さて、今日も前回の続き、消費税の話です。
今日は簡易課税の話です。
治療院の場合、ほとんどのケースが、本則課税ではなく簡易課税を選択したほうが税額が少なくなるはずです。ただし、たとえば複数店舗展開していて課税売上が5000万円を超える場合には簡易課税は選択できないことは、前回のブログで書きました。その場合には、簡易課税を選択したくてもできないわけですが、そういう事情以外は、たいていが簡易課税を選択する方が税額が少なくなり、有利になるはずです。
では、簡易課税とはどういう計算をするのでしょうか。
前回も少し説明しましたが、売上に係る消費税から控除する仕入税額控除の金額をみなし仕入税額控除として、売上にかかる消費税の何%と決まった率を掛けて計算します。
仕入税額控除をどういう割合にするかは第1種から第6種まであるどこに当てはまるかで変わってきます。
第1種・・・卸売業
第2種・・・小売業
第3種・・・製造業等
第4種・・・飲食業、第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない業種
第5種・・・サービス業
第6種・・・不動産業
仕入税額控除の率は、以下のようになります。
第1種・・・90%
第2種・・・80%
第3種・・・70%
第4種・・・60%
第5種・・・50%
第6種・・・40%
さて、治療院の場合ですが、第5種のサービス業に該当します。第何種に該当するかは、原則として「日本標準産業分類」というものによるのですが、この分類のうち、大分類のサービス業の中に「医療、福祉」というものがあり、これに該当するためです。
ということで、第5種の50%で計算します。
ですから、治療院の自費売上が1万円で預かっている消費税が800円だとしたら、その50%の400円を仕入れ税額控除して、400円が納付税額になるわけです。
この簡易課税の難しいのは、一つ一つの売り上げの内容によって第何種かを分ける必要があるということです。
どういうことかと言いますと、たとえば、治療院でコルセットや包帯を販売したとします。物品販売は簡易課税では第1種か第2種になります。第1種は卸売業(業者への販売)ですから、治療院の場合には第2種の小売業(消費者への販売)になります。コルセットや包帯の販売は消費者への販売なりますから、第2種、つまり仕入れ税額控除は80%で計算するわけです。
また、往診で使っている車を売却した場合には、「第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない」ということで第4種になります。
これらは、第2種だったり、第4種だったりと、通常の第5種よりも仕入税額控除の%の率を高く計算できるため、売上の区分をきちんと分けたほうが消費税の金額が少なくなります。
簡易課税は、特例計算というのがあり、第2種にあたる物品の販売や第4種にあたる車の売却をすべて第5種で計算しても間違いではありません。これはどういうことかといいますと、何種類かある売り上げのうち、1種類の課税売上の割合が全体の75%以上の場合、何種類かの売り上げがあってもすべての売上を1種類の事業とみなして全体の課税売上を計算してもいいという特例があるためです。したがって、治療院の場合、通常の治療院の治療による自費収入の売上が課税売上のうち75%以上なのであれば、全部を第5種として計算しても間違いではないです。ですが、治療院の場合、こうした別の業種区分と見ることができるものがあれば分けたほうが消費税が少なくなるので有利になります。ということで、治療院の場合、多少面倒でも、売上の種類を「通常の治療の自費収入」と「物品販売」と「その他の売上」くらいの感じで、できるだけ分けて計算したほうがいいでしょう。
さて、この簡易課税を選択した場合ですが、原則課税の方が税金が少なくなるケースがまれにあります。たとえば、設備投資をして高い治療器械を購入したり、往診車などの車を購入した場合など、数百万円するような固定資産を購入した場合です。
この場合は、ケースバイケースですが、原則課税の方が税額が少なくなるケースもありますので、注意が必要です。
といいますのも、簡易課税は前回説明した通り、その事業年度の始まる前までに届け出しないといけません。そして、簡易課税を原則課税に戻す場合も、原則としては、課税期間が始まる前までに届け出を出さないと戻せません。
たとえば、平成29年中に治療器械と往診車を買う予定があったとします。計算してみると、簡易課税ではなく、原則課税を使ったほうが有利になりそうだったとします。その場合、平成28年12月31日までに「簡易課税選択不適用届出書」を税務署に出さないといけません。
ちなみにですが、少し複雑な話になるので、このブログではしませんが、1個の固定資産が数百万円の固定資産を購入する場合には、「調整対象固定資産」というのに該当する場合があり、この場合には原則課税でないほうがいい場合もあります。
いずれにしても、消費税のこの辺の話は税理士でも適用を間違えるケースがあるほど複雑です。治療院の先生方としては、基本的にはご自身では判断せず、税理士に聞くなり、税務署に聞くなりするのが無難だと思います。治療院の先生方としては、簡易課税の基本的な計算方法をまずは知っていただくことかと思います。