商工リサーチの発表によると、1月~10月の介護事業所の倒産件数が過去最多だそうで、62件に達したそうです。(昨年は1年間で54件)
この数字を見てどう思われるでしょうか?
平成27年4月から、介護報酬が大幅に見直しになりました。約6%の介護報酬の減算がされました。その影響でしょうか?
マスコミは「介護事業所の倒産件数が過去最多!」と騒ぎ立てます。ちょうど、介護報酬の減算があったあとなので、その影響だというわけです。
しかし、もう少し冷静に考える必要があるようです。
まず、この62件の倒産の中身です。
訪問介護が25件、通所介護(デイサービス)や短期入所介護事業(ショートステイ)などが24件となっています。さらに、開業3年以内の開業での倒産は約40件だそうです。また、ほとんどが従業員数5名以下の小規模事業所のようです。
もっと言えば、この62件のうち、半数以上が6月までの倒産です。ということは、介護報酬の減算とは実はあまり関係ないわけなんです。
マスコミは「介護事業所の倒産件数が過去最多!」と言って、介護報酬の減算になった改正の影響と結び付けたいようですが、どうやら事情はちょっと違うようで、実態は「介護に新規参入してはみたもののうまくいかなくなった新規事業所が倒産した」というところのようです。
冷静に考えてみれば、介護事業所は訪問介護で約3万事業所、デイサービスで約4万事業所あります。コンビニが約4万店舗ですから、デイサービスの事業所数とコンビニの数はほぼ同じくらいあるわけです。居宅介護支援事業所(「ケアマネ」の事業所)とあわせると全国には介護事業所が11万件もあります。そのうち倒産した件数が1月から10月で62件ということです。
商工リサーチによると、平成27年の上半期(1月~6月期)の倒産件数は建設業は848件、製造業が691件、卸売業は743件、小売業は636件です。総務省のデータによると、建設業の事業所数は平成24年時点で全国に約46万件くらいあるそうです。卸売業は約43万件、小売業は約93万件あるそうです。(手元のデータで最新のものが平成24年のものでした)
介護事業所は約11万事業所あるのに対して、10月までの10か月の倒産件数が62件。
建設業は約46万事業所に対して、6月までの半年の倒産件数が691件。
卸売業・小売業はあわせて約136万事業所に対して、6月までの半年の倒産件数が1379件。
こうして並べてみるとよくわかりますが、逆に介護事業所は他の業種に比べて倒産件数が非常に少ないことがわかります。介護報酬の減算はありましたが、確かな経営をすれば他業種よりもまだまだ恵まれた経営環境だということが言える話だと思います。介護事業所はきちんと計数管理をして「確かな経営」をすれば、十分に利益を出すことが可能な業種です。より冷静な判断が求められると思います。