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さて、今日はよくある質問です。個人事業をやっている方で、ご自宅の電話代や携帯電話代などの経費はどこまで認められるのでしょうか?

こうした質問は主に個人事業主の方から受けることが多いです。結論が聞きたいのでズバリ「自宅の電話代は何%だったら大丈夫」といった聞かれ方をすることもあります。 ですが、税務署側にも判断する際の基準があります。今日は実際の裁判例を引き合いに、税務署はどういう基準でどう判断しているのか、という話をしていきたいと思います。

その前に、基本的な部分の話からです。 支出のうちに生活費の部分が含まれているものを「家事費」とか「家事関連費」といった呼び方をします。 「家事費」というのは必要経費には算入できない生活費です。自宅の家賃や毎日の食費などが「家事費」です。「家事費」はどう頑張っても、必要経費には算入できないものです。 これに対して、「家事関連費」というのは、生活費の部分と事業に関連する部分が混ざっているものです。これは、一部が必要経費に算入できます。 この「家事関連費」に関して、国税庁のHPには次のように書かれていますので、以下にそのまま引用します。

個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。  

(例)交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費  

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

「家事関連費」については、生活費の部分と業務の部分とで明確に分けられれば必要経費にしていいと言っているわけです。 さて、これを前提にしてある裁判例を見ていきましょう。 この裁判例は、夫が妻と共同で保険代理店をやっていたというケースです。問題になったのは次のような経費です。

・自宅の家賃

・自宅の水道光熱費

・長男の義務教育にかかる費用

・長男に係る弁護士費用

・仕事用品の雑費とする一部費用

裁判では、まず、前提として、家事関連費のうち必要経費と認められるのは ①業務の遂行上必要であること ②その必要な部分が明確に区分されていること この二点である

と、改めて確認したうえで、上記の費用を次のように判断しています。

・自宅の家賃

「『1階部分の利用実績表』と題する手帳によれば、妻と共同で、顧客を招いてセミナー等を開催していたことが認められる。しかし、居住の用に供されるのは3LDKの2階建て住宅全体であり、居住用部分と事業用部分を明確に区分できる状態にないことは明らかである。そのため、必要経費にならない」

・自宅の水道光熱費

「本件住宅のうち、本件住宅のうち各業務のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はなく、リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかでないことから、必要経費に算入することはできない」 ・長男の義務教育にかかる費用 「長男は、PTSDに罹患していると診断されていることが認められ、小学校に通学することができなかった期間があることが推認されるものの、これらの事実関係のみからは、義務教育代行費用(教育費用)と各業務との関連性が明らかではない。原告は、教育費用を支払わなければ原告は売上げを確保することができなかった旨主張するが、教育費用の支出について客観的な必要性を根拠付けるものとはいえない。」

・長男に係る弁護士費用

「一般に、事業を行う者が、事業所得による収益の補填を目的として、事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には、その費用は、総収入金額を得るために直接要した費用ということができるから、その金額は必要経費に算入することができるというべきである。 本件弁護士費用(原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関してD市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用)は、長男の訴訟にかかわることで、各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金であり、原告と妻は、各業務に関する必要経費を原告名義及び妻名義で支払っていることから、本件弁護士費用の2分の1に相当する金額については、原告の必要経費と認めるのが相当である。」

・仕事用品の雑費とする一部費用

「 本件雑費で購入した服飾品等は、各業務の遂行上、客観的に必要であるとは認め難く、本件雑費を必要経費に算入することはできない。」

この裁判例からわかるのは、まず、 自宅家賃や水道光熱費を家事関連費として経費に計上するには「その必要な部分が明確に区分されていること」が大事である ということです。たとえば、自宅の家賃の一部を経費に計上したいのであれば、どの部屋が仕事部屋なのか、その部屋は全体の㎡数のうちの何㎡なのか、というのを明確にしないとダメだということです。 水道光熱費についても、業務で使っている部屋が特定されて業務上の使用割合がはっきりわからないから「家事関連費」で必要経費になる要件を満たしていないと言っているわけで、逆にいえば、明確に区別できるのであれば必要経費にできると解釈できるでしょう。 水道光熱費を家事関連費として経費に計上するにしても、どの部屋が業務で使っている部屋なのかをまずは特定することが大事なわけです。 弁護士費用についても、一見、長男に係る弁護士費用なので経費とは関係なさそうではあるのですが、収入が減ったために提起した損害賠償訴訟は「収入を得るために直接要した費用」であるとして必要経費にしていいと判断されています。この部分の解釈も注目点です。 また、必要経費にしていいのは2分の1としたのも面白い点です。「原告と妻で弁護士費用を払っている」ので、夫の方を必要経費に算入したと考えているのか、それとも、夫と妻で支出した全体の金額の約半分が事業にかかわりがあると判断したのかは判然としません。 (おそらく夫と妻で弁護士費用を支払っているので、夫の方は事業にかかわりがあると考えて2分の1と判断したのではないかと思いますが) ですが、「収入が減った原因になった事実」とかかわりがあると判断されれば必要経費にできると判断されている点は注目点です。

最後に、服飾品は業務との関連性が少ないとみて必要経費とみなされなかったという点も付け加えてみておきましょう。

いずれにしても共通して言えるのは、「業務に関連がある」というだけでは経費計上できないということです。特に「家事関連費」になる場合には、どの部分が業務でどの部分が業務でないのか、というのが「明確に区分」されていることが重要だという点をよく理解しておきましょう。

ということで、今日は「家事関連費」のお話でした。


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