先日、会計検査院の調べで個人の方が倒産防止共済を経費にあげている場合に必要な書類が添付されていない申告書が多く見受けられたという指摘がありました。
中小企業倒産防止共済とは何なのか。倒産防止共済を運営する中小企業基盤整備機構のサイトには次のように書かれています。
「取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。」
また、「掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できるので、節税効果があります。」ということも書かれています。
倒産防止共済に加入する多くの事業者はこの節税効果を狙って加入するケースが多いと思います。それから次の点も特徴的です。
「共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。」
さて、上記の節税効果の話ですが、倒産防止共済は何もしなくても支払ったものが全額、必要経費(法人の場合には損金)になるわけではありません。
個人事業主の方が掛金を必要経費として算入するには、任意の用紙で『中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書』を作成し、確定申告書に添付してはじめて必要経費に計上できます。また、法人の場合には「別表十(七)」のうち「3 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」の項目に必要事項を記載したものを提出して初めて損金算入できます。
倒産防止共済は原則は支払った金額は「積立金」です。支払った金額を必要経費(損金)とするのは、あくまでも特例的な取り扱いというのが税務の立場です。
さて、この個人の方の場合の『中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書』を作成し、確定申告書に添付というのができていないと会計検査院から指摘があったというわけです。会計検査院というのは税金の使い方や処理が正しく行われているかをチェックする役所です。そこから指摘を受けたわけです。
2018年の個人事業主の倒産防止共済の状況を調べたところ、「抽出した1567加入者のうち6割近くで、優遇時に必要な明細書の確認ができなかった」とあります。
また、倒産防止共済を解約した場合には収入計上する必要があるわけですが、それについても「任意解約時に受け取った返戻金を収入として計上する必要があるのに、2016年から18年の解約者464人のうち4割で収入計上が確認できなかった」とあります。
私が気になるのはこのように倒産防止共済をめぐる経理処理がきちんとなされていないと会計検査院が指摘したということは、今後、税務調査などを通じてこの点を厳しく見られるのではないかということです。せっかく倒産防止共済に加入して節税を図ったつもりだったのに「必要な書類が出ていないから経費計上できない」といわれる可能性があるわけです。会計検査院からの指摘があると、それを受けて税制も変わったりすることがよくあります。この倒産防止共済の場合、すでに制度としてあるのにきちんと運用されていないという話なので、税務署が明細書の添付の有無の確認が厳しくなる、もしくは税務調査での指摘が増えるのではないかということです。
特に個人事業者の場合、必要書類を添付しないと必要経費に算入できないという点は知らない方も多いと思います。税理士がついていても忘れてしまうケースも多いと思います。
もしこれまで添付していなかったという事業者の皆さんがいらっしゃいましたら、気を付けましょう。
ということで、今日は倒産防止共済に加入した場合の添付書類の話でした。