この7月1日からすでに施行されているのですが、サラリーマンとして働いていた者が退職して事業を開始した場合、事業等を行っている期間を最大3年間受給期間に算入しない特例が新設されました。脱サラして事業を始める人は必見です。今日はこの制度を見ていきましょう。
いわゆる失業保険(雇用保険の基本給付)を受給するには、離職した日の翌日から1年以内が受給期間となっています。病気だったり、あるいは、妊娠・出産等で30日以上仕事に就くことができない状態の場合には、ハローワークに行って一定の手続きを取ると、この1年以内という受給期間が延長される措置がありますが、原則は退職してから1年以内に受給しないといわゆる失業保険の受給権は消滅します。
病気や妊娠・出産のときのように受給期間1年という期間を延長できるという措置が、事業を始める方も取れるようになったわけです。
事業を始めてその事業がうまくいくのかはわかりません。これまではそうした不安定な状況であっても雇用保険は離職日の翌日から1年以内で受給できなくなるため、雇用保険を受け取るのはあきらめるのが通例だったと思います。
それが、今年の7月1日以降、事業を始めた方はとりあえずハローワークに「受給期間の延長」を出しておいて、仮にその事業を休廃業した場合、その後の再就職活動期間について、いわゆる失業給付をうけることができるようになったわけです。
これは、事業を始める人にとって朗報です。
私も経験上、よくわかりますが、事業を始める方にとっては事業がうまく軌道に乗るのかどうかはわかりません。大きな不安を抱えながら始めるわけです。仮に、事業を始めて3年以内でうまくいかなければ、雇用保険をもらいながら再就職活動ができるようになるわけですから、使わない手はありません。
脱サラして事業を始める方は、まずはハローワークで「受給期間の延長」の届け出を出しておいて事業を始めることがこれからは必須になるといえます。
さて、この特例を使うための要件がどうなっているかです。
- 事業の実施期間が30日以上であること
- 「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから30日を経過した日が受給期間の末日以前であること
- 当該事業について、就業手当・再就職手当を受給していないこと
- 次のいずれかの事業に該当すること
・雇用保険被保険者資格を取得する者を雇い入れる適用事業所であること
・登記簿謄本、税務署への開業届、事業許可証などで事業の所在と場所が確認できる事業であること
- 離職日の翌日以後に事業を開始したこと
申請期限は事業の開始から2か月以内となっています。
開業届を出す場合、同時に青色申告の届け出を出すはずです。これは2か月以内ですから、青色申告の届け出や開業届を出すのと同時に、ハローワークに受給期間の延長の届け出を出すと認識していればいいのだろうと思います。
手続きには以下の3つの書類が必要となります。
〇受給期間延長申請書
〇以下のいずれか一方
・受給資格の決定を受けていない場合 → 離職票-2
・受給資格の決定を受けている場合 → 受給資格者証
〇事業を開始等した事実のわかる書類
<事業を開始した場合>
・法人の登記簿謄本
・税務署への開業届
・事業許可証
<事業の準備に専念し始めた場合>
・金融機関との金銭消費契約
・賃貸借契約書 など
なお、提出先は、住所地管轄のハローワークとなります。
この届け出によって、受給期間が本来の受給期間1年間に起業から休廃業まで最大3年間まで延長が可能となります。前述の通り、忘れずに届け出した方がいいでしょう。
ということで、今日は退職後の雇用保険の受給期間の特例という話でした。