オリンピックが終わりました。
日本はメダル41個と過去のオリンピックで最多の数だったそうです。
しかし、私はメダル云々は、関心がまったくないわけでもないですが、「誰それがメダルを取った。」「〇〇が金メダルを逃した」なんていう話は、こういっては何ですが、それほど重要ではないと思っています。
もちろん、当事者の皆さんには大変重要なことですし、社会的な関心の高いことで一般的な話題にもなりやすいという意味でも重要ではあります。ですが、私はこんな風に考えています。
メダルというのは結果にすぎません。終わった瞬間に過去の栄光になってしまう。それがメダルだと思うんです。もう一つは、スポーツというのがそれ自体、勝っても負けてもそれぞれにドラマがあり、結果自体よりもそこに至るまでの過程がうまくいっても上手くいかなくても大変意味があることだということです。
特に、後者の点からスポーツの事象と経営を重ねてみる経営者は非常に多いと思います。
ということで、このリオデジャネイロオリンピックでも、私は経営者的な視点からとても興味深いことが多いと感じました。その辺を、何回かにわたって書いていこうと思います。
さて、まずは、シンクロナイズドスイミングです。
私が関心を持ったのは、実はシンクロ自体ではありません。
8月21日の読売新聞にかつてのシンクロの日本代表、小谷未可子さんが記事を書いています。これがとても心を打つ、感動的な記事だったのでご紹介いたします。
ネットで検索できないか探したのですが、なかったので以下に内容を要約してみました。
「シンクロのチームは出場できるのは8名ですが、オリンピックの選手として選ばれるのは9名です。9人目の選手に林愛子さんという選手がいます。彼女は試合には出られません。出られないことはわかっていてもレギュラーの選手と同じきつい練習メニューをこなさなければいけません。レギュラーとして試合に出られるわけでもないわけですからきっとやる気の起きない時期もあったはずです。自分(小谷さん自身)も選手だったころ、レギュラーには選ばれずにビデオ係を命じられたことがありました。本番の競技には出られないのにきつい練習はしないといけないというのが精神的に大変つらかった。だからその気持ちはよくわかります。ですが、それは後に引退してから年齢を重ねるにつれてそういうつらい思いが役立つことが多かったです。林選手も同じです。そもそも一部の脚光を浴びる選手だけのために五輪はあるわけではないのです。ちなみに、シンクロの場合、最後メダル授与式には、9人目の選手も出席してメダルをもらえることになっています。彼女は端から二番目に立って正選手と並んでメダルを授与してもらいました。彼女は涙を流していましたが、この思いがきっと彼女を成長させてくれることと思います。」
まったくそうだと思うのが、レギュラーでなかった方が後に役立つことが多いという点です。実は、私もかつて野球をやっていましたが、レギュラーではありませんでした。控え選手だったり、マネージャーだったり、そういう目立たないポジションにいる人は、レギュラー選手以上に精神的につらいはずです。レギュラー選手と同じようにつらい思いやしんどい思いをしているにもかかわらず、それが評価されないことが多いためです。人から評価されないのは人が最も精神的につらいと感じることです。ですが、そういう経験は、逆に人を育てます。一つに、活躍している人の裏に目立たない人の存在があることを知っているので、必ず意識します。そして、裏方の人の気持ちが良く理解できます。なにより、裏方でやってきたことがその人自身を精神的に強くしています。
どうしても活躍した人、成功した人に目が行きがちです。オリンピックであればメダルを取った人に目が行きがちです。ですが、実はその背後につらい思いやしんどい思いをした人が必ずいます。そういう経験をした人こそ、私が思うに後に、大きく伸びていると思うんです。
ちなみに、これは統計を取ったわけではないので、実際のところはわかりませんが、私が今まで多くの経営者と会った感じからして、経営者として成功している人には、学生のころ部活で補欠だったりする人が多いように感じます。この点は小谷さんのコラムとも通じるところではないかと私は思っています。