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Category Archives: 社会保険・労働保険


さて、今日は前回に引き続き、外国人の年金の話です。

外国人は厚生年金に加入しても日本の年金はもらえない。だから、年金に加入したくない、と言われたときにどう対処すべきか、考えてみましょう。

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まずは「合算対象期間」の話です。「カラ期間」などと呼ばれたりもします。

これは、たとえば、日本国籍があって海外に居住している人は、日本の国民年金を払ってもいいし払わなくてもいい任意加入であったりします。

そういう期間は、年金をもらうのに必要な10年という期間のカウントには入れるというものです。ただし、年金を支払っていなければ年金額には反映されません。

この例示は日本年金機構のHPの以下のページに載っていますので参照してみてください。↴

http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/jukyu-yoken/20140421-05.html

 

ここに載っているもので、たとえばこんなものがあります。

昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方又は永住許可を受けた方の、海外在住期間のうち、取得又は許可前の期間

 

今は日本国籍を取得して日本人になっているが、日本人になる前の海外に在住していた期間があれば、それは合算対象期間とすると言っています。

たとえば、平成29年4月に日本人と結婚して日本に帰化した方がいるとします。仮に40歳だったとしましょう。この人が来日したのは5年前だったとします。日本に来る前の35歳より前の期間については、海外に在住していたとします。そうすると、20歳~35歳までの期間は合算対象期間となります。この場合、20歳から35歳で15年になりますから、年金の受給権は発生するわけです。つまり、日本に帰化することで、日本の年金の支払いをすればその分、年金がもらえるようになるわけです。

 

外国人の場合、この合算対象期間というものが当てはまる期間があるかどうかをよく検討しないといけません。

 

また、日本人が海外で働く場合、働いている国の社会保障制度に加入をする必要があります。この時、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が生じています。また、日本や海外の年金を受けとるためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、保険料の掛け捨てになってしまうことがあります。そのため、保険料の二重負担となったり、掛け捨てにならないようにするために、日本の年金加入期間を協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)とを目的としたものが社会保障協定です。

たとえば、ドイツやアメリカ、フランスなどはそれらの国の年金制度と日本の年金制度は通算されます。この制度を使えば、ひょっとしたら、仮に外国人が厚生年金に加入した場合、年金制度が通算される可能性があります。(イギリスや韓国などは、年金の通算ではなく、二重負担防止の規定のみになっています)

ただし、これらの国について、無条件に通算されるわけではなく、各国の制度によって違いがあります。それらはよく調べないと通算できるかどうかはわかりませんので注意が必要です。

各国の社会保障協定による年金の通算については、日本年金機構のHP↴をご参照ください。

http://www.nenkin.go.jp/service/kaigaikyoju/shaho-kyotei/kyotei-gaiyou/20141125.html

 

細かい制度の中身は置いておいても、ここで大事なことは、外国人が厚生年金に加入しても、年金はもらえないと、安易に判断しないことが大事です。

合算対象期間を使って年金の受給ができることもありますし、加入した年金が通算されるために掛け捨てにはならない場合もあります。経営者の皆さんが外国人を雇った場合、辞めた時に脱退一時金をもらうべきかどうなのか、これらの話を踏まえて十分検討するようにお伝えするのがいいのではないかと思います。



外国人を雇って社会保険に入れる場合に、厚生年金のことを聞かれることは多いです。

「厚生年金に加入しても年金はもらえない。掛け捨てになってしまう。」

このような話をされることが多いです。

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外国人の年金はいくつか類型があります。

実務上は大きく3つあると理解しておけばいいと私はお話します。

 

外国人であれば、当然、本国に帰ってしまうことが想定されます。そうすると、せっかくかけた厚生年金はどうなってしまうのか?この疑問があると思います。10年かければ日本の厚生年金がもらえます。しかし、10年かける以前に本国へ帰ってしまったらどうなるのかという話です。

 

まずは「脱退一時金」というのがあります。

これは、本国へ帰国する前にかけた厚生年金の一部を一時金としてもらってしまうというものです。将来、厚生年金はもらわずに一時金でもらってしまって終わりにしてしまうというものです。

6か月以上厚生年金に加入していれば、脱退一時金をもらうことができます。ただ、10年以上加入している場合、そもそも年金の受給権が発生するため、脱退一時金は受給できません。また、脱退一時金をもらう場合には、外国へ出国後2年以内に請求しないといけません。

 

では、いくらもらえるのでしょうか?

日本年金機構のHPから以下は抜粋します。

 

次の式で計算されます。

(1)被保険者であった期間の平均標準報酬額 × (2)支給率

(1)被保険者期間であった期間における平均標準報酬額は以下の A+Bを合算した額を、全体の被保険者期間の月数で除して得た額をいいます。

A 平成15年4月より前の被保険者期間の標準報酬月額に1.3を乗じた額  B 平成15年4月以後の被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額

(2)支給率とは、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の(最終月が1~8月であれば、前々年10月の保険料率)保険料率に2分の1を乗じた保険料率に以下の表の数を掛けたものをいいます。

被保険者期間 掛ける数
6月以上12月未満 6
12月以上18月未満 12
18月以上24月未満 18
24月以上30月未満 24
30月以上36月未満 30
36月以上 36

 

上記の年金機構のHPを参考に、具体的に計算してみましょう。たとえば、

毎月給与が25万円で、賞与を2回で合計20万円もらったとします。24ヶ月加入して脱退一時金をもらう場合、どうなるのか計算してみましょう。

 

(250,000円×24月+200,000)÷24か月=258,333円(標準報酬月額)

258,333×18.3%【便宜上、今の保険料率を使用】×1/2×24=567,299円

 

ということで、脱退一時金の金額としては567,299円となります。

ただ、実際には、所得税が20.42%源泉徴収(115,842円)されるため、実際に支給されるのは451,457円となります。

 

ちなみにこの脱退一時金は税務上、「退職所得」という扱いになり、確定申告すれば税額が還付されます。(納税管理人の選出をするなどが必要です)

 

外国人の年金について、脱退一時金について書きましたが、次回は残りの二つの類型についてみていきましょう。

 



今日は前回の外国人の雇用保険の話に続いて、外国人を雇用した場合の社会保険の手続きについて、見ていきましょう。

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まず、外国人を雇用するとその外国人からよく言われるのが次のようなことです。

健康保険は入りたいけど、厚生年金は入りたくない

 

これは、今の日本の社会保険の制度上、できません。健康保険と厚生年金は一体ですから、健康保険だけ加入して厚生年金には加入しないということはそもそもできません。

ただ、厚生年金については脱退一時金の制度があったり、あるいは10年加入していなくても合算対象期間(カラ期間)のルールを使って将来、年金をもらうことも可能です。

この辺の話は、今日の話の論点からずれるので、次回に話をしていこうと思います。

 

さて、外国人が社会保険に加入したいという場合、手続き上、何が必要なのかです。

まずは「健康保険・厚生年金資格取得届」は、もちろん必要です。扶養の方がいらっしゃれば、「扶養(異動)届」も一緒に提出します。ここまでは通常の日本人の場合と同じです。

その他に、次の二つが必要になります。

 

まず、「ローマ字氏名届」が必要です。

前回のブログで書きましたが、在留カードに書かれているローマ字のお名前を書く用紙です。これは資格取得届とは別にあるので、この用紙に在留カードに記載されている通りに記載します。

また、その外国人の配偶者が扶養親族になっていて、その配偶者の方も外国人の場合には、「第3号被保険者ローマ字氏名届」というのも必要になります。これも「ローマ字氏名届」と同様に、在留カードに記載されている通りに記載します。

ちなみに、この「第3号被保険者ローマ字氏名届」については、第3号被保険者である配偶者自身が署名・捺印します。「ローマ字氏名届」に捺印するのは雇っている法人ですから、そこは違いますので注意が必要です。

 

さて、外国人の場合にはもう一つ、書類が必要です。

なんだかわかりますか?

年金の方の話です。

実際に手続きすることを想像してみたらわかるのではないでしょうか。

 

外国人の場合、よく考えていただきたいのですが、「基礎年金番号」ってないはずですよね?

「基礎年金番号」というのは20歳になった日本国民に番号が振られます。しかし、外国人ですから、この番号自体を持っていません。つまり、基礎年金番号がないことになります。

そうすると、手続きの時は、この「基礎年金番号」を割り振ってもらうための書類が必要になります。書類としては「年金手帳再交付申請書」というものになります。

本来はこの書類は、一度年金手帳を発行された人が再交付を受ける際に使う書類ですが、外国人の場合にもこの書類を提出して、まずは「基礎年金番号」を割り振ってもらうことになります。もちろん、年金手帳も新しいものが交付されます。

 

また、外国人と言っても、以前に日本で働いていた人は「基礎年金番号」を持っていることがあり得ます。以前に日本で働いていてその際に社会保険に加入していたのであれば、「基礎年金番号」を持っていますからこの点は確認が必要でしょう。

 

外国人を雇う場合には、通常の手続きの際に必要な「資格取得届」「扶養(異動)届」の他に、「ローマ字氏名届」(場合によっては「第3号被保険者ローマ字氏名届」)、「年金手帳再交付申請書」といったところが必要なのはお分かりになりましたでしょうか。

 

もう一点、外国人を社会保険に入れる際に、その本人にお伝えしておいた方がいいことが、その雇う外国人に扶養親族がいて、その扶養親族が外国に住んでいる場合、日本の健康保険の扶養親族に入れられるのかという話です。

こういった相談も、実際、たまにあります。

 

結論としては、扶養親族の要件を満たしていれば外国に住んでいても扶養親族に入れることができます。つまり、外国に住んでいるのに日本の健康保険が使えるんです。

 

なんだか不思議だと思うかもしれませんが、これは法律的には別におかしくありません。

扶養親族の基準(年収130万円未満【日本円換算で】など)を満たしていれば当然に扶養親族に入れてもいいわけです

 

ただし、保険証は外国の医療機関では当然、使えません。この場合、どうするかというと、外国でかかった医療費があればいったん全額、自己負担で支払っておいて、あとで自己負担部分の3割を除いた7割部分を戻してもらうことになります。

健康保険海外療養費支給申請書」という書類があるのでその書類に記載して協会けんぽに提出することで、あとからお金を返してもらうことができます。

実際にお金を返してもらう場合には、この書類の他に領収書やパスポートなど、提出書類がいくつかありますから、手続きはやや煩雑です。

なお、外国に住んでいる方を扶養親族にする場合、実際に「扶養(異動)届」にどう記載していくかというところで、住所をどう記載したらいいのか、と思う方もいらっしゃると思います。

外国に住所地がある場合、住所の欄には国の名前だけ記載すればいいことになっています。「中国」とか「韓国」とか「アメリカ合衆国」とかだけ書けばいいんです。中国のどこかまで記載する必要はありません。

 

外国人の社会保険の手続きは、雇用している外国人に事業主側から本人にきちんと説明しないといけません。上記のようなことは雇う際に、きちんと把握しておきましょう。

次回は、外国人の厚生年金について、ご説明していきます。

 



さて、今日は前回の続きです。

外国人を雇い入れた場合の手続きについてです。今日はまずは雇用保険についてです。

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まずは、厚生労働省のQ&Aを参照してみましょう。

「外国人を雇用した場合、社会保険や労働保険に加入させなければいけませんか。」

「雇用保険については、原則として、国籍を問わず日本人と同様に適用されます。健康保険等の社会保険や労災保険については、外国人労働者も日本人と同様に適用になります。」

 

つまり、外国人であっても社会保険や雇用保険に入るかどうかは同じ基準で適用されます

至極、当たり前のことですが、これは経営者の皆さんからはよく聞かれる点です。社会保険の適用基準は同じなんです。

 

では、雇用保険や社会保険の手続きはどうなっていたのでしょうか。

雇用保険の場合、週の労働時間が20時間以上だったら加入義務があります。

社会保険の場合は、常勤の勤務者の4分の3以上の勤務だったら加入義務があります。

この基準で判断します。

 

その上で、雇用保険について、今日はご説明いたします。

その前に、外国人を雇った場合、雇用保険に加入している者だけでなく、雇用保険に加入していない者についても届出をしないといけません。これはご存知でしたでしょうか。

 

雇用保険に加入する者については、「雇用保険被保険者資格取得届」の下の17~22という欄があります。そこに「国籍」「在留資格」「在留期間」などを書く欄があります。日本人の場合にはこの欄は空欄になりますが、外国人が雇用保険に入る場合にはこの欄に記入が必要です。この17~22の欄を記入するためには「在留カード」があればOKです。この欄に記載することを要求されている項目は、この「在留カード」にすべて記載されているからです。

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前回、お話した通り、外国人を雇い入れる場合には「在留カード」で就労資格の確認をすることが必要です。同時に、雇用保険の届け出にも必要なので「在留カード」の確認が必要ということです。

初めて外国人を雇う場合には、「在留カード」が必要。これは覚えておきましょう。

 

さらに、雇用保険に加入しない場合にも、外国人を雇う場合には、届け出が必要です。

外国人雇用状況届出書」というのをハローワークに届出しないといけません。

必要な項目は、「氏名」「在留資格」「在留期間」「生年月日」「性別」「国籍」などです。

いずれも「在留カード」で確認できる項目です。

ちなみに、「氏名」については、「在留カード」に記載してある通りにローマ字で記載します。

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いずれにしても、雇用保険に入る入らないにかかわらず、「在留カード」で確認が必要だということがわかりますね。

 

さて、これらの届け出ですが、いつまでに出す必要があるのでしょうか?

 

雇用保険被保険者資格取得届 ⇒ 雇い入れの月の翌月10日まで

外国人雇用状況届出書    ⇒ 雇い入れの月の翌月末日まで

 

となっています。

つまり、9月1日に雇い入れたのであれば、雇用保険に加入する場合には、雇用保険被保険者資格取得届を10月10日までに、雇用保険に加入しない場合には、外国人雇用状況届出書を10月31日までに提出すればいいということになります。

また、これらの届け出は、退職した場合にも必要です。

期限については、取得(入社)の場合と同じです。つまり、雇用保険資格取得届は「離職した日の翌月10日」で、外国人雇用状況届出書は「離職した日の翌月末日」までに届け出る必要があります。

実務的には、「雇用保険被保険者資格取得届」については、遅くなってしまうと、タイムカードは賃金台帳の提出が求められます。また、「外国人雇用状況届出書」については、遅くなっても早めに出せば問題ないと思います。気づいたら、遅くなっても早めに出しましょう。場合によっては、遅くなってしまうと、タイムカードや賃金台帳の提出を求められることもあるものと思います。

ちなみに、「永住外国人」に関しては、これらの届け出は必要ありません。あくまでも対象となるのは「在留カード」を持っている外国人ということです。「永住外国人」は「在留カード」ではなく「特別永住証明書」というのが交付されています。これを持っている外国人は、雇用保険のこれらの届け出の必要はありません。

 

今日のお話をまとめますと、外国人を雇用したら、まずはハローワークに届け出が必要、ということは知っておきましょう。そして、その届け出には「在留カード」がないと必要事項の記入ができません。「在留資格」などを確認する意味でも、「在留カード」をもらうようにしましょう!



今日はインフォメーションです。

経理担当者はだいたい把握されていると思いますが、厚生年金保険料が9月分から変更になります。18.182%がこの平成29年9月から18.3%になります。

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平成16年に法改正があり、平成29年までの間、毎年0.354%上がって、18.3%で上限になります。ひょっとしたらまた改正があるかもしれませんが、しばらくは、18.3%です。

料率は比較的覚えやすくなったのでは?と思います。

厚生労働省の記事は以下です↴

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000175945.html

 

平成16年のころは、13.934%だったわけで、この13年で4.366%上がっているわけです。標準報酬月額260千円だと11,351円違います。結構上がっていますよね。

 

ちなみに国民年金は、この4月ですでに上限額になっています。平成29年は16,900円で、これで毎年上がっていた国民年金の保険料は上限になります。ちなみに、こちらは、平成16年は13,580円だったので、この13年で月額3,320円上がったことになります。

 

それから、いつから新しい厚生年金の保険料率にするのかというのも注意が必要な点です。この厚生年金保険料の変更は9月分の保険料からです。9月分の保険料は何月の給与から控除されているのかをよく確認する必要があります。当月締め当月末払いの給与形態であれば、9月末支給分から変更になりますが、たとえば、末締め翌月15日払いであれば、10月15日支給分から変更になります。15日締め当月25日払いなのであれば、原則としては、10月25日支給の給与から新しい厚生年金保険料になるはずです。

この辺はよく確認しましょう。

また、会社の口座からの引き落とし額が変わるのも、10月末納付分からですので、その点も注意してくださいね。



この8月1日から、社会保険にはいくつか改正がありました。

まず、後期高齢者が医療機関で支払う一部負担金が、年収によっては2割負担や3割負担になるというのがあります。

そして、経営者にとっては、年金の受給資格期間が10年に短縮されたというのは影響が大きい改正項目ではないかと思います。

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従来は、いわゆる老齢年金を受給するには、加入期間が最低25年ないと受給できませんでした。

この25年加入というのは、保険料支払済み期間とイコールではないので注意が必要です。この辺の話は私の以前のブログをご参照ください。↴

年金の「カラ期間」ってなに?

 

さて、経営者にとって、この改正が影響が大きいというのは、特に社会保険未加入事業所です。よく経営者の皆さんからはこんな話をお聞きします。

「年金は25年入っていないともらえない。今から自分が入っても25年にならないから掛け捨てになってしまう。だから、入りたくないんだ。」というような話です。

法人だと社会保険は強制加入なわけですが、社会保険に入らない(入りたくない)理由の一つになっていたのがこの25年(300か月)ルールです。

 

しかし、このハードルが10年に下がるわけです。ということは、たとえば、60歳から加入しても、厚生年金は70歳までは入れますから10年はクリアできることになります。

一般的に、国民年金だけでは40年保険料を払っても年金額は年間で約80万円です。

80万で生活するのは厳しいですよね?それを考えると厚生年金に加入して少しでも年金額を増やすというのは老後の生活保障としても必要のある話なわけです。

 

また、最近は介護施設でも外国人を雇うことが多くなってきましたから基礎知識として知っておく必要があるのが外国人の年金です。

外国人の場合、「年金をもらえる期間が10年になったと言っても10年も日本にいないし、いずれにしても掛け捨てになってしまう」というような話です。

これこそ、私の以前のブログ↓をよく読んでください。

年金の「カラ期間」ってなに?

 

要するに、外国人の場合には、日本国外に在住していた期間はカラ期間(合算対象期間)となり、10年の年金をもらえる期間の算定には、外国に住んでいた期間はカラ期間としてその期間を含めて判断します。そうなると、ほとんどの外国人はこのカラ期間を使って年金を受給できる可能性があるわけです。日本にいた数年だけ厚生年金を掛けていたとしても十分もらえる可能性はあるわけです。

ちなみに、外国人の場合、日本から出国した時に脱退一時金として、一時金でもらって年金はもらわないという選択もできます。

 

年金加入期間が10年になったというのは、経営者にとっては影響の大きい話ですので、上記のような基本的な部分の話だけでも頭に入れておいた方がいいでしょうね。



前回に続いて、傷病手当金です。

前々回に書いた休職規定との絡みで、私の顧問先からも質問が多いものになりますが、傷病手当金というのは退職した後も受給できるという話です。

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「傷病手当金って、退職しても受給できるの?」という感じで、たいていの経営者の方にこの話をすると驚かれます。

退職後も健康保険の給付を継続して受けられることを「資格喪失後の継続給付」といいます。ただし、この「資格喪失後の継続給付」を受給するには要件があります。

まずは、退職日以前に1年以上被保険者期間がないといけません。それから、退職日前から傷病手当金を受給していないといけません。したがって、1年未満の被保険者期間だと受給できませんし、退職後に傷病手当金の要件に該当しても受給できません。

この1年以上の被保険者期間というのは、前職の会社に勤めていた期間が1年以上でなくても、前々職の会社と前職の会社の被保険者期間が継続していて(1日もあいていなくて)1年以上の被保険者期間があれば該当します。また、たとえば前々職が協会けんぽで前職が組合健保の場合のように保険者が異なっていても通算して1年以上あれば要件に該当します。

 

以前にかわいそうな例があったのですが、前職の被保険者期間があと数日で1年になる方で、前々職の退職日がたった1日空いていたために前々職と前職の通算もできずに、結局この傷病手当金の資格喪失後の継続給付を受けられなかったことがありました。

どうやら、前々職の退職時に会計事務所から「退職日を月末にすると社会保険料がかかるから月末の1日前を退職日としよう」と言われ、その方はその通りにしたらしいです。そして、再就職して、病気になってしまい、傷病手当金を受給している間に退職となってしまったのですが、運悪く、ちょうど被保険者期間が1年になる前に退職となってしまったため1年以上の要件を満たさず、しかも前々職でわざわざ退職日を月末の1日前にしてしまったために1日空いていることになってしまい、前々職との被保険者期間の通算もできず、結局、傷病手当金の資格喪失後の継続給付を受けられなかった、ということがありました。

おそらく、その会計事務所もそこまでは考えていなかったのでしょうが、こうしたこともあるので「退職日を月末の1日前に」というようなことはしないようにと思います。

(そもそも、退職日を月末の1日前にすれば社会保険料の負担が減るというようなアドバイスを会計事務所が顧問先にするケースがあるように聞くのですが、これはコンプライアンス違反であると私は考えています。)

 

さて、この資格喪失後の継続給付ですが、いくつかポイントがあります。

まず、いつまで受給できるのかという点です。これは、最初に受給し始めてから1年6か月が限度です。「退職から」ではなく、「最初に受給し始めてから」というのがポイントです。

つまり、退職前にたとえば6か月受給していて、就業規則の休職規定によって自然退職の扱いになり退職となったとしたら、退職後受給できるのは1年までになります。

あるいは、たとえば傷病手当金を1か月受給してそのあと復帰して1か月働いたものの、また同じ病気で1ヶ月傷病手当金を受給して退職した場合、最初の受給したところから1年6か月ですので、退職後は1年3か月の期間までと判断されます。

実際に受給した期間が1年6か月ということではなく、受給し始めてから1年6か月ですから、その辺も要注意です。

 

また、傷病手当金の資格喪失後の継続給付の手続き自体どうするのかということも、よく質問を受ける点です。これは、傷病手当金の用紙自体は同じ用紙を使いますが、「事業主記入欄」は退職していますから当然、書く必要はありません。退職前の会社に証明をもらうと思う方がいらっしゃいますが、退職した後はその部分は必要ないことになります。

ということは、退職後の「傷病手当金」は1面の「被保険者の記入する欄」に住所・氏名・生年月日・振込口座等を書き、「医師の記入する欄」に担当医師の証明をもらえばそれで完了になります。意外と簡単ですよ。

 

そして、この点もよく質問を受けるのですが、退職していますから、いわゆる「失業保険」との関係の話です。

いわゆる「失業保険」(正確には「雇用保険の基本手当」といいます)は「働く意思と能力があるのに再就職できない」状況にある人がもらうことのできるものです

「傷病手当金をもらいながら、失業保険ももらえるのではないか」と考える人がいるのですが、それはそもそもそれは出来ないということになります。傷病手当金をもらっているということは「病気や怪我で仕事ができない」わけですよね?それでは、そもそも失業保険をもらう要件である「働く能力」がないことになるわけです。ですから、そもそも傷病手当金をもらっている人は失業保険は受給できません

そう考えると、そもそも失業保険と傷病手当金は両方同時にもらえるわけがないということがお分かりになると思います。

 

その代わりに、ハローワークには「受給期間の延長手続き」というのをする必要があります。

雇用保険の給付は退職日から1年までが原則です。しかし、傷病手当金を受給しているということは「働けない」わけです。何もせずにそのままにしておくと、退職から1年が経過してしまいかねません。そのため、「病気や怪我で働けない」ということを申請して、この1年という期間を延長させるわけです。最大で4年間延長できます。傷病手当金を受給中に退職した人には「ハローワークに受給期間の延長手続きをしないといけないよ」という点もアナウンスしてあげたほうがいいでしょうね

 

最後にですが、傷病手当金は通常、給与の代わりに受け取るものです。そのため、給与の締日ごとに請求するのがいいと思います。締日ごとであれば計算もしやすいですし、特に事情がないのであれば1か月ごとに精算するのがよろしいかと思います。ただ、もちろんまとめて数か月分を請求するのでもOKです。ただし、支給申請は2年以内の期間に限ります(社会保険の給付は時効が2年です)ので、その点も注意してください。

 

ということで、退職後(資格喪失後)の傷病手当金について、今日は解説しました。



今日は前回に続き、傷病手当金の話です。

傷病手当金というのは、前回説明した通り、「業務外」の事由で休んで、休んでいる期間中給与が出なかった時に支給されるものでした。

実はこの傷病手当金というのは奥の深い話があります。

私も実務上、質問があったりして調べて「こんな規定もあるんだ」「そういえば、こういう取り扱いもあったね」なんてことを初めて知ったり、改めて確認したりという部分が多いのも傷病手当金です。

今日は、傷病手当金の「基本のキ」について、まずは解説していこうと思います。

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傷病手当金は、4つの要件が必要です。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

 

このうち、①と④はいいですよね?前回説明しました。業務以外の理由でのけがや病気で休んでしまって、その間の給与が支給されていないことです。

上記のうち、②はどうでしょうか?「仕事に就くことができないこと」というのは、当たり前でしょ?と思いますよね。そうなのですが、実際、私のある顧問先から「仕事に就くことができないというのはどう証明するのでしょうか。」と聞かれたことがあります。

 

これは実際の傷病手当金の支給申請書を見ればすぐわかるわけですが、まず「事業主が証明する欄」があり、傷病手当金の支給申請を出した期間について仕事に就くことができなかったことを事業主が証明します。さらに「担当医師が証明する欄」があり、そこで担当している医師が支給申請期間中確かに仕事に就くことができなかった、と証明します。

つまり、[仕事に就くことができなかった」ということを事業主と医師が証明することでこの上記の②の要件をクリアするようになっています。

 

そして、上記の要件の③です。

連続する3日間」というのがポイントです。(この3日間を「待期期間」と呼んだりします。)たとえば、2日続けて休んで3日目に出勤して、4日目にまた休んでしまうと「連続する」という要件に当てはまらないため対象外になってしまいます。病気や怪我で休んだ最初の3日間は連続して休んでいないといけないわけです。逆に、最初の3日間を連続で休み、4日目に出勤し、5日目からまた休んだのであれば要件の③はクリアします。4日目以降、出勤していた日があってもいいわけです。最初の3日間を続けて休んでいることが要件なわけです。

さらに、この待期期間3日間については、給与を支給していても問題ありません

つまり、最初の3日間は有給休暇で処理し、4日目から傷病手当金の支給申請するということも可能なわけです。待期期間の3日間は休んでいればよく、給与の支給の有無は聞いていないわけです。ここは、実務上、重要なポイントになります。

 

傷病手当金の要件4つについて、今日は簡単に説明しました。

次回は、もう少し突っ込んだ部分について考えていきたいと思います。



今日は年金の「カラ期間」の話です。
「カラ期間?何それ??」って感じでしょうか。
知っておいて損はない話ですので、この際、理解しておきましょう。

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「カラ期間」というのは正式名称ではありません。正式には、「合算対象期間」といいます。この「カラ期間」(合算対象期間)というのは「年金の受給資格期間には含めるが、年金額には反映されない期間」という意味です。
何のことか、わかりづらいですか?

要するに、あくまでも年金は払っていないのでこの「カラ期間」を足したからと言って年金額は増えないのですが、年金の保険料を最低限払っていないといけない期間(現在は25年。改正されて10年になる予定です。)、これには含めます、というものです。

具体的には、 昭和61年4月1日以降の期間で、日本人であって、海外に居住していた期間で国民年金に加入していなかった期間 なんかはそうです。
昭和61年というのは、年金を少し勉強したことのある人であれば、良く知っている年号です。国民年金の大改正のあった年です。この年から、国民年金は全国民、強制加入になりました。
一方で、海外に在住する日本人については、昭和61年4月以降は、国民年金は任意加入となりました。つまり、海外に住んでいる人は国民年金に加入もできますし、加入しなくてもいいということになったわけです。
それを受けて、昭和61年4月1日以降に海外に住んでいる日本人で、国民年金に加入しない場合には、受給資格期間の計算のときには「カラ期間」で計算に入れていいということになりました。

また、平成3年3月までの学生だった期間というのもこの「カラ期間」です。
今は学生であっても、20歳以上は全国民、国民年金は強制加入になりました。ですが、平成3年3月以前は、学生の場合には国民年金に加入しなくてもよかったんです。それが改正されて今のように学生も20歳以上は強制加入になったのが「平成3年4月以降」なわけです。それ以前に学生だった人はそもそも国民年金は加入しなくてもよかった人たちなので、「カラ期間」としています。

このように、「カラ期間」(合算対象期間)というのは、いろんな事情で加入できなかった(しなくてもOKだった)期間についての救済制度なわけです。
つまり、ひょっとしたら、この「カラ期間」が絡むと受給資格期間を満たしている可能性もあるわけです。
この辺は年金事務所へ行くなりして自分の年金の加入履歴を調べてみないとわかりません。

会社が厚生年金に新規に加入する際にあるこの受給資格期間を満たす、満たさないの問題。「カラ期間」についても少し知っておけば便利かもしれません。

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今日は年金の受給資格期間が10年に短縮されたという話です。

今まで年金は最低25年保険料を支払っていないともらえないものでしたが、それが10年になるという改正です。

11月16日の国会で成立し、約64万人が新たに受給資格を得ることになるということです。新聞記事はこちら↴

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H4R_W6A111C1EAF000/

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これは企業経営にも大きな影響のある改正だと思います。

まず、「受給資格期間」というものはご存知でしょうか。

年金をもらうには最低限加入していないと(保険料を払い込んでいないと)いけない期間があります。収入が少なくて保険料の免除申請をしていたり、カラ期間(合算対象期間)と呼ばれる期間がある人は除きますが、保険料をある一定期間を支払っていないとそもそも年金自体、受給できないという話です。

(カラ期間(合算対象期間)の話は次回のブログでご紹介します)

「受給資格期間」が25年から10年になったことで、今まで年金をまったく払わずにいた人も受給資格を得ることができる可能性が出てきました。

 

会社経営上、影響があるのはこんなケースです。新規で厚生年金の適用事業所になる時によくご相談があるものにこんな相談があります

この社員は年金を今まで一度も払ったことがないんです。健康保険はともかく、厚生年金は入りたくないっていうんです。だって、入ったところで、25年の受給資格期間に満たないんですから

というようなものです。国民年金は60歳まで、厚生年金は70歳まで加入できます。原則的には、その年齢を超えては加入できません。

ですので、今後は、たとえば50代の人でまったく年金を払ったことのない人であっても、厚生年金だったら10年の受給資格期間を満たす可能性があります。

 

年金の受給資格期間の改正の施行は平成29年8月の予定です。

社会保険の未加入事業所は、その辺も踏まえて、加入時期を検討してみましょう!
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