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さて、今日は近年、話題に上ることの多い副業・兼業という話です。私の顧問先の中小企業でも副業・兼業を認める形の就業規則に変えるという話も出ることがあります。どちらかというと経営者側の思惑というより、従業員さん側からの要望という側面が強いようです。

今回と次回の二回にわたって、この副業について、考えてみたいと思います。

今日は「そもそも会社は副業を認めないといけないのか」という話です。

厚生労働省の調査によると、副業を希望する雇用者の割合は2017年のデータで全雇用者の6.5%にのぼっており年々増加傾向にあります。

一方で、副業を就業規則等で認めている企業は全体の1割程度で、副業を認めないとする企業の割合が75%と4分の3に上っています。

このように、雇用者側の要望があっても企業側が認めないケースが多いというのが実態のようです。

しかし、私の顧問先の介護施設でも複数の事業所で働く介護職員も多々います。とりわけ訪問介護では副業しているのが当たり前のような職場環境です。介護現場をはじめとして、様々な職場で現実としては副業をしている人の割合は増えているというのが私の実感でもあります。そのため、多くの中小企業でも少なからずこうした状況に対応し、今後は副業を認める方向で検討しないといけなくなるであろうと思われます。

また、過去の裁判例を踏まえても、副業を認める方向で検討しないといけないようです。

たとえば、ある大学の教授が大学に無許可で語学学校の講師の業務に従事し、そのために大学の講義を休校したことが懲解雇にあたるとした事件では、「兼職は・・・職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就業については、兼職を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しない」(平成20年12月5日東京地裁)としていたり、運送会社の運転手が年に1、2回程度の貨物運送のアルバイトをしたことを理由にした解雇に対して、「本件アルバイト行為の回数が年に1、2回の程度の限りで認められているに過ぎないこと・・・職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない」(平成13年6月5日東京地裁)といった判決からしても、仮に就業規則で副業を禁止したとしても、会社の通常業務に大きな影響がなければ結果としては認められるとされているのです。

一方で、毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由として解雇したことが認められた事例(昭和57年11月19日東京地裁)や会社の管理職にある従業員が協業他社の取締役に就任していたことが懲戒解雇事由にあたるため解雇は有効とした事例(昭和47年4月28日名古屋地裁)もあり、要するに、本業に悪い影響が出るような副業や会社の経営を脅かす事態になりかねないような就業(他社の取締役になるなど)は認められないという判断がされているようです。

逆に言えば、こうした本業や会社に大きな影響があるような副業でなければ認める方向というのが今の労働法の立場であるようです。

では、仮に会社が副業を認めることにした場合、どういった制度設計にすべきなのでしょうか?たとえば、本人からの申告を前提として認めるといった制度にしたらいいのでしょうか。また、社会保険や雇用保険はどういう扱いになるのでしょうか。あるいは、時間外労働はどう管理すべきなのでしょうか。その際の割増賃金の支払いはどうすべきなのでしょうか。こういった実務的な部分をどうしたらいいのかという問題があるわけです。

その副業を認めた場合の具体的な実務対応について、次回、見ていきたいと思います。


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