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Category Archives: 社会保険・労働保険


年末調整の時期が近くなってきました。職場でもこれから年末調整の書類の記入をするケースが多くなってくるはずです。今回の年末調整では今までにない書類が増えたり、「ひとり親控除」という新しい控除ができたりと、実に改正が多くなっています。

今日はその中から、「内縁関係」の場合にどのように変わったのか、見ていきたいと思います。

内縁関係の場合、税務は配偶者控除は取れませんが、社会保険の扶養には入れます。ここは変更はありません。変わるのは「寡婦控除」「ひとり親控除」の部分です。寡婦控除とひとり親控除については以前にこのブログでも書いていますので、下記を参照してみてください。

ここで問題なのは、従前はたとえば、寡婦であって内縁関係の夫がいる場合、婚姻関係にはないので「寡婦控除」は継続して取れました。ところが、税法改正で今回の年末調整から内縁関係の者がいる場合、「寡婦控除」もしくは「ひとり親控除」は取れなくなりました。今回の改正で事実婚の関係の者がいる「寡婦」もしくは「ひとり親」はこれらの控除の対象ではなくなったのです。

問題なのは、この「事実婚」というのをどういう形で確認するのか、ということです。「事実婚」というのは原則的には本人から申し出がなければわかりません。ただ、本人から申し出がなくても会社側で「事実婚」とわかるケースがあります。社会保険の扶養に入るために住民票に「未届の夫」「未届の妻」と記載するケースがあります。これらの記載のある住民票を添付して事実婚であるけれども社会保険の扶養に入るようなケースです。このような場合には、会社側でも届け出の書類を確認していますから、「事実婚」の関係にあることの把握ができます。この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書かれている場合には配偶者控除はもちろん、「寡婦控除」「ひとり親控除」が取れないということになります。

令和2年1月23日付で総務省から各市区町村へ向けて、住民票に「未届の夫」「未届の妻」と書いてあるケースで寡婦控除やひとり親控除を取っていないことを確認するようにという通知が出ています。またこの確認をした場合にはその情報を税務署と共有するようにということになっています。つまり、市区町村側で「未届の夫」「未届の妻」と書いてある住民票がある場合、かならず税務署にもその情報がいくようになっているわけです。

おそらく実務上、事実婚であるために寡婦控除やひとり親控除が取れないのは、本人からの申し出がある場合以外にはこのケースくらいなのではないかと思います。

ちなみに、この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書いて事実婚であることを示す方法ですが、住民票が同じでないとできないことになっています。住所が別の場合にはそもそもこの「未届の夫」「未届の妻」と記載はできません。法律上婚姻関係にある場合で社会保険の扶養となる場合、同居は要件とされていませんから、住民票の所在地が別であっても社会保険の扶養になることは可能です。この辺も事実婚と法律上の婚姻関係にある場合の違いとして認識しておきましょう。

実際、「未届の夫」「未届の妻」と住民票に書いてお子さんがいらっしゃる場合、社会保険の扶養は継続できますが、「寡婦」「ひとり親」を継続することはできなくなります。一方で、婚姻関係になったとすると、社会保険の扶養はもちろんできますし、(多くは「夫の方で」となるでしょうが)配偶者控除も取れますが、婚姻関係になった以上、「寡婦控除」「ひとり親控除」は取れません。

この年末調整を機にこうした状況にある方はどうするのがいいのか、検討が必要でしょう。

以上、今日は内縁関係の方の年末調整の話でした。



大塚家具の代表だった大塚久美子氏が社長を退任するというニュースが飛び込んできました。私の顧問先でも最近あった話ですが、今日は法人の代表者が変更したときの手続きはどうしたらいいのかという話です。

登記、税務、社会保険、労働保険と一連の手続きがどうなっているのか、見ていきましょう。

まず、法人の代表者が変更した場合、様々な手続きがある中で一番最初にやるべきことは登記です。登記が完了したあとに税務署や年金事務所に手続きすることになります。

登記の変更の時の注意点としては「印鑑カード」です。「印鑑カード」は以前のものを引き継ぐのか、新しく発行するのかというのがあります。「印鑑カード」とは印鑑証明書などを発行する際に必要なものです。前代表者の親族が代表者を引き継ぐ場合には、印鑑カードも引き継ぐ形を取ることが多いと思います。そうでないようなケースの場合、新たに印鑑カードを発行することになるでしょう。

この印鑑カードのことを記載した「印鑑届」のほか、代表者変更の登記には株式会社であれば「株主総会議事録」や「株主リスト」、旧代表者が辞任して代表者が変更するのであれば「辞任届」が必要となります。そのほかに、新代表の印鑑証明書も必要となります。

さて、無事に代表者変更の登記が済んだとします。そうなると、次に、税務署や都税(県税・府税)事務所、市町村への届け出をするという流れになります。

税務署、都税(県税・府税)事務所、市役所といった税務関係の届け出は税務署だけ少し違います

税務署は「異動届」というのを出してそれで終わりです。付書類は特に必要ありません。

一方で、都税(府税・県税)事務所や市役所は変更後の登記簿謄本を添付して出します

添付資料に登記簿謄本が必要かどうかの点が変わってきますので注意しましょう。

さらに、社会保険に加入していたのなら、社会保険の「事業所関係変更(訂正)届」というのを出さないといけません。

事実が発生した日から5日以内となっていますが、登記簿謄本を添付しないといけないので、実際上は登記が完了してから手続きをすることになります。代表者変更の登記が済んだら早めに手続きすればいいでしょう。

それから、労働保険(労災保険や雇用保険)ですが、これは特に手続きは必要ありません。労働保険は代表者が誰というのは特に届け出を必要としていないのです。

ちょっと意外に思うかもしれませんが、手続きをしようとして届け出の方法がないのでそれで気づくかもしれません。労働保険は届け出しないという点も注意しましょう。

あとは、役所ではないですが、銀行などにも登記簿謄本の写しを通常は出すことになるはずです。これは銀行側からたぶん言われます。以前は通帳には「株式会社○○代表取締役○○」と代表者の名前まで入れていましたが、現在は会社名だけです。ですが、銀行は変更後の登記簿謄本を出すように言うのではないかと思います。

ちなみにですが、登記簿謄本というのは「全部履歴事項証明書のことです。たまに顧問先の社長さんから登記簿謄本って全部履歴事項証明書のことですか、と聞かれます。そうです。正式名称は全部履歴事項証明書です。同じことだと理解しておいてください。

また、たとえば結婚して姓が変わったりした場合も代表者の変更と同じ扱いとなります。手続き的には同じような手続きとなります。

ただ、登記に関しては姓の変更は株主総会議事録は必要ないです。代表者の変更といっても姓が変わっただけなのだったらそもそも株主総会を開いて承認を得るようなことではないですからね。

ということで、今日は代表者が変更した場合の手続きの話でした。



さて、今日はよく顧問先等から質問される話です。

社員の住所が変わったのは社会保険の届け出が必要なんですか」というものです。

健康保険や厚生年金の届け出の際にマイナンバーを原則的には記載するようになりました。そのことと住所変更の届け出の有無は関係しています。

たとえば、入社時に基礎年金番号を書かずに届け出の用紙にマイナンバーを記載して届け出したとします。そういう方は社会保険とマイナンバーが紐づいているため、住所の変更に関しては届け出の必要はありません。

このようにマイナンバーと基礎年金番号が届け出などを通じてきちんと紐づいている方は住所の変更があったとしてもそのことを年金事務所等へ届け出る必要はありません

以前は住所の変更があると「厚生年金住所変更届」というのをその都度、提出していたのでそのことが頭にある方は「住所の変更があったので届け出をしてほしい」といったお話をいただくことがあります。ですが、原則的には届け出が必要なくなりました

ただ、マイナンバーと基礎年金番号が紐づいていないケースがあります。

たとえば、マイナンバーを有していない海外居住者、短期在留外国人、住民票住所以外の居所を登録する場合などがそうです。

実務上は、私の顧問先でもあったのですが、日本国内に住所があっても、住所変更がされていないケースがあるようです。ねんきん定期便が旧住所から転送されるといったことからわかることがあるようです。このような場合には、個別に「厚生年金住所変更届」を出す必要があります。

このように実務上はねんきん定期便等の郵便で届く年金の加入記録が転送されるような場合に届け出をしていくという対応になるのだろうと思います。

また、電子申請でも住所変更の届け出はできますが、第3号被保険者の住所変更の場合には電子申請できないので紙で郵送するか、直接、年金事務所へ提出することになります。

以上、社会保険の住所変更の話でした。



さて、今日は私の顧問先からいただいた質問を元に書いていきます。

こんなご質問でした。

○○さん(傷病手当金受給中の方)が、他社でリハビリを兼ねてアルバイトをしたいといってきています。主治医の先生もそれはいい方法だといっているようです。傷病手当金受給中で働いていても問題はないのでしょうか?

健康保険法第99条によると「被保険者が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。」となっています。病気で働けないから給与の代わりに受給するのが傷病手当金です。

そもそも働いていると傷病手当金はもらえない。これが原則的な考え方です。さて、上記のご質問のケースを考えてみましょう。

このケースは精神疾患で会社を休職中の方であるという前提があります。この方がアルバイトをするのは主治医のアドバイスもあり、要は、病気療養という目的で働くわけです。しかも自社ではなく、他社で働いて少しずつ療養していこうという理由なわけです。果たしてこの状況で傷病手当金を受給しても傷病手当金の受給に影響はないのでしょうか?

これについては、平成15年2月25日に厚労省から出ている次のような通達(保保発第0225007号)があります。全文を引用してみましょう。

健康保険法第99条第1項に規定する「療養のため労務に服することができないとき」(労務不能)の解釈運用については、被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。

したがって、被保険者がその提供する労務に対する報酬を得ている場合に、そのことを理由に直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかの判断をされたいこと。

ちょっと長いですが、全文を引用しました。この通達は健康保険法99条の傷病手当金の要件にある「労務に服することができないとき」というものの解釈のことを言っています。「報酬を得ている≠病気で働けない」と考えて、傷病手当金がもらえないと考えるのは違うといっています。あくまでも病気療養、つまり、リハビリ的に働いてその結果、報酬を得ていたとしてもあくまでも病気療養の一環なのだから普通に「働けない」状態であることには変わりないと判断して下さいといっています。

また、この「報酬を得ている」というのは自社で働いて報酬を得ているのか、他社で働いて報酬を得るのか、それは問わないともいっています。

通達なので、厚労省が実際に事務処理をする協会けんぽなどにあてて書いている文書ですが、この通達の解釈が実際にはそのまま実務上の解釈となります。

さて、では、病気療養的に働いて報酬を得ていても問題ないとされるのは、どの程度までを言うのかという点です。

解釈通達には、「軽微な労働」であることや本来の職場とは違う仕事であることなどと書かれています。

ここからは私見となります。判断の基準として、まず、本来の仕事とは違う簡単な仕事であることがあります。また、雇用保険に加入するのは週の労働時間が20時間以上である場合です。その辺から考えると、例えば、20時間以上労働時間があるような場合には病気療養の働き方とは言えないのだろうと思います。それから、この通達の想定しているのはあくまでも「一時的」なものです。何カ月も継続して報酬を得ているのであれば、これもこの通達からは外れてくるといえるだろうと思います。具体的に何カ月からだと「一時的」といえないのかまでは何とも言えませんが、あくまでも「病気療養」のための一時的なものというのが基本だということです。

加えて、報酬を得ている場合、傷病手当金の受給額に調整が加わる可能性があります。協会けんぽのHPによると「休んだ期間について、給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。ただし、休んだ期間についての給与の支払いがあってもその給与の日額が、傷病手当金の 日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。 」とあります。ただ、これは傷病手当金の受給中に有給の給与が出ている場合です。病気療養の一環で少し働いていてもやはり傷病手当金はその分、減額されるのかは書いていません。

そこで、協会けんぽにもこの点を電話で問い合わせてみました。その回答としては、自社で働いて一部、報酬が出ている場合、その分は傷病手当金は減額されるという話でした。ついでに、その傷病手当金受給中に他社でアルバイトしていても減額されるのか、というのも聞いてみました。回答としては「協会けんぽとしては4枚の傷病手当金の用紙からしか判断できないです。他社で勤務していることが問題になるのは、社会保険の調査があったりして、その際に他社で問題になる可能性はあります。」というような話でした。つまり、傷病手当金受給中の他社での勤務の場合、傷病手当金の申請ではわからないかもしれないが、勤務時間が多いとそれが原因で問題になる可能性があるという話です。

傷病手当金の受給中に報酬があるようなケースがある場合、注意してみてください。以上 、傷病手当金受給中に報酬を得ていた場合という話でした。



事業主宛にお知らせが順次届いているようなので把握されている事業主も多いことと思います。厚生年金の上限額が引き上げになっています

従来、厚生年金は上限額が620千円でしたが、上限額が650千円に引き上げになりました

適用となるのは9月1日からです。

9月分の社会保険料から変更になります。対象者がいる事業所には9月の終わりごろから個別に新標準報酬に該当する旨が通知されています。その通知で確認されている事業主も多いと思います。

もう一つのポイントはいつの給与から変更になるのかという点です。9月分の社会保険料、つまり、多くの事業所は10月に支給される給与から変更になります。

また、この変更に際しては特別な手続きは必要ありません。算定基礎届で提出された報酬に基づき、該当する者がいる場合には、個別に事業主宛に案内が郵送されま。

今月支給の給与から注意して給与計算をしましょう!



今日は顧問先からいただいた質問からちょっと考えてみたいと思います。

月末の前日を退職日とすると社会保険料がかからなくて得だ」という話についてです。

このことをちょっと考えてみたいと思います。

実はこの話は私が開業する前、会計事務所に勤務していたころからたまに聞いたりすることがある話でした。話の要旨としてはこのようなことです。

月末退職とするとその月の社会保険料がかかるから、月末の前の日に退職したとすれば社会保険料がかからなくなる。だから、顧問先にもそう話をして月末退職ではなくで月末の前の日に退職したことにして手続きするように話をしたほうがいい

こんなような話です。

これはどういう話なのでしょうか?まずは社会保険の仕組み的な話から確認していきましょう。

社会保険というのはそもそも退職日の翌日が資格喪失日となります。つまり、退職日の当日は保険証を使えるということです。その翌日(正しくは夜の0時を過ぎた時間)から保険証が使えなくなります。保険証が使えなくなった同日に別の保険に加入する形(法律的には、ほかの会社に就職したのから他の会社の社会保険に、そうでなければ自動的に国保・国年)となります。これを同日得喪といったりします。

たとえば、9月29日退職とすれば、9月30日資格喪失となり、9月30日の当日から保険証は使えなくなります。

また、社会保険料は月末の在籍に対してかかるので、9月30日にすでに資格を喪失しているのであれば、9月分の社会保険料はかからないということになります

このように、確かに9月29日退職とすれば、9月30日資格喪失となり、社会保険料は「会社側」ではかかりません。会社側からすると社会保険料がかからなくなり、一方で従業員側からしても社会保険料の負担が1か月分なくなるのでよさそうな話に聞こえるのかもしれません。ですが、あえてこのように誘導すると、本人にとって不利益になることがいくつかあります。

たとえば、9月分は国保・国年となる(9月30日にほかの会社に再就職しなければ自動的に9月30日に国民健康保険・国民年金となります)ため、国民健康保険・国民年金の保険料となります。保険料という点からはひょっとしたらそちらのほうが高くなる可能性があります。また、国保・国年の手続きをしなければ無保険となる期間があることもあり得ます。

また、年金についても影響があります。たった1日だからといって手続きを何もしなければ老齢年金の加入期間に空白期間が生まれる可能性もあります。つまり、たったの1ヶ月分ですが将来の年金額に影響します。また、仮に障碍者になって障害年金を受給することになってしまった場合、空白期間があると障害年金を受給できなくなる(障碍者認定される1年以内に保険料の未納がない等の要件があります)こともあり得ます遺族年金の受給できる場合も同様に、保険料納付要件があるのでそれに引っかかってしまい、せっかくもらえるはずだった年金がもらえなくなることもあり得ます。障害年金や遺族年金はその後の生活保障という意味がありますから、仮にたった1日のちがいでこうした年金がもらえなくなることが起こってしまったら重大な問題となります。

それから、実際に私が勤務していた会計事務所であった話ですが、前職で月末の前の日に退職した(たとえば9月29日退職として1か月分の社会保険料を逃れる形にした)方がいました。前職の会計事務所でその会計事務所の所長の税理士の先生から言われた(つまり、社会保険料が1か月分かからないから月末退職ではなく月末の前日を退職日としようといわれた)らしいです。その方は日をあけずに、つまり、この場合だと10月1日に別の会計事務所に再就職しました。ところが、その方がちょうど1年近くになったときに、病気になってしまい傷病手当金を受給することになりました。傷病手当金は同一の傷病で仕事につけないのであれば退職後も継続して受給できます。ただ、退職していても傷病手当金を受給するには加入期間が1年以上ないといけません。この1年以上の加入期間というのは、たとえば協会けんぽなら協会けんぽで継続して1年以上の加入であれば、途中で職場が変わっても継続しているものとして取り扱えます。この方の場合、再就職先の会計事務所でちょうど1年になる前に退職してしまいました。前職も協会けんぽだったため、通算すれば1年以上になり本当だったら傷病手当金が受給できたはずなのです。つまり、前職とこの退職した会社で切れ目なく社会保険が継続しているのであれば傷病手当金を受給できたのに、たった1日切れている日があったために退職後も継続して傷病手当金を受給できるという特例が使えなかったわけです。しかも、このケースは実態としては月末が退職日だったわけですから、問題があるといわざるを得ないでしょう。

このように、本来の退職日は月末なのに社会保険料がかからないからという理由で月末の前の日を退職日とすることで、本人に不利益になることがいくつかあります。会社側からすれば、単に1か月分の社会保険料がかからなくなるだけの話ですが、本人にとっては実は不利益なことが多い話だということです。

また、コンプライアンス上も問題がないかという点もあると思います。税理士の先生で「退職日を月末の前日とすると社会保険料がかからなくなるからそのようにしたらどうですか」と顧問先にアドバイスしている先生がいるとお聞きしたことがあります。先ほど例に出した前職の会計事務所での取り扱いのように社会保険料を逃れるための常とう手段のように考えている税理士も多いのです。問題なのは、その税理士の先生が上記のような本人にとってのデメリットがあることをきちんと説明し、本人がこうした不利益があることをきちんと理解したうえでやっていることなのかという点です。本人も了解しているからいいのではないかという意見もあると思いますが、生命保険であろうが、携帯電話の契約であろうが、本人にとって不利益なことがあるのであれば事前に説明をするのは常識的に行われていることです。件の税理士の先生も「1か月分の社会保険料がかからない」という点だけを会社側も本人に説明しているのではないのかと思います。このようなことで訴訟になることはないのかもしれませんが、もし仮に訴訟になったとしたらデメリットをきちんと説明していないという点について責任を問われかねないと思います。

そもそも、事実として退職日が月末なのに月末の前日を退職日として書類を作成するという行為自体、虚偽の公文書作成です。そのこと自体にすでに問題があります。得だとか損だとかという問題以前の話ではないかと思います。

このように月末が本来の退職日であるところを月末の前日を退職日とするのは問題となる点があるということです。そのことを十分に理解していただきたいと思います。



新型コロナウィルスの社会保険料の特例の話です。新型コロナウィルス感染症の影響によって休業したことで給与が下がった場合に、下がった月の翌月から社会保険料を下げることが可能となりました。

まず、通常の場合との比較で考えてみましょう。

原則的な月額変更の場合、報酬が下がった月から数えて4ヶ月後から社会保険料が変わります。たとえば、4月に報酬が下がったとすると4月から6月の3ヶ月の平均でみて社会保険の報酬の等級表で2等級下がったら対象になります。つまり、4月に給与が下がっても社会保険料の変更がかかるのは下がった月の4ヶ月後の7月分の社会保険料から社会保険料が改定となります。(例えば末日締めの翌月10日支払いの事業所だったら8月10日支給の給与から改定となります)また、原則的な月額変更の場合、「固定的賃金の変更」というのが要件となります。つまり、4月~6月の間に仮にコロナの影響で給与が下がったとしても、そもそも基本給(日給や時間給の場合にはその単価)が下がっていなければ原則的な月額変更の対象とはならないわけです。

さて、この比較でみると今回のコロナの特例の月額変更がよく理解できると思います。この特例を使うための要件は三つです。

新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことにより令和2年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月が生じた方となっています。

この期間内にコロナのために休業し、報酬が下がたことが一つ目の要件です。

著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方が対象です。

この報酬が下がることというのは通常の月額変更の場合の要件の固定的賃金(基本給、日給や時間給の単価等)の変動がない場合も対象となります。つまり、月給、日給、時給の単価の変更はなく、コロナのために出勤日数が減って給与が減った場合も対象になります

③この特例を使って社会保険の月額変更をすることに本人が書面により同意していることが必要です。

これは本人から同意書を取るなどする必要があります。この本人からの同意書というのは「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う標準報酬月額の改定に係る同意書 (月額変更届(特例)用)」という参考様式もあります。それに書いてもらうのがいいだろうと思います。

この特例は令和2年4月から7月までの間に、新型コロナウィルス感染症のために休業になっていることが前提です。その休業期間中に報酬が1か月でも下がったら、下がった月の翌月の令和2年5月 から8月分保険料が対象となります。また、固定的賃金の変動というのが要件にありません。

令和3年1月末日までに届出があったものが対象となります。それまでの間は遡及して申請が可能です。ただし、厚労省は「給与事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするため、改定をしようとする場合はできるだけ速やかに提出をお願いします。」としていますから、この特例を使うのだったら早めに届け出をしたほうがいいでしょう。

では、実際にどのように届け出をすればいいのでしょうか。

まず、「月額変更届(特例改定用)」という用紙があります。

その用紙を使って出すことになりますが、これは通常の月額変更届を使ってもいいだろうと思います。通常の月額変更届にまずは「特例」と書きます。次に、⑦欄の「降給」にマルを付し、⑱欄の備考欄の6にマルを付して「特例改定」と書いて出します。手書きの用紙を出す場合には、通常の月額変更の用紙にこれらの項目を書いて出してもいいだろうと思います。

さらに、この月額変更の特例を使う場合には、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う標準報酬月額の改定に係る申立書」という決まった書式があり、それを添付し管轄の年金事務所に申請することになります。

それから、この特例を使うには本人の同意が必要です。それは社会保険料の月額を低くするということは他のことに影響があるからです。たとえば、傷病手当金を受給する場合、月額報酬を低くすれば、その低くした金額を元に傷病手当金が計算されることになります。また、年金額も下がることになります。つまり、ご本人にとって不利益になる部分もあるためご本人の了解が必要なわけです。

また、このご本人の了解したことについての書類はこの特例の月額変更届を提出する際に添付する必要はありません。後日、 事業所への調査などの際に確認を求める 場合がありますので、届出日から2年間 は書類を保管しておいてください。

それから、給与を支給していない場合も対象となります。実際の給与支給額に基づき標準報酬月額を改定することとなり、 報酬が支払われていない場合は、今回の 特例改定に限り、最低の標準報酬月額 (健康保険は5.8万円、厚生年金保険は 8.8万円)として改定することとなります。また、支援金(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金)を受ける場合でも、特例改定の対象となります。支援金は、給与支給額には含みません。

それから、最後に、このコロナの特例の月額変更と使ってそのあと給与が通常通りに回復した場合の話です。

今回の特例改定に限り、休業回復した月から継続した3か月間の平均報酬が 2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無に関わりなく、必ず月額変更届の届出が必要です。

コロナの休業特例を使う場合も「固定的賃金」の変動は要件とはなっていませんが、休業から回復した場合にも「固定的賃金」の変動は要件となっていません。なお、実際の報酬支払の日数が17日以上(特定適用事 業所等の短時間労働者は11日以上)となった月でみていきます。

日本年金機構のこの特例の説明は以下にもありますから参考にしてみて下さい

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0625.html

今日はコロナ特例の社会保険料の月額変更の話でした。



離職日が8月1日以降になる場合に、雇用保険のいわゆる失業給付の計算方法が変わります。今日はこの話です。

コロナ禍であまり注目されていない感がありますが、雇用保険の失業給付に改正があります。

従来は雇用保険を受給するためには、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1か月として失業保険の計算をしています。具体的には離職票の⑨欄と⑪欄の日数が11日以上である月を1か月として2年間に12カ月以上あることが必要だったわけです。

これが、8月1日以降は賃金支払基礎日数が11日以上であることのほか、労働時間数が80時間以上である月を1か月としてカウントしてもいいことになります。いずれも1か月としてカウントする月数が離職前2年間に12カ月以上あることが必要となります。

具体的に言うと、賃金支払基礎日数が10日以下の場合には、⑬の備考の欄に、その月の労働時間数を書いていくことになります。賃金支払基礎日数が10日以下であっても労働時間数が1か月で80時間以上であれば1か月としてカウントしていくことになります。

上記に関係するのは主には日給者や時給者です。

月給者(1か月の基本給の金額が決まっている者)は基本的には関係ありません。つまり、月給者は原則として、従来と同じで、何も変わりません。

言い方を変えると、時給者は日給者の場合、離職票の⑫欄はA欄ではなく、B欄に記載していきます。このB欄に記載する者について、賃金支払基礎日数(⑨欄や⑪欄)が10日以下となっている場合に、追加で⑬欄に労働時間数を記載する必要があるということです。

8月1日以降の離職の場合、注意して離職票を書いていきましょう。

ということで、今日は8月1日以降の雇用保険の改正の話でした。



厚生労働省に社会保障審議会というのがあります。12月にこの会合があり、現在、従業員500人超の企業が対象になっている短時間労働者への社会保険の加入を、令和4年10月には100人超の企業に、令和6年10月には50人超の企業に、という形で適用を拡大する方向になっています。

まず、短時間労働者というのはどういう人たちをいうのでしょうか?

短時間労働者とは、以下の要件を満たす人のことを言います。

  • 週の労働時間が20時間以上である
  • 月の給与の額が8万8千円以上(年間106万円以上)である
  • 勤務期間が1年以上の見込みである
  • 学生でない

上記のすべてに該当する人はパートタイマーや短時間労働者であっても社会保険の適用になるというものです。

これは、現状では、従業員数(社会保険に加入している人)が500人を超える企業が対象になっています。中小企業の場合、実質的にはこの規定が該当するところはないのでしょう。

これが、令和4年10月には100人超の企業に、続いて令和6年10月には従業員数50人超の企業にと拡大する方向だということです

これらの要件のうち、一番気になるのが月額給与が8万8千円以上(年間106万円以上)というところでしょう。ですが、実際には、「週20時間」と「勤務期間が1年以上」という部分が問題なのだと思います。

社会保険に加入したくないという場合、たとえば、労働契約書で契約期間が1年未満になるようにしたりということが考えられるわけです。厚労省側もそうしたことを想定して、「契約期間が1年以上」という部分は2カ月超かどうかを判断基準とすることにするようです。これは、現状の週の労働時間が20時間という判断基準は残すようで、これは現状でも雇用保険の加入基準が週の労働時間が20時間であることから、それと足並みをそろえる意味もあるように思います。

また、最低賃金の上昇によって、たとえば、週20時間未満の労働時間であっても月の給与が8万8千円以上(年間106万円以上)になるケースが考えられます。たとえば、時給が1100円だとすると、1週19時間で1週が4.5週あるような月だと、19時間×1100円×4.5週=94,050円となり、8万8千円以上(年間106万円以上)になります。

このようなケースでは、週の労働時間が20時間を超える契約なのかどうなのかが問題になるでしょう。労働契約が週20時間以上の契約になっていれば社会保険加入の対象になるのは当然ですが、実態として労働時間が週20時間を超えているのが常態化しているような場合も、契約の内容がどうであれ、社会保険加入の対象となると判断される可能性があります。社会保険に加入させたくない短時間労働者なのであれば、労働契約はもちろんのこと、実態としての労働時間も20時間以上とならないように配慮していく必要が生じてくるわけです。

いずれにしても、短時間労働者にも社会保険に加入をしなければいけないということは、会社の負担が増える話でもあり、中小企業にとっては死活問題です。こういう話があると、私の顧問先の社長さんの多くもそうなのですが、社会保険の適用拡大の方向性を批判することをおっしゃる経営者も多いです。しかし、批判したところで短時間労働者への社会保険の適用拡大の方向性は変わらないわけです。とりわけ、介護事業所は短時間労働者の多い業種でもあります。今こそ、一人当たりの労働生産性を上げて、効率のいい方法を考えるなど、適用拡大に対応できる態勢を作っていく必要があると考えたほうが前向きなのではないかと思います。

ということで、短時間労働者への社会保険の適用拡大というお話でした。



今日は最新の情報を発信したいと思います。

施行日がなんと、令和2年1月1日ですから、来月から実施される予定というものです。

内容は、健康保険や厚生年金の手続きと雇用保険の手続きが一つの窓口に統一化されるというものです。

厚生労働省は労働政策審議会の諮問を踏まえ、次のように言っています。

①届出様式の統一化(厚生年金保険、健康保険、労働保険及び雇用保険の各手続において届 出契機が同じ4種の手続(※)について統一化した届出様式を新たに設ける)

②ワンストップ受付窓口の設置(統一様式につい ては、受付窓口も統一化し、年金事務所、労働基準監督署及びハ ローワークにおいてそれぞれ一括して受け付ける)を行うことと している。

※ 新規適用届(適用事業所設置届、労働保険関係成立届)、適用事業所全喪届(適用事業所廃止届)、 被保険者資格取得届及び被保険者資格喪失届

どうやら、社会保険と雇用保険の届け出様式を一枚の紙でできるようにするという話のようです。さらに省令改正のポイントとして、以下のように書かれています。

○ 受付窓口のワンストップ化
 労働保険関係成立届について、対象事業
の事業主が、健康保険法および厚生年金保険法上の「新規適用届」または雇用保険法上の「適用事業所設置届」と併せて提出しようとする場合においては、年金事務所、労働基準監督署またはハローワークにて受け付けることができるものとします。
 また、この場合において、事業主が提出する概算保険料申告書についても、同様に、年金事務所、労働基準監督署またはハローワークにて受け付けることができるものとします。

 ※以下に関するものを除く事業
・有期事業
・労働保険事務組合に労働保険事務の処理が委託されている事業
・二元適用事業

上記の方は、労働保険の年度更新(労働保険の申告)の話です。これについては、年金事務所やハローワークでも受け付けできるようにするという話のようです。

会社ができたら年金事務所と労働基準監督署、ハローワークと、それぞれ別々に届け出が必要でした。それが、一つの窓口でできるという話ですから、会社にとっては手続きの簡素化につながり、いいことではあります。

ただ、なにせ、来年の1月から、つまり、来月から実施されるという話です。

急に出てきた感が否めませんし、会社もこの改正にすぐに対応していく必要があります。

具体的にどういう形になるのか、まだわからない部分だらけではありますが、今後、注視していく必要がありそうです。