さて、今日は前回に引き続き、外国人の年金の話です。
外国人は厚生年金に加入しても日本の年金はもらえない。だから、年金に加入したくない、と言われたときにどう対処すべきか、考えてみましょう。
まずは「合算対象期間」の話です。「カラ期間」などと呼ばれたりもします。
これは、たとえば、日本国籍があって海外に居住している人は、日本の国民年金を払ってもいいし払わなくてもいい任意加入であったりします。
そういう期間は、年金をもらうのに必要な10年という期間のカウントには入れるというものです。ただし、年金を支払っていなければ年金額には反映されません。
この例示は日本年金機構のHPの以下のページに載っていますので参照してみてください。↴
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/jukyu-yoken/20140421-05.html
ここに載っているもので、たとえばこんなものがあります。
「昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方又は永住許可を受けた方の、海外在住期間のうち、取得又は許可前の期間」
今は日本国籍を取得して日本人になっているが、日本人になる前の海外に在住していた期間があれば、それは合算対象期間とすると言っています。
たとえば、平成29年4月に日本人と結婚して日本に帰化した方がいるとします。仮に40歳だったとしましょう。この人が来日したのは5年前だったとします。日本に来る前の35歳より前の期間については、海外に在住していたとします。そうすると、20歳~35歳までの期間は合算対象期間となります。この場合、20歳から35歳で15年になりますから、年金の受給権は発生するわけです。つまり、日本に帰化することで、日本の年金の支払いをすればその分、年金がもらえるようになるわけです。
外国人の場合、この合算対象期間というものが当てはまる期間があるかどうかをよく検討しないといけません。
また、日本人が海外で働く場合、働いている国の社会保障制度に加入をする必要があります。この時、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が生じています。また、日本や海外の年金を受けとるためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、保険料の掛け捨てになってしまうことがあります。そのため、保険料の二重負担となったり、掛け捨てにならないようにするために、日本の年金加入期間を協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)とを目的としたものが社会保障協定です。
たとえば、ドイツやアメリカ、フランスなどはそれらの国の年金制度と日本の年金制度は通算されます。この制度を使えば、ひょっとしたら、仮に外国人が厚生年金に加入した場合、年金制度が通算される可能性があります。(イギリスや韓国などは、年金の通算ではなく、二重負担防止の規定のみになっています)
ただし、これらの国について、無条件に通算されるわけではなく、各国の制度によって違いがあります。それらはよく調べないと通算できるかどうかはわかりませんので注意が必要です。
各国の社会保障協定による年金の通算については、日本年金機構のHP↴をご参照ください。
http://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html
細かい制度の中身は置いておいても、ここで大事なことは、外国人が厚生年金に加入しても、年金はもらえないと、安易に判断しないことが大事です。
合算対象期間を使って年金の受給ができることもありますし、加入した年金が通算されるために掛け捨てにはならない場合もあります。経営者の皆さんが外国人を雇った場合、辞めた時に脱退一時金をもらうべきかどうなのか、これらの話を踏まえて十分検討するようにお伝えするのがいいのではないかと思います。