手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

Category Archives: 資金繰り


さて、今日も何件か月次支援金の事前確認がありました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けている方も多くいらっしゃいます。そこで、今日は改めて月次支援金の概要について書いていこうと思います。

月次支援金のHPによると、2021 年 4 月以降に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が実施された地域において、要請による休業又は時短営業を実施している飲食店と直接・間接の取引がある事業者や、これら地域における不要不急の外出・移動の自粛 による直接的な影響を受けている事業者が対象となっています。

月次支援金の申請をする際に、実はこの入口の部分がわかりづらくて自分は対象なのだろうか、と疑問に思っていらっしゃる方は多いようです。

そこで、上記のHPの記載内容をもう少し嚙み砕いてみましょう。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域である事業者はもちろん対象になります。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域でない事業者は対象にならないかというとそうではありません。これらの対象地域にない事業者であっても、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域にある事業者との取引があったり、あるいは間接的に影響を受けている事業者も対象となると言っています。

直接的に影響を受けている事業者というのは具体的には以下のような事業者です。

・飲食料品店、衣料品店、美容院等、日常の店

・学習塾や習い事の教室

・クリニックや福祉施設、ドラッグストア

・スポーツ施設や劇場、博物館

・旅館、レンタカー、タクシー、旅行代理店

これらの事業者は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域で事業をしている事業者です。これはわかりやすいのでいいと思います。

問題なのは間接的に影響を受けている事業者です。

具体的には次のような事業者です。

・士業等の専門サービス事業者

・システム開発等の IT サービス事業者

・映像・音楽・紙媒体のデザイン制作事業者

・飲食料品の卸売事業者

・農業や漁業を営む事業者

これらの事業者は一見すると、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けていないように思えます。しかし、取引している事業者が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けていて、その余波で売り上げは減っているというケースも当てはまるわけです。

取引していて、間接的な影響があり、その影響が説明できれば対象になると考えていいと思います。

実際、私の事務所へ事前確認のご依頼があるケースはほとんどがこの間接的に影響を受けている事業者の方で、いろんな事業の方からご連絡をいただいています。間接的に影響を受けている事業者というのは、結局、ほぼすべての事業者といっていいのだろうと思います。

さて、業種として注意すべき点は、飲食店です。飲食店は協力金の支払い対象になっている場合には月次支援金の申請はできません。飲食店で月次支援金の対象となる場合というのは都道府県の休業協力金の申請をしていない事業者ですから、この点は注意が必要でしょう。

そして、この月次支援金の対象になる売り上げについての話です。売り上げについては判定月ごとで判定します。1か月ごとに前年もしくは前々年の売上と比較して50%未満である月について申請ができます。(もちろん売り上げの減少が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けているための売上の減少である必要があります。)

また、受給額がいくらになるのかという点です。受給額については、次の算式で計算します。

2019 年又は 2020 年の基準月の売上 - 2021 年の対象月の売上

2019年か2020年の対象月と同じ月で比較して売上の差額が支給されます。法人の場合、上限が20万円、個人の場合、上限が10万円となります。これは店舗単位ではなく、法人(事業)単位となります。

それから、この月次支援金には税理士等の事前確認が必要です。事前確認では実際に事業をやっているのか、月次支援金の基本的な仕組みを理解しているのかなどといったことの確認がされます。月次支援金の前にあった一時支援金を含め、この税理士等による事前確認が1回は必要になります。一時支援金・月次支援金を通じて、一度でも前に税理士等の事前確認を受けていれば、2回目以降は改めて事前確認を受ける必要はありません。

もう一点、この事前確認については期限がある点が注意点です。この期限は申請期限よりも早くなっています。

現在、申請できる月次支援金は7月~9月分ですが、事前確認の期限、月次支援金の申請期限はそれぞれ次のようになっています。

対象月 事前確認の期限 申請期間
7月分 2021年9月27日 2021年8月1日~9月30日
8月分 2021年10月26日 2021年9月1日~10月31日
9月分 2021年11月25日 2021年10月1日~11月30日

事前確認が必要な場合には、期限ぎりぎりだと事前確認機関の側が受けられないケースが多いです。実際、私の事務所でも、期限が近くなると事前確認の依頼が多くなります。しかし、受けられる数にも限りがあるのですべては受けられません。事前確認を受けるにしても期限の2週間以上前にした方がいいだろうと思います。

また、今のところ、月次支援金の対象月は9月までです。10月以降は未定ですが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の措置が10月まで延長されれば10月についても月次支援金の対象になる可能性はあります。これについては新しい情報について月次支援金のHPなどでチェックしていきましょう。

それから、東京都の法人や東京都にお住まいの方が申請される場合、東京都月次支援金というのがあります。国の月次支援金が入金になった後、国から届く月次支援金の入金案内を使って東京都月次支援金の申請ができます。東京都の方は忘れずに申請しましょう。

以上、改めて、月次支援金の話でした。



各都道府県でコロナの休業協力金を支給するという動きが加速しています。

東京都が先行して初めて、神奈川県も始めました。

名称は様々ですが、「感染症防止協力金」という名称で呼ばれることが多いようです。

事業をやっていらっしゃる都道府県がどんな協力金をやっているのか、この際に確認してみましょう。

各都道府県、場合によって市町村で独自に休業要請に応じた事業所に協力金を支給する取り組みをやっているところもあります。これらを一度に確認できるサイトがあります。↓

https://j-net21.smrj.go.jp/support/kyugyo.html

各都道府県で比較すると、東京都は1事業所あたりで50万円を基本としています。2以上の事業所があると100万円となっています。1事業所あたりで50万円としているのは東京都のほかは愛知県、岐阜県、福井県、石川県、三重県(福井県、石川県は個人事業だと20万円)なども1事業所あたり50万円としています。千葉県は令和2年1月から令和2年7月の内、任意のひと月と比較して50%以上減少した県内に本社を有する中小企業(個人事業主含む)という条件を付けています。複数事業所を賃貸している場合には30万円、1か所賃貸している場合には20万円、1か所を自己の所有にしている場合には10万円としています。

また、大阪府は大阪府と市町村が半分ずつ負担する制度になっています。4月に限定して前年の4月より50%以上減少している事業所が対象です。中小企業の場合、100万円(大阪府と市町村で1/2ずつ負担)、個人事業主 50万円(大阪府と市町村で1/2ずつ負担)となっています。

兵庫県は業種と法人・個人事業の別で最大100万円から5万円までと段階に応じて金額を分けています。

また都道府県単位ではなく、市町村単位で独自に支給しているケースもあります。

千葉県の市川市では、非常に特徴的な給付金を支給します。「事業者緊急支援事業臨時給付金」です。この給付金は休業要請などの業種の範囲が特に限定されていない点が特筆すべき点です。休業・短縮営業の実施し、感染症拡大防止に対する取り組みとして、店舗の消毒、マスクや消毒液の購入・テレワークの実施 ・イベントやセミナーの中止のいずれかを実施していることが要件とされています。

仙台市では、休業要請に応じた事業所に対して宮城県内一律30万円に加え、1施設であれば10万円上乗せで合計40万円支給、市内に対象施設を2施設以上有している場合には、上乗せ額を50万円として合計80万円支給としています。

新潟市では、休業要請に応じた事業所に対して10万円支給するほか、家賃補助として令和2年2月から5月までの間に、契約書により確認できるテナント等の家賃を減額した金額の3分の2相当額(貸主1人当たり上限額20万円)を支給する独自の制度を導入しています。

事業をやっている自治体によって、金額や制度の中身は様々ですが、おおよそ共通しているのは、対象となる業種がだいたい共通している点です。また、インターネットを介して申請する点もおおよそ共通点です。

また、申請期間がおおよそ5月末か6月中までとしているところが多いです。東京都は6月15日まで、神奈川県は6月1日まで、大阪府は5月31日までとしています

申請期限が意外と早く来てしまうものが多いです。いつまでの申請なのかは早めに確認したほうがいいです。上記のサイトや各都道府県からの情報などで随時、確認してみてください。

また、東京都のように税理士や会計士などの専門家を通じて申請することを推奨している自治体もあります。これは士業の専門家を通じて書類を提出した場合、自治体による確認の事務作業の軽減が図れるという自治体側の都合もあるのだと思います。士業などの専門家を通じて申請することを要請している場合には、できるだけそれに従ったほうが支給も早くなると思いますので活用しましょう。

ということで、各都道府県や市町村でやっているコロナの休業協力金の話でした。



ここ数日は「持続化給付金」のお問い合わせが非常に増えています。

NHKでたまたま見たのですが、「父から事業を引き継いで会社を設立したため、前年同月がないから持続化給付金の申請ができない」と訴えていた方が出ていました。

この方についてもよく聞いてみないとわかりませんが、「特例」を使えば、このケースでも申請が可能なのではないかと思いながら見ていました。

こういうケースでも持続化給付金の対象になるという特例のケースについて、今日は解説していきたいと思います。

その前に、持続化給付金申請の原則的な話を説明しておきます。

この持続化給付金は前年同月比で売り上げが50%以上減少した場合に使えるものです。前年同月と比べて売り上げが50%以上減少した場合に、前年総売上-減少した月の売上高×12ヶ月で求めた金額が、個人なら100万円、法人なら200万円を超えたらその上限額が支給されるというのが持続化給付金です。

それで、法人の場合の話なのですが、少なくとも私はこの「持続化給付金申請要領」が出るまで確認できなかったことがあります。

それは、12月決算法人以外の取り扱いです。たとえば。3月決算法人はどうしたらいいのかという話です。

たとえば、3月決算法人で4月の売り上げが前年同月と比べて50%以上減少したとします。2019年4月が120万円で、2020年4月が50万円だったとします。前年同月比で50%以上売り上げが減少したわけですから持続化給付金の支給要件には該当します。そのうえで支給額の計算です。

支給額は「前年総売上-減少月の売上×12ヶ月」の金額で、個人なら100万円、法人なら200万円が上限となっています。

この「前年総売上」というのが何を指すのかという点です。

これは、3月決算法人でまだ2020年3月の申告をする前なのであれば、2019年3月決算の総売上、つまり、2018年4月から2019年3月の売り上げの総額となるということです。

個人の場合、2019年1月から12月の売り上げ(確定申告書の総売上額)となるわけですが、法人の場合には、12月が決算とは限らないわけで、その点がどうなるのかと思っていました。ですが、法人の場合には、申請前に一番直近で申告した年の総売り上げとなるようなので、その点はご留意の上、申請してください。

そのうえで、特例についてお話を進めていきましょう。

まず、法人なりです。

法人なりというのは個人事業でやっていた人が株式会社や合同会社という法人を設立してその法人の代表者となることを言います。

法人なりすると一見すると確かに前年同月の売り上げはありません。しかし、特定のB-6というところで「法人設立届」や「個人事業廃業届」「履歴事項全部証明書」(いわゆる謄本)などを添付することで、認められることになっています。条件としては法人の代表者と個人事業の者が同じ者であることです。「法人設立届出書」のなかの「設立の形態」が「1 個人事業を法人組織とした法人である場合」に〇が付してあり、「○○税務署(整理番号××××)という個人事業のときの税務署の管理するいわゆる「整理番号」を法人設立届に記載されている場合としています。

この場合に個人事業だった前年同月と比べて前年同月比で50%以上売り上げが減少したら持続化給付金の申請ができる対象になるという話です。

ちなみに、法人なりの場合、法人になっているので給付金の限度額は100万円ではなく200万円になることになります。

次に、創業特例という話です。

2019年に法人を設立した場合で前年同月がない場合の話です。

この場合、2019年の1月から12月の売り上げを月平均にならしたときの月商より半分以下になっている月があった場合が対象となります。

経産省の例によれば、2019年10月に開業した法人で、10月50万、11月50万、12月80万の売上たったとすると、3ヶ月の月平均売上は60万円になります。たとえば4月の売り上げが20万円だったら60万円の半分以下なので持続化給付金の対象になるという話です。

ちなみに、持続化給付金の限度額計算においては以下のようになります。

(50万円+50万円+80万円)×12/3-20万円×12ヶ月=480万円>200万円∴200万円

「前年総売上」は12か月ない場合には、12カ月あったものとして仕切り直して計算していいわけです。

こういう論点は、特例部分のリーフレットをよく読まないとよくわからない部分です。

冒頭のNHKに出ていた会社さんの話もこの特例を使えば続化給付金の申請ができるのではないのかと思います。

それから、ある一定の月に収入が多いような場合です。

例えば、2019年の4月が70万円、5月が120万円、6月が80万円と売り上げがあり、年間事業収入450万円の半分以上を占めるような状況があったとします。それが、2020年は4月が40万円、5月が20万円、6月が20万円だったとします。

この場合、同じ3カ月間を比較して50%以上売り上げが減少していたら対象となります。

上記のケースだと、2019年の4月から6月の売り上げの合計は270万円で、2020年の4月から6月の売り上げは80万円なので半分以下となります。そのため、まずは持続化給付金の対象となります。そのうえで支給額はこの3か月間の合計で考えます。この場合には、270万円(2019年4月から6月の売り上げの合計)-80万円(2020年4月~6月の売り上げの合計)で190万円となり、200万円未満のため、190万円が支給額となります。

他にも、合併した場合や連結納税を行った場合などがありますが、この辺について知りたい方は、持続化給付金申請要領を参照してみてください。

なお、原則的な計算方法を取るのか、上記の特例によるのかは、選択になります。どちらを選ぶのかは申請者が自身の判断で決めていいことになっています。

特例の要件に当てはまっていても、原則的な計算の方が給付額が大きくなるのだったらあえて特例の方は使わないことにしてもいいわけです。

どちらが有利なのか、じっくり判断したうえで申請してみてください。

以上、持続化給付金の特例のお話でした。

VMO新型コロナウイルス対策支援



新型コロナウィルスに関連した融資について、私のところにも連日、問い合わせがあります。

この融資は主に、4つに集約されます。よりいい条件の融資を受けるためにも、この際この4種類について知っておきましょう。

まずは、それぞれがどんな要件があるのか、次に融資限度額、返済期間、据え置き期間、金利の4つで比較してみてみましょう。

  • セーフティネット貸付

この融資は売上高が5%以上減少といった要件にかかわらず今後、売上が減少すること中小企業であればこのセーフティネット貸付が受けられます。

【融資限度額】中小事業 7.2億円 国民事業4,800万円

【貸付期間】 設備資金15年以内 運転資金8年以内

【据置期間】 3年以内

【金利】   中小事業1.11%  国民事業 1.91%

「国民事業」というのは、主に「小規模事業者」や「個人事業主」のことです。小規模事業者というのは、製造業・建設業・運輸業などの業種の場合には従業員数が20名以下の事業、サービス業やその他の事業の場合には従業員数が5名以下であることを言っています。この条件に当てはまれば「国民事業」に該当します。一方で、「中小事業」は資本金が1000万円以上で5年以上の貸し付けをする場合が原則です。また、国民生活事業に当てはまらない場合に「中小事業」に該当することになります。どちらに該当するのかをまずは判断しましょう。

  • 新型コロナウィルス感染症特別貸付

この融資は次のいずれかに該当する場合に受けられる融資です。

〇直近の売上高1か月分が、前年もしくは前々年とくらべて5%以上減少している

〇業歴が3カ月以上1年1か月未満の場合には、最近1か月の売り上げが次のいずれかと比較して5%以上減少していることが要件です。

 ・過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高

 ・令和元年12月の売上高

 ・令和元年10月~12月の売上高の平均

またこの融資は「無担保」融資であることも特長です。

【融資限度額】中小事業 3億円 国民事業6,000万円

【貸付期間】 設備資金20年以内 運転資金15年以内

【据置期間】 5年以内

【金利】   当初3年間は0.21%(基準金利1.11%-0.9%)

4年目以降はその時点の基準金利

すでに別の融資を政策金融公庫で受けている場合にも、さかのぼって適用することが可能です。すでに別に融資を受けていてもこの枠に変更することも可能ですので検討してみましょう

  • 特別利子補給制度

この融資がいわゆる「無利子」融資です。

この「無利子」融資に該当するには、前提として、前回のブログで書いた商工中金の新型コロナウィルス対策の融資に該当するか、もしくは、日本政策金融公庫の新型コロナウィルス対策感染症特別貸付に該当する(上記の②に該当する)か、というのが前提にあります。

その場合に、売上の減少が大きい事業者には借り入れの当初3年間は利子補給があるという制度です。

「利子補給」というのはいったん利子部分を負担しておいてあとからその利子部分についてお金を返してもらえるというものです。

この「特別利子補給制度」を利用できる要件は以下の3つの形態があります。

個人事業主:要件なしで「無利子」融資に該当します

小規模事業者:売り上げの減少が前年同月比で15%以上

中小企業者(小規模事業者以外の中小企業):売り上げの減少が前年同月比で20%以上

小規模事業者というのは法人形態の事業所で、製造業・建設業・運輸業などの業種の場合には従業員数が20名以下の事業、サービス業やその他の事業の場合には従業員数が5名以下であることを言っています。いわゆる「国民事業」に該当する場合です。「国民事業」に該当しなければ中小事業者です。日本政策金融公庫の融資が「国民事業」と「中小事業」に区分することから、この判断基準が特別利子補給制度にも使われています。

個人事業主だと、売り上げの減少が何%かに関係なく、実質無利子の制度が使えるというのも非常に特徴的なところです。

  • マル経融資の金利引き下げ

マル経融資というのは、商工会議所などを通じて行う小規模事業者の融資制度です。

以前にこのブログでもご紹介したことがありますので、下記を参照してみてください。

さてこの商工会議所(商工会)を通じた日本政策金融公庫のマル経融資にも新型コロナウィルス感染症の影響を踏まえた特例措置というのがあります。

要件としては上記の①から③と似ていて、最近1か月の売り上げが前年または前々年の郷月と比較して5%以上減少していることです。

【融資限度額】1,000万円

【据置期間】 3年以内

【金利】   当初3年間は0.21%(基準金利1.11%-0.9%)

4年目以降はその時点の基準金利

これらの日本政策金融公庫の融資は、一般枠と呼ばれる通常の融資とは別枠の融資となります。融資枠が別になっているということは、たとえば政策金融公庫で最近、借入をしていてもそれとは別の融資という意味です。ですから、最近、融資を受けていてもそれとは関係なく融資を受けることができるわけです。

新型コロナウィルスの影響で売り上げの減少がみられるような場合、この際、積極的にまずは日本政策金融公庫のこうした融資制度を活用することをお薦めしたいと思います。



今日も中小企業向けの新型コロナウィルスに関しての情報提供をしようと思います。

今日のテーマは商工中金の新型コロナ対策融資の情報提供です

日本政策金融公庫でも新型コロナウィルスに関連して融資制度がありますが、同じような制度が商工中金にもあります。

対象となる中小企業の新型コロナウィルスに関連して直近の売上高1か月分が、前年もしくは前々年とくらべて5%以上減少していることが要件です。

また、業歴が3カ月以上1年1か月未満の場合には、最近1か月の売り上げが次のいずれかと比較して5%以上減少していることが要件です。

 ・過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高

 ・令和元年12月の売上高

 ・令和元年10月~12月の売上高の平均

昨年との比較というのがよく要件になっていますが、業歴が短くても対象になる可能性があるので、最近事業を始めたようなケースではそこも検討してみましょう。

そのうえで、融資限度額、返済期間、据え置き期間、金利は以下のようになっています。

【融資限度額】3億円

【貸付期間】 設備資金20年以内、運転資金15年以内

【据置期間】 5年以内

【金利】   当初3年間は0.21%(基準金利1.11%-0.9%)

4年目以降はその時点の基準金利

また、売上が中小企業の場合には前年同月比で20%以上減少している場合、小規模事業者の場合には前年同月比で15%以上減少している場合、貸付残高が1億円までは金利の0.21%の部分も利子補給を受けることができます。利子補給というのはいったん利子を負担し、そのあとでその利子部分のお金をもらうことができるものです。あとから利子補給を受けることで実質的に「無利子」になる融資制度です。

商工中金の融資を受けるには商工中金の組合員になる必要がありますからその点は注意点です。また、これらは政策金融公庫の融資とほぼ同じ条件ですから、政策金融公庫の融資とどちらがいいのかを検討する必要があります。

その辺を考えると、日本政策金融公庫の融資をまずは検討したほうがいいのかもしれません。

次回は、日本政策金融公庫の4つの融資制度についてまとめてみましたので次回のブログと合わせて参考にしてみてください。



連日、ニュースはコロナコロナ・・・

テレビを見るのも嫌になりますね。

私も顧問先からコロナ関連のことで連日のようにご質問をいただきます。

その関係もあり、新型コロナウィルス関係で中小企業経営にかかわる部分でいろいろと調べて分かったことなど、今週はいくつか書いていこうと思います。

今日は生命保険の契約者貸付です。

法人契約の保険に入っている場合、一定の割合で契約者貸し付けといってお金を借りることができる制度があります。法人契約の生命保険に加入するメリットの一つですが、その契約者貸し付けというのは通常は一定の金利がとられます。2%から3%前後になるケースが多く、イメージとしては金融機関よりもやや高めの金利になる感じです。

ただ、金融機関の融資と違って、積み立てているものの一部からお金を借りるというものであることもあり、着金までが早いです。申し込みしたら翌日か翌々日には着金になっています。急に資金繰り上、資金が必要な場合には結構、使えます。

さて、この契約者貸し付けですが、今回の新型コロナウィルスに関連して保険会社によっては金利をゼロにしています

いくつか例を挙げてみましょう。

たとえば、ソニー生命です。

ソニー生命では、セーフティネット4号という信用保証協会の認定を受けている場合、解約返戻金の7割を限度として金利をゼロにしています。

また、アクサ生命では契約者貸し付けの金利をマイナス0.5%として貸し出しをしています。

その他は結構、金利をゼロにしているところが多くあります。

たとえば、第一生命、日本生命、明治安田生命、朝日生命、住友生命、大同生命など日本の生命保険会社の多くは、法人契約の保険は結構、契約者貸し付けの金利をゼロにしています。

また、アフラック生命やプルデンシャル生命などの外資系の保険会社でも契約者貸し付けをゼロにしているものもあります

しかもこれらの日本の生命保険会社では、特段の要件を必要としていません。新型コロナウィルスの関係で売り上げが減っているなどの要件なしで金利をゼロにしてくれるわけです。

これらの金利がゼロになる措置は、多くが9/30までに借りた金額を返済した場合です。9/30以降になると通常の2%から3%の利率の金利がかかります。ですので、一般の金融機関や日本政策金融公庫の融資を受けたら返済するなどの方法と組み合わせも考えておいたほうがいいでしょう。

この際、前回のブログで書いた保証協会の4号融資や5号融資や日本政策金融公庫のセーフティネット貸付などとあわせて、生命保険の契約者貸し付けも検討してみてはいかがかと思います。



最近はニュースを見れば連日、「コロナ」です。

ニュースだけではなく、実体経済がいろいろとまずい状況になっています。私の顧問先からもコロナ関連で連日、多くの方からたくさんのご質問を受けます。

そこで、今日は、コロナ関連の金融機関の貸付制度について、説明していきたいと思います。

コロナ関連の借り入れというとまず聞かれるのが、「無利子・無担保の融資があると聞いたのでそれを受けたい」というような話です。これには要件があります。順を追って説明しますので、このブログで概略を理解していただければと思います。

まず、今回のコロナ関連の融資としては大きくは2種類あります。

一つは信用保証協会を通じた融資制度です。

信用保証協会は都道府県ごとにあるので、都道府県独自の制度もありますが、ここでは国が支援するコロナ関連の貸付制度についてご説明します。

信用保証協会の融資には「一般枠」というのと「特別枠」というのがあります。

一般枠というのは通常の保証協会を使った融資です。銀行と保証協会の責任割合(借りている人が返せなくなった場合にどちらが何割負担するかという割合)が銀行が2割、保証協会が8割というものです。

一方で、特別枠というのがあります。これは今回のように国が保証協会を資金的に支援して金融機関が貸し付けをしやすいようにする融資枠のことです。この特別枠には、さらに「4号融資」と「5号融資」とがあります。

4号融資は国が100%保証してくれる融資です。借りた人が仮に返済できなかった場合、保証協会に国が100%お金を出してくれるというのが4号融資です。金融機関としてはできればこれでやりたいわけですが、要件のハードルが少し高いというわけです。前年同月比で売り上げが20%以上減少していることが要件となっています。通常はこの4号融資は対象地区などに制限がありますが、今回のコロナの関係では対象地域の制限が外れ、3月2日に全都道府県が対象になりました。前年の同月(1か月でいいです)で比べて売上の減少が20%以上ある場合、4号貸付が考えられます。

もう一つの「5号融資」は国が保証してくれる割合が80%になるものです。もし貸していた人が返せなくなった場合の保証協会の負担が2割はあるというのが5号貸付です。5号貸付は保証協会の負担割合が多少、ある分、やや要件が緩くなります。売り上げの減少が前年同月比で5%以上だったら5号貸付が使えます。20%まで減っていない場合、5号貸付を検討することになります。ただ、この5号融資には対象業種があります。対象業種になっていないと5号融資ができないのですが、今回のコロナの件で、対象業種がかなり広がっています。対象業種になるのであれば5号貸付も考えられます。

この信用保証協会の4号・5号の融資は、ほかで保証協会を使った融資があってもそれとは別枠として判断されます。金融機関側もこの4号や5号の枠を使ったほうが貸しやすいので、コロナ関連で売り上げの減少がみられる場合、この4号・5号を使った融資を勧めてきます。4号・5号の融資は是非、検討したいところです。

そして、もう一つが日本政策金融公庫を使った融資制度です。

新型コロナウィルス感染症特別貸付」というものです。これは売り上げの減少が前年同月と比べて5%以上減少している場合に使えます。比較するのは前年同月の1か月でいいとされています。

日本政策金融公庫の貸付制度では、「国民生活事業」と「中小企業事業」という二つの区分があります。このどちらになるのかというのがまずあります。

国民生活事業」というのは、主に「小規模事業者」や「個人事業主」です。小規模事業者というのは、製造業・建設業・運輸業などの業種の場合には従業員数が20名以下の事業、サービス業やその他の事業の場合には従業員数が5名以下であることを言っています。この条件に当てはまれば「国民生活事業」に該当します。一方で、「中小企業事業」は資本金が1000万円以上で5年以上の貸し付けをする場合が原則です。また、国民生活事業に当てはまらない場合に「中小企業事業」に該当することになります。日本政策金融公庫の融資では、「国民生活事業」に当てはまったほうが金利が安くなるなど有利になります。

さて、ここから多くの方から質問をいただく「無利子・無担保」というのを説明します。

まず、「無担保」ですが、この「新型コロナウィルス感染症特別貸付は現在、原則「無担保」です。 そして、「無利子」の方ですが、これは正確には、借入当初から最大で3年間、利子の部分について補助を受けるというものです。4年目以降は利率が変更になるのですが、その利率が変更になる前の3年間が実質、無利子になるというものです。

この「新型コロナウィルス感染症特別貸付」に該当しているうえで、次の要件に当てはまった場合に「無利子」となります。

  • 個人事業主・・・要件なし
  • 小規模事業者(法人事業者)・・・売上が前年同月比15%以上減少している
  • 中小企業者(上記➀➁を除く事業者)・・・売上高が前年同月比で20%以上減少している

上記の②の小規模事業者というのは、従業員数が5名以下(製造業等は20名以下)の場合です。売り上げの減少が著しい場合、これを使って実質、無利子にできるという話です。

また、日本政策金融公庫の融資制度では、借入当初から最大で5年間は利子のみの返済とする返済の据え置きが可能です。加えて、設備資金なら最大で20年以内、運転資金なら最大で15年以内の貸し付けが可能となっています。また、貸付額も最大で国民生活事業なら6000万円、中小企業事業は3億円が限度額となっています。もちろん審査次第なので、据え置きや返済期間、借入額については限度額いっぱいまでできるということではないですが、余裕をもって融資を受けることは可能であるということです。

せっかくこうした融資があるのでこれを使わない手はありません。保証協会を使った融資や日本政策金融公庫の融資などを組み合わせてこのコロナ関連での不況を何とか乗り切ってもらいたいと思います。



12月決算、確定申告、コロナウィルス・・・

いろいろと重なってなかなかブログが更新できませんでした。今日は久しぶりの更新です。

今日のテーマは新型コロナウィルスに対する中小企業対策の話です。

この1週間くらいの間に相次いで政府が対策を発表しています。

現状で分かっている範囲で、中小企業対策として出ているものをまとめましたので参考にしていただければ幸いです。

中小企業の経営者の観点からこの新型コロナウィルスに対する中小企業対策をみると大きく三つあります。いろいろなものが出ているのでわかりづらいかもしれませんが、三つと分類すると理解がしやすくなるのではないかと思います。

  • 確定申告期限が延期されています

これはネットのニュースやテレビなどの報道でも大きく報じられているのでご存じの方も多いでしょう。今回の新型コロナウィルスの関係で、大勢の人が確定申告期限の税務署という狭い空間に集まってしまい感染が広がることを防ぐという観点から、申告期限が3月16日(今年は3月15日が日曜日のため、もともと期限が3月16日になっていました)をちょうど1か月延期して、4月16日になっています(4月15日ではないです)

対象の税目は、「所得税」「消費税」「贈与税」です。

もともと個人事業者の消費税の申告期限は3月31日ですから、消費税に関しては1か月ではなく16日延期されることになります。

また、申告の方がクローズアップされているので見落としがちですが、申告に伴って納付の方も延期になります

ここで問題なのは振替納税がどうなるのかです。振替納税(口座から引き落としになる方法)での所得税の支払いの場合、いつ口座引き落としになるのかが現状(3月5日時点)では発表されていません。納付書で納付する場合には、申告期限の4月16日でいいのですが、振替納税の場合、いつ引き落としになるのか、この点は国税庁の発表を待つ必要があります。

それから、対象税目が「所得税」「贈与税」「消費税」となっています。法人の申告は延期にはなりません。すでに終わっていますが、12月決算法人の申告・納付、1月決算法人の申告・納付は従来通りです。

  • 緊急融資対策が出ています。

新型コロナウィルスに対する中小企業対策として私がある意味、最も注目しているのはこの融資の関係です。

新型コロナウィルスの影響で売り上げの減少が現に発生していたり、見込まれる場合、金融機関の制度融資が創設されています。

「制度融資が創設」と書きましたが、実際には従来ある制度の要件を緩くしたものです。大きくは次の二つです。

日本政策金融公庫のセーフティネット貸付

従来からあるわけですが、通常の要件は前年同月比の3カ月平均で売り上げが5%以上減少していることというのが主な要件にありました。この5%売り上げが減少するという要件がなくなり、今回のコロナウィルスの関係で売り上げの減少が認められる場合にも対象となることになりました

このセーフティネット貸付は、現在、日本政策金融公庫での融資を受けていてもそれとは別枠でされている融資制度なので、利用がしやすいといえます。

ちなみに、金利は中小事業の場合、1.11%(2月3日現在の金利です。経済産業省の資料によります)ということです。

信用保証協会融資の4号融資・5号融資

これも従来からあるもので、公庫のセーフティネット貸付に似ています。従来の要件としては、前年同月の3カ月平均の売り上げが5%以上減少するというのが主な要件です。これを3カ月平均ではなく、前年同月の1ヶ月だけでいいとなっています。

実際に売上の減少がある場合には、②の保証協会の制度も検討に値しますし、来月以降、売上の減少が見込まれるような場合には政策金融公庫のセーフティネット貸付を検討してもいいでしょう。

融資に関しては、資金が底をついてからでは遅すぎます。早め早めに対応をするのが鉄則です。その意味で、現状で、例えば、介護施設などでデイサービスの利用控えが発生している場合や治療院などでも患者さんが減少している場合など、新型コロナウィルスの影響がすでに売り上げに出ている(あるいは影響が出る見込み)場合には、先手を打ってこれらの制度融資の活用を考えてもいいと思います。

  • 雇用調整助成金の要件が緩和されています。

今回の件で、実際にコロナウィルスに感染したり、感染にまでは至らなくても休ませたりした場合に使える可能性があるのが雇用調整助成金です。

会社の命令で社員を休ませた場合、欠勤なので給与から控除するわけですが、会社が命令して休ませる場合、その分、給与を保障しないといけません。控除した金額の6割を休業補償として支払わなければいけないというルールがあります。これを休業補償といいます。この休業補償を支払った場合、その支払った金額の範囲で雇用調整助成金という助成金が出ます。この助成金は従来からあるものですが、今回はこの要件が緩和されています。本来はこの助成金を使う場合、先にまず計画書を出さないと対象にならないのですが、今回のコロナウィルスが原因で休業命令をした場合、計画書は5/31までにあとから出せばいいことになっています。

また、本来は前年同月の3か月で比較して売り上げが10%以上減少している場合に対象になるものですが、1ヶ月で比較していいことになっています

休ませるのはコロナウィルスの感染でなくても単に発熱して休ませる場合にも対象になります。もしこうした社員がいて、売上が前年同月と比べて下がっている場合、使える可能性があります。

助成金の金額は休業補償で支払った額の3分の2(労働者1名あたり1日8,330円が上限)とされています。

ただ、この助成金は対象となるのは雇用保険に加入している方です。雇用保険に加入していない非正規雇用の方(パートなど)は対象となりません。この点が現在、問題となっている点で、政府はこうした方も対象となるような助成金制度を創設するといってはいますが、現状では雇用保険未加入者の方たちをフォローする制度はないようです。

以上が中小企業向けの新型コロナウィルスに対する中小企業対策です。

振替納税がいつになるのか、非正規雇用の方が休んだ場合の雇用調整助成金に代わる助成金制度はどういうものなのか、などまだ不透明な部分があります。

わかった範囲でまたこのブログでもお伝えできればと思います。




さて、今日は税理士向けの日本政策金融公庫のセミナーで使われた「金融機関が見る融資審査のポイント」というレジュメを参考に、主に、日本政策金融公庫の融資の際のポイントについて、書いていこうと思います。

以前にある顧問先の社長に「銀行に貸してもらえるように化粧して奇麗な感じの決算書にしてほしい」と言われたことがあります。この社長の言っていることは「悪い部分も化粧で隠して見栄えのいいようにして」というかなりわがまま?なものを意味していたわけなのですが、ですが、見栄えのいい決算書というのは確かにあります。その見栄えのいい決算書というのは、実はよく理解していない税理士は多いのです。

このブログは主には中小企業の経営者に見ていただけるように書いています。その意味でいえば、中小企業の経営者もこれを知っておいて見栄えのいい決算書にしてもらうように税理士にお願いする、そのお願いのポイントというのを知っておいてほしいと思います。

さて、今日、紹介する公庫のレジュメの審査のポイントですが、まずは前提として創業融資以外の通常の融資の話を前提にしています。公庫のレジュメに沿ってお話をしますと、ポイントは大きく四つあります。

ポイント1:ヒトとモノ

○ヒト

・信頼性・・・経営者自身が正直かどうか

・謙虚さ・・・他人の意見を聴く姿勢があるか

・決断力、責任感・・・迅速な決断を行っているか、失敗の言い訳をしていないか

・計数観念・・・数字の見通しを自分の言葉で語れるか

○モノ

・製品(商品)力・・・市場に受け入れてもらえる独自性のある製品(商品)があるか

・技術力・・・他社と比べてどの点に優位性があるか

・サービス・・・他社とどこが違うのか、従業員の能力はどうか

・販路・・・どうやって市場を開拓したか、これからどう販路を開拓するのか

上記のようなものを総称して「定性評価」といいます。これらは決算書などの数字には表れない評価項目です。しかし、こうした点も一つ一つ、評価されているのです。なにげない会話から、経営者自身の人となりを判断しています。金融機関の人間は、そうしたことが習慣化されています。それは中には(特に新人だと)そこまで頭の回らない担当者もいるでしょう。しかし、こうした経営者自身の人となりや、会社自体の持つ販売力といったものは、特に近年の融資審査のポイントには重要な部分を占めています。銀行に行くときはこうしたことも見られているという意識は持つようにしましょう。

ポイント2:売上高、利益

○売上高

・企業のサイズ(規模)を売上で把握

・誰に、何を売って、いつ売上にあげて、いつ回収しているのかを確認

・取引先別、月別、店舗別といった形での売り上げも確認

・決算以降の売上の把握

○利益

・「利益+減価償却費」が返済財源の目安

・赤字の場合には、その理由と今後の方針

・今後の利益の見通し

ポイント1が「定性評価」であるのに対し、売上高や利益といった決算書から読み取れる数字のことを「定量評価」といいます。この「定量評価」の中でも「売上」と「利益」が最も重要なポイントです。

まずは、売上です。売り上げの中でも金融機関が気にするのは、「いつ売上に計上して、どのくらいのサイクルでその売り上げを回収しているのか」という点です。たとえば、2か月で回収しているのであれば、売上の2か月分が売掛金に計上されているはずです。その分は現金が入ってくるのがあとになるわけです。そうすると、その分の資金が足らなければ金融機関から借入で賄わないといけないと判断されます。このように、「いつ売上にあげていつ回収しているのか」というのは融資とも直接かかわりのある大事なポイントです。面談の際などに、こうした点は必ず、確認されるはずです。

また、売上というのも単にトータルの売上だけではなく、取引先別、月別、店舗別といった部門別の売上という細分化した情報も金融機関が知っておきたい点です。こうした点を整理した資料を用意しておくと大変、印象がいいわけです。

また、利益で最も大事なポイントは「利益+減価償却費」を返済財源として考えているという点です。ここでいう「利益」というのは普通は「経常利益」のことです。決算書がお手元にあれば、損益計算書を見てください。「経常利益」となっている部分がありますよね。その「経常利益」に「減価償却費」を足した金額が、一般的には「返済原資」と呼ばれます。返済額がその範囲であれば、お金を貸せると判断しているわけです。

また、「今後の見通し」も是非、聞きたいポイントです。たとえ赤字であっても理由のある赤字なのか、今期赤字でも来期以降、巻き返せるのか、その辺が知りたい情報なわけです。その辺もきちんと整理して金融機関の担当者に伝えられるととてもいいわけです。

ポイント3:自己資本、借入金

○自己資本

・中小企業の場合、経営者の個人資産や個人の負債はどうなっているのか

・債務超過の場合、債務超過であっても企業が存続できたのであればそれがなぜか

○借入金

・借入金の残高明細(金融機関ごとの借入残高、1年間の返済額、利率など)

・継続的に借り入れ可能な状況か

ポイントの3つ目は主に、貸借対照表の項目です。

金融機関が貸借対照表を見る場合、決算書の貸借対照表はそのままは見ていません。ほとんどの中小企業が個人と法人というのは実質的に一体です。ですから、個人の資産や負債の状況もあわせて加味します。また、ポイントの2でやった「経常利益+減価償却費」の金額と1年間の返済金額を比べて、1年間の返済金額の中に「経常利益+減価償却費」が収まっているかも確認します。

ポイント4:貸付金・仮払金、その他

○貸付金・仮払金

・代表者の貸付金や仮払金がないか・・・実質的に資産とはいえないものが含まれていないか

・将来的に貸付金や仮払金は解消可能か

○その他

・1期前、2期前の決算書と比較して、良い方向に向かっているか、悪い方向に向かっているか。

・損益計算書の変化と貸借対照表の変化とに整合性があるか

ポイントの4つ目は、これらは要するに、決算書上の「汚れ」がないかという点です。

たとえば、貸付金といっても会社が社長へ貸しているお金だったりすると、中小企業の場合、実質的にそれは返さなくていいお金だったりします。仮払金も同様です。代表者へ仮払いしたお金で、実質的に返さなくていいお金だったりすると、資産性があるとは言えなくなります。こうした実質的に資産と言えない項目については、なかったものとして貸借対照表を作り替えます。

また、公庫などの金融機関では、決算書を2期か3期、比較してみます。すると、会社全体がいい方向に向かっているのか、はたまた悪い方向に向かっているのかがわかります。たとえば、売上が3期くらいで比較してみた場合、2割増くらいに増加していたとします。仮にその売上の伸び以上に人件費が増えていたとしたら、売上の伸びが人件費の伸び(売り上げの増加に伴う人員増加)に追いついていないだけで、人が増えたとことによる売上増加はもう少し時間がかかるとか、説明がつけばいいわけです。

また、例えば売り上げは伸びているのに、売掛金が異常に増えているとか、利益は増えているが、在庫(棚卸)も増えているとか、そういう状況があったとします。そういう状況だと決算書の数字はそのまま鵜呑みにできないと判断するわけです。売掛金を増やして売り上げを増やし、見栄えをよくしようとしただけではないのか、あるいは在庫が増えて、在庫の増えた分の利益が増えているのであれば、単に在庫を数字上だけで調整しただけではないのか、となるわけです。

要するに、決算書にあるウソを見抜くというのがポイント4です。

公庫のこのレジュメを今日は抜粋しながら、融資審査のポイントについて書きましたが、これらは決して難しい話ではありません。ある程度、決算書のわかる人であればだれでもわかるような話です。冒頭に書いたような「悪い部分も化粧で隠して見栄えのいいようにして」というのは、どこかでばれる話なわけです。結局、融資審査のポイントとしては、定性評価部分は社長の努力で何とかするしかないですが、定量評価の部分は売り上げを伸ばし、少しでも利益を出すようにするしかないわけです。

公庫のレジュメからも、結局、「売上を伸ばし、利益を増やす」という当たり前のことしかないというのが融資のポイントだというです。

以上、今日は公庫の融資審査のポイントという話でした。




前回、信用金庫と信用組合の違いの話をしました。

今日は、銀行と信用金庫・信用組合はどう違うのか?中小企業は数ある銀行の中で、どう付き合っていったらいいのか、というような話をしたいと思います。

yjimage

ここでは、法律的な部分の話ではなく、ここでは、実際、中小企業は銀行や信用金庫・信用組合をどのように考えて、どう付き合ったらいいのかを考えてみたいと思います。

銀行や信金・信組といっても、結局、中小企業にとっては、「普通預金」「定期預金」などはお金を預けるものであり、必要な時にお金を借りるところ、という意味では何も変わりません。

では、数ある銀行や信金・信組をどう選んだらいいのか?

普通預金や定期預金は今時、どの銀行でも差はありません。問題は、お金を借りる場合です。ここに差が出てきます。中小企業が必要な時に必要な資金を引き出せることが銀行との付き合いには一番大事なことです。では、どう判断して選んだらいいのか?                         私は、おおよそですが、次のように分類して考えています。

信用金庫・信用組合・・・年商1億円未満の事業者

地方銀行・第二地銀・・・年商5億円前後の事業者

都市銀行・・・年商10億円を超える事業者

いわゆる「メインバンク」をどこにするのか?これは中小企業にとっては大きな問題です。私はおおむね、上記のような基準で考えたらどうか、とよく顧問先には言います。

銀行にも規模があります。信金や信組の主な取引先は、街の商店だったり、比較的小規模な事業者です。ほとんどが、年商数千万の企業です。年商が1千万いかない個人事業主も数多く扱っています。信金や信組はそうした取引先が主な取引先ですから、年商が1億を超えるような企業では、信金や信組にとっては、「少し重い取引先」と思われる相手なわけです。年商が1億円を超えるようになってくると、信金や信組が普段扱っている取引先の規模からすると、少し大きな会社になってしまっているわけです。その場合、次の地方銀行や第二地銀をメインバンクに移行していくことがいいと思います。

地方銀行はわかりますよね? 横浜銀行、千葉銀行、常陽銀行、北海道銀行、静岡銀行・・・     要するに、地域で活躍しているような銀行ですね。

第二地銀はわかりますか? 八千代銀行、東京スター銀行、東日本銀行、京葉銀行・・・       特定の地域というわけではないですが、ある一定地域で活躍している銀行ですね。

地方銀行と第二地銀とどう違うのかとかは、金融庁の分け方の話なので、よくわからなくていいと思います。(実際、私も良くはわかりません)ですが、都市銀行と信金・信組の中間にあるような存在だと理解していただいていいのかなと思います。

たとえば、年商規模が1億円未満の中小企業が都市銀行をメインバンクにするのは、身の丈に合った選択ではないです。都市銀行の主な取引先は、年商規模が10億円以上の企業ばかりです。もちろん、年商が1億円未満の企業も取引はしてくれますが、きめの細かいサービスまでは期待できないでしょう。

繰り返しですが、どの銀行をメインバンクにするのかというのは中小企業の経営にとっては重要な影響があります。その際に、この基準にを参考にしていただければと思うわけです。

メインバンクというのは主にお付き合いする銀行です。必要な時に必要な資金をお願いできる銀行と言ってもいいと思います。年商が1億円いかない中小企業が都市銀行にそれを期待するのは、難しい話なんです。逆に、年商規模が10億を超えるような企業が信金や信組で借入をするとなると、普段の取引先の何倍ものお金を用立てするお願いをそれ信金・信組にお願いするのは「少し荷が重い」わけです。そんなわけで、どの銀行にするのかを決めることは中小企業にとっては非常に重要なわけです。

上記のような年商規模をもとに、メインバンクを決めてみてはいかがかと思います。