ここ数日は「持続化給付金」のお問い合わせが非常に増えています。
NHKでたまたま見たのですが、「父から事業を引き継いで会社を設立したため、前年同月がないから持続化給付金の申請ができない」と訴えていた方が出ていました。
この方についてもよく聞いてみないとわかりませんが、「特例」を使えば、このケースでも申請が可能なのではないかと思いながら見ていました。
こういうケースでも持続化給付金の対象になるという特例のケースについて、今日は解説していきたいと思います。
その前に、持続化給付金申請の原則的な話を説明しておきます。
この持続化給付金は前年同月比で売り上げが50%以上減少した場合に使えるものです。前年同月と比べて売り上げが50%以上減少した場合に、前年総売上-減少した月の売上高×12ヶ月で求めた金額が、個人なら100万円、法人なら200万円を超えたらその上限額が支給されるというのが持続化給付金です。
それで、法人の場合の話なのですが、少なくとも私はこの「持続化給付金申請要領」が出るまで確認できなかったことがあります。
それは、12月決算法人以外の取り扱いです。たとえば。3月決算法人はどうしたらいいのかという話です。
たとえば、3月決算法人で4月の売り上げが前年同月と比べて50%以上減少したとします。2019年4月が120万円で、2020年4月が50万円だったとします。前年同月比で50%以上売り上げが減少したわけですから持続化給付金の支給要件には該当します。そのうえで支給額の計算です。
支給額は「前年総売上-減少月の売上×12ヶ月」の金額で、個人なら100万円、法人なら200万円が上限となっています。
この「前年総売上」というのが何を指すのかという点です。
これは、3月決算法人でまだ2020年3月の申告をする前なのであれば、2019年3月決算の総売上、つまり、2018年4月から2019年3月の売り上げの総額となるということです。
個人の場合、2019年1月から12月の売り上げ(確定申告書の総売上額)となるわけですが、法人の場合には、12月が決算とは限らないわけで、その点がどうなるのかと思っていました。ですが、法人の場合には、申請前に一番直近で申告した年の総売り上げとなるようなので、その点はご留意の上、申請してください。
そのうえで、特例についてお話を進めていきましょう。
まず、法人なりです。
法人なりというのは個人事業でやっていた人が株式会社や合同会社という法人を設立してその法人の代表者となることを言います。
法人なりすると一見すると確かに前年同月の売り上げはありません。しかし、特定のB-6というところで「法人設立届」や「個人事業廃業届」「履歴事項全部証明書」(いわゆる謄本)などを添付することで、認められることになっています。条件としては法人の代表者と個人事業の者が同じ者であることです。「法人設立届出書」のなかの「設立の形態」が「1 個人事業を法人組織とした法人である場合」に〇が付してあり、「○○税務署(整理番号××××)」という個人事業のときの税務署の管理するいわゆる「整理番号」を法人設立届に記載されている場合としています。
この場合に個人事業だった前年同月と比べて前年同月比で50%以上売り上げが減少したら持続化給付金の申請ができる対象になるという話です。
ちなみに、法人なりの場合、法人になっているので給付金の限度額は100万円ではなく200万円になることになります。
次に、創業特例という話です。
2019年に法人を設立した場合で前年同月がない場合の話です。
この場合、2019年の1月から12月の売り上げを月平均にならしたときの月商より半分以下になっている月があった場合が対象となります。
経産省の例によれば、2019年10月に開業した法人で、10月50万、11月50万、12月80万の売上たったとすると、3ヶ月の月平均売上は60万円になります。たとえば4月の売り上げが20万円だったら60万円の半分以下なので持続化給付金の対象になるという話です。
ちなみに、持続化給付金の限度額計算においては以下のようになります。
(50万円+50万円+80万円)×12/3-20万円×12ヶ月=480万円>200万円∴200万円
「前年総売上」は12か月ない場合には、12カ月あったものとして仕切り直して計算していいわけです。
こういう論点は、特例部分のリーフレットをよく読まないとよくわからない部分です。
冒頭のNHKに出ていた会社さんの話もこの特例を使えば続化給付金の申請ができるのではないのかと思います。
それから、ある一定の月に収入が多いような場合です。
例えば、2019年の4月が70万円、5月が120万円、6月が80万円と売り上げがあり、年間事業収入450万円の半分以上を占めるような状況があったとします。それが、2020年は4月が40万円、5月が20万円、6月が20万円だったとします。
この場合、同じ3カ月間を比較して50%以上売り上げが減少していたら対象となります。
上記のケースだと、2019年の4月から6月の売り上げの合計は270万円で、2020年の4月から6月の売り上げは80万円なので半分以下となります。そのため、まずは持続化給付金の対象となります。そのうえで支給額はこの3か月間の合計で考えます。この場合には、270万円(2019年4月から6月の売り上げの合計)-80万円(2020年4月~6月の売り上げの合計)で190万円となり、200万円未満のため、190万円が支給額となります。
他にも、合併した場合や連結納税を行った場合などがありますが、この辺について知りたい方は、持続化給付金申請要領を参照してみてください。
なお、原則的な計算方法を取るのか、上記の特例によるのかは、選択になります。どちらを選ぶのかは申請者が自身の判断で決めていいことになっています。
特例の要件に当てはまっていても、原則的な計算の方が給付額が大きくなるのだったらあえて特例の方は使わないことにしてもいいわけです。
どちらが有利なのか、じっくり判断したうえで申請してみてください。
以上、持続化給付金の特例のお話でした。