さて、今日は銀行の話です。
そもそもどの銀行で口座を開き、どの銀行で借入をしたらいいのか、経営者の皆さんはどうやって決めているのでしょうか?
統計を取っているわけではないですが、「なんとなく」とか「大きな銀行だから」とか「近くにある銀行だったから」とか・・・
銀行選びも「経営戦略」だとしたら、どの銀行をメイン銀行にするのかというのは、経営を左右する重要な要素です。
では、どういう基準でメイン銀行を決めたらいいのでしょうか?
決める際の基準はまずは自社がどのくらいの年商規模があるかによります。
一般的に銀行の規模は次のような感じで考えていいと思います。
信用組合<信用金庫<地方銀行・第二地銀<都市銀行
「〇〇信用組合」というのは一般的にはかなり小規模の銀行です。信用金庫になると地域でそれなりの取引規模のある銀行という感じです。地方銀行は信用金庫よりもさらにエリアが少し大きいイメージです。都市銀行は全国規模になる感じです。
年商でいうと、
信用組合・・・年商数百万円~年商数千万円
信用金庫・・・年商数千万円~年商1億円程度
地方銀行・・・年商数千万円~年商10億円程度
都市銀行・・・年商10億円超
こんなイメージでいいと思います。
これは、各銀行が出している預金量と貸出額の数字を見ればイメージできます。
信用組合は、預金量や貸出額が1000億円以下の規模です。信用金庫になると1000億円くらいから1兆円くらいの規模になります。地方銀行になるとこれが1兆円を超える規模になります。都市銀行になるとこれが数十兆円規模になります。例外はありますが、だいたいこんな感じです。
具体的に数字を追ってみてみましょう。地方銀行の上位5位までは次のような感じです。
単位:億円
銀行名 | 横浜 | 千葉 | 福岡 | 静岡 | 常陽 |
預金額 | 122,284 | 100,733 | 84,244 | 87,151 | 77,287 |
貸出額 | 97,240 | 84,611 | 72,452 | 73,931 | 56,564 |
預貸率 | 79.5% | 84.0% | 86.0% | 84.8% | 73.2% |
店舗数 | 209 | 188 | 170 | 205 | 179 |
この表で「預貸率」というのがあります。これは、銀行に預け入れしてもらっている預金額に対していくら貸し出しているかという率です。これについては、あとで改めて説明します。
金額が大きいのでピンと来ないかもしれませんが、地方銀行の上位5社までは、都市銀行に迫るくらいの大きな規模と言えます。
次に、信用金庫の上位5社です。
単位:億円
銀行名 | 京都
中央 |
城南 | 岡崎 | 埼玉懸 | 多摩 |
預金額 | 42,306 | 35,787 | 26,116 | 24,750 | 26,442 |
貸出額 | 22,342 | 21,479 | 14,791 | 13,930 | 10,134 |
預貸率 | 52.8% | 60.0% | 56.6% | 56.3% | 38.3% |
店舗数 | 128 | 85 | 96 | 96 | 78 |
いずれも1兆円を超える規模です。結構大きいですね。ですが、地方銀行ほどではないことがわかります。
ちなみに、信用組合についても上位5社を調べてみました。
単位:億円
銀行名 | 近畿
産業 |
茨城県 | 長野県 | 大阪
協栄 |
大東京 |
預金額 | 13,338 | 11,371 | 9,194 | 5,728 | 5,652 |
貸出額 | 8,105 | 4,944 | 2,777 | 3,397 | 3,058 |
預貸率 | 60.8% | 43.5% | 30.2% | 59.3% | 54.1% |
店舗数 | 33 | 84 | 51 | 13 | 45 |
信用組合は近畿産業信組のような大きな信用組合だと信用金庫並みの規模になります。また、京都中央信金のような大きな信用金庫だと地方銀行並みです。横浜銀行は地方銀行というより、都市銀行に近い大きな規模の地方銀行です。しかし、これらは例外で、ほとんどが信組だと、信用金庫の半分以下の規模で、信用金庫は地方銀行の半分以下の規模と言えます。
こうした銀行の規模感というのは「どの銀行に口座を開くか」「どの銀行で借りるか」を決める際の重要な要素です。年商が1000万円程度かそれ以下の事業だったら都市銀行や地方銀行では、ちょっと大きい銀行になってしまいます。信用組合や信用金庫で検討すべきです。
逆に、年商が10億円近くある会社であれば、信用組合や信用金庫ではちょっと小さすぎます。地方銀行や都市銀行で検討すべきです。
また、預貸率(預かっているお金をどれくらい貸し出しているか)というのも重要な要素です。預貸率が高いほど、銀行の本業である「お金を貸す」ことに熱心であることを示しています。つまり、お金を貸すことに積極的であるということです。一つの判断基準として、預貸率の平均値は約50%です。もちろん、預貸率はいろいろな要素が影響しているわけですが、預貸率をメルクマーク(指標)の一つと捉えてみるのもいいと思います。
ちなみに、私の事務所のある東京の府中やその周辺の金融機関をいくつか調べてみました。多摩信用金庫と大東京信用組合は上記に挙がっていますので、それ以外の金融機関について、下記に挙げておきます。
単位:億円
銀行名 | 西武
信用 |
八千代 | 東日本 | 昭和
信用 |
預金額 | 17,490 | 21,227 | 18,501 | 4,057 |
貸出額 | 14,470 | 14,660 | 15,559 | 1,800 |
預貸率 | 82.7% | 69.1% | 84.1% | 44.4% |
店舗数 | 73 | 84 | 80 | 19 |
西武信用金庫や東日本銀行の預貸率の高さが目立ちますね。
年商が1000万円未満であれば、昭和信用でもいいかもしれませんが、やや預貸率が低めなのが気になります。
これらの上記に上げたような数字は、ネットで調べればすぐにわかるものばかりです。こうした数字を把握したうえで、自社のメイン行を決めてみてはいかがかと思います。
銀行は経営を左右する重要なパートナーです。今取引のある銀行についても、この際、検討してみてはいかがでしょうか?
※ 上記の数字はなるべく最新の数字を調べてお示ししましたが、時点が必ずしも一致していませんので、その点、ご留意ください。