さて、今日の話は前回の続きです。
前回は、給与と外注とはどう違うのか?経営者側の視点、施術者側の視点、そして、それ以外に外注の場合にどんな問題があるのかについてお話していきました。今日は、「どういうケースが給与となり、どういうケースが外注となるのか」について、具体的に見ていきましょう。
詳しくみていく前に、前回のブログに書きましたが、前提を整理しておきましょう。
「給与」=「雇用契約」=「労働をしたからお金を払う」
「外注」=「請負契約」=「仕事が完成したからお金を払う」
わかりやすく言えば、出勤後、大雪で治療院がお休みになった場合、「給与」の場合であれば、仕事をしていなくても出勤したこと自体を「労働」と判断して給与は出るが、「外注」であれば、仕事はやっていないので「仕事の完成」はしていないため、報酬はゼロになるということです。
さて、この基本的な理解を前提に考えていきましょう。
実は、この給与か、外注かというのは税務上も何度も問題になっており、裁判例がいくつかあります。それらを見ていくと、どう考えればいいのかがわかってきます。
たとえば、こんなケースです。
急病になって、自分でない代わりの職人を現場に派遣した大工さんのケースです。その場合であっても報酬は本人に支払われました。これは、結局、どういう形であれ、「仕事の完成」が目的だから代わりの人を寄越しても、報酬が支払われるということです。この場合には、「外注」とみなされる可能性が高いです。
また、こんなケースもあります。
現場監督から逐一、指示があり、指示に則って仕事をしているとか、仕事の時間が何時から何時と決まっているようなケースです。これは「仕事の完成」を目的としているというよりは、「労働」したからお金が支払われるという側面が強いです。この場合には、給与となる可能性が高いです。
また、本人はペンチ、ナイフ、ドライバー等を所持しておらず、もっぱら現場にある道具を使っているとか、通勤するための費用をもってもらうなどの場合など、これらは「給与」となる可能性が高いです。
実際に裁判になった例をいくつか、書きましたが、これらの特徴はどれか一つを見て「給与」か「外注」かを判断しているわけではないということです。いくつかの例をみて総合的に考えます。
さて、このブログでは、こうした「給与」か「外注」かの判断で、治療院の施術者の場合、どう判断するのかについて、書いていこうと思います。
これについては、施術者への支払いを「外注」として処理したことが実際に裁判となっている例があります。この判決の内容は以下のようなものです。
「営業時間、施術内容、施術料金、出退勤時間などの業務時間、服装、休憩及び業務上の心得等の業務規則が定められていて、それに従わないといけなかった」
「営業方針や業務規則に従わない場合には、経営者は一方的に契約を解除することができていた」
「施術者は、施術所内にある設備備品を使用し、業務に従事していた」
このようなことから「外注」ではなく、「給与」である。
要約すると上記のような内容です。
実務上は、上記のようにいくつかの要素をみて総合的に判断しているわけです。
また、よくあるケースとして、「歩合給」だから「外注」だということを主張される場合があります。しかし、「歩合給」というのは単に給与の支払い方の形態の一つであって、それだけで「外注」と判断するわけではありません。
「外注」とするにはいくつかのポイントがあります。そのポイントを一つでも多くクリアしていくことが不可欠というわけです。
上記に挙げたもののほかに、「給与」か「外注」かを判断する要素として、たとえば、こんなことが挙げられます。
〇「時間」に対して報酬が支払われているのではなく、施術した仕事に対して報酬が支払われていること(日給や時給、諸手当といった項目での支払いではないこと)
〇通勤手当は本人が負担していること
〇必要な施術道具などは本人が持参してくること
〇何時から何時までいないといけない、という契約になっておらず、仕事が終わったら帰れるようになっていること
また、もし「給与」ではなく「外注」としたいのであれば、きちんと「業務請負契約書」も交わしたほうがいいでしょう。その契約書には上記のようななるべく多くの要素を折り込んでいくべきです。
意外と奥の深い、「給与」か「外注」かの問題。これを機に、ちょっと考え直してみてはいかがでしょうか?