さて、前回まで3回にわたっていわゆる「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決を引き合いに、「同一労働同一賃金」について書いてきました。経営者からすると面倒なことが増えたという話かもしれません。しかし、一方で、この「同一労働同一賃金」を進めると経営者側にもいいことがあるという話が今日の話です。「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話です。
具体的には「キャリアアップ助成金」です。主には次の二つが使える制度です。
一つはキャリアアップ助成金の中の「賃金規定共通化コース」です。
これは、賃金規定の区分について、有期雇用などの非正規雇用と正規雇用の労働者について3区分以上を設け、非正規雇用と正規雇用とで共通する区分を2以上設ける制度にすると受給できるものです。
たとえば、基本給について、以下のような賃金テーブルの制度を設けることです。
正規雇用(月給) | 非正規雇用(時給) | |
1等級 | 1,000 | |
2等級 | 1,100 | |
3等級 | 200,000 | 1,150 |
4等級 | 208,000 | 1,200 |
5等級 | 215,000 | |
6等級 | 220,000 | |
7等級 | 230,000 |
正規雇用 | 非正規雇用 | |
1等級 | – | 定型業務を指示のもと行う |
2等級 | – | 定型業務を正確にこなせる |
3等級 | 業務に対して一般的な知識を有し、定型業務を正確にこなせる | |
4等級 | 一定の研修を受け、高度な知識を有し、定型業務を行うほか、パート社員を指導できる | |
5等級 | 一定の研修を受けたうえで、パート労働者への指導の他、一定の役職に就いて役職の仕事を行う | |
6等級 | 高度な仕事を行う一方で、グループの目標達成に向け具体的なスケジュールを立て、下位の従業員に指導する | – |
7等級 | 業務に対して高度な知識を有し、下位の従業員に教育的指導をし、パートタイム労働者の勤怠管理等の役職(課長職)の業務を行う | – |
この助成金は導入前の制度を3か月以上導入し、変更後の賃金規定を6か月導入して初めて受給対象になります。また、変更後の賃金規定を導入する1か月以上前に「キャリアアップ計画書」を提出していないといけません。要件がいろいろとありますが、この正規雇用と非正規雇用の共通の賃金規定を導入した場合、1事業所あたりで57万円、受給できます。(生産性要件に該当すれば72万円になります。)さらに、対象となる非正規労働者が2人以上いる場合、2人目以降は1人当たり2万円(20人までが上限)加算されます。
対象労働者が多い場合、受給できる可能性がさらに増えるわけです。
正規雇用と非正規雇用の賃金制度を整備するにあたってはこの助成金の活用は是非、考えたいところです。
また、キャリアアップ助成金の「正規雇用転換コース」も是非、検討したいところです。
これは非正規雇用の労働者を正規雇用に転換すると受給できる助成金です。
現状では、以下の3種類があり、それぞれの受給額は以下です。
- 有期雇用→正規雇用 1人当たり57万円(生産性要件に該当すれば72万円)
- 有期雇用→無期雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)
- 無期雇用→正規雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)
なお、このキャリアアップ助成金の正規雇用転換コースについては、以前にもこのブログで紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。
また生産性要件についても、このブログで紹介していますので参考にしてみてください。
ということで、今日は、「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話でした。