私の顧問先にも「平成29年度から住民税の特別徴収が義務化されました!」というリーフレットが送られてきています。これに関しても、よく質問が出てきます。
まず、住民税の徴収方法には二種類あります。
一つは、普通徴収というものです。これは、年4回(原則として6月、8月、10月、1月)にわけて住民税を支払います。
もう一つが、特別徴収です。これは、住民税の金額を12で割って、毎月、給与から天引きして天引きした会社が住民税を代わりに納付するやり方です。
たとえば、個人事業主は必然的に住民税は普通徴収になります。特別徴収されるのは収入が給与の人です。収入が給与の人には、会社の社長さんも含まれます。役員報酬という給与収入になるためです。
平成29年度、つまり、来年の6月支払いの住民税から原則としては、住民税は会社が天引きし、従業員に変わって会社が納付することが義務化されます。
今は、従業員の住民税を従業員自身に任せている会社さん、来年からはきちんと会社で天引きしないといけませんので注意が必要です。
ところで、住民税を特別徴収しなくていい場合もあります。次のような場合です。
- A総従業員数(下記B~Fに該当する従業員数を除く)2人以下の事業所
- B他の事業所で特別徴収されている者(乙欄該当者)
- C給与が少なく税額が引けない者(住民税非課税の場合など)
- D給与が毎月支払われていない者
- E事業専従者(個人事業主のみ対象)
- F退職者又退職予定者(5月末日まで)
上記に該当する場合には、給与支払報告書(従業員さんの源泉徴収票)を来年の1月に各市区町村へ提出する際に「普通徴収切換理由書」というのを添付しないといけません。
上記に該当する場合には、この理由書の添付が必要ということも忘れてはいけません。ちなみに、この「普通徴収切換理由書」は関東近県には共通様式がありますのでご注意を。
ところで、なぜ住民税の徴収が特別徴収となってしまうのでしょうか。
一番の理由は、住民税の徴収強化だと言われています。普通徴収で個人個人が納付するやり方よりも、会社が給与から天引きしたほうが住民税を確実に徴収できるということです。つまり、普通徴収の場合、納付率が低くなるということが背景にあるようです。
また、そもそも法律上は、住民税については、特別徴収は以前から義務化されていたとも言えます。住民税について規定している地方税法では、「市町村は、原則として所得税の源泉徴収義務がある事業者を個人住民税の特別徴収義務者として指定しなければならない」と規定しており、そもそも会社が天引きして住民税を納めることが義務化されていました。ただ、実際には各市区町村は「事務手続きが煩雑になる」というような中小企業側からの要望を受け入れて、普通徴収を申し出た場合には受け付けていたというところです。言ってみれば、今回、特別徴収が義務化されるのは、法律通りにきちんとやるようにしただけの話と言ってもいいわけです。
また、経営者の皆さんからよくある質問としてはこのようなものがあります。
「うちはパートやアルバイトしかいないけど、特別徴収しなければいけないの?」というようなものです。これはパートやアルバイトであっても適用されます。たとえパートアルバイトであってもすべての従業員さんが原則、特別徴収になります。
また、 「特別徴収は事務手続きが面倒だからやりたくない。拒否したらどうなるの?」というのもあります。特別徴収は義務化されますので、会社がやりたくないと言っても適用されます。所得税を源泉徴収するのが会社の義務であることと同じです。住民税を特別徴収しなければ、会社が地方税法違反となってしまい、場合によっては滞納処分の対象になってしまいます。
それから、毎月、住民税の納付事務をするのが大変だという会社さんもあると思います。
その場合には、源泉所得税の納期の特例のような制度(納期の特例制度)が住民税にもありますのでそれを活用したらどうかと思います。
従業員の数が10人未満の会社の場合、6月から11月までの住民税は12月10日までに納付し、12月から翌年5月までの住民税は6月10日までに納付します。
納付の期間が源泉所得税と異なりますのでその点は要注意です。
なお、この住民税の納期の特例は、従業員さんの市区町村ごとに提出しないといけませんからその点も注意してください。
今まで、住民税は従業員個人に普通徴収してもらっていた会社も多いと思います。事務負担が増える!とお思いの経営者の方も多いでしょうが、その場合には納期の特例制度なども活用していきましょう。従業員さんとしては納付の手間が省けるわけです。従業員さんのためにも特別徴収を進めていくようにしましょう!
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