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この時期は税金の出費が多い時期です。また、事務処理すべき書類が多い時期でもあります。そのことは把握していますでしょうか?

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どんなものがあるのか、まとめてみました。

 

労働保険の申告納付・・・6月1日から7月10日

算定基礎届の提出・・・7月1日から7月10日

源泉所得税(納期の特例)の納付・・・7月10日

固定資産税の納付・・・6月末

普通徴収の住民税の納付・・・6月末

 

これらに加えて、算定基礎届に関しては、新規に社会保険に加入した事業所は社会保険の調査の案内が来ていると思います。また、算定基礎届にあわせて、調査対象になっている事業所もあるはずです。算定基礎届の提出時に、賃金台帳などの書類を用意しないといけません。

 

この他にも治療院の場合、「事業税のお尋ね」が来たりしていると思います。保険診療と保険診療以外の内訳のお尋ねです。この回答もだいたい今の時期です。

介護事業所の場合、7月は処遇改善加算の報告書の提出があります。ほぼすべての介護事業所で該当するはずです。提出期限は7月末です。

 

このように提出すべき書類や支払うべき税金が多いのがこの時期なのです。

これらについて、次回以降、順番にこのブログでご紹介していこうと思います。



さて、今日の話は前回の続きです。

前回は、給与と外注とはどう違うのか?経営者側の視点、施術者側の視点、そして、それ以外に外注の場合にどんな問題があるのかについてお話していきました。今日は、「どういうケースが給与となり、どういうケースが外注となるのか」について、具体的に見ていきましょう。

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詳しくみていく前に、前回のブログに書きましたが、前提を整理しておきましょう。

「給与」=「雇用契約」=「労働をしたからお金を払う」

「外注」=「請負契約」=「仕事が完成したからお金を払う」

 

わかりやすく言えば、出勤後、大雪で治療院がお休みになった場合、「給与」の場合であれば、仕事をしていなくても出勤したこと自体を「労働」と判断して給与は出るが、「外注」であれば、仕事はやっていないので「仕事の完成」はしていないため、報酬はゼロになるということです。

 

さて、この基本的な理解を前提に考えていきましょう。

実は、この給与か、外注かというのは税務上も何度も問題になっており、裁判例がいくつかあります。それらを見ていくと、どう考えればいいのかがわかってきます。

 

たとえば、こんなケースです。

急病になって、自分でない代わりの職人を現場に派遣した大工さんのケースです。その場合であっても報酬は本人に支払われました。これは、結局、どういう形であれ、「仕事の完成」が目的だから代わりの人を寄越しても、報酬が支払われるということです。この場合には、「外注」とみなされる可能性が高いです。

 

また、こんなケースもあります。

現場監督から逐一、指示があり、指示に則って仕事をしているとか、仕事の時間が何時から何時と決まっているようなケースです。これは「仕事の完成」を目的としているというよりは、「労働」したからお金が支払われるという側面が強いです。この場合には、給与となる可能性が高いです。

 

また、本人はペンチ、ナイフ、ドライバー等を所持しておらず、もっぱら現場にある道具を使っているとか、通勤するための費用をもってもらうなどの場合など、これらは「給与」となる可能性が高いです。

 

実際に裁判になった例をいくつか、書きましたが、これらの特徴はどれか一つを見て「給与」か「外注」かを判断しているわけではないということです。いくつかの例をみて総合的に考えます。

 

さて、このブログでは、こうした「給与」か「外注」かの判断で、治療院の施術者の場合、どう判断するのかについて、書いていこうと思います。

これについては、施術者への支払いを「外注」として処理したことが実際に裁判となっている例があります。この判決の内容は以下のようなものです。

 

「営業時間、施術内容、施術料金、出退勤時間などの業務時間、服装、休憩及び業務上の心得等の業務規則が定められていて、それに従わないといけなかった」

「営業方針や業務規則に従わない場合には、経営者は一方的に契約を解除することができていた」

「施術者は、施術所内にある設備備品を使用し、業務に従事していた」

このようなことから「外注」ではなく、「給与」である。

 

要約すると上記のような内容です。

実務上は、上記のようにいくつかの要素をみて総合的に判断しているわけです

 

また、よくあるケースとして、「歩合給」だから「外注」だということを主張される場合があります。しかし、「歩合給」というのは単に給与の支払い方の形態の一つであって、それだけで「外注」と判断するわけではありません。

 

「外注」とするにはいくつかのポイントがあります。そのポイントを一つでも多くクリアしていくことが不可欠というわけです。

 

上記に挙げたもののほかに、「給与」か「外注」かを判断する要素として、たとえば、こんなことが挙げられます。

 

〇「時間」に対して報酬が支払われているのではなく、施術した仕事に対して報酬が支払われていること(日給や時給、諸手当といった項目での支払いではないこと)

〇通勤手当は本人が負担していること

〇必要な施術道具などは本人が持参してくること

〇何時から何時までいないといけない、という契約になっておらず、仕事が終わったら帰れるようになっていること

 

また、もし「給与」ではなく「外注」としたいのであれば、きちんと「業務請負契約書」も交わしたほうがいいでしょう。その契約書には上記のようななるべく多くの要素を折り込んでいくべきです。

 

意外と奥の深い、「給与」か「外注」かの問題。これを機に、ちょっと考え直してみてはいかがでしょうか?



治療院をみていると似たような相談事例がいくつかあります。その相談の多い項目の一つが、施術師(柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師)への支払いは給与なのか、外注なのか、という話です。実はこの問題は大変奥が深く、やり方によっては治療院の経営を大きく左右するような問題になるという実に厄介な問題です。

今日は、なぜ給与なのか、外注なのかが問題になるのか という点について、まずはお話していきましょう。

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多くの治療院では、施術師への支払いは、経営者側の意図としては、できるならば給与ではなく外注にしたいと思います。なぜなのでしょうか。

 

給与だと、源泉徴収が必要になります。加えて、雇用保険にも加入しないといけないでしょう。社会保険にも加入しないといけなくなる可能性があります。特に、会社形態(株式会社や合同会社など)でやっている治療院の場合、給与にしてしまうとこの社会保険に加入しなければならないのが負担なわけです。個人であっても、雇用保険や労災保険には加入しないといけないわけで、いずれにしても、給与にすると雇用保険や労災保険、社会保険といった公的保険の負担が増えることが大きな問題になるというわけです。

 

また、施術師側も外注にすれば、かかった経費を自分で計算して税額を少なくすることも可能になります。正確にいえば、給与の場合には「給与所得控除額」という給与がいくらあるといくら控除できるのかというのが決まっているものがあるわけですが、その「給与所得控除」の金額を超える実額経費があれば外注にした方が税額が少なくなります

また、外注にして自分で申告する場合に、青色申告を選択したとします。その青色申告で申告する場合の「青色申告決算書」に貸借対照表をつけて提出すると、65万円の控除が受けられます。貸借対照表のない「青色申告決算書」の場合、10万円の控除になります。一方で、給与の場合の「給与所得控除額」には最低額、65万円というのがあります。つまり、給与の場合の給与所得控除額の65万円と、青色申告の場合に貸借対照表をつけると65万円とあるわけで、最低控除の65万円は同じです。外注にした場合、事業所得になるので、これに加えて自分でかかった実額経費を計上できるので、施術師側にとっても税額が少なくなる可能性があるわけです。

また、施術師にとっても、社会保険に入らなくていいのであれば手元に残るお金が多くなることから、外注にしてもらったほうがいいということもあるかもしれません。

 

このように、経営者側にとっても、施術師側にとっても、税金や社会保険の問題から給与でなく外注にしたがるということです。

 

しかし、外注にした場合、法律上の問題や税務上の問題などの様々な問題があります。

 

これを考える前に、「給与」で処理するというのはどういうことなのでしょうか?

逆に、「外注」で処理するのはどういうことを意味するのでしょうか?

 

給与ということは法律的には「雇用契約」にあるということです

一方で、外注ということは法律的には「請負契約」にあるということです

 

民法では、「雇用契約」というのは「労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」となっています。

一方で、「請負契約」というのは「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」となっています。

 

つまり、単純にいえば、「雇用」というのは「労働をしたからお金を払う」のであり、「請負」というのは「仕事が完成したからお金を払う」という違いがあります。ポイントは、請負契約の場合の「仕事が完成した」ということです。

 

では、「雇用契約」にせず、「請負契約」にした場合、どのような問題が生じるのでしょうか。たとえば、労災事故が起こったとします。施術中に施術者が何らかの理由でけがをしたとしましょう。雇用契約であれば労災が適用されますが、請負契約の場合、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約のため、事故の直接の責任について、経営者側は負いません。(間接的に責任はあるかもしれません)

また、たとえば、何らかの事故(大雪で患者さんが来なかったとか、施術者自身が風邪をひいて休んだとか)があっても、雇用契約であれば経営者がある程度の範囲で補償があるかもしれませんが、請負契約では補償はありません。

つまり、「仕事の完成」という部分以外は施術者自身が責任を負う形が「請負契約」なわけです

 

このように労災のことなどまで考えると、給与か外注かという問題は、単純に「損」「得」の話だけではないように思えます。

さて、次回は、給与か外注か、どこが分かれ目なのかについて考えていきましょう。

 



朝ドラ「ひよっこ」ですが、最終盤に差しかかっていています。

もちろん、ヒロインの「みね子」を演じる有村架純さんがどうなるのかも気にかかりますが、このブログは経営についての様々な問題をテーマにしたブログです。その観点から私が注目したいのは、そのみね子の茨城の実家で新事業を立ち上げる という話が参考になる話ですので取り上げたいと思います。

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朝ドラを見ていない人もいらっしゃると思いますので、「ひよっこ」のドラマのあらすじを簡単に説明しておきます。

物語の舞台は、前回の東京オリンピックがあった1964年(昭和39年)頃から始まります。茨城の山奥の村(奥茨城村という村)で高校生3年生になっていたみね子ですが、ある日、東京に出稼ぎに行っていたお父さんが突然、失踪します。突然のお父さんの失踪に、矢田部家の生活はひっ迫します。そんな状況の中、お父さんに代わって矢田部家を支えて実家に仕送りをするため、みね子は上京します。この時代にあったいわゆる「集団就職」です。その後の東京で働いていた会社が倒産し、失踪したお父さんが行ったことのある洋食店で働き始めていたところ、失踪したお父さんが見つかり・・・といった話が朝ドラ「ひよっこ」のだいたいの話の筋です。

 

さて、そのヒロインみね子の実家の矢田部家では、「そもそもこうやってみね子が東京に行って仕送りをしないといけない状況を改善しないといつまでたっても豊かな生活ができない」とみね子のおじさん(お父さんの弟)の宗男が新しい事業の立ち上げを提案します。

そして、新しい事業として提案するのが「花」の栽培ビジネスです。「花き」ビジネスといいます。

「花き」というのは、観賞用の植物と定義されています。現在においては、年間1兆円もの市場規模のあるビジネスです。

数字が大きくなると、わかりづらいので、同じ1兆円規模のビジネスを探してみると、野球やサッカー、ゴルフ、相撲などのプロスポーツがほぼ1兆円のようです。

 

ちなみに、私の関与することの多い治療院ビジネス(整骨院の他、リラクゼーションサロンなども含める)は4兆円規模だそうで、介護サービス事業はその倍以上のなんと9兆円にも上るビジネスだそうです。どちらの産業も市場規模が拡大傾向で、特に介護サービス関連産業は2025年には15兆円規模になるとの民間シンクタンクの試算もあるようです。

 

さて、オリンピックの後、この花きビジネスに参入しようというのはなかなか目の付け所が良かったと思います。まずは、全体を俯瞰してみた時に成長が見込める産業であった点です。このドラマでも語られていますが、昭和40年代というとみんなが豊かになってきて、「モノ」が足りてきている頃です。「花」を鑑賞したりという「ココロ」を満たす産業というのはこの時代の成長産業と言えます。

新しいビジネスを始めるにあたっては、こうした大きな視点からのものの見方というのは非常に重要です。日本全体、場合によっては世界経済の視点からの経済の動向から物事を判断していく物の考え方が必要です。

また、コストの面からもプラス面が多いと言えます。花は最初の苗木や種などはコストがかかりますが、最初、きちんと育てられればその後のコストは抑えられます。また、地理的に見ても茨城から大消費地の東京へは遠いわけでもなく、輸送コストが比較的かかりません。コストが低く抑えられれば、仮に少ない売り上げであっても利益を出すことがより容易になります。同じ100万円の売上でも、原価が10万円しかかからない場合と50万円も原価がかかる場合とを比べてみればわかります。人件費が同じようにかかるのであれば、原価がかからないビジネスはそれだけ利益が上がりやすくなるだけでなく、リスクも少ないということが言えます。

 

また、もともと農家ですから、「植物を育てる」という意味では比較的今までやっていたことに近いビジネスです。これも重要な要素だと言えます。これからやる産業が全く新しい分野だとなかなかとっつきづらいです。いくら成長産業と言っても全く経験のない分野のビジネスを始めるとなると一から学びなおすことになります。

たとえば、治療院の先生がまったく経験のない農業を始めるというのを想像してみればわかります。軌道に乗せるまでに時間がかかりますし、コストもかかることが容易に想像つきます。すでにそのビジネスに参入している人に追いつくのに時間がかかるだけでなく、後から参入した人に追いつかれてしまうこともあるかもしれません。

 

朝ドラ「ひよっこ」では、この全体を俯瞰した考えを、ヒロインみね子のおじさんがやっています。そして、素人がいきなり全く知らない分野のビジネスを始めても上手くいきません。それを習う師匠もきちんと調べて、そこもケアしています。

治療院の場合、リラクゼーションサロンなどのビジネスが近いのと同じです。介護事業であれば家事代行サービスなどが近接ビジネスであるのと同じ関係と言っていいでしょう。つまり、今あるノウハウやマンパワー、場合によっては設備なども現状のものを使えることもあるでしょう。仮にそのビジネスがうまくいかなくなったとしても、全く違う産業に進出したのと違い、その設備やマンパワー、ノウハウは本業に使うことも可能です。また、違う近接ビジネスに使うこともできます。

 

新規事業に進出する場合のポイントをまとめるとこんな感じでしょうか。

  1. ビジネス全体を俯瞰して、成長が見込める分野であるかどうか
  2. 売上とコストを比較して、利益が上がることが見込めるか
  3. 現状のビジネスでのノウハウ、設備、ヒトを使える分野であるかどうか

 

これに加えていえば、資金が潤沢にあるかということを挙げてもいいと思います。銀行から借り入れをして資金準備をしてもいいと思いますが、とにかく何か始めるにあたっては、思ったよりもお金がかかるものです。資金が十分に用意されているのかというのも重要な要素です。

 

治療院でも介護でも、昨今医療保険や介護保険という国の「保険」が低調気味です。

しかし、これらの産業全体としては、先ほど書いたように拡大基調にあるビジネスです。

視野を広げて、自分の今あるノウハウに少しだけプラスアルファすることで何ができるのかを考えるという視点は朝ドラ「ひよっこ」からも学べる点だと思います。



今回は前回の個人事業税の話と対比して、法人事業税の話です。

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法人事業税の話と言っても、実はいたってシンプルです。

個人事業税のような「非課税」部分は法人事業税にはありません。

つまり、法人事業税は法人税の金額が出た場合、通常の法人と同じように計算するわけです。

 

個人事業の治療院の場合、社会保険診療にかかる部分は非課税でした。この話を前回のブログでしました。ですが、法人になると治療院の事業税が非課税になる規定はありません

 

法人の事業税が非課税になる規定は、地方税法第72条の23第1項というのが根拠になっています。

これによると、法人事業税が非課税になるのは、「医療法人」や「農業協同組合」が社会保険診療を行った場合に限定されています。

ですので、普通法人の治療院は事業税が課税されるわけです。

 

医療法人は医師(もしくは歯科医師)でないと設立できない法人です。

柔道整復師や鍼灸師は医療法人を設立できません。法人化するとしたら普通法人(つまり、株式会社や合同会社など)になります。そうすると、法人事業税は課税されてしまうわけなんです。

 

ということは、医療法人の中でやっている治療院だったら、どうかというと、これは、社会保険診療の非課税の規定が適用されます

同じ治療院でも、医療法人の分院としてやっている治療院だったら社会保険診療部分は、個人の場合にあったように法人事業税の非課税の規定が適用されるわけです。

 

医療法人だけ優遇されていて、なんだか変な感じがしますが、医療法人の一部だったら法人事業税は非課税だが、それ以外は通常通り課税される。今の税法はそうなっているんです。

 

ちなみに、薬局なんかも、普通法人でやっているケースがありますが、これも同様です。法人事業税は課税されます。

 

ということで、治療院を個人から法人にした場合、法人事業税も通常の事業と同じように課税される点は、治療院を法人なりした場合のデメリットと言えます。

 

では、法人事業税はどのように計算されるのでしょうか?

 

まず、法人事業税は、収入から経費を引いた後の所得金額がいくらかによって税率が異なります。おおむねその所得金額の5%~9.6%の税金が課税されます。

 

計算がやや複雑な部分があるので、ここでは、所得金額に対して税率を乗じるんだという理解でいいです。

ですから、たとえば、赤字の場合、所得金額がゼロ以下になるので、法人事業税はありません。

 

治療院の先生としては、細かい税額計算の方法は置いておいて、「法人になると、個人に合ったときのような事業税の非課税というのはないんだ」と理解していただければいいかなと思います。つまり、法人の場合には事業税に関しては「保険診療から自費診療中心へ移行した場合」の問題というのは、基本的には考えなくてもいい問題ということになります。

ということで、消費税から事業税まで、「保険診療中心から自費診療中心へ移行した場合」の税金の問題についてでした。



今日で8月も終わりですね。

8月というと、夏休みだったりで、休みが多い季節です。少し中だるみになっている方も多いのではないかと思います。9月からまた頑張りましょう。

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さて、治療院が保険診療中心から自費診療中心に移行する場合の税金の問題をいくつか書いていました。もう一つ、税金の問題として事業税の問題があります。治療院の事業税って、いったいどうなっているんでしょうか。

 

というより、そもそも事業税って何?と思われるのではないかと思います。

事業税といっても個人の場合は「個人事業税」、法人の場合には「法人事業税」があります。

今日は、個人事業税について、理解していきましょう。

 

個人事業税は、収入-必要経費―専従者給与」の金額が290万円以上の場合に課税されます。つまり、青色申告特別控除前の金額が290万円以上の場合に課税されます。

そして、治療院の場合、さらに社会保険診療にかかる部分は非課税になります。

つまり、自費診療部分だけで290万以上だったら事業税が課税されます。

 

具体的な数字で考えてみましょう。

 

収入  保険診療収入     800万円

自費診療収入  1,200万円

収入の合計     2,000万円

経費合計         800万円

青色事業専従者給与    100万円

青色申告特別控除      65万円

差引所得        1,035万円

 

こんな感じだったとします。

事業税を計算するときは、次のような算式で計算します。

 

収入―経費―専従者給与―一定の控除額(290万円)

 

この例ですと、2,000万円―800万円―100万円―290万円で810万円ですね。この810万円から、治療院の場合、保険診療に係る部分は非課税ですからこれも引いて計算します。

この事業税のかからない保険診療部分の金額を求めるのに、収入金額の合計2,000万円から経費の合計800万円を引いた1,200万円を自費収入と保険収入の収入金額の比で按分します。

ですので、事業税の非課税の対象になる金額は、1,200万円×800万円÷2,000万円=480万円となります。

ということで、事業税の課税対象は810万円-480万円の330万円です。

 

そして特徴的なのが税率です。

個人事業税は通常の業種は、事業税率は5%なんですが、治療院の場合には税率は3%です。

ですから、この例ですと、事業税の課税対象の330万円に3%を掛けた金額が事業税です。ということで、330万×3%の99,000円が事業税の金額となります。

 

では、事業税の課税対象になるのは、どんな収入でしょうか?

まずは「自費収入」です。その他、たとえば、もし物品販売(サポーターなど)をしていたらそういったものも入ります

あとは、自賠責保険の収入です。交通事故などの自賠責保険に力を入れている治療院も多いですが、こうしたものも「自費収入」として事業税の計算には入れて計算します。

 

逆にいえば、事業税が非課税になるのはあくまでも、保険診療部分だけです。保険診療の収入以外は「自費収入」としてカウントします。

ということで、自賠責保険の収入は消費税は非課税ですが、事業税はかかります

 

ちなみに、細かい話ですが、預金利息はそもそも個人の場合、収入計上しませんので、その点はご注意ください。(個人の場合、「利子所得」という所得区分になるため、「事業所得」の計算にはそもそも入りません)

 

また、この治療院の事業税ですが、「あんま、マッサージ又は指圧、はり、きゅう、 柔道整復その他の医業に類する事業」となっています。

つまり、同じ治療院でも、民間資格である「カイロプラクティック」とか「整体院」は普通の事業での計算になります。

ですので、カイロプラクティックや整体院の場合、税率は5%です。もちろん、こうした治療院では、社会保険診療はないですから、非課税部分もないです。

 

保険診療中心だと事業税は非課税のためかからないわけですが、自費診療中心に移行すると、事業税の問題があるというのは、顧問税理士がいても説明されない部分かもしれません。

消費税に加え、事業税の問題があることも知っておいてほしいことです。



何回かに分けて「保険診療から自費診療に移行する場合の税金の問題」について書いています。今日は、自費収入の消費税を実際に患者さんからもらうことについて書いていこうと思います。

まず、治療院の先生からの質問でよくある質問です。

「うちは自費収入などの課税売上は1000万円にならないから消費税は払わなくていいわけだけど、患者さんから消費税を取っていいの?」

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結論としては、消費税という名目で患者さんの治療費に上乗せしてもらっても問題はありません。たとえば、1000円の自費治療だったら80円の消費税ということになり、1,080円を患者さんからもらうことになりますよね。消費税を納める必要がないのにこういうもらい方をしていいのかということです。消費税法上の考え方として、消費税の名目としてもらっているかどうかいうのは考慮せず、消費税という名目でもらった金額も含めた治療の対価としてもらった金額から消費税の計算をします。そのため、消費税という名目でもらって消費税を支払わなくても問題にはなりません。

消費税という名目でもらっても、結果として治療院の自費売上などの消費税のかかる売り上げが1000万円を超えなければ、それは結果としては国には納付しないことになりますが、それは消費税法の問題です。預かっている消費税を国に納めないという、これを俗に「益税」と呼びます。

 

上記のような治療院の先生からの質問に、ある税理士から聞いたという話で、「消費税は患者さんからもらっても問題ないんですよ。だって、いろいろと払う消費税があるでしょう。だから、患者さんから消費税をもらっても問題ないんです」と説明されたと言われたことがあります。これは間違いです。払っている消費税があるから患者さんからもらっていいというのは、消費税法の理屈からしておかしな話です。

消費税というのは、最終消費者が負担する税金なので、払っている消費税というのは最終消費者だから払っているだけです。

つまり、

消費者 ⇒ 事業者 ⇒ 国

という形で、最終的な消費者から事業者が受け取って、事業者が代わりに納めるのが消費税です。もらう消費税があるというのは、上記の事業者に該当するからもらうわけで、払う消費税があるというのは、消費者の立場になっているから払っているだけです。払った消費税は、原則的には、事業者を通じて国に納められます。

立場が違うから、治療院の自費売上は消費税を受け取っていいというだけです。

ただ、消費税法上の問題で、今は売り上げが1000万円以上にならなければ消費税を納めなくていいので、上記で言えば「事業者⇒国」の部分のお金の流れがないという話です。

(同じ税理士として、この辺はきちんと説明してほしいとは思います。)

 

私が「消費税分を患者さんからもらってもいい」と言っているのは、もう一つ、別の理由があります。それは、たとえばこういうことを考えてみればわかります。

個人事業者で、平成27年は自費売上が1000万円を超えていなかったのに、平成28年は自費売上が1000万円を超えて消費税を納めなければいけなくなってしまったとします。その場合、平成30年1月から消費税の課税事業者になります。

今まで、消費税分は特に患者さんからもらっていなかったとすると、平成30年1月からは患者さんから消費税をもらわないといけなくなります。

では、平成29年12月までは1000円だったのを平成30年1月から1080円にするのかという問題があります。患者さんにとっては、1000円でよかったのが1080円支払わないといけなくなるのであれば、ひょっとしたら他の治療院に行ってしまう患者さんもいるかもしれません。

課税事業者になったからそこから患者さんから消費税分をもらうようにする、というのは理屈としては合っています。合っていますが、理屈通りにすると、治療院の経営上の心配が出てくるわけです

では、どうするかということです。

どこかから消費税の課税事業者になる可能性があるのであれば、最初から消費税分をもらってしまう、もしくは途中から値上げをして消費税分をもらってしまうということが考えられます。

また、たとえば、上記の例で、平成29年は自費売上が1000万円を超えなかったとします。そうすると、平成31年は消費税を納めなくてよくなります。

課税事業者のときは患者さんから消費税をもらい、課税事業者でなくなったのであれば患者さんから消費税はもらわないというやり方をすれば、平成30年1月から12月の自費治療は1080円だったのが、平成31年1月からはまた1000円になるわけです。

このように料金が変わってしまうのは、患者さんから見たらどうでしょうか?大変わかりづらい話ですよね?

要するに、経営上の問題や患者さんの視点から考えて、最初から消費税をもらったほうがいいのではないかということです

 

もちろん、逆も考えられます。

つまり、消費税分は最初からもらわないというやり方です。課税事業者になっても消費税をもらわずにやるということです。この場合、実質的には事業者である治療院が消費税を負担することになります。消費税分を値上げしてしまうと患者さんが離れてしまうことを懸念して消費税分はもらわないという判断です。実務上は、消費税を納める金額がいくらくらいになるのかによって、消費税分を患者さんからもらわずにやるという選択を考えることになるでしょう。

 

さらにもう一つ加えていえば、たとえば、1080円ではなく、いっそのこと1100円にしてしまうことも考えられます。消費税が10%に上がることを見込んで、先に1100円にしてしまうということです。消費税が10%に上がったとき、値上げをしない形にすれば、他の治療院がこぞって値上げする中、値上げしなければ経営上、有利に働くこともあり得ます。

 

自費治療中心に変えていくことは、消費税の課税事業者になることもあり得る話で、料金設定にも大きな影響があることです。「保険診療中心から自費診療中心」への移行にあたっては、この辺の話も考えていかないといけません。



さて、前々回まで、治療院の消費税に絞っていくつか書いていきました。

治療院が「保険診療から自費に移行する」と起こる税金の問題として、消費税のことがあることは書きました。その消費税の納税義務は法人化することで最大、2年間、納付を逃れることができるということを聞いたことのある方も多いと思います。

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これは、消費税の判定の仕組みに由来します。

消費税を納める事業者であるかどうかは、2年前の課税売上が1000万円を超えるかどうかによって判定します。たとえば、平成29年1月から12月の期が課税事業者かどうかは、平成27年1月から12月の期の課税売上が1000万円を超えているかどうかで判断します。この辺の話は以前のブログを再度、ご参照ください。↴

自費中心診療の問題点 治療院の消費税について考えてみよう!

たとえば、平成27年の1月から12月の期の課税売上が1000万を超えたとします。普通にやれば、平成29年1月以降の期で消費税を納付することになります。それを、たとえば、平成29年1月に法人化したとします。12月決算の法人だったとすると、平成29年、平成30年まで消費税を納めなくてよくなる、ということです。

これは、法人化した場合、平成29年・平成30年は2年前がないことになるため、そもそも2年前の課税売上が1000万という判定自体ができないためです。

結果、最大2年間、消費税の納付を逃れることができるわけです。

ここまでの話は、少し勉強されていたり、どこかで聞いたことのある方も多いと思います。

治療院の場合、さらにもう一点踏み込んで知っておく必要があります。

それが、「特定期間の課税売上高の判定」というものです。

 

先ほどの例ですと、平成29年1月に法人化しています。この場合、平成29年1月~平成29年6月までの半年間で売り上げが1000万円を超えている場合、平成30年1月から消費税は課税事業者になるというものです。これが、「特定期間の課税売上高の判定」の話です。

この場合、免税となる期間は平成29年の1年のみとなります。

ただし、仮に平成29年1月から6月までの売上が1000万円を超えていても、平成29年1月から6月の給与等の金額が1000万円を超えていない場合には、平成30年1月から課税事業者になることはありません。

給与等の支給額というのは、特定期間中に支払った源泉所得税の対象となる給与等の金額のことをいいます。源泉徴収簿などから算出するため、金額の計算はすぐに出るはずですよね。

 

結局、この特定期間の判定を使うのは、売上と給与等の両方が法人設立から6か月で1000万円を超える場合だと押さえておいていただければいいかと思います。

 

また、たとえば、半年で消費税の課税売上が1000万円を超えるし、半年の給与の金額も1000万円を超えることが明らかな場合、どうするのかという問題があります。

 

消費税が免税事業者になる期間をなるべく多くとりたいということであれば、たとえば、上記の例の場合、1期目の決算を平成29年7月とした場合、1期目は平成29年1月から7月となり、特定期間自体がないことになります。1期目が7ヶ月の場合、この特定期間の消費税の判定を行わないというルールがあるためです。つまり、1期目を平成29年7月で終わる7月決算法人とすると、2期目の平成29年8月から平成30年7月までの期も免税事業者となり、結果として、平成29年1月から平成30年7月までは消費税が免税になることになります。

 

この辺の話はちょっと複雑な部分もあるため、もし半年で課税売上が1000万円を超え、なおかつ、給与等の金額も1000万円も超える場合、決算期をいつにするのか、給与の設定をどうするのかについて、税理士などの専門家の意見を聞きながら決めていただいたらいいのではないかと思います。

 

法人化すると、最大2年間、消費税が免税になるという話、おおよそ理解できたでしょうか?



さて、今日も前回の続き、消費税の話です。

今日は簡易課税の話です。

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治療院の場合、ほとんどのケースが、本則課税ではなく簡易課税を選択したほうが税額が少なくなるはずです。ただし、たとえば複数店舗展開していて課税売上が5000万円を超える場合には簡易課税は選択できないことは、前回のブログで書きました。その場合には、簡易課税を選択したくてもできないわけですが、そういう事情以外は、たいていが簡易課税を選択する方が税額が少なくなり、有利になるはずです。

 

では、簡易課税とはどういう計算をするのでしょうか。

前回も少し説明しましたが、売上に係る消費税から控除する仕入税額控除の金額をみなし仕入税額控除として、売上にかかる消費税の何%と決まった率を掛けて計算します。

仕入税額控除をどういう割合にするかは第1種から第6種まであるどこに当てはまるかで変わってきます。

 

第1種・・・卸売業

第2種・・・小売業

第3種・・・製造業等

第4種・・・飲食業、第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない業種

第5種・・・サービス業

第6種・・・不動産業

 

仕入税額控除の率は、以下のようになります。

 

第1種・・・90%

第2種・・・80%

第3種・・・70%

第4種・・・60%

第5種・・・50%

第6種・・・40%

 

さて、治療院の場合ですが、第5種のサービス業に該当します。第何種に該当するかは、原則として「日本標準産業分類」というものによるのですが、この分類のうち、大分類のサービス業の中に「医療、福祉」というものがあり、これに該当するためです。

 

ということで、第5種の50%で計算します。

ですから、治療院の自費売上が1万円で預かっている消費税が800円だとしたら、その50%の400円を仕入れ税額控除して、400円が納付税額になるわけです。

 

この簡易課税の難しいのは、一つ一つの売り上げの内容によって第何種かを分ける必要があるということです

どういうことかと言いますと、たとえば、治療院でコルセットや包帯を販売したとします。物品販売は簡易課税では第1種か第2種になります。第1種は卸売業(業者への販売)ですから、治療院の場合には第2種の小売業(消費者への販売)になります。コルセットや包帯の販売は消費者への販売なりますから、第2種、つまり仕入れ税額控除は80%で計算するわけです。

また、往診で使っている車を売却した場合には、「第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない」ということで第4種になります。

これらは、第2種だったり、第4種だったりと、通常の第5種よりも仕入税額控除の%の率を高く計算できるため、売上の区分をきちんと分けたほうが消費税の金額が少なくなります。

簡易課税は、特例計算というのがあり、第2種にあたる物品の販売や第4種にあたる車の売却をすべて第5種で計算しても間違いではありません。これはどういうことかといいますと、何種類かある売り上げのうち、1種類の課税売上の割合が全体の75%以上の場合、何種類かの売り上げがあってもすべての売上を1種類の事業とみなして全体の課税売上を計算してもいいという特例があるためです。したがって、治療院の場合、通常の治療院の治療による自費収入の売上が課税売上のうち75%以上なのであれば、全部を第5種として計算しても間違いではないです。ですが、治療院の場合、こうした別の業種区分と見ることができるものがあれば分けたほうが消費税が少なくなるので有利になります。ということで、治療院の場合、多少面倒でも、売上の種類を「通常の治療の自費収入」と「物品販売」と「その他の売上」くらいの感じで、できるだけ分けて計算したほうがいいでしょう。

 

さて、この簡易課税を選択した場合ですが、原則課税の方が税金が少なくなるケースがまれにあります。たとえば、設備投資をして高い治療器械を購入したり、往診車などの車を購入した場合など、数百万円するような固定資産を購入した場合です

この場合は、ケースバイケースですが、原則課税の方が税額が少なくなるケースもありますので、注意が必要です。

といいますのも、簡易課税は前回説明した通り、その事業年度の始まる前までに届け出しないといけません。そして、簡易課税を原則課税に戻す場合も、原則としては、課税期間が始まる前までに届け出を出さないと戻せません。

たとえば、平成29年中に治療器械と往診車を買う予定があったとします。計算してみると、簡易課税ではなく、原則課税を使ったほうが有利になりそうだったとします。その場合、平成28年12月31日までに「簡易課税選択不適用届出書」を税務署に出さないといけません。

 

ちなみにですが、少し複雑な話になるので、このブログではしませんが、1個の固定資産が数百万円の固定資産を購入する場合には、「調整対象固定資産」というのに該当する場合があり、この場合には原則課税でないほうがいい場合もあります。

 

いずれにしても、消費税のこの辺の話は税理士でも適用を間違えるケースがあるほど複雑です。治療院の先生方としては、基本的にはご自身では判断せず、税理士に聞くなり、税務署に聞くなりするのが無難だと思います。治療院の先生方としては、簡易課税の基本的な計算方法をまずは知っていただくことかと思います。



さて、今日は前回に引き続き、治療院の税金シリーズで、消費税の話です。

治療院経営にとって、消費税の知識は必須です。これを機会によく理解しておきましょう。

さて、前回は、消費税の課税事業者になる判定方法とどういう売り上げが消費税の課税売上になるのかの話でした。

今日は、もう少し具体的に数字を使って話をしようと思います。

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その前に、消費税の計算方法は本則課税と簡易課税と二通りありますが、それはご存知でしょうか。

 

本則課税は次のような計算方法です。

 

消費税のかかる売上・・・1万円(消費税は800円)

支払っている消費税・・・4000円(消費税は320円)

 

この場合、納める消費税は売り上げの消費税800円から支払った消費税320円の差額480円です。

支払っている消費税というのは、商品を買ったり、サービスの提供を受けたりして支払いをした時に消費税を払いますよね。そのことを指しています。

本来、消費者が直接、国に支払うべき税金を事業者が代わりに支払う税金が消費税です。つまり、

 

消費者(患者さん)800円⇒事業者(治療院)800円⇒国

 

という流れで、事業者である治療院は消費税を国に納めるわけです。

このとき、事業者である治療院が消費者の立場で支払っている消費税がありますよね。計算上はこれを控除するわけです。

 

消費者(治療院)320円⇒事業者320円⇒国

 

患者さんから受け取った消費税から消費者の立場で支払った消費税を控除して(消費税法では「仕入税額控除」と言います)、その差額を納付するのが消費税の基本的な仕組みです。

 

これに対して簡易課税は、この「仕入税額控除」の部分をだいたいで計算します。

治療院の場合、第5種事業に該当することがほとんど(次回のブログで詳しく説明します)なので、売上で預かった消費税の50%が仕入税額控除とみなして消費税の計算をします。

上記の例ですと

800円×50%=400円

を仕入れ税額控除とみなします

そうすると、消費税は800円-400円で400円を国に納めることになります

 

簡易課税というのは小さい事業者には消費税の仕入税額控除の計算が煩雑だろうということで、特別に売り上げから簡単に消費税が計算できる方法を認めたわけです。

 

さて、では、本則課税にすべきか簡易課税にすべきかというのがどちらでも選択できるのかということになります。これは選択できます。計算してみてどちらか少ないほうで申告すればいいわけです。ただし、簡易課税を選択する場合、その課税期間が始まる前までに届け出を出さないといけません。

たとえば、平成29年から簡易課税にしたいのであれば、平成28年12月31日までに税務署に「簡易課税選択届出書」という書類を出さないと簡易課税を選択できません。平成29年の計算をしてみたら本則課税よりも簡易課税の方が税金が少なかったと気づいても、平成28年12月31日までに出していなければ簡易課税では計算できません。

平成29年が消費税の課税事業者かどうかは、平成27年の申告書を出した時点ではわかっていますから、平成28年12月31日までには簡易課税の届け出は出せるはずですよね。

 

この簡易課税かどうかというのは治療院経営にとっては大変重要です。ちなみに、ほとんどの治療院では、簡易課税が有利になるはずです。一応、計算してみたほうがいいとは思いますが、治療院の場合、ほぼ簡易課税を選択することになるはずです。

 

また、簡易課税が有利でも簡易課税を選択できない場合もあります。

これにはいくつかありますが、代表的なものは 課税売上が5000万円を超えるケースがあります。課税売上が5000万円を超えるというのはほとんどが複数の治療院の店舗を構えているケースです。一店舗で課税売上が5000万円を超えるケースというのはほとんどないですよね?

2店舗、3店舗とやっていくと課税売上で5000万円を超えることはあり得ます。その場合には、一法人で本則課税でやっていくのがいいのか、あるいは、法人をいくつかに分けて簡易課税で計算していった方がいいのか、どちらが有利になるのかを計算する必要があります。まあ、ここまで売り上げが上がってしまっているのであれば、治療院の先生ご自身で計算するのではなく、税理士などの専門家に計算してもらったほうがいいと思います。

 

ちなみに、この課税売上が5000万円を超えた場合ですが、5000万を超えたら即、本則課税になるわけではありません。課税売上が5000万円を超えた翌々年から本則課税になります。この辺は前回、ご説明した消費税の判定の仕組みと考え方は同じです。この5000万円のルールは、簡易課税を選択していても、強制的に本則課税になりますので、注意が必要な点です。

 

さて、今日はもう少し数字を使ったお話をしていきましょう。

先ほどの本則課税の例というのは、わかりやすく説明するために書きましたが、実際には治療院の売上は、保険診療などの非課税売上と自費などの課税売上が混在しています。この場合には、実は計算が少し複雑になります。

できるだけ単純化した例で説明します。

 

<売上>

自費売上 1万円(消費税800円)

保険診療売上 1万円(消費税0円)

<仕入税額控除>

支払った消費税 8000円(消費税320円)

 

この場合、この支払った消費税が自費売上に対応するものなのか、保険診療に対応するものなのか、不明だったとします。(ほとんどが不明なものだと思います)

その場合、この320円は全額仕入税額控除できません。売り上げの割合で、自費に対応する割合しか控除できません。つまり、

 

320円×1万円(自費売上)/1万円(自費売上)+1万円(保険診療)=160円

 

という形で、売り上げ全体のうち、自費売上部分しか控除できません。

結果、治療院が納める消費税は800円-160円=640円 となります。

 

一方で、この支払った消費税が自費売上に対応する消費税というのが明らかにわかっていれば、全額控除できます。たとえば、支払った消費税は自費売上の鍼の仕入だったとします。そうすると、保険診療ではなく、自費売上に対応するものというのが明らかです。この場合には、全額、仕入れ税額控除できます。結果、治療院が納める消費税は

 

800円-320円=480円

 

となります。

 

この辺の話は税理士や会計事務所にお勤めの方にはいたって当たり前の話です。しかし、治療院の先生には縁遠い話なので、図を描いてみたりして説明はしますが、いつも説明に苦慮する部分です。できるだけわかりやすくは書いたつもりですので、上記のような基本的な部分だけは理解していただけるといいかなと思います。

 

次回は、この続きで、治療院の消費税で、簡易課税の計算について少し突っ込んだ部分も含めて話を進めていきたいと思います。