新型コロナウィルスの影響が出て1年以上がたちます。この間にいろいろなことが大きく変わりました。その中の一つといっていいのが、雇用調整助成金です。この雇用調整助成金ですが、いつ収入計上すべきなのかが一つ、問題としてあります。今日はこのテーマについてみていこうと思います。
国税庁は令和3年3月26日に、新型コロナウィルス感染症に影響のある税務上の取り扱いについて、FAQを更新しています。この中で「雇用調整助成金」の経理処理について触れています。
従来の解釈については、以前の私のブログにも書いてありますので参照してみてください。↓
これは従来からの助成金全般についての解釈を書きました。要するに、助成金の収入計上時期は次の二つに分かれるといっています
- 交付決定された期
- 経費の補填の目的だったら経費を支出した期
雇用調整助成金については、原則として②と解釈されるというわけです。
さて、その雇用調整助成金の収入計上時期の解釈について、今回のFAQでは、もう少し踏み込んで、次のように書いています。
私は個人事業を営んでおり、新型コロナウイルス感染症等の影響に伴い、この事業に関して国や地方公共団体から助成金等の支給を受けました。この助成金等はいつの年分の収入金額として申告する必要がありますか。
【基本的な考え方】
所得税の所得金額の計算上、ある収入の収入計上時期については、原則として、その収入すべき権利が確定した日の属する年分となります。
ご質問の助成金等については、国や地方公共団体により助成金等の支給が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられますので、原則として、その助成金等の支給決定がされた日の属する年分の収入金額として計上することとなります。
【特定の支出を補填するもの】
ただし、その助成金等が、経費を補填するために法令の規定等に基づき交付されるものであり、あらかじめその交付を受けるために必要な手続(※)をしている場合には、その経費が発生した年分に助成金等の交付決定がされていないとしても、その経費と助成金等の収入が対応するように、その助成金等の収入計上時期はその経費が発生した日の属する年分として取り扱うこととしています。
※ 必要な手続とは、例えば、休業手当について雇用調整助成金を受けるための事前の休業等計画届の提出などが該当しますが、新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置により、事前の休業等計画届の提出は不要とされています。その場合の雇用調整助成金の収入計上時期は、原則として、交付決定日の属する年分となります。
ただし、事前の休業等計画届の提出が不要の場合であっても、交付申請を行っており、交付を受けることの確実性が認められ、経費が発生した日の属する年分において収入計上しているときには、その処理は認められると考えられます。
このFAQを理解するには、雇用調整助成金には「一般措置」と「特例措置」の二つがある前提があることを知っておく必要があります。要するに、雇用調整助成金が「一般措置」によるものなのか、「特例措置」によるものなのか、どちらによるかで経理処理が変わる
といっているわけです。
「特例措置」をみる場合、「一般措置」との比較でみると理解しやすいです。
「一般措置」とは、通常の雇用調整助成金の支給申請の流れでやるものをいいます。
通常、雇用調整助成金は労使協定によって「休業計画」を作成し、休業が始まる前にハローワークにその「休業計画」を提出します。会社側はその事前に提出した「休業計画」に基づいて休業し、休業が終わったら支給申請をするというのが通常の雇用調整助成金の流れです。
今回の雇用調整助成金の「特例措置」は、この事前の「休業計画」の提出が不要とされています。つまり、計画書は提出しないで、実際に休業をしてしまうわけです。そして、休業が終わってから支給申請をするという流れです。
この「特例措置」が取れるのは従業員数が20名以下などの要件に該当する中小企業です。ですから、多くの中小企業ではこの「特例措置」によって雇用調整助成金の支給申請をしているものと思います。
さて、この「一般措置」と「特例措置」で経理処理が違うといっているわけですが、まとめると次のようになります
「一般措置」の雇用調整助成金・・・対象となる人件費の発生している期で収入計上
「特例措置」の雇用調整助成金・・・雇用調整助成金が支給決定した日
「特例措置」の場合、雇用調整助成金の支給決定通知書に書かれている日付の期で収入計上していくことになります。
また、加えてこのFAQでは、但し書きがあります。但し書きには、「対象となる人件費の発生する期」で収入計上しても間違いではないといっています。「特例措置」であっても「一般措置」と同じように人件費の発生した期で収入計上する方法でやってもいいわけです。
通常、「一般措置」の経理処理方法の方が収入計上するのが早くなるはずです。収入計上が早くなるのだから、この方法でもいいと言っているわけです。
雇用調整助成金の経理処理について、「一般措置」と「特例措置」での経理処理方法の違いについて、参考にしていただければ幸いです。