今日はNHKの朝ドラの話です。「とと姉ちゃん」です。
主人公の小橋常子は出版社の社長です。モデルになっている人物は「暮らしの手帖」の大橋鎭子です。
朝ドラは私はずっと見ているのですが、時折、経営者が学ぶべき姿勢のようなものを垣間見ることができます。ちょっとそのエピソードについて書いてみようと思います。
出版社を起業した常子でしたが、なかなか軌道に乗りません。そこで、雑誌に広告を載せることを検討し始めます。折しも、戦後すぐの状況で西洋料理が普及し始めたころで、料理学校が流行っていました。雑誌の読者層の重なる料理学校に営業をして広告を載せてもらうことを考えます。
しかし、編集長である花山伊佐治は強硬にこれに反対します。「雑誌に広告を載せたら広告主の意向に沿った形でしか雑誌を作れなくなる」というのがその理由でした。
広告を載せれば「一般庶民の、そして女性にとって役に立つ雑誌」というコンセプトがぶれる。これも一理あります。
しかし、広告が取れれば資金繰りが楽になります。 簡単にいえば、 「お金」を取るか、「理念」「理想」を取るか。そういう話です。
このような状況は経営にはよくあることだと思います。
結局、社長である常子は、常子の責任において、広告を取ることを優先します。広告主には「雑誌には口を出さない」条件を付け、花山の許可を得ずに社長である常子の独断で広告を載せます。一方で、それをきっかけに編集長だった花山は雑誌社を離れます。
しかし、広告を取ったことで資金繰りの状況は何とか改善します。ですが、それもつかの間の話で、すぐに資金繰り的に窮地に追い込まれます。そこへ、広告を載せた会社から雑誌の編集に口を挟まれることになり、広告の掲載を再びしないことを決断します。こうした状況の中、結局、紆余曲折あって花山を再び雑誌社に呼び寄せます。そして、雑誌社は再び息を吹き返します。
おおよそ、こんな話ですが、ここで経営者的にタメになると思うのが、編集長の花山が反対してもいったん、広告を載せることを決断したことです。のちに常子は「あそこで広告を載せなかったら今頃、雑誌社は倒産していた」と話をしています。
「お金」か「理念」か?こういう究極的な場面において、私は正解はないと思います。ただ、何を大事にするのか、それを社長自身が貫き通せるかが、問題なんだと思います。
ですので、決して「お金を取るのが正解」なわけでも、「理念を貫き通すのが正解」なわけでもないと思うんです。
常子は「雑誌社が存続することを優先して考えて決断した」というような趣旨のことを言っています。「会社を続けること」これが、常子が一番大事にしたことです。ですので、「理念」を大事にしたほうが会社が存続すると判断していれば、理念を取ったはずです。仮に編集長の花山を欺く結果になったとしてもこの時の状況が資金繰りを優先すべきだと経営者として判断したわけです。
さらに言えば、その決断は間違っていなかった、と言っています。社長である私がその時、もっとも最善の方法を選択したんだと言い切っています。ここが大事なんですね。違う選択をしていたらどうなったかなんて誰にも分りません。ですが、社長が自分自身で判断したことは間違っていなかったと後に言い切れるところが、経営者には大変重要なんです。
「れば」「たら」は経営には不要です。その時その時に真剣に考えて決断して、それを後悔しない。それこそが経営者の姿勢だと学ばされる朝ドラの一場面でした。