手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

Category Archives: 社会保険・労働保険

1 3 4 5 6 7 9

今日は顧問先からお問い合わせいただいたご質問の中から、年金と給与の調整という話、いわゆる「在職老齢年金」という話をしていきたいと思います。

「給与と年金の両方をもらうと年金額が減らされる」

この話自体は、皆さん、よくご存じのようです。

では、どうやったら年金が減らされるのか、逆にどういう場合に年金が減らされることがないのか、また、いくら減らされるのか、きちんと理解している方というのは私の感覚的にも少ないと思います。今日はその基本的なルールに絞って、なるべく平易な言葉でわかりやすく書いていこうと思います。

年金と給与の調整というのは、「年金+給与」が28万円(65歳以上の方は47万円)を超えると、年金の一部が減らされるという話です。これを「在職老齢年金」と呼びます。こういう年金の種類があるわけではなく、年金と給与の調整がされる場合の老齢年金のことを「在職老齢年金」と言っています。(老齢年金なので、障害年金や遺族年金と給与が両方支払われる場合、そもそもこれらの年金との調整という話はありません。老齢年金に限った話です。)「在職老齢年金」というのは「月額給与(「総報酬月額相当額」といいます)」+「月額年金(「基本月額」といいます)」の1か月あたりの金額が28万円(65歳以上の方は47万円)以上だと調整されるという話なのですが、この在職老齢年金の話を理解する上での主な部分はそのうちの「月額給与」という部分です。

まず、簡単な方から行きます。年金の方です。基本月額、つまり、1か月の年金の額というのは、これはあまり難しくはありません。これは2か月おきに支給される老齢年金の1か月分(通常は支給を受けた年金額÷2)の金額と考えていただければだいたいOKです。(正しくは「加給年金額」がある場合にはそれを除いた、報酬比例相当の金額です)

問題は「月額給与」の方です。私のこのブログでは「月額給与」と言っていますが、正しくは「総報酬月額相当額」といいます。これは1年の標準報酬月額と賞与の届け出額の金額を足して12で割った金額です。年金事務所側が把握している1年分の報酬を元に1か月の給与の額を計算しているわけです。

その月その月の給与をいちいち報告して計算していると思っていらっしゃる方もいるのですが、そうではないんです。すでに届出されている報酬額が計算元になっています。

この1年分の給与の額の「総報酬月額」と1年分の年金額を足して12で割った額の金額の「基本月額」の合計が、65歳未満の場合には28万円以上、65歳以上だと47万円以上だと調整されるというのが、いわゆる「在職老齢年金」の調整の基本的な仕組みです。

上記の内容を簡単に算式で示すと「給与+年金<28万円(65歳以上は47万円)」だと調整される、となるわけです。

次に「在職老齢年金」について、今までご相談を受けた中で誤解が多い点を3つご紹介いたします。

まず、この制度で計算する場合には、何か新たに届け出を出したり、現に支給されている給与の額をいちいち年金事務所に報告したり、そういうことはしないわけです。そう考える人は、たとえば残業代が増えるとどうなるのかとか、○○手当が増えると年金の一部が支給停止に係るのではないかとか、そのような話をされるのですが、それは全く違うわけです。あくまでも、この給与と年金の調整の仕組みは、要するに、給与の額も年金の額も年金事務所で現に把握が可能な数字を元に計算しているわけなんです。これが、誤解される点の一つ目です。

ただ、給与の額が増えて、月額変更に該当したり、算定基礎届によって報酬月額が増えたりすると、標準報酬月額が変更になった時点から年金額との調整が入る可能性はあります。給与が増えても全く関係ないわけではないです。月額変更に該当したり、年に1回の算定基礎届で標準報酬月額が増えれば影響はあります。その点もご注意を。

 

次に誤解される点、二つ目です。この制度は、当然のことながら社会保険の標準報酬月額の話が出てくるということは、厚生年金に加入していない方はこの調整の話はありません。あくまでも、厚生年金に加入している方が年金の支給を受ける場合に調整があるという話です。たとえば、個人事業主だったり、給与は受けていても社会保険(厚生年金)に加入していないのであれば、そもそもこの在職老齢年金は関係のない話です。

 

この論点は、税理士の方にもこの点の誤解が非常に多いように思います。たとえば、実は、個人事業主の方だったとか、給与はあるが今の会社では社会保険には入っていない(国民健康保険に加入している)とか、相談を受けていてそういう話になることがあります。あくまでも、厚生年金に加入している方が給与と年金の両方を受ける場合に「在職老齢年金」として年金額が減らされるという話です。個人事業主や給与の支給は受けていてもそもそもその方が社会保険に入っていないのであれば在職老齢年金の問題は発生しません。この点もわかっている方には当たり前の話なのですが、誤解の多い点ですのでご注意ください。

 

それともう一つ、三つ目は、在職老齢年金の仕組みが適用されるのは65歳未満と65歳以上で調整される額が変わるということです

65歳未満の方ですと、年金と給与であわせて28万円ですが、65歳以上の方はこの28万円が47万円になります。年齢が何歳かによって調整額は異なりますのでご注意ください。

ちなみに、この65歳以上の支給停止基準が47万円になったのは、平成31年4月1日からの変更点です。(それまでは46万円でした)

 

 

さて、ここまでご理解できた方は、最後に、いくら調整されるのか、計算式を見てください。(ここまでで理解できた方だけで結構です。計算式を見るだけで訳が分からなくなる可能性があるので。)

 

調整される額は以下の算式によって計算されます。

{「基本月額(1年分の年金額を12で割った金額)+総報酬月額相当額(1年間の標準報酬月額の12ヶ月分相当額+賞与の額)÷12」-28万円(65歳以上の者の場合には47万円)}÷2分の1

 

この計算式がよくわからなければそれでも構わないと思います。この計算式で知っていただきたいのは、あくまでも調整される年金額は算式の超えた額の2分の1となっている点です。

よく、「年金が減らされるのだったら働かない」というようなことをおっしゃる方がいらっしゃいますが、手取り額が減るわけではないです。あくまでも年金額の一部が減額されるということです。年金額の半分も減らされると思っていらっしゃる方もいますが、そうではないんです。

 

「年金を満額受給できる」ことを考えるというより、手取り額全体をみて考えたほうがいいのではないかと思います。「減らされる」となると、「減らされる」ことにフォーカスされ、どうしても「減らされない」方法を考えるのですが、仮に年金額の一部が減らされても働いたほうが手取り額が増えるのであればその方がいいかもしれないですよね。要するに、年金額が減らされるというのは、働き方をどうするのかを考える際の参考事項の一つのはずです。

 

あとは、実際、どの程度減額されるのか、きちんとシュミレーションを出したいのであれば、面倒かもしれませんが、実際、年金事務所に行って「給与がいくらだったらいくら減額されるのか」をご相談に行かれるのが確実でしょう。たとえば、高年齢者雇用継続給付という雇用保険の給付金を受けている場合には、この在職老齢年金の仕組みはさらに複雑に調整されます。このような場合には、実際に年金事務所へ行っていくら減らされるのか、計算を出してもらったほうがいいでしょう。年金事務所で待たされたりという部分はありますが、その方が間違いは少ないと思います。

 

いわゆる「在職老齢年金」について、税理士の先生にも誤解が多いのは、解説されているものが正確には書かれていても専門用語などを使っているため、わかりづらくなっている点にもあるのではないかと思います。そのため、このブログではできるだけわかりやすく「在職老齢年金」の基本の部分の解説に絞って書いたつもりです。参考にしていただければ幸いです。



今日は前回に引き続き、社会保険料の徴収の話です。

月末に退職した者の社会保険料の控除についてどうしたらいいのか、という話です。

 

まず、社会保険の基本的な日付のルールについてです。

社会保険の「資格喪失日」と「退職日」はイコールではありません 「資格喪失日」とイコールになるのは「退職日の翌日」です。社会保険の資格喪失届の用紙には「退職日」を書く欄があります。その翌日が資格喪失日になっていないと、「退職日の翌日が資格喪失日ということで間違いないでしょうか?」と年金機構から電話が来ます。

社会保険の「資格喪失日」の基本的な考え方として、退職日そのものはまだ保険証は使えると考えるわけです。夜の12時(24時)を超えた時に日付が変わります。その日付が変わる瞬間までは保険証が使えるわけです。そのために、「退職日」を「資格喪失日」とはせず、「退職日の翌日」を資格喪失日としているわけです。

ちなみに、雇用保険の資格喪失日は「退職日」です。社会保険と雇用保険では「資格喪失日」の捉え方が違いますから注意しましょう。

 

さて、そうすると、退職が月末付の場合、資格喪失日はその翌月の1日になります

3月31日付で退職した方の場合、資格喪失日は4月1日になります。つまり、3月の保険料は発生します。

ちなみに、3月30日に退職した場合、3月31日が資格喪失日となるため、3月分の保険料は発生しません。(ただ、これを従業員さんに説明して、3月31日退職の人を3月30日にしてしまうような取り扱いは問題があると思いますので、気を付けてください)

 

月末退職者の場合給与から控除する社会保険料について注意すべき点があります。たとえば、給与が月末締めの月末払いの会社の場合、月末退職の人の控除する社会保険料は2か月分控除することになります。これはなぜか、お分かりになるでしょうか?

 

たとえば、3月31日に退職した者がいて、その会社の給与の支給が月末締めの月末払いだったとします。3月31日に支給される給与から控除される社会保険料は2月分の社会保険料です。加えてこの人は、3月の社会保険料も徴収されます。4月に支給される給与がない場合、3月末に支給される給与は最後の給与になります。ですから、最後の3月31日の給与で3月分の社会保険料も徴収しないといけないわけです。

 

ですが、この2か月分社会保険料を控除するというのはかなり、まれな話です

ちょっと考えてみるとわかるわけですが、たとえば、月末退職の場合であっても、給与の支給も月末になるケースというのはあまりないと思います。普通は給与の締日があって、そのあとに支払日になるはずです。月末締めであっても翌月の10日の支払いになったりするケースが多いはずです。たとえば、3月31日に退職した者であっても、月末締めの10日払いであれば、4月10日に支払われる給与から控除する社会保険料は3月分になっています。そのため、問題ないわけです。

 

よくものの本には、「月末退職の人の場合、最後の給与から2か月分社会保険料を控除する」と書いてあることがあります。しかし、よくよく考えるとこの最後の給与で2か月分社会保険料を控除するのは、月末締めの月末払いの給与の時くらいになるはずです。

控除している社会保険料が何月分の社会保険料なのか、注意して考えてみるようにしてみましょう。



さて、今日は、知っていれば「こんなの知らないの?」と自慢できるかもしれない(?)というような話です。誕生日の法律上の考え方という話です。

NHKの人気番組に「チコちゃんに叱られる」という番組があります。この番組でも紹介された話なので、ご存知の方も多いかもしれません。

「学年」というのは「4月2日生まれから翌年の4月1日生まれまで」となっています。この番組にも登場していましたが、元ジャイアンツの桑田真澄さんは4月1日生まれです。(1日ずれて桑田さんのお誕生日が4月2日生まれだったらPL学園のKKコンビは誕生していなかったという有名な話です)では、なぜ「学年」が「4月1日生まれから3月31日生まれ」になっていないのでしょうか?

 

これは「年齢計算に関する法律」という法律で説明できます。それによると、法律上の年齢の数え方は、誕生日が起算日(初日)となり、満年齢(1歳年をとる)のは誕生日の前日となっています。誕生日を1歳とすると、1年ではなく、1年と1日になってしまうためです。

これによって、4月1日生まれの人は3月31日に満1歳となります。そのため、4月2日生まれの人は、4月1日に満1歳となるため、4月2日生まれの人が「学年」の一番最初の生年月日で、4月1日の人が「学年」の最後の生年月日となると解釈されています。

「チコちゃんに叱られる」の番組では、これは「うるう年」の2月29日生まれの人に配慮したものだと解説していました。誕生日が満1歳とすると、2月29日生まれの人は、4年に1回しか誕生日が来ないことになってしまうため、誕生日の前日を満年齢の日としているのだというわけです。これによって、2月29日の人は2月29日がない年であっても誕生日の前日、つまり2月28日が来た時に満1歳とすることができるというわけです。

 

私は「年齢計算に関する法律」のことは知っていましたが、これがうるう年生まれ(2月29日生まれ)の人に配慮しているとは知りませんでした。確かにそういう説明もできますね。私も勉強になりました。(少しボーッと生きていたのかもしれませんね・・・)

 

さて、この「年齢計算に関する法律」が給与計算や社会保険事務に影響するケースがあります。たとえば、5月1日生まれなど月の初日(1日)生まれの人が満40歳になって介護保険料を徴収するケースなどがそうです。いつの給与から介護保険料を徴収すればいいのでしょうか。

 

まず、社会保険料の徴収はその月の保険料は翌月の給与から徴収するのが原則です。ですから、たとえば、4月分の社会保険料は5月に支給される給与から控除します。

この考え方と「年齢計算に関する法律」の組み合わせで考えます。5月1日生まれの人は、4月30日に満年齢となります。4月に満年齢になるわけですね。ということは、5月1日生まれの人が40歳になって介護保険料を徴収するのは、4月分の社会保険料ということになります。4月分の社会保険料は5月に支給される給与から徴収されることになるわけです

対比して考える意味でいうと、5月2日生まれだとどうでしょうか。

5月2日生まれの人は5月1日が満年齢に達する日です。5月が満年齢に達する月ですね。5月に40歳になったわけですから、6月に支給される給与から控除されることになります。

同じ5月生まれですが、控除されるタイミングは1か月ずれてくるわけです。

 

このケースは保険料を徴収するケースでしたが、たとえば70歳になって厚生年金の資格を喪失する場合はどうでしょうか?先ほどの例を使って考えてみましょう。

たとえば、5月1日生まれの人が70歳になったとします。70歳になるのは誕生日の前日の4月30日です。4月分の厚生年金から保険料が発生しないわけです。ということは、5月に支給する給与から厚生年金の保険料が発生しないということになります。

一方で、5月2日生まれの人が70歳になったとします。5月2日の人は5月1日が満年齢に達する日ですから、5月分の厚生年金保険料、つまり6月支給の給与から厚生年金が控除されないという話になります。

 

「年齢計算に関する法律」と社会保険料の徴収ルール、ちょっとややこしいですが、基本がわかれば、整理して考えていけばわかると思います。

次回も社会保険料のレアな徴収のケースの話をしていきたいと思います。



さて、今日は平成31年4月1日から施行される新しい国民年金の免除制度についての話です。産前産後期間の国民年金保険料が免除される新制度の話です。

まず、この制度の対象者は国民年金の第一号被保険者です。つまり、自営業者だったり自営業者の妻だったり、という方の話です。この第一号被保険者について、出産予定日または出産日が属する前月から4か月間の国民年金保険料が免除されるという制度ができました。具体的には、第一号被保険者で出産日が平成31年2月1日以降になる方が対象です。この2月以降に出産された方で第一号被保険者の方は早速対象になります。ただし、平成31年1月31日までに出産された方はこの制度の適用はありません。また、免除になる期間は出産日の前月から4か月間ですから注意が必要です。たとえば、平成31年5月に出産した場合、出産した5月の前の月、4月から4か月間が免除の対象期間になります。ですから、4月から7月の保険料が免除対象なわけです。

それから、この法律の施行日は平成31年4月1日ですが、対象となるのは平成31年2月1日以降の出産です。たとえば、平成31年2月1日に出産したとしましょう。その場合、この制度の適用は受けられますが、受けられる期間は施行日以降の期間に限られますから、平成31年4月分の保険料のみが免除になるわけです。

 

この制度の適用を受けるには、各市区町村の国民年金課の窓口に届出しないといけません。自動的に免除になるわけではないので注意が必要です。また、この法律の施行日は平成31年4月1日ですから、それ以前に届出しても適用にはなりません。逆に、提出できるのは平成31年4月1日以降ですが、届け出できるのは出産予定日の6か月前から提出可能です。つまり、9月30日の出産予定日の方については、早くも4月1日に提出できることになります。

 

また、この制度は国民年金保険料が免除される制度です。学生だったり、所得が少なかったりする場合に国民年金の免除される制度がありますが、それらは将来の年金額が2分の1になったり、3分の1になったりします。ところがこの産前産後の国民年金保険料が免除される制度は、免除の届け出をして免除を受けたとしても将来の年金額が減らされることはありません。出産を控えている第一号被保険者はこの制度を使わない手はないわけです。知らずに届け出をしていなかったとか、届け出するのを忘れていたとかということにならないように、今後、出産を控えている方については、出産予定日の6か月前からの早い時期に免除の届け出をすることをお勧めします。

 

この産前産後の期間の国民年金保険料が免除される制度は、他の第二号被保険者や第三号被保険者と比較してできた制度です。会社勤めの場合の第二号被保険者については、産前産後の保険料が免除される制度があります。また、サラリーマンの妻の第三号被保険者はそもそも保険料の負担がありません。現状では、第2号や第3号の被保険者は現状で保険料を負担せずに将来の年金額に反映する形になっているわけです。これらとの整合性を図るために第一号被保険者についても産前産後の期間について保険料を免除する制度を作ったわけです。

 

繰り返しですが、この産前産後の国民年金保険料が免除される制度は届け出をして初めて適用される制度です。忘れずに届け出をしておくことが肝要です。

 

今日は新しい制度、産前産後の期間の国民年金保険料が免除されるという話でした。



最近、融資の際に社会保険料についても納付がきちんとされているのかを確認されることがあります。従来から融資の際には、税金の滞納がないかの確認がされていました。納税証明書などで納付していない税金の確認の書類の提出を求められるのです。同じように、社会保険料の滞納がないかの確認もされることがあるのです。

 

融資の際の税金の滞納の確認は通常は国税についてのみ行われます。会社の国税というと、法人税・地方法人税、あとは源泉所得税、消費税といった税金です。融資の際にはこれらの税金に滞納がないことの確認をされます。納税証明書のその3というのを取るように言われるのがそれです。

 

さて、それと同じように社会保険料の未納がないことの確認を要求されるのですが、それが「社会保険料納入確認(申請)書」です。

この社会保険料の未納確認の書類は必要事項を記入して、年金事務所に確認印をもらうスタイルです。つまり、書類自体はこちらで記入して持っていくことになります。

税務署の納税証明書は納税証明書の発行依頼の書面を税務署に出して納税証明書を発行してもらうのですが、社会保険料の未納がないことを確認するこの書類は必要事項をこちらで書いて、書いた書類に「この書いていただいた事項は間違いないですよ」という印鑑をもらうわけです

 

さらに、この「社会保険料納入確認(申請)書」は管轄の年金事務所で印鑑をもらうのですが、たとえば本店が移転しているような場合、その管轄の年金事務所に所在していた期間だけしか発行してもらえません。本店移転があった場合はその点が注意点になります。

 

また、この社会保険料の未納の証明は通常は2年分しか出ません。金融機関から社会保険料の未納の証明を求められる場合、通常は「出せる期間分をだしてもらってください」というようなことを言われるはずです。その出せる期間というのは証明書を発行する2年前までの期間です

 

社会保険料の未納の証明を発行する必要があるというのは、融資の場合の他、経営事項審査を受ける場合や入札などが必要な建設業の場合があると考えられます。発行の仕方は、社労士などに聞いてもわからないことが多いです。事業主側としては、社会保険料の未納の証明書という書類があることを知っておきましょう。

日本年金機構の「社会保険料納入確認書」についてのページは以下です。↴

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyonushi/sonota/20140311.html



さて、今日は久しぶりに社会保険の手続きの話です。

手続きの話はこのブログに書くと、その後のアクセスが多くなる傾向があります。今日の論点は経営者の皆さんの今、もっとも関心の高い論点の一つと言えます。社会保険の扶養の手続きのどういう点が変わったのか、この機会にきちんと把握してみてください。

 

さて、健康保険の扶養の手続きですが、今年の10月1日以降の手続きについて、厚労省の内部で厳密に取り扱うように内部通達が発せられたようです。それに伴い、健康保険の扶養の手続きをする際の添付書類が以下のようになりました。

 

扶養する親族が同居している場合

・被保険者と被扶養者の両方のマイナンバーを届出書に記載する

・マイナンバーの記載がない場合、戸籍謄本か住民票を記載する

 

さらに収入が130万円未満で扶養されているということ(所得要件)について、同居親族の場合には、「扶養になる人の年間の収入が130万円未満であることを事業主が確認した旨を届出書に記載すること」となっています。これは具体的には、社会保険の扶養届の該当箇所に丸印を付けるだけの話です。そんなに大変なことではありません。つまり、同居の場合、実質的には、マイナンバーを記載することが大変、重要だということです。マイナンバーを記載しない場合には、住民票か戸籍謄本の添付が必要となってきます。ここが今までと変わった部分です。

さらに、扶養する親族が別居している場合には、もう一段階、面倒な話があります。

別居していて扶養されていることを確認するために「振込の事実が確認できる書類」が必要となったことです。別居の場合の所得を確認するための「振込の事実が確認できる書類」とは、振込の場合、預金通帳の該当箇所の写し、現金で送付している場合には現金書留の控えの写しなどが必要となっています。

また、これらは、16歳未満のお子さんを扶養にする場合や16歳以上であっても学生の場合には不要とされています。

 

扶養の手続きがこのように厳格化された背景には、扶養の認定を巡って不正が相次いだことがあります。報道されているところによると、特に海外に居住している外国人を扶養にする場合の不正という話が多いようです。いずれにしても、このような取り扱いにおける改正があったことは、実務上に大きな影響を及ぼしています。では、実際にどんな影響が出ているのでしょうか。

 

まず、扶養の取り扱いの変更を知らずに手続きをした事業主は、扶養の手続きを今まで通りにやろうとすると、書類の添付がないとされ、書類を返却され、扶養の手続きが進まないという実態があります。つまり、扶養親族の保険証の交付が遅れてしまうわけです。

また、この扶養手続きの変更は厚労省内部の通達によって職員に通知されて実施されているわけですが、実際、職員が手続きをする際には住基システムにアクセスしたりという作業があるため、以前よりも時間がかかるようになったようです。

そうした背景もあり、扶養の手続きは以前よりもかなり時間がかかるようになっています。

実際、私も顧問先の会社さんの手続きを電子申請でやったところ、保険証が届くまでに1か月近くかかっています。

 

そこで、扶養の手続きに当たって、以下の二点に留意してはいかがかと思います。

 

① なるべくマイナンバーを記載した形の届け出にしたほうがいい

 以前はマイナンバーの記載がなくても、通常通り手続きできたのですが、マイナンバーの記載がないと添付書類が必要なうえ、手続きに特に時間がかかるようです。社会保険の届け出の中でも、特に扶養の手続きの場合には、マイナンバーの記載をしたほうが手続きもスムースに進むようです。(マイナンバーの記載は被保険者と被扶養者の両方が必要になっています

 

② 被扶養者の手続きの際、病院にかかりそうなのであれば通常の手続きではなく、窓口で手続きをし、「健康保険資格取得証明書」を付けて手続きをしたほうがいい

 「健康保険資格取得証明書」というのは、保険証が届くまでの間、保険証の代わりとしての役割を果たすことのできる書類です。病院などでその書類を提示すれば保険証と同じ効力があります。扶養の手続きには時間がかかるため、保険証がすぐに必要な事態が発生する可能性のあるお子さんの扶養の手続きなどは、窓口で手続きをして「健康保険資格取得証明書」を発行する手続きをしたほうがいいでしょう。なお、この「健康保険資格取得証明書」を発行する手続きは、各年金事務所の窓口でしかできません。また、同時に「扶養異動届」を提出しないといけません ので注意が必要です。

 

扶養については、手続きが厳格化され、保険証の発行にも時間がかかるようになったので、この機会に事業主の皆さんにもこれらをしっかり認識していただきたいと思います。



さて、今日は実際、私の顧問先でもあったお話です。

内縁の妻もしくは夫を社会保険の扶養にするにはどうしたらいいのか、という話です。

その前に、内縁関係というのは、事実婚、つまり、結婚していない(婚姻届を出していない)関係ということです。その内縁関係でも、社会保険の扶養にはなれるというのはご存知でしたでしょうか?

ちなみに、よく比較されるのですが、税法上の扶養になるには婚姻届を出していないといけません。つまり、税務上、配偶者控除を取るには内縁関係ではダメです。

 

さて、それを前提に、では、内縁関係でも社会保険に入れるというのは、手続きはどうしたらいいのでしょうか?

まず、通常の婚姻関係での扶養なのか、内縁関係かどうかは、届け出だけではわかりません。手続き上は、年金事務所では苗字が違うということから確認するでしょう。また、今は届け出にはマイナンバーが必要ですから、それでまずは確認するでしょう。

たまたま、苗字は一緒だが、婚姻関係にないというようなケースで、マイナンバーを出さずに手続きすると、ごく稀ではありますが、表面上は内縁関係なのか、婚姻関係なのか、わからないということも言えます。ですが、基礎年金番号で確認して婚姻関係にはないことは結局は分かるのではないかと思います。

 

話が少しそれましたが、婚姻関係の場合、特に添付書類はありません。マイナンバーや基礎年金番号でわかるからです。では、内縁関係の場合、それを証明するものは何か添付しないといけないのでしょうか?

 

まずは同居していないとダメです。ただ、同居しているだけでは内縁関係であることの証明にはなりません。では、どうやって内縁関係であることを証明するのでしょうか。

 

これはあまりよく知られていないことのようですが、住民票の備考欄のようなところに、「夫(未届)」とか「妻(未届)」というのを記載できるものがあります。

通常は続柄に「夫」とか「妻」とか書かれるわけですが、その続柄の欄ではなく、別に「夫(未届)」とか「妻(未届)」というのを記載できるのです。それらが記載されている住民票を添付して手続きします。

 

または、お互いの戸籍謄本を添付して、地域の民生委員などに内縁関係であることを証明してもらうやり方もあるようです。しかし、民生委員などを介するやり方は、少し面倒であるということもあります。この方法を選択するのは、何か余程の事情がある場合だと思います。

一般的には、内縁関係の証明は、やはり、住民票に「夫(未届)」とか「妻(未届)」と記載する方法でしょう。

 

ちなみに、外国人の場合、夫婦であっての姓が違うことは珍しいことではありません。この場合、どうするかというと、たいていが住民票を添付して夫婦であることを証明します。場合によって、戸籍謄本などを添付して夫婦であることを証明します。外国人の場合、この点、気をつけましょう。

 

また、同性のカップルを内縁関係とは今のところ認められてはいないようです。渋谷区などで同性のカップルの証明書を発行するという話がありますが、証明書を発行してもらい内縁関係なので社会保険の扶養にするというのは今のところはできないです。

 

いずれにしても、内縁関係(事実婚)は社会保険の扶養にはなれますが、手続き的には少し面倒です。そもそも、婚姻関係になってしまえば、そうした証明が必要ないことになります。婚姻関係であれば税務上の扶養にもなれます。その意味でも結婚してしまうというのも選択肢の一つになってきます。

 

今の時代、いろんな事情があって内縁関係になっているカップルも多いです。そもそも結婚してしまったほうがいいという選択肢も含め、ご自身の事情を勘案して考えてみてください。



さて、今日は久しぶりにマイナンバーの手続きの話です。

平成30年5月以降は雇用保険の資格取得(入社の手続き)、資格喪失や離職票発行(退社の手続き)は原則、マイナンバーの記入をしないと原則、手続きできないこととなりました。

では、本当にマイナンバーがないと手続きできないのでしょうか?

5月以降、私も実務上、対応していると、確かにマイナンバーの記載のない書類は、原則、書類を返却されるようになりました。しかし同時に、窓口の職員から「マイナンバーの記載がないですが、何か理由があるのでしょうか?」とか「マイナンバーの記載がないままですと手続きできないのですが、どうされますか?」と言った形で聞かれるようになりました。

私の事務所では、基本的に手続きは電子申請で行っています。電子申請の場合マイナンバーの記載がないと、「マイナンバーの記載がないので連絡をください」とコメントを付されて返されるようになりました。

さて、実務上、このようにマイナンバーがない場合、どうするかです。たとえば、「マイナンバーは出したくない」と従業員さんに言われたら手続きができないままです。このような場合、どうしたらいいのでしょうか?

原則は、やはりその従業員さんに言ってマイナンバーをもらうことです。

そうなのですが、いろんな理由でマイナンバーをもらえない場合、そんなときは、まず、備考欄に「マイナンバーの提出を拒否された」といった理由を記載することが求められます。その上で、再度、書類を出します。そうすると、手続きしてもらえます。

言い方を変えれば、マイナンバーがない場合、備考欄にマイナンバーの記載がない理由を記載すれば手続きはできるということです

ちなみに、なぜマイナンバーを記載していないかの理由ですが、単に「マイナンバーをもらっていない」とか「マイナンバーをもらい忘れた」いうことではダメでしょう。本人が提出を拒否したとかいう積極的に出せない理由がないとダメだと思われます。

また、雇用保険はマイナンバーの記載がないと原則手続きができませんが、健康保険や厚生年金はどうかというと、マイナンバーの記載がなくても原則、手続きは出来ます。

ただ、マイナンバーの記載があると、住所や基礎年金番号の記載をしなくても手続きができます。これは結構、楽です。住所とかがわからなくても、①氏名②生年月日③社会保険加入年月日④1か月の給与の額と⑤マイナンバーを記載すれば、手続きができるわけです。書類の記載が楽になりました。

また、マイナンバーの登録が年金事務所でされていれば、原則、住所変更届の提出も不要になりました。この点も手続きが簡素化されている点です。

いずれにしても、社会保険や雇用保険はマイナンバーの記載があった方が手続きが簡単になってきています。おそらく、こうした傾向は今後も続くものと思います。これまでマイナンバーを積極的にもらってこなかった事業所も多いと思います。ですが、今後は入社時からマイナンバーを原則もらうようにした方が、手続き自体が楽ですから、やはりマイナンバーをもらうようにした方がいいように思います。

ということで、今日は久しぶりにマイナンバーの話でした。



7月は算定基礎届、労働保険の申告、源泉所得税の納期の特例など、事務手続きが多い時期でした。8月に入り、総務経理の担当者は一息ついている頃かもしれません。

さてそんな今になって、「労働保険の申告を間違えていた・・・」なんて気づくことはないでしょうか?

ヒトのやることです。間違えることもあります。

さて、では労働保険の修正というのはどのようにやっていったらいいのでしょうか?

 

労働保険の確定保険料の修正はいろんなケースがあると思います。

こんなケースがうかびます。

 

・雇用保険に加入していた者がいたのに計算に加えていなかった

・雇用保険にすでに加入していない者を加入したままにして計算していた

・労働保険の適用にならない者(たとえば、事業主・役員・同居の親族など)をあやまって計算に入れていた

・労働保険適用対象になる労働者を計算から外していた

・賃金の集計誤り

 

さて、これらのケースで、労働保険の修正をするにあたっては、まず、労働保険の修正は納付が終わっているのかどうかで処理が変わってきます。

また、今回のこのブログでは、今回(平成29年確定・平成30年概算)の労働保険の申告の修正について書いていきます。2年以上さかのぼる場合は、説明の都合上、またの機会で説明します。

 

まず、労働保険の申告は終わっていて、納付がまだ終わっていない場合です。これは処理自体は難しくありません。

 

まず、今回申告した申告書の控えはありますか?その控えを手元に置き、まっさらな労働保険の申告書に正しい金額を書いてみてください。前年の概算保険料(平成29年の概算保険料)の欄はもちろん、申告したものと同じ数字を記入します。それ以外は全て正しい金額を記入していってください。すべて申告書の記入が終わったら、申告書の上の方に赤いペンで「修正申告」と書いてください。これで完了です。あとは、「修正申告」で計算した労働保険料を納付してください。

 

さて、問題は納付が済んでしまっている場合です。ほとんどがこのケースでしょう。

 

労働保険の納付が済んでいる場合、まず修正するのは「確定労働保険料」です。概算保険料については、納付が済んでいるのなら、来年の労働保険の申告の際に調整すればいいので、そのままにしておきます。

その上で、まずはまっさらな何も書いていない労働保険の申告書を用意します。そして、やはり今回申告した労働保険の申告書の控えも用意します。

 

その上で、下の「概算保険料」については使いませんから、斜線を引いてしまいます

その上で、確定保険料の方に正しい金額を記入します。そして、正しい確定保険料を書いた申告書の方の上部に赤色のペンで「再確定申告」と書きます

労働保険の申告書はこれで終わりです。それに添付書類が必要になります。

まずは「労働保険再確定申告理由書」というのを添付します。この書類はどういう理由で修正するのかを記入するものです。該当する欄に☑をします。

この書類には「算定基礎賃金集計表」の修正前と修正後のものも提出します

また、仮に、雇用保険に加入していない者について遡及して雇用保険に加入したために修正したのであれば、雇用保険に加入した後の「雇用保険資格取得確認通知書」の写し添付が必要です。

逆に、雇用保険の資格喪失をしていたのに手続きしていなかった場合、「雇用保険資格喪失確認通知書」の写しの添付が必要です。

 

いずれにしても、修正前と修正後の両方の「算定基礎賃金集計表」に、修正後の内容に関わる添付書類を添付して提出します

 

また、労働保険の再計算をしたところ、すでに納付してしまった労働保険料が多すぎて還付を受けたい場合、「労働保険還付請求書」も一緒に添付して提出します

 

労働保険の申告の間違えに気づいた場合、まずは焦らなくても大丈夫です。足らなくて納付するにしても、納付しすぎて還付するにしても、適正な手続き方法があります。このブログを参考に一つ一つ、やってみましょう。



さて、賞与の支給が7月にあった会社も多かったと思います。その賞与の社会保険料の話です。賞与の社会保険料はどのように計算するのか、正確に把握しているでしょうか?

通常は賞与の社会保険料は、賞与の額に賞与の料率をかけて計算します。

健康保険は都道府県によって料率が異なります。(東京都は健康保険は9.90%、介護保険料がある場合には11.47%)その料率の半分が本人負担分です。

一方で、厚生年金は料率が全国一律です。どこの都道府県でも料率が18.3%です。

具体例で計算を出してみましょう。

健康保険 500,000円×9.90%=49,500円×1/2=24,750円

介護保険料のある方(40歳以上)の健康保険 500,000円×11.47%=57,350円×1/2=28,675円

厚生年金 500,000円×18.3%=91,500円×1/2=45,750円

さて、通常はこれでおしまいです。

今日のテーマはここからです。

まず、賞与の社会保険料を計算する際には、千円未満は切り捨てしてから料率を乗じます

千円未満を切り捨てするというのは忘れがちなポイントです。

さらに、健康保険の上限額は「年間」です。年間で573万円が上限です。この年間というのは毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額です。一方で、厚生年金の上限額は「月間」です月で150万円が上限額です。ちなみに、厚生年金には「子ども・子育て拠出金」というのがあります。これは、被保険者負担分はなく、全額会社負担なので給与計算の際には関係ありませんが、この「子ども・子育て拠出金」も月間上限が150万円です。

さて、では、今回、賞与の支払額が200万円だったとします。そうすると計算は次のようになります。

健康保険 2,000,000円×9.90%×1/2=99,000円

※40歳未満だった場合

厚生年金 1,500,000円×18.3%×1/2=137,250円

ちなみに、雇用保険料があります。これも控除します。これは上限額とかがあるわけではないので、3/1000を掛けて終わりです

雇用保険 2,000,000円×3/1000=6,000円

それから、今回は社会保険料の話なので源泉所得税は関係ないのですが、賞与の計算をするにあたっては源泉所得税も計算します。

源泉所得税はこれは前月の給与の額と扶養親族の数によって掛ける%が変わります

%を掛け算するというのも毎月の給与の源泉所得税との違いです。

また、掛け算するのは社会保険料を控除した後ですから気をつけましょう。

実は賞与の計算というのは正確に計算するにはいろいろな知識が必要です。上記を参考に賞与の計算をしてみましょう。


1 3 4 5 6 7 9