さて、今日は久しぶりに社会保険の手続きの話です。
手続きの話はこのブログに書くと、その後のアクセスが多くなる傾向があります。今日の論点は経営者の皆さんの今、もっとも関心の高い論点の一つと言えます。社会保険の扶養の手続きのどういう点が変わったのか、この機会にきちんと把握してみてください。
さて、健康保険の扶養の手続きですが、今年の10月1日以降の手続きについて、厚労省の内部で厳密に取り扱うように内部通達が発せられたようです。それに伴い、健康保険の扶養の手続きをする際の添付書類が以下のようになりました。
扶養する親族が同居している場合
・被保険者と被扶養者の両方のマイナンバーを届出書に記載する
・マイナンバーの記載がない場合、戸籍謄本か住民票を記載する
さらに収入が130万円未満で扶養されているということ(所得要件)について、同居親族の場合には、「扶養になる人の年間の収入が130万円未満であることを事業主が確認した旨を届出書に記載すること」となっています。これは具体的には、社会保険の扶養届の該当箇所に丸印を付けるだけの話です。そんなに大変なことではありません。つまり、同居の場合、実質的には、マイナンバーを記載することが大変、重要だということです。マイナンバーを記載しない場合には、住民票か戸籍謄本の添付が必要となってきます。ここが今までと変わった部分です。
さらに、扶養する親族が別居している場合には、もう一段階、面倒な話があります。
別居していて扶養されていることを確認するために「振込の事実が確認できる書類」が必要となったことです。別居の場合の所得を確認するための「振込の事実が確認できる書類」とは、振込の場合、預金通帳の該当箇所の写し、現金で送付している場合には現金書留の控えの写しなどが必要となっています。
また、これらは、16歳未満のお子さんを扶養にする場合や16歳以上であっても学生の場合には不要とされています。
扶養の手続きがこのように厳格化された背景には、扶養の認定を巡って不正が相次いだことがあります。報道されているところによると、特に海外に居住している外国人を扶養にする場合の不正という話が多いようです。いずれにしても、このような取り扱いにおける改正があったことは、実務上に大きな影響を及ぼしています。では、実際にどんな影響が出ているのでしょうか。
まず、扶養の取り扱いの変更を知らずに手続きをした事業主は、扶養の手続きを今まで通りにやろうとすると、書類の添付がないとされ、書類を返却され、扶養の手続きが進まないという実態があります。つまり、扶養親族の保険証の交付が遅れてしまうわけです。
また、この扶養手続きの変更は厚労省内部の通達によって職員に通知されて実施されているわけですが、実際、職員が手続きをする際には住基システムにアクセスしたりという作業があるため、以前よりも時間がかかるようになったようです。
そうした背景もあり、扶養の手続きは以前よりもかなり時間がかかるようになっています。
実際、私も顧問先の会社さんの手続きを電子申請でやったところ、保険証が届くまでに1か月近くかかっています。
そこで、扶養の手続きに当たって、以下の二点に留意してはいかがかと思います。
① なるべくマイナンバーを記載した形の届け出にしたほうがいい
以前はマイナンバーの記載がなくても、通常通り手続きできたのですが、マイナンバーの記載がないと添付書類が必要なうえ、手続きに特に時間がかかるようです。社会保険の届け出の中でも、特に扶養の手続きの場合には、マイナンバーの記載をしたほうが手続きもスムースに進むようです。(マイナンバーの記載は被保険者と被扶養者の両方が必要になっています)
② 被扶養者の手続きの際、病院にかかりそうなのであれば通常の手続きではなく、窓口で手続きをし、「健康保険資格取得証明書」を付けて手続きをしたほうがいい
「健康保険資格取得証明書」というのは、保険証が届くまでの間、保険証の代わりとしての役割を果たすことのできる書類です。病院などでその書類を提示すれば保険証と同じ効力があります。扶養の手続きには時間がかかるため、保険証がすぐに必要な事態が発生する可能性のあるお子さんの扶養の手続きなどは、窓口で手続きをして「健康保険資格取得証明書」を発行する手続きをしたほうがいいでしょう。なお、この「健康保険資格取得証明書」を発行する手続きは、各年金事務所の窓口でしかできません。また、同時に「扶養異動届」を提出しないといけません ので注意が必要です。
扶養については、手続きが厳格化され、保険証の発行にも時間がかかるようになったので、この機会に事業主の皆さんにもこれらをしっかり認識していただきたいと思います。