小学校等の休業のために休暇制度を導入した事業者もしくはこれから導入しようと検討している事業者の皆様、ご存じでしょうか。助成金を受けられる可能性があります。今日はその話です。
両立支援助成金という助成金の中の「育児休業等支援コース」に特例として設けられたのが、「新型コロナウィルス感染症対応特例」です。
まず、大前提の確認ですが、この制度は厚生労働省の助成金です。ですから、要件に該当すれば受給できます。
この助成金は、新型コロナウイルス感染症への対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を行う労働者に対し、有給の休暇、つまり、休んだ期間の給与を全額支給した場合に対象となるものです。休んだ休暇が労働基準法上の年次有給休暇であった場合にはを除かれます。この小学校等の臨時休業に伴う有給休暇制度を作った事業主に対して支給されるというのが今回の助成金の趣旨です。
この助成金の要件は次の二つがあります。
まず、一つ目は次の(イ)と(ロ)のどちらも実施されていることが必要とされています。
(イ)小学校等(小学校、保育園、幼稚園など)が臨時休業等になった場合、及び子どもが新型コロナウイルス感染症に感染した又はその恐れがある等の場合に、子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を取得できる制度を規定化していること。
(ロ)小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みとして、次のいずれかの制度の社内周知を実施していること。
・テレワーク勤務
・短時間勤務制度
・フレックスタイムの制度
・始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
・ベビーシッター費用補助制度等
そして、二つ目の要件が、労働者一人について、上記の(イ)に定めた特別有給休暇を4時間以上取得することです。
さて、この助成金、では実際にいくらもらえるのかです。
助成金の受給額は1人当たり5万円で、1事業所あたり10名まで上限50万円となっています。
さて、では実際、この助成金を受給したい場合、いつまでに届け出しなければいけないのでしょうか。申請期限は特別有給休暇を取得した日付によって異なります。
次のようになっています。
特別有給休暇を取得した日 | 申請期間 |
令和3年4月1日~令和3年6月30日 | 令和3年4月1日~令和3年8月31日 |
令和3年7月1日~令和3年9月30日 | 令和3年7月1日~令和3年11月30日 |
令和3年10月1日~令和3年12月31日 | 令和3年10月1日~令和4年2月28日 |
令和4年1月1日~令和4年3月31日 | 令和4年1月1日~令和4年5月31日 |
現在申請できるのは、7月1日~9月30日の間に小学校等の休業に伴う有給の休暇(労基法上の年次有給休暇以外の有給休暇)を取得した者がいた場合となっています。
さて、上記が概要ですが、では、実際の細かい論点を見ていきましょう。
まず、学校等が臨時休業等を行ったことの確認資料とは、どのようなものをいうのでしょうか。
これについてはQ&Aに次のように書かれています。
「学校等が保護者宛に通知する文書、保護者宛に臨時休校のお知らせとして送信された電子メール、学校等がホームページに休校情報を掲載している場合は当該ページなどが該当する。」
休業のお知らせの文書は大事に取っておいていただく必要があります。
また、小学校等の休業に伴う有給休暇制度は就業規則等に明示する必要があります。ただし、常時使用する労働者が10人未満の場合には就業規則の提出義務がありません。このような場合には、書面について全労働者へメール送信、回覧、掲示、配布等により周知した場合、日付があるもの(メール送信、回覧の場合は全労働者に送信・回覧(回覧の確認がある等)されたことが確認できるもの、社内に掲示した場合は社内に掲示していることが客観的に分かる写真等、周知したことが実質的に分かるもの)や労働者代表の氏名及び周知日が確認できる申立書等が必要とされています。
また、通算して特別有給休暇を4時間以上取得した場合に対象となるため、たとえば次のように分割して取得しても累計で4時間以上になっていれば対象者とすることができます。
計算例:
4/14 1時間取得
4/15 1時間30分取得
4/16 1時間取得
4/17 30分取得←取得合計4時間となり支給対象となる。
また、このような場合、対象労働者としてカウントできるのは累計で4時間に達したときとなります。
それから、Q&Aには次のようなものもあります。
年次有給休暇や欠勤を、事後的に特別有給休暇に振り替えた場合は対象になるか |
本特例においては対象になる。なお、年次有給休暇を事後的に特別有給休暇に振り替える場合には、労働者本人に説明し、同意を得ることが必要。
最初は小学校等の休業に伴う有給休暇制度がなくても、あとから作って、さかのぼって小学校等の休業に伴う有給としても対象になると言っています。
これから、小学校等の休業に伴う有給制度を作っていこうとしている事業主の方はそれでも対象になりますので、その点も考慮に入れましょう。
コロナ禍でお子さんがお休みになってしまうため、休業を余儀なくされる方も多いと思います。そうした従業員さんに新たな休暇制度を設けると事業主にはこうしたメリットもあります。この際、ぜひ、検討してみてはいかがかと思います。