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さて、今日は私の顧問先から質問のあったことを元に書いていこうと思います。

「治療院の専従者として働いているが、この先、コロナの影響もあり治療院がどうなるかわからない。パートとして別でも働きたいが、問題はないのでしょうか」

このケースのように個人事業で専従者給与を計上している人がパートで働いたりしたいという場合もあるでしょう。その場合、専従者給与が計上できなくなるケースがあります。これを見ていこうと思います。

その前に専従者給与とは何のことでしょうか?

たとえば、夫が個人事業をやっていて、その事業を妻やお子さんが手伝ったとします。手伝ってくれたわけですから、家族とはいえ給与を支払ったとします。その給与のことを「専従者給与」といいます。この「専従者給与」ですが、一定の要件があり、その要件に当てはまる形になっていないといけません。なおかつ、税務署への届け出も必要とされます。それらをクリアして初めて「専従者給与」として経費計上できることになります。

このように「専従者給与」に制限があるのは所得税法第56条という規定があるためです。この所得税法56条は税法になじみのない方からすると少し意外に思える規定かもしれません。要するに、生計を同じくする親族に対して支払ったもの(給与や賃料など)は経費にならないというものです。

この所得税法56条の例外が「専従者給与」です。青色申告の場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」というのに誰にいくら支払うのかを記載し、仕事をしたことに対しての給与の額が適正だと判断されれば、生計を同じくする親族であっても経費に計上できるということになっています。(白色の場合には届け出をしなくても経費に計上できますが、経費に計上できる給与の金額に一定の制限があります)

さて、今日はこの専従者給与を計上する場合に、他に給与があると計上できなくなるケースがあるという話です。所得税法施行令165条(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)という部分にこのことが書かれています。ちょっと読みづらいのですがこの規定をそのまま載せたいと思います。

法第57条第1項⼜は第3項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と⽣計を⼀にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6⽉をこえるかどうかによる。ただし、同条第1項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその2分の1に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば⾜りるものとする。

⼀ 当該事業が年の中途における開業、廃業、休業⼜はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。

⼆ 当該事業に従事する者の死亡、⻑期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と⽣計を⼀にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。

2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の⼀に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。

⼀ 学校教育法第1条(学校の範囲)、第124条(専修学校)⼜は第134条第1項

(各種学校)の学校の学⽣⼜は⽣徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第124条⼜は同項の学校の⽣徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)

⼆ 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)

三 ⽼衰その他⼼⾝の障害により事業に従事する能⼒が著しく阻害されている者

ちょっと読みづらいですよね。

要約すると、以下のようになります。

〇専従者給与にするには1年間に6カ月以上(事業に従事できる期間が1年に満たない場合にはその事業をやっていた期間の半分以上の期間)勤務していることが必要

〇学生は専従者給与に計上できない

〇他に職業がある人は専従者給与に計上できない(ただし勤務時間が短い場合は除く)

〇身体的に働けない状況の人は専従者給与に計上できない

思い切ってまとめれば上記のようになります。

今回、問題にしているのはこの三つ目の「他に職業がある人は専従者給与に計上できない」という論点です。

この論点での裁判例があります。関連会社の役員として従事する配偶者は、他に職業を有する者であるから青色申告専従者には当たらないとされた事例です。(東京地裁平成28年9月30日)

この例では、税理士業を営む原告が、妻に支払った青色事業専従者給与を必要経費に算入して申告したところ、税務署側は「妻は関連法人3社の役員として法人の業務に従事しており青色事業専従者に該当しない」として専従者給与の計上は認められないとしています。

原告の妻は、いずれも1年の売上高が1000万円を優に超える規模の関連会社において、代表取締役又は取締役として業務に従事しており、その役員報酬の合計額は、税理士事務所の専従者給与の額をはるかに超えるもので、このうちの1社については妻が代表取締役であるとともに宅地建物取引主任者の地位にあったものであり、その報酬を確定申告しているのであるから、自ら業務に見合った報酬を得ていることを自認しているもので、「他に職業を有する」というべきだとして、専従者給与は計上できないとしています。

上記の裁判例も踏まえて考えると、役員などの取締役をやっていて報酬を得ているというのは「他に職業を有する者」とみられる可能性があるので注意が必要です。仮に、取締役等の役員になっていても得ている報酬額が専従者給与と比べて少なければ問題はないかもしれませんが、専従者給与よりも多い場合、問題になる可能性があります。また、代表取締役になっているケースも「他に職業を有する者」とみられる可能性がありますから注意が必要です。

次に、「他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)」という規定の( )の部分の「その職業に従事する時間が短い者」というのは具体的にはどういう意味なのでしょうか。

これについては、特に判例等がないので、個々に判断していくしかなさそうです。ですから、ここからは私見となってしまいます。

まず、正規雇用となっているようなケースは「他に職業を有する者」といえるので問題があるといえます。

では、正規雇用でもなく、専従者給与と比べて金額も少ない場合、問題がないと考えていいのでしょうか。

これも私見ですが、税法ではないところから考えるのも根拠になりえるのではないのかと思います。雇用保険法で考えると、週の労働時間が20時間以上の場合には雇用保険に加入することになります。一時的に20時間を超えていても加入する必要はなく、恒常的に20時間以上の労働時間がある(もしくは労働契約等で週の所定労働時間が20時間以上となる)場合に加入することになるものです。雇用保険は失業した場合の生活保障という意味の保険で、これに加入するということは「他の職業を有する者」とみられる可能性があるのではないかと考えます。

まとめますと、専従者給与を得ている人が他で報酬を得ている場合、以下のようなことが求められると思います。

  • 他の会社の代表取締役となっていないこと
  • 他の会社の取締役等の役員になっている場合には、報酬額が専従者給与よりも少ないこと
  • 他の会社で正社員になっていないこと
  • 専従者給与以外の給与の額が専従者給与と比べて少ないこと
  • 他の会社でパート・アルバイトで働く場合には、週の労働時間が20時間未満であること

こんな感じでしょうか。

ちなみに、個人事業が法人なりした場合にはこうした専従者給与の問題は生じません。

法人にしてしまえば、他で働こうが、代表取締役になっていようが、法人の給与なので計上は可能です。もちろん、金額が働いている内容に比べて給与が高ければ金額の部分が問題になることはあります。ですが、きちんと仕事の内容と給与の額が特に問題ないといえるのだったらその法人で給与を計上すること自体に問題はありません。

また、専従者給与の場合、学生は計上できません。ですから、個人事業を営んでいる人が自分のお子さんがお手伝いをした場合に専従者給与を計上したとします。そのお子さんが学校に通っている学生だったら専従者給与は計上できません。ですが、この場合でも個人事業を法人にすれば給与を計上できることになります。

このように、専従者給与の観点から法人なりすることを検討することも考えられる話です。

ということで、今日は、専従者給与の「他で職業を有する」という部分についての話でした。


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