さて、今日は最近、医療・介護の分野で関心が高く、質問も多くなってきた医療・介護・障害福祉に従事する職員に対する「慰労金」事業について、解説していこうと思います。
この事業は「新型コロナウィルス感染症緊急包括支援交付金」というものの一環として医療や介護に従事した職員に交付されるものです。基本的には本ブログでは介護事業所向けに書いていきますが、内容的には医療分野も同じとなりますので、医療の方がご覧になる場合も参考にしていただければ幸いです。
まず、この慰労金事業は職員に対して支給されるものです。利用者と接触する機会のある職員であれば、事務員、ドライバーなどの職種を問わず、支給対象となります。これについては、厚労省のQ&Aにもどこまでの職員が範囲に含まれるのかについて、次のように書かれています。
「病棟や外来などの診療部門で患者の診療に従事したり、受付、会計等窓口対応を行う職員は通常該当します。また、診療には直接携わらないものの、医療機関内の様々な部門で患者に何らかの応対を行う職員等は医療機関における勤務実態等に応じて該当するものと考えられます。一方、対象期間中はテレワークのみによる勤務であったり、医療を提供する施設とは区分された当該法人の本部等での勤務のみであったなどの場合は該当しないと考えられます。」
さて、この慰労金ですが、大きくポイントは5つあります。
まずは一つ目のポイントです。利用者や事業所にコロナウィルスの感染者がいるかいないかは問わないという点です。趣旨としては、「介護施設・事業所での集団感染の発生状況を踏まえ、相当程度心身に負担がかかる中、強い使命感を持って、業務に従事していることに対し、慰労金を給付する」となっていることから、コロナの感染の有無は問わないわけです。ただ、コロナの感染が利用者や事業所にあったかどうかによって給付額が変わるわけです。「感染者が発生・濃厚接触者に対応した施設・事業所に勤務し利用者と接触する職員感染者と接触した」場合には20万円となっており、それ以外は5万円となっています。特に新型コロナウィルス感染症の患者さんと接触がなくても受け取れる対象となります。
ポイントの二つ目は非常勤職員などでも給付金を受け取れるということです。対象期間とされているのが各都道府県で新型コロナウィルス感染症患者の1例目が出た発生日から6月30日までの期間に10日以上の勤務があれば給付金を受け取れる対象者となります。10日以上というのは勤務時間は問いませんので、たとえば1日1時間程度であっても対象期間中に10日の勤務日数があれば対象となります。また、夜勤者の場合、たとえば19時からの勤務で翌朝の8時までの勤務だったとします。この場合、日をまたぐので2日とカウントされます。
それから、たとえば岩手県のように新型コロナウィルス感染症の感染者がいない地域であっても緊急事態宣言の対象とされた4月16日が始期となり、6月30日までの期間が対象期間となります。この期間に10日以上、勤務があれば岩手県の事業所も対象となります。
ポイントの三つめはあくまでも受け取れるのは職員本人で、事業所は取りまとめるに過ぎないという点です。この慰労金の支給に際しては、個々の職員から委任状を取って、事業所で取りまとめるということになっています。事業所にいったん入金はされますが、会計処理上は要するに「預り金」なわけです。処遇改善加算は入金があった金額は売上金の一部ですが、この慰労金は事業所に入金があっても「売上」ではありません。単に預かっているお金です。職員に必ず渡さないといけません。ちなみに、この慰労金は所得税や住民税は非課税となります。税金はかかりませんから年末調整などの際に慰労金の分は入れる必要はありません。介護事業所で働くパートさんなどの非常勤職員の場合、扶養の範囲で働く職員も多いはずです。慰労金は非課税ですからこの点は気にしなくていいことになります。
ポイントの四つ目は、この慰労金の請求は国保連を通じて行うということです。レセプトの請求は通常、翌月1日から10日です。慰労金の請求はそれとは別に、15日から月末となっています。(7月については7月20日から7月末までとなっています)たとえば、8月15日から8月末までに慰労金の請求をしたとすると、9月末までに入金されます。職員にはその後に支給という形になるわけです。通常のレセプト同様、伝送請求が基本となります。
それから、ポイントの5つ目はこの慰労金は受け取れるのは1事業所のみ、1回だけということです。特に訪問介護の職員の場合、複数の事業所で働いていることはよくあります。ですが、受け取れるのはあくまでもそのうちどこか一つの事業所です。
また、現状で勤めていた介護事業所を退職していたとしても事業所を通じて慰労金の請求ができます。ただし、何らかの理由で退職者が事業所を通じて受け取れない場合には、勤務証明書などを添付して、個人で請求することも可能となっています。
また、仮に1人の者が複数の事業所で受け取った場合、これは不当利得として返還することとなりますので注意しましょう。
この慰労金の制度を受けて、積極的に慰労金を賞与的に早めに支給したいとする事業所もある一方で、まだ詳細を把握しておらず、そもそも職員への周知もしていない事業所も多いようです。
是非この機会に概要を把握していただいて、是非、職員の皆さんへの慰労金の支給をしていただければと思います。