ブログの更新が久しぶりとなりましたが、今日は経営者の皆様にどうしてもお伝えしないといけないと思い、久しぶりに書きます。テーマは「税制改正」。退職金課税の話です。
政府の「新しい資本主義実現会議」というのが5月16日に開催されました。その中で「退職所得控除額」について、次のような言及がありました。
「退職所得課税については、勤続 20 年を境に、勤続1年あたりの控除額が 40 万円から 70 万 円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘 がある。制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。」
ここに書いてある通り、現状では20年までの勤務の場合、勤続1年あたり40万円である退職所得控除が21年目以降は70万円と増額されます。つまり、現状の税制は勤続年数が長ければ長いほど、税金が少なくなるような制度設計がされています。そのために、在籍し続けるインセンティブを税制が与えてしまっているということです。一言でいえば「人材の流動化」を目指した税制改正ということです。そこで、改正後の制度は退職所得控除額を勤続年数にかかわらず、1年〇万円と一律にしようとする改正が検討されているわけです。
では、退職所得控除額がいくらにされるのかということです。今のところ20年までの40万円と20年超の70万円という間を取って50万円とか55万円というのが検討されているという話です。勤続年数にかかわらず1年につき50万円もしくは55万円の控除とする改正案です。この改正は、来年、令和6年の税制改正で取り上げられることが検討されています。
なお、退職金の計算の際には「(退職金額-退職所得控除額)×1/2」となっていて、退職所得控除額を引いた後の金額を2分の1にして計算するのですが、この2分の1される現行の制度は維持されるということです。
さて、この改正で考えないといけないのは、たとえば生命保険の解約返戻金を使った形で長期に社長などの経営者に対して退職金を支給することを前提にプランニングしていたようなケースです。これらのケースでは、この退職所得控除額の改正が全体のスキームにどの程度の影響があるかを今一度、検証する必要があるでしょう。生命保険を使ったスキームは長期にわたって節税を考えたような設計になっているはずですから、全体のスキームにどの程度影響があるのか、今一度、検証してみてください。
また、これからこのような制度設計を考えるような場合についても、現行の制度だけではなく、改正の方向性を踏まえた退職金スキームを検討した方がいいでしょう。退職所得控除額が50万もしくは55万円になるというのを見越して退職金制度を考えていく必要もあろうかと思います。
ということで、今日は退職金課税の税制改正の話でした。