さて、今日は治療院の法人化の話です。
治療院が法人化するメリット・デメリットというのはよく言われた話なのでご存知の方も多いでしょう。法人化するメリットは何といっても「法人から役員報酬をもらう形にすることで節税が図れる」ことです。そもそも法人化するのは節税のためというのが最も一般的な理由でしょう。
しかし、治療院が法人化するもう一つ大きなメリットがある のはあまり語られない部分です。
治療院というのは、柔道整復師、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師などの国家資格者だったり、セラピストなどの民間資格者だったりがやるケースが多いはずです。法律的な言葉を使えば、その院長先生の一身専属な権利によっているわけです。
要するに、他に変えられない人がやっているのが治療院の経営です。
このような治療院経営の状況において、たとえば、院長先生に何かあったらどうするのでしょうか?
怪我をする、病気になる、亡くなってしまう・・・
経営者である院長先生が亡くなってしまったら、個人事業の場合、そこで働いている従業員さんはどうなってしまうのか。
この答えに、かなり古い裁判例があります。昭和25年の裁判でこんなことが書かれている判例があります。
「企業経営者が個人の場合における相続、法人の場合における相続においては、相続人または新会社に一切の権利義務が包括的に承継されるので、このような場合には、企業主体が交代しても労働契約は継続しているものと解されて、従前の企業主体との労働契約関係は、解雇によって消滅したとみる必要がない」
つまり、個人事業主が亡くなっても、その個人事業主の相続人にその事業が相続される と言っているわけです。
治療院の場合、院長先生の奥さんだったり、お子さんだったり、お父さん・お母さんにいったん相続されます。亡くなったこと自体では事業は終わりにはならないわけです。
しかし、治療院の先生もお分かりの通り、たまたま相続した、たとえば奥さんが治療家の資格者であればいいですが、治療家の資格を持っていない人が相続人になることがほとんどでしょう。そうなると、事業の継続自体、できないことになります。
さて、どうするのか。
このような場合には、院長先生の相続人にいったん事業自体が相続されて、その後そこで働いていた従業員さんには辞めてもらう、つまり、解雇するということになるんだろうと思います。
何が言いたいのか、わかりますか?
つまり、個人事業の場合、結果として従業員さんを守れないことになってしまうわけです。
これが、法人だったらどうなるのか?
法人化した後、私は治療院の先生にお勧めすることがあります。
それが法人名義での生命保険の加入です。この目的は二つあります。
一つは、将来、治療院を閉院する際に、院長自身がその生命保険を解約して、その解約返戻金相当額を院長自身の退職金にあてられます。つまりは、法人という組織を使うことで院長自身の退職金を支払うことが可能になるわけです。個人事業では自分で退職金というのはできません。一方で、法人化することで院長先生ご自身が法人から退職金をもらうことができるようになります。(小規模企業共済というのを使えば退職金の支払いができるのですがそれは法人化しても継続できるので、個人か法人かにおいては差がない部分です。)
もう一つは生命保険の本来の趣旨です。つまり、院長自身が亡くなった時、保険金が会社に入ります。その保険金で従業員さんに給与を支払ったり、あるいは、院長が亡くなって事業継続が不可能であれば従業員さんにいくらかの退職金も支払うことができます。また、ご家族がいらっしゃれば、ご家族に死亡退職金も支払うことができます。つまり、法人という組織を使うことで、結果として従業員さんだったり、院長自身ご家族も守れるわけです。
もちろん、個人であっても生命保険に入れます。しかし、法人と個人の最大の違いは個人では生命保険料控除で年間4万円しか控除できません。一方で、法人で生命保険に加入すれば定期保険であれば支払額の半分は損金として経費処理できます。落とせる金額が法人の方が大きくなります。
このように、法人化するということは「節税」だけではなく「万が一の備え」にもつながるというわけです。
一般的には法人化というと、節税を図るといった目的に焦点が当てられがちですが、治療院で働く従業員やご家族を守ることもできるんだということも知っておいていいことだと思います。
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