今日は最近読んだ本の紹介です。
「金融排除」(幻冬舎、橋本卓典著)です。
「金融排除」という言葉をご存知でしょうか。
銀行からお金を借りるとき、「保証」や「担保」が重視されます。それ自体は仕方のないところなのですが、要は、今の金融機関は過度に「保証」や「担保」に頼りすぎているという話です。その結果、その事業の可能性などの事業の中身を見て判断する「目利き」ができなくなってしまっているのではないか、とこの本の著者は訴えています。「金融排除」というのは、金融機関の担当者にその事業の「目利き」の力があれば融資の判断できる案件も、「保証」や「担保」がないために融資できないということを指して言っています。
私も顧問先で、こうした「金融排除」と思われる場面に直面することがよくあります。
確かに過去の決算書はよくない会社が直近の試算表では数字が上がっていたり、あるいは新規事業を立ち上げしようとしていたり、そういう場面がよくあります。銀行に私も一緒にお伺いして説明したりするのですが、過去の決算書だったり、「保証」や「担保」が十分でなかったりすると、融資が通らない、もしくは、融資希望額に届かない金額を提示されたりということはよくあります。
その事業の可能性をいくら説明しても取り合ってもらえない。これはまさに「金融排除」です。
もっとも、その事業の可能性が客観的に見ても難しいケースもあるでしょう。見積もりが甘いとか、そもそも採算がとれる事業ではないといったことです。
それは事業計画そのものを見直す必要があり、それで融資できないというのはわかります。しかし、そうではなく、事業としての可能性があっても、過去の財務情報である「決算書」やいざ失敗した場合の回収方法である「担保」や「保証」がないという理由は、納得できるものではありません。
また、この本では、信金や信組の役割についても書かれています。
『本来、信金や信組はその成り立ちからしても地域への貢献を求められている組織であり、そのために法人税も軽減されている。それが、銀行と同じように利益を求める組織になってしまっては存在意義が疑われる。』
こうした「金融排除」の実態について、中小企業と一番考えてそれを正していく立場にいるのが我々税理士であると思います。
「金融排除」の実態に対して、中小企業と一緒に折衝し、対応できる金融機関を探していく。「金融排除」の実態に、中小企業とともに一緒に立ち向かうことは、税理士に託された役割だと思います。
というのも、税理士であれば「経営支援機関」という登録ができます。税理士が銀行と中小企業の間に入って、経営再建の道筋を立てる役割を期待されてこのような制度ができました。私も昨年10月に「経営支援機関」として登録しました。ところが、残念ながら税理士業界全体としては、なかなかこの「経営支援機関」の制度が機能していないのが実態です。私は、今年はより積極的にこの「経営支援機関」としての役割を果たしていこうと思っています。
「金融排除」と思われる経験をしたことのある経営者の皆様。
私も一緒に取り組みますので、一緒によりよい経営環境を作っていきましょう!