さて、今日は実際に顧問先から質問を受けた内容についてです。
質問の内容はこんな感じです。
「雇用保険料が4月から変わるのはわかりましたが、うちの会社は20日締めの末日払いなんです。その場合は、3月21日~3月31日の分は、5/1000で計算して、4月1日~4月20日の分は、4/1000で計算する、ということなんですか?」
前回のブログでも書いた通り、一般の事業の場合、従業員さんの給与から天引きする雇用保険料率が5/1000が、平成28年4月から、4/1000に変更されます。
「4月の給与から変更」なので、たとえば、月末締めの翌月15日払いの場合、4月分の給与の支払いは5月15日になりますから、5月15日の給与から4/1000に変更することになります。
問題なのは、給与の締日が月末でないケースです。
たとえば、20日締めの場合、3月分と4月分が分かれます。なので、3月分の給与(3月21日~3月31日分)は5/1000で計算し、4月分の給与(4月1日から4月20日分)は4/1000で計算することになります。
理屈はそうなります。それが正しい処理です。
しかし・・・です。
実務上を考えるとこの計算の仕方は大変面倒です。
今は給与のソフトを使って計算している会社も多いはずです。その場合、3月分と4月分で別々に計算しないといけません。たとえば、従業員の数が何百人・何千人もいる会社さんで、そんなことできますか?
「3月21日~3月31日は5/1000で計算して、4月1日~4月20日は4/1000で計算すること、システム上できますよ」というのならなるべくそうしてください。それが正しいんですから。
ですが、普通の市販されている給与ソフトを使っている会社さんでは、こんなことをわざわざやるのは大変なはずです。
そこで、私は、「労働保険の申告書と一致していれば、20日締めの場合、3月21日から4月20日分の給与は、分けたりせずに、すべて新しいほうの4/1000で計算していいのではないですか」とご提案しています。
今回は雇用保険料の変更があったから問題になりましたが、厳密にいえば、毎年、この問題があるはずです。つまり、労働保険の計算をするために、20日締めの場合、毎年毎年、「3月21日から3月31日の分」と「4月1日から4月20日の分」で分けて計算することになります。概算・確定保険料を算出する賃金の金額に影響があるからです。
ということで、締日が月末でない場合には、私は4月分として支給した分は、4月分で計算し、雇用保険料は4/1000にして、3月分で計算したものは、雇用保険料は5/1000で計算する、というのでいいと思います。さらに、それを労働保険の申告書ときちんと一致させることも重要だと思います。
ちなみに、そもそもこうした面倒な問題があるので、「給与の締日はいつにしたらいいですか」と聞かれた場合、「給与の締日は月末にしたほうがいいですよ」とご案内しています。経理処理をする際にも、たとえば、20日締めの給与の会社では、毎年、3月21日から3月31日の分は「未払費用」として処理し、前年の3月21日から3月31日の分は、前年の費用なので、今期には費用計上しない(前期の会計処理で「未払費用」で処理する)のが正しいことになります。締日が月末以外だと、経理処理的にも、雇用保険や労働保険の計算上もこうした面倒なことになってしまうんです。このことも知っておいていいことです。
ということで、顧問先からあった雇用保険料率の変更のタイミングの話でした。