さて、今日から何回かに分けてインボイス制度の話をしていこうと思います。
税理士の間では、消費税法施行以来の大改革とかなり前から大きな話題になっていますが、巷ではインボイスといってもピンとこない方が多いようです。今日はその概要だけ説明したいと思います。
会計ソフトを手掛ける弥生会計が調査したところによると、全国の個人事業者や従業員数30人以下の小規模事業者に「インボイス制度のことを知っているか」を調査したところ、全体の約8割の方がインボイス制度について「全く知らない、聞いたことがない」と答えたそうです。
我々税理士からすると、これだけの大改正についてほとんどの事業者が知らないとは・・・と愕然とするアンケート結果です。
ニュースを見てもコロナ、総裁選など、今目の前にあるようなテーマが多く、インボイスや来年から導入される領収書や請求書の電子保存の話など、差し当たって影響がない話はあまり報道されないように思います。インボイス制度にしても電子保存の話にしても会計や税務処理にかかわる大きな話題なのですが、こうした報道の状況もあり、事業者の間ではほとんど知らないというところが実態のようです。
このブログでは、まずはインボイス制度の話を書いていこうと思います。その次に電子保存の話を書いていきます。よく知らないという事業者の皆さんはこのブログを通して参考にしていただければと思います。
さて、今日はインボイスの話の概略です。
インボイス制度とはなんでしょうか?
大きくは二つあります。
一つは、事業を営んでいる中小企業や個人事業者は、税務署に登録申請をしてもらった「登録番号」を領収書や請求書に記載しないといけなくなるということです。
この登録申請が実は、令和3年10月1日から始まっているわけです。あまり報道されないのですが、この10月1日から始まっているんです。
そして、この登録番号の書かれた領収書や請求書のことを「インボイス」(適格請求書等)と呼ぶわけです。
では、このインボイスを発行するのはどういう意味があるのかということです。
消費税というのは売り上げなどで預かった消費税からいろいろな経費等の支払いの際に支払う消費税の差額を事業者が納付するという基本的な仕組みがあります。この支払った消費税のことを「仕入税額控除」と呼びます。この仕入税額控除ができるのが、インボイスが書かれた領収書や請求書をもらっている場合に限ることにするというのがインボイス制度の概要です。
この「インボイス」(適格請求書等)は次のような項目の記載がされていないといけません。
- インボイスの発行事業者の名前
- 登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 消費税率・消費税額
- 相手方の名前
このうち②の登録番号は税務署に届け出をして番号をもらいます。登録番号は頭にTがついてそのあとは13桁の数字が続きます。法人の場合には、Tのあとはすでにある法人番号が入ります。個人の場合にはTの後の番号は新たに税務署から付与されます。
この登録が税務署に届け出しないともらえないわけです。
ポイントの二つ目は、インボイスの登録は課税事業者でないと登録できません。逆に言えば、インボイスの登録をするということは自動的に課税事業者となります。
最近、ネットの記事でもよく見られますが、たとえばウーバーイーツの配達員や個人タクシーの運転手など、現状、消費税の免税事業者になっている個人は売り上げの相手方が会社などの事業者が多い場合、インボイスの登録をして課税事業者になることを選択しないといけない人も出てくるのではないかということがあります。たとえば、副業でやっている個人事業者は売り上げの相手先が個人ではなく、事業者の場合、その事業者が仕入税額控除できなくなることからインボイスの登録を迫られることが想定されます。
このように現状で、年間の売上が1000万円未満で免税事業者である人が、取引先との関係でインボイスの登録をしないといけなくなる場合、今まで納付していなかった消費税を納付しないといけなくなるわけです。
これが二つ目のポイントです。
インボイスの登録は令和3年10月1日から始まりましたが、実際のインボイスの導入は令和5年10月1日からとなります。まだ実際の導入までは2年くらいは時間がありますからその間にいろいろと準備していく必要があるわけです。
ということで、今日はまずはインボイス制度の概要についての話でした。