年末調整の時期が近くなってきました。職場でもこれから年末調整の書類の記入をするケースが多くなってくるはずです。今回の年末調整では今までにない書類が増えたり、「ひとり親控除」という新しい控除ができたりと、実に改正が多くなっています。
今日はその中から、「内縁関係」の場合にどのように変わったのか、見ていきたいと思います。
内縁関係の場合、税務は配偶者控除は取れませんが、社会保険の扶養には入れます。ここは変更はありません。変わるのは「寡婦控除」「ひとり親控除」の部分です。寡婦控除とひとり親控除については以前にこのブログでも書いていますので、下記を参照してみてください。
ここで問題なのは、従前はたとえば、寡婦であって内縁関係の夫がいる場合、婚姻関係にはないので「寡婦控除」は継続して取れました。ところが、税法改正で今回の年末調整から内縁関係の者がいる場合、「寡婦控除」もしくは「ひとり親控除」は取れなくなりました。今回の改正で事実婚の関係の者がいる「寡婦」もしくは「ひとり親」はこれらの控除の対象ではなくなったのです。
問題なのは、この「事実婚」というのをどういう形で確認するのか、ということです。「事実婚」というのは原則的には本人から申し出がなければわかりません。ただ、本人から申し出がなくても会社側で「事実婚」とわかるケースがあります。社会保険の扶養に入るために住民票に「未届の夫」「未届の妻」と記載するケースがあります。これらの記載のある住民票を添付して事実婚であるけれども社会保険の扶養に入るようなケースです。このような場合には、会社側でも届け出の書類を確認していますから、「事実婚」の関係にあることの把握ができます。この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書かれている場合には配偶者控除はもちろん、「寡婦控除」「ひとり親控除」が取れないということになります。
令和2年1月23日付で総務省から各市区町村へ向けて、住民票に「未届の夫」「未届の妻」と書いてあるケースで寡婦控除やひとり親控除を取っていないことを確認するようにという通知が出ています。またこの確認をした場合にはその情報を税務署と共有するようにということになっています。つまり、市区町村側で「未届の夫」「未届の妻」と書いてある住民票がある場合、かならず税務署にもその情報がいくようになっているわけです。
おそらく実務上、事実婚であるために寡婦控除やひとり親控除が取れないのは、本人からの申し出がある場合以外にはこのケースくらいなのではないかと思います。
ちなみに、この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書いて事実婚であることを示す方法ですが、住民票が同じでないとできないことになっています。住所が別の場合にはそもそもこの「未届の夫」「未届の妻」と記載はできません。法律上婚姻関係にある場合で社会保険の扶養となる場合、同居は要件とされていませんから、住民票の所在地が別であっても社会保険の扶養になることは可能です。この辺も事実婚と法律上の婚姻関係にある場合の違いとして認識しておきましょう。
実際、「未届の夫」「未届の妻」と住民票に書いてお子さんがいらっしゃる場合、社会保険の扶養は継続できますが、「寡婦」「ひとり親」を継続することはできなくなります。一方で、婚姻関係になったとすると、社会保険の扶養はもちろんできますし、(多くは「夫の方で」となるでしょうが)配偶者控除も取れますが、婚姻関係になった以上、「寡婦控除」「ひとり親控除」は取れません。
この年末調整を機にこうした状況にある方はどうするのがいいのか、検討が必要でしょう。
以上、今日は内縁関係の方の年末調整の話でした。