ベビーシッターを利用する場合、国から一定の割引券という補助を受けることができる制度があります。この制度のことを「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」といいます。今日はこの制度のことをみていきましょう。
このサービスを利用する前に二つのことを確認する必要があります。一つは、利用者自身が割引券の以下のような使用条件を満たしているかということです。
1 当該割引券は、承認事業主が対象者に交付したものであること。
2 対象者は、承認事業主に雇用されており、乳幼児等の保護者であること。
3 対象者は、配偶者の就労・病気療養、求職活動、就学、職業訓練等により、又はひとり親家庭であることにより、サービスを使わなければ就労すること(職場への復帰を含む。)が困難な状況にあること。
4 対象者にサービスを提供するベビーシッター事業者は、割引券等取扱事業者等であること。
5 割引券等取扱事業者は、対象者と請負契約を締結することによりサービスを提供していること。
次に、お勤めの企業がベビーシッター派遣事業の利用を予定しているかを確認する必要があります。
割引券利用が可能なベビーシッター事業者を利用の上、利用料金の支払いにあたっては、必ず領収書を受け取り、保存することになります。
割引券の交付後、利用したベビーシッター事業者へ領収書と割引券を提出の上、割引料金の支払いを受けてください。
割引券の利用は、1日(回)対象児童1人につき1枚、1か月に1家庭24枚までとなっています。ただし、例えば、きょうだいが2人の場合、1日2枚までとなっています。 割引券1枚当たりの割引金額は、2,200円です。また、また所得制限は特にありませんから、所得金額が高い方もこのサービスを利用できます。
割引券は、利用料金が1回につき2,200円以上のサービスを対象とします。なお、この場合における利用料金とは、ベビーシッター事業者から請求される料金のうち、純然たるサービス提供対価のことをいい、会費、交通費、キャンセル料、保険料等のサービス提供に付随する料金は含まないことになっています。また、自社のベビーシッターが自社の職員に提供するサービスについては、対象となりません。
割引券の対象となるサービスとしては、ベビーシッター事業者が提供するサービスのうち、乳幼児又は小学校3年生までの児童、その他健全育成上の世話を必要とする小学校6年生までの児童の家庭内における保育や世話及びベビーシッターによる保育所等や認可外保育施設への送迎に限るものとしています。
また、保育等施設への送迎は、原則として家庭内における保育等のサービスに必要な送迎であって、次のものを充たす場合にのみ割引券の対象とします。
・家庭と保育等施設との間の送迎であって、保育等施設間の送迎ではないこと。
・同一家庭以外の複数の乳幼児等を同時に送迎するものでないこと。
・送迎の間の行程や乳幼児等の様子について、ベビーシッターが保育記録として記載しており、それにより保護者に報告していること。
・ベビーシッターの所属するベビーシッター事業者(法人格を有し、協会が実施要綱に定める割引券等を取り扱う事業者として認定した者)が運営する保育等施設の送迎でないこと。
次に、割引券の発行には割引券利用手数料が必要です。手数料は割引券1枚につき中小事業主(労働者数が1,000人未満の事業主)は70円、それ以外の事業主は180円です。会社側はこの利用料金を支払う必要があります。金額は大きくありませんが、会社側の一定の協力も必要ということです。
また、このベビーシッター割引券はコロナ禍で拡充されています。
新型コロナウイルス感染症によって、小学校等が臨時休業等 になった場合に、保護者が仕事を休んだり放課後児童クラブ等 も利用できず、ベビーシッターを利用した場合の利用料金を補 助するものです。
コロナ禍の特例では、次の①~③に当てはまる方が特例措置の対象となり、ベビーシッターの利用券を利用できる対象となっています。
①個人で仕事をしている(自営業、フリーランスなど)
②配偶者が仕事をしていたり、ひとり親であったりして、ベビーシッターを利用しないと働き続けられない
③新型コロナウイルス感染症の影響で子供の通う小学校や保育 所等が休校・休園等になっている
また、割引券(2,200円/枚)は 平常時が1日の上限枚数:1枚/人 のところを、このコロナ禍の特例では、5枚/人になっています。また、平常時だと、1か月の上限枚数: 24枚/家庭となっていますが、このコロナ禍の特例では120枚/家庭 となっています。さらに、平常時の年間の上限枚数 :280枚/家庭 のところをこのコロナ禍の特例では上限なしとなっています。
さて、このベビーシッターの割引制度ですが、一点注意点があります。所得税や住民税が課税されるということです。割引を受けた分、確定申告して税金を支払わないといけないわけです。
たとえば、2,200円の割引券を上限の年間280枚利用した場合、2,200円×280枚=616,000円の補助が受けられます。 ただし、その616,000円は確定申告をしなくてはいけなくなります。
所得区分は「雑所得」となります。給与のみだった場合、年末調整した源泉徴収票とともに申告が必要となるわけです。
また、所得税の確定申告が発生するのは給与所得者の場合、雑所得が20万円を超える場合です。このベビーシッターの割引制度を利用することで所得が発生する人であってもその金額が20万円以下(20万円ちょうども含みます)で、他に雑所得やそれ以外の所得がないようだったら申告はしなくていいことになります。
ただし、上記にご紹介したコロナ禍で拡充した特例制度でのベビーシッターの割引制度を利用した場合には、非課税所得となるため、申告は必要ありません。
コロナ禍の特例を使ったほうが有利になりますからその点、注意しましょう。
ちなみに、このベビーシッターの割引制度を利用した場合に課税されるという話は来年度の税制改正では非課税になるという話が出ているようです。この点は今後も注意してみていく必要があるでしょう。
それから、今回は国のベビーシッターの割引制度をご紹介いたしましたが、自治体によって独自に割引制度を設けているところもあります。お住まいの自治体でそうした制度があるかも確認してみましょう。
ということで、今日は「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」をご紹介いたしました。