。
中小企業が損金に算入できる交際費の範囲についての話です。
現行の制度では、法人が支出した交際費のうち「接待飲食費」の50%相当額を超えない範囲で損金算入が認められ、また中小法人の場合、50%損金算入をしない場合には支出した交際費等の額が定額控除限度額(年800万円)を超えない部分については損金算入できるとされています。
さて、上記の現状の取り扱いを頭に置きながらの話です。
「法人が支出した飲食代」というのはどこまでが損金算入できるのかという部分の話です。令和5年5月12日の東京地裁での最新判例を踏まえたもので裁判所が考える基準を確認していきたいと思います。
まず、裁判所は交際費に計上される「飲食代」の基準についてどのように考えているのでしょうか。これは次のように示しています。
「法人が支出した飲食等の代金が交際費等に該当するといえるためには、当該支出にかかる飲食等の日時が特定されていることを前提に、当該支出の相手方が事業に関係のある者等であること、当該支出の目的が相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることにあること、当該支出の態様が租税特別措置法61条の4第4項に規定する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることを要するというべきである」
そして次のように示しています。
「原告らにおいて、本件各支出が原告らの業務との関連で支出された交際費等に該当するものであることを立証することを要する」
業務とどういう関係があって支出したのかは納税者側が立証しないといけないものだといっています。
さて、これをもとに、具体的にどのような判断がされたのか、見ていきましょう。
まず、認められた関係者というのをみていきます。
A氏はこの会社の代表者のほか複数の企業の広告作成業務に関与して、互いに仕事を受注しあう関係にあったということです。このA氏との飲食代は「交際費」と認められています。
また、B氏は飲食店の内装などのデザインをしており、この会社の代表者からも自社のロゴや名刺のデザインを依頼しているなどの関係にありました。このB氏との飲食代も「交際費」と認定されています。
一方で、認められなかったのはどういう関係の人たちだったのでしょうか。
C氏とは業務との直接的な関連性はなく、広くC氏の経営する飲食店で様々な経営者との交流を通じて人材を広げるという目的があって支出した飲食代という「交際費」でした。これは裁判所は認めませんでした。
D氏は飲食を共にする仲間であったのですが、CDやDVD作成を依頼したとする陳述があったのですが、それらを示す具体的な証拠がありませんでした。
C氏・D氏のように単に「人脈を広げる」とか、仕事を依頼したといっても「具体的な証拠がない」ようなものは認められていません。
つまり、「業務の関連性」をどこまで説明できるかで「交際費」と認められるか否かが判断されているというわけです。また、同時に、国側が「A氏・B氏との飲食についても、プライベートで飲食したもので、業務との関連性が立証されていない」と主張していましたが、裁判所は「明確に業務との関連性のないプライベートとして行ったものでない限りは、これにより親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために必要なものであったということができ、明確にプライベートなものとして行ったものであることをうかがわせる証拠はない」として国側の主張を退けています。
ここから読み取れるのは、「実際に仕事を依頼する(される)関係にあれば『交際費』として経費計上が認められるが、「人脈を広げるためというような具体的な業務の関連性が説明できないものは『交際費』ではない」という基準です。
飲食代の経費計上については、古くからどのような線引きになっているのか、言われることです。今回の判例はそれをある程度、範囲がわかるように判事しており、参考になる事例かと思います。
以上、今日は交際費の話でした。