突然ですが、「雑損控除」というのをご存知でしょうか。
雑損控除とは、災害・盗難・横領にあった場合に、所得税や住民税が一定程度、控除されるというモノです。この雑損控除は「災害」「盗難」「横領」に限定されています。
つまり、オレオレ詐欺などの「詐欺」にあっても税金は控除されないのです。
雑損控除を受けられる損害について、国税庁のHPには次のように書かれています。
「次のいずれかの場合に限られます。
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
(4) 盗難
(5) 横領
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。」
「災害」はわかりやすいわけです。地震や洪水、火災などを想像すればわかります。「盗難」も人にものを盗まれたというわけですから何となく理解できます。問題は「横領」なわけです。
これについては、裁判例があります。
この裁判例は、詐欺的な投資商法による被害者が投資額を回収できなかったのは雑損控除に規定する「横領」にあたるから雑損控除を適用して税務申告をしたところ、税務署はそれは「詐欺」にあたるのであって「横領」ではないから、雑損控除の適用は出来ないと言ってきたわけです。
では、「横領」と「詐欺」とはどう違うのでしょうか?
裁判所は「横領」は刑法上の罪である「横領」に当たるものだとしています。
では、刑法上の横領とはどういうものをいうのでしょうか。
刑法252条によると、単純横領罪とは①自己の占有する他人の物を横領した者②自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者 について5年以下の懲役に処するとなっています。また、業務上事故の所有する他人の物を横領した場合には、10年以下の懲役に処するとなっていて、これを業務上横領といいます。
税務上はこうした「横領」に該当するものが雑損控除に該当するのであって、控除できるのは上記のものに限定されるとしています。ということで、「詐欺」はこれにはあてはまらないことになるわけです。
裁判ではそうは言っていませんが、「詐欺」にあってしまうのも自己責任だと言われているようなものです。いずれにしても、現状では、残念ながら「横領」というのは限定的な解釈がされているのだと理解できそうです。
ということで、次回は、雑損控除の「災害」について少し見ていくことにしましょう。
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