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さて、今日は税理士向けの日本政策金融公庫のセミナーで使われた「金融機関が見る融資審査のポイント」というレジュメを参考に、主に、日本政策金融公庫の融資の際のポイントについて、書いていこうと思います。

以前にある顧問先の社長に「銀行に貸してもらえるように化粧して奇麗な感じの決算書にしてほしい」と言われたことがあります。この社長の言っていることは「悪い部分も化粧で隠して見栄えのいいようにして」というかなりわがまま?なものを意味していたわけなのですが、ですが、見栄えのいい決算書というのは確かにあります。その見栄えのいい決算書というのは、実はよく理解していない税理士は多いのです。

このブログは主には中小企業の経営者に見ていただけるように書いています。その意味でいえば、中小企業の経営者もこれを知っておいて見栄えのいい決算書にしてもらうように税理士にお願いする、そのお願いのポイントというのを知っておいてほしいと思います。

さて、今日、紹介する公庫のレジュメの審査のポイントですが、まずは前提として創業融資以外の通常の融資の話を前提にしています。公庫のレジュメに沿ってお話をしますと、ポイントは大きく四つあります。

ポイント1:ヒトとモノ

○ヒト

・信頼性・・・経営者自身が正直かどうか

・謙虚さ・・・他人の意見を聴く姿勢があるか

・決断力、責任感・・・迅速な決断を行っているか、失敗の言い訳をしていないか

・計数観念・・・数字の見通しを自分の言葉で語れるか

○モノ

・製品(商品)力・・・市場に受け入れてもらえる独自性のある製品(商品)があるか

・技術力・・・他社と比べてどの点に優位性があるか

・サービス・・・他社とどこが違うのか、従業員の能力はどうか

・販路・・・どうやって市場を開拓したか、これからどう販路を開拓するのか

上記のようなものを総称して「定性評価」といいます。これらは決算書などの数字には表れない評価項目です。しかし、こうした点も一つ一つ、評価されているのです。なにげない会話から、経営者自身の人となりを判断しています。金融機関の人間は、そうしたことが習慣化されています。それは中には(特に新人だと)そこまで頭の回らない担当者もいるでしょう。しかし、こうした経営者自身の人となりや、会社自体の持つ販売力といったものは、特に近年の融資審査のポイントには重要な部分を占めています。銀行に行くときはこうしたことも見られているという意識は持つようにしましょう。

ポイント2:売上高、利益

○売上高

・企業のサイズ(規模)を売上で把握

・誰に、何を売って、いつ売上にあげて、いつ回収しているのかを確認

・取引先別、月別、店舗別といった形での売り上げも確認

・決算以降の売上の把握

○利益

・「利益+減価償却費」が返済財源の目安

・赤字の場合には、その理由と今後の方針

・今後の利益の見通し

ポイント1が「定性評価」であるのに対し、売上高や利益といった決算書から読み取れる数字のことを「定量評価」といいます。この「定量評価」の中でも「売上」と「利益」が最も重要なポイントです。

まずは、売上です。売り上げの中でも金融機関が気にするのは、「いつ売上に計上して、どのくらいのサイクルでその売り上げを回収しているのか」という点です。たとえば、2か月で回収しているのであれば、売上の2か月分が売掛金に計上されているはずです。その分は現金が入ってくるのがあとになるわけです。そうすると、その分の資金が足らなければ金融機関から借入で賄わないといけないと判断されます。このように、「いつ売上にあげていつ回収しているのか」というのは融資とも直接かかわりのある大事なポイントです。面談の際などに、こうした点は必ず、確認されるはずです。

また、売上というのも単にトータルの売上だけではなく、取引先別、月別、店舗別といった部門別の売上という細分化した情報も金融機関が知っておきたい点です。こうした点を整理した資料を用意しておくと大変、印象がいいわけです。

また、利益で最も大事なポイントは「利益+減価償却費」を返済財源として考えているという点です。ここでいう「利益」というのは普通は「経常利益」のことです。決算書がお手元にあれば、損益計算書を見てください。「経常利益」となっている部分がありますよね。その「経常利益」に「減価償却費」を足した金額が、一般的には「返済原資」と呼ばれます。返済額がその範囲であれば、お金を貸せると判断しているわけです。

また、「今後の見通し」も是非、聞きたいポイントです。たとえ赤字であっても理由のある赤字なのか、今期赤字でも来期以降、巻き返せるのか、その辺が知りたい情報なわけです。その辺もきちんと整理して金融機関の担当者に伝えられるととてもいいわけです。

ポイント3:自己資本、借入金

○自己資本

・中小企業の場合、経営者の個人資産や個人の負債はどうなっているのか

・債務超過の場合、債務超過であっても企業が存続できたのであればそれがなぜか

○借入金

・借入金の残高明細(金融機関ごとの借入残高、1年間の返済額、利率など)

・継続的に借り入れ可能な状況か

ポイントの3つ目は主に、貸借対照表の項目です。

金融機関が貸借対照表を見る場合、決算書の貸借対照表はそのままは見ていません。ほとんどの中小企業が個人と法人というのは実質的に一体です。ですから、個人の資産や負債の状況もあわせて加味します。また、ポイントの2でやった「経常利益+減価償却費」の金額と1年間の返済金額を比べて、1年間の返済金額の中に「経常利益+減価償却費」が収まっているかも確認します。

ポイント4:貸付金・仮払金、その他

○貸付金・仮払金

・代表者の貸付金や仮払金がないか・・・実質的に資産とはいえないものが含まれていないか

・将来的に貸付金や仮払金は解消可能か

○その他

・1期前、2期前の決算書と比較して、良い方向に向かっているか、悪い方向に向かっているか。

・損益計算書の変化と貸借対照表の変化とに整合性があるか

ポイントの4つ目は、これらは要するに、決算書上の「汚れ」がないかという点です。

たとえば、貸付金といっても会社が社長へ貸しているお金だったりすると、中小企業の場合、実質的にそれは返さなくていいお金だったりします。仮払金も同様です。代表者へ仮払いしたお金で、実質的に返さなくていいお金だったりすると、資産性があるとは言えなくなります。こうした実質的に資産と言えない項目については、なかったものとして貸借対照表を作り替えます。

また、公庫などの金融機関では、決算書を2期か3期、比較してみます。すると、会社全体がいい方向に向かっているのか、はたまた悪い方向に向かっているのかがわかります。たとえば、売上が3期くらいで比較してみた場合、2割増くらいに増加していたとします。仮にその売上の伸び以上に人件費が増えていたとしたら、売上の伸びが人件費の伸び(売り上げの増加に伴う人員増加)に追いついていないだけで、人が増えたとことによる売上増加はもう少し時間がかかるとか、説明がつけばいいわけです。

また、例えば売り上げは伸びているのに、売掛金が異常に増えているとか、利益は増えているが、在庫(棚卸)も増えているとか、そういう状況があったとします。そういう状況だと決算書の数字はそのまま鵜呑みにできないと判断するわけです。売掛金を増やして売り上げを増やし、見栄えをよくしようとしただけではないのか、あるいは在庫が増えて、在庫の増えた分の利益が増えているのであれば、単に在庫を数字上だけで調整しただけではないのか、となるわけです。

要するに、決算書にあるウソを見抜くというのがポイント4です。

公庫のこのレジュメを今日は抜粋しながら、融資審査のポイントについて書きましたが、これらは決して難しい話ではありません。ある程度、決算書のわかる人であればだれでもわかるような話です。冒頭に書いたような「悪い部分も化粧で隠して見栄えのいいようにして」というのは、どこかでばれる話なわけです。結局、融資審査のポイントとしては、定性評価部分は社長の努力で何とかするしかないですが、定量評価の部分は売り上げを伸ばし、少しでも利益を出すようにするしかないわけです。

公庫のレジュメからも、結局、「売上を伸ばし、利益を増やす」という当たり前のことしかないというのが融資のポイントだというです。

以上、今日は公庫の融資審査のポイントという話でした。


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