関西電力の役員が高浜原発のある高浜市の元助役から金品を受け取っていたことが大きく報じられています。この金品の授受が発覚したきっかけになったのが税務調査でした。地元の建設会社の吉田開発に税務調査が入り、この元助役に対して原発工事を受注した見返りに約3億円の金品を渡していることが判明したということが発端のようです。今問題になっているのは、その約3億円のうちの一部が関西電力の役員に渡っていたということなわけです。
こうした行為は、贈収賄といった違法行為である疑いがあります。ですが、今日のブログで問題にしたいのは、こうした関電の役員の違法行為の話ではなく、このような違法な行為であってももらったお金は収入に計上する必要があるという点です。現に、関電の元役員らは、もらった金品の一部は収入であったとして修正申告をしています。これらは税務署から修正申告の指摘を受けて修正申告をしたのか、吉田開発の税務調査を受けて自主的に修正申告したのかは不明ですが、要するに「違法であっても収入は収入だから申告していなければ課税する」という税務署の基本スタンスにしたがっているわけです。
平成30年12月にあった国税不服審判所の採決でこういうものがあります。
ある給与所得者が会社が製品として作っていた紙の損紙を会社に無断で売却して個人の所得にしていたという事案で、採決では国税不服審判所はこれを雑所得として課税したというものです。 非公開裁決であるため、詳しいことは分からない部分があるのですが、おそらく紙を製造していた会社で働いていた社員が、作る過程で出た損紙を会社に無断で売却して得た所得が課税されたという話です。 給与所得者側の主張としては、会社に損害を与えたことを認めたうえで、会社に対して損害賠償金を支払うので、所得を受け取ったとしても損害賠償金は必要経費になるため、結局、税金は課税されないと主張しました。また、これは不法行為であって反復継続して得る所得ではない(つまり、消費税は課税されない)と主張しました。ですが、国税不服審判所はこうした給与所得者側の主張を全面的に認めませんでした。
この国税不服審判所の採決に特徴的なものが二つあります。 一つは、収入は反復継続していたものであり、たとえ不法行為であったとはいっても収入であったと認められ、また、不法行為であったということは事業としては認定されず、雑所得としての課税となるということ。 もう一つは、会社に対して損害を与えていてその損害賠償金を支払ったわけですが、それは不法行為に基づく損害賠償金であるため必要経費とは認められないと判断されたことです。 結果として、損害賠償金の支払いをし、その上、税金は課されてその上、重加算税も付加されたことを考えると、この給与所得者はもらった収入以上にかなりの負担を強いられたわけです。不法行為をしたツケはかなり高くついたわけですが、不法行為であっても税金は課税するという税務署側の姿勢がよくわかる裁決令と言えます。
ちなみに、この事案は会社に無断で売却して収入を得ていた期間が11年に及んでいたこと、また、合計で2億4500万円にも及ぶ売却収入を得ていたことなど、期間も長く、規模も大きかったため、かなり悪質なケースと言えます。ですが、ここまで悪質でないにしても、所得があるのに申告していないということは一般的にもよくある話です。
では、ここでもう一つ説明していきたいのが、違法でない所得であっても申告しなくてもいい所得もあるという話です。年金所得者やサラリーマンが得た収入は申告しなくてもいいものもあるというものです。
まず、年金所得者の場合、年金の収入金額が年間400万円以下で、なおかつ、年金以外の所得(雑所得や給与所得など)が20万円の場合、その年金以外の所得については申告しなくてもいいことになっています。また、給与所得者も給与の収入金額が年間2000万円以下で、なおかつ、給与や退職以外の所得が20万円以下の人は申告しなくてもいいことになっています。 申告しなくてもいいということなので、もちろん、申告してもいいわけです。赤字なので申告したほうが税金の戻りが大きいなどの理由で申告する場合もあると思います。あるいは、事業所得者で赤字であったりする場合に申告して税金を還付する場合もあると思います。このように、申告してもいいわけですが、年金所得者や給与所得者はそれ以外の所得が20万円以下だったら申告しなくてもいいという話です。
ただし、この申告しなくてもいいという話は所得税の話です。住民税については年金所得者や給与所得者がそれら以外の所得が20万円以下であっても申告しないといけません。その点は注意が必要です。結局、収入がいくらかでもあれば、なんらかの申告は必要になってくることになっているという点は覚えておきましょう。
少し話がそれましたが、今日の話のメインは、違法であっても収入は収入で税金は課されるという話です。「これくらい申告していなくてもわからないよね」という判断は禁物です。違法であっても関電のケースのように、相手方の税務調査で判明して結局あとから申告することもあります。違法か合法かというのは税金の計算上、収入に計上する際には考慮しないわけです。また、合法なものであっても給与や年金以外の収入が20万円以下のものは結局、住民税の方の申告は必要だったりします。そうすると、収入があったら何らかの申告が必要ではないのかと考えることが必要だと認識しておいた方がいいと思います。
ということで、違法であっても収入があれば申告は必要という話でした。