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久しぶりのブログの更新になりました。

今日はここ最近の裁判事例を引き合いに、非正規雇用の賃金のお話をしたいと思います。

 

一つは、大阪高裁の平成31年2月15日の判決です。

学校法人・大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)のアルバイト職員だった50代の女性が、正職員との待遇格差は違法として、法人に約1270万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は15日、請求を退けた1審・大阪地裁判決を取り消し、約110万円の支払いを命じた。」(毎日新聞引用)

 

正社員に賞与を支払う一方で、アルバイト職員に賞与を支払っていないのは違法とした画期的な判決です。

 

もう一つは、契約社員へ退職金が支払われないのは違法であるとした平成31年2月20日の東京高裁の判決です。

東京メトロの売店で勤務していた契約社員が、正社員と同じように働いていたのに、賃金や手当に差があるのは不当だと訴えた裁判で、東京高等裁判所は、退職金などで不合理な格差があると認め、会社に対し支払いを命じる判決を言い渡しました。弁護士によりますと、正社員との格差をめぐって退職金の支払いを命じた判決は初めてだということです。」(NHKニュースより引用)

 

いずれも労働契約法第20条をめぐる判決です。

では、労働契約法第20条はどのように書かれているのでしょうか?

「(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

期間の定めのある契約か期間の定めのない契約かで、労働条件に差があってはならないとしています。この労働契約法第20条をめぐる裁判として有名な裁判が「ハマキョウㇾクス事件」「長澤運輸事件」です。この裁判については、以前にこのブログでも解説しました。この判決では、手当について、理由もなく正規雇用には支給される一方で、非正規雇用には手当を支給しないことはあってはならないとしています。

詳しくは以前の私のブログをご参照ください。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%82%ad%e3%83%a7%e3%82%a6%e3%83%ac%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9%e4%ba%8b%e4%bb%b6%e3%81%a3%e3%81%a6%e4%bd%95%e3%81%8b%e3%80%81%e3%81%94%e5%ad%98%e7%9f%a5%e3%81%a7%e3%81%99%e3%81%8b

 

今回はこの判決から一歩進んで、賞与や退職金についても、正規雇用と非正規雇用とで差を付けて、正規雇用だけに支給するのは不合理であるとしています。ただし、支給される金額については正社員と同等とまでは考えていないようで、賞与については、「月給制の有期雇用契約の職員には、正職員の8割が支給されていることも踏まえ、アルバイトにも6割の支給が妥当とし、2年分で約70万円の支払いを命じた」(読売新聞)としています。また、退職金については、訴訟の原告である契約社員の方の勤務期間が約10年にも及ぶことを踏まえ「勤務期間が約10年に及ぶ元社員2人には正社員の4分の1の退職金が支払われるべきだと判断した」(読売新聞)としています。

 

賞与については支払うべきとした理由について、賞与の性格が「労務の対価や功労報償、生活費の補助など多様な性質がある」としていて、また、退職金については「永年の勤務に対する功労報償の性格がある」としています。

 

いずれも「功労報償の性格」という言葉が出ていることに共通点があります。

「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」では「手当」の意味合いが重要とされましたが、これと同じく、そのお金にどのような“意味”があるのか、が重要と言っているわけです。賞与や退職金は「会社に貢献したことに対して支払われるもの」だとすれば、非正規雇用であっても支払われるべきだと言っているわけです。

 

また今回の二つの判決に共通しているのは、正規雇用と同程度の金額でなくてもいいと判断しています。同じ金額でなくてもいいのだが、支給がされているのかが問われているわけです。「功労報償」という点からすると、正規雇用と非正規雇用で支払われる賞与や退職金とで金額に差があるのは仕方がないとしているのでしょう。

 

一方で、これらの裁判の前提には、働き方が正社員と非正規雇用とで同等に近いというのが前提にあることは忘れてはならない点です。

大坂医科大学の判決(賞与の話の方)では、「アルバイトで研究室の秘書として採用され、平日5日間、1日7時間程度の勤務形態」だったことが前提にあります。また、東京メトロの判決(退職金の話の方)では、「契約社員の勤続年数は約10年に及んでいた」ことがあります。これらはいずれも勤務形態が正社員に近い状況であったことが前提にあるわけです

 

この裁判は最高裁まで争われる可能性があります。今後も行方を注視していきたいと思います。


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