厚生労働省に社会保障審議会というのがあります。12月にこの会合があり、現在、従業員500人超の企業が対象になっている短時間労働者への社会保険の加入を、令和4年10月には100人超の企業に、令和6年10月には50人超の企業に、という形で適用を拡大する方向になっています。
まず、短時間労働者というのはどういう人たちをいうのでしょうか?
短時間労働者とは、以下の要件を満たす人のことを言います。
- 週の労働時間が20時間以上である
- 月の給与の額が8万8千円以上(年間106万円以上)である
- 勤務期間が1年以上の見込みである
- 学生でない
上記のすべてに該当する人はパートタイマーや短時間労働者であっても社会保険の適用になるというものです。
これは、現状では、従業員数(社会保険に加入している人)が500人を超える企業が対象になっています。中小企業の場合、実質的にはこの規定が該当するところはないのでしょう。
これが、令和4年10月には100人超の企業に、続いて令和6年10月には従業員数50人超の企業にと拡大する方向だということです。
これらの要件のうち、一番気になるのが月額給与が8万8千円以上(年間106万円以上)というところでしょう。ですが、実際には、「週20時間」と「勤務期間が1年以上」という部分が問題なのだと思います。
社会保険に加入したくないという場合、たとえば、労働契約書で契約期間が1年未満になるようにしたりということが考えられるわけです。厚労省側もそうしたことを想定して、「契約期間が1年以上」という部分は2カ月超かどうかを判断基準とすることにするようです。これは、現状の週の労働時間が20時間という判断基準は残すようで、これは現状でも雇用保険の加入基準が週の労働時間が20時間であることから、それと足並みをそろえる意味もあるように思います。
また、最低賃金の上昇によって、たとえば、週20時間未満の労働時間であっても月の給与が8万8千円以上(年間106万円以上)になるケースが考えられます。たとえば、時給が1100円だとすると、1週19時間で1週が4.5週あるような月だと、19時間×1100円×4.5週=94,050円となり、8万8千円以上(年間106万円以上)になります。
このようなケースでは、週の労働時間が20時間を超える契約なのかどうなのかが問題になるでしょう。労働契約が週20時間以上の契約になっていれば社会保険加入の対象になるのは当然ですが、実態として労働時間が週20時間を超えているのが常態化しているような場合も、契約の内容がどうであれ、社会保険加入の対象となると判断される可能性があります。社会保険に加入させたくない短時間労働者なのであれば、労働契約はもちろんのこと、実態としての労働時間も20時間以上とならないように配慮していく必要が生じてくるわけです。
いずれにしても、短時間労働者にも社会保険に加入をしなければいけないということは、会社の負担が増える話でもあり、中小企業にとっては死活問題です。こういう話があると、私の顧問先の社長さんの多くもそうなのですが、社会保険の適用拡大の方向性を批判することをおっしゃる経営者も多いです。しかし、批判したところで短時間労働者への社会保険の適用拡大の方向性は変わらないわけです。とりわけ、介護事業所は短時間労働者の多い業種でもあります。今こそ、一人当たりの労働生産性を上げて、効率のいい方法を考えるなど、適用拡大に対応できる態勢を作っていく必要があると考えたほうが前向きなのではないかと思います。
ということで、短時間労働者への社会保険の適用拡大というお話でした。