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Category Archives: 社会保険・労働保険


前回に引き続き今日も算定基礎届についてです。

今日は前回に続いて、算定基礎届の細かい留意点、主には「支払基礎日数」の部分について書いていこうと思います。

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これは「月給者」と「日給者」「時給者」は書き方が違います。

まず「月給者」は必ず歴日数を記入します。つまり、月給者は原則、ここは31日か30日が入ります。ただし、欠勤日数分だけ給与が減額されるような場合は、就業規則、給与規定等に基づいて事業所が定めた日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。また、有給休暇は含めます。つまり、休んでいて給与の支払いがない日について、日数からマイナスします。

この場合、備考欄に欠勤した理由を記載します。「病欠・育休・求職等」とある箇所に〇をして提出します。

また、月給者の場合、歴日数を記載するのですが、賃金の締日ごとで考えるので4月は30日とは限りません。たとえば15日締め25日払いの会社であれば、4月に支給する給与は3/21~4/20の期間になります。この間の歴日数は31日ですから、「給与計算の基礎日数」の欄は4月の欄に31日と記載します。

この点はよく注意してください。

では、日給者時給者の場合、どうなるのでしょうか。

日給者や時給者の場合、歴日数ではなく出勤した日数(有給休暇があればそれを足した日数)になります。

この日数は重要です。

17日以上の日だけを合計するというのが原則です。しかし、17日以上の日が4月から6月にないこともあり得ます。その場合には15日以上の月を合計します。

短時間労働者に該当する場合には、11日以上の月を合計します。

短時間労働者というのは、常勤者の4分の3以上の勤務時間の勤務者に該当しない者をいい、次の条件に該当する者をいいます。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 雇用期間が1年以上
  3. 賃金月額が8.8万円以上
  4. 常時501人以上の企業に勤務している

要するに、短時間労働者は大企業しか該当しないことがわかります。

このブログの主な対象は中小企業です。ほとんどの中小企業には短時間労働者はいません。そのため、算定基礎届では11日以上で標準報酬を決定することはほぼありません。

17日以上の日がない場合、15日以上の日を合計して標準報酬を決定すると理解しておけばいいでしょう

ちなみに、15日以上の日もない場合はどうなるのかと言いますと、これは保険者決定と言って従前の標準報酬月額がそのまま標準補修月額になります。

あとは、パートの場合には、備考欄の「パート」に、丸を付すなどはありますが、算定基礎届で分かりづらい部分はこの日数の部分かと思います。

最後にもう一つ。

算定基礎届は一応の提出期限は7月10日です。

年金事務所のQ&Aにも出ていますが、7月10日を過ぎても早めに出せば問題ないので、もし源泉所得税の計算や労働保険の計算などで忙しくて算定基礎届まで7月10日までに出せないのであれば、期限が遅れても構いませんので早めに出すようにしたらどうかと思います。

Q1 提出期限が7月2日から7月10日までとなっていますが、期限を過ぎても提出は可能ですか。 A1 期限を過ぎても提出は可能ですが、できる限り期限内の提出をお願いします

(年金事務所のQ&Aより)

http://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2018/201806/20180607.files/QA.pdf#search=%27%E7%AE%97%E5%AE%9A%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E5%B1%8A%EF%BC%B1%EF%BC%86%EF%BC%A1%27

以上、算定基礎届の少し細かい部分の話でした。



さて、今日は平成30年の社会保険の算定基礎届について書いていこうと思います。

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6月末から7月の初めにかけては、各企業ともに労働保険や算定基礎届、従業員数が10名未満の法人であればこれに加えて源泉所得税の納期の特例(1月~6月の源泉所得税の計算)があります。

事務処理する事項が意外と多く、各会社の総務担当者は忙しい日々なのではないでしょうか。

 

さて、その中で算定基礎届について、注意点を書いていこうと思います。

 

その前に算定基礎届というのは何をやるのかは大丈夫でしょうか。

4月~6月の給与の平均値を取って、それを1年間の社会保険料にするというものです。

さて、この算定基礎届の注意点はどのようなものがあるのかを順番に見ていきましょう。

 

まず、今年から算定基礎届の用紙が変わりました

従来、算定基礎届総括表と総括表附票と分かれていたものが1枚の用紙になりました。その上で、算定基礎届の用紙自体も変わっています。

ただ、健康保険組合に加入している場合、年金事務所への提出も健康保険組合の様式で提出します。その点は留意してください。

 

たまに顧問先から聞かれることに、「今年から算定基礎届にはマイナンバーを記載しないといけないのですか?」というものがあります。算定基礎届の用紙をよく見ていただくと、用紙の一番上には「被保険者報酬月額算定基礎届」となっている下に少し小さめに「70歳以上被用者算定基礎届」と書いてあると思います。

70歳以上75歳未満の方の場合、算定基礎届を提出して社会保険料を算定はしますが、厚生年金はありません。そのため、70歳以上の方(正確には70歳以上75歳未満の方)は通常の算定基礎届とは少し違うという位置づけなわけです。そのため、70歳以上75歳未満の方の場合、算定基礎届と一緒に4月から6月の給与の報告はしてもらうわけですが、「算定基礎届」ではなく「70歳以上被用者算定基礎届」という別の報告様式になるわけです。

 

そして、この「70歳以上被用者算定基礎届」の場合には、「備考」欄の「70歳以上被用者算定」に〇をつけたうえで、17番の欄に個人番号(マイナンバー)を記載しないといけません。マイナンバーの代わりに基礎年金番号でもいいことにはなっています。

 

「今年の算定基礎届にはマイナンバーが必要」という認識がある方がいらっしゃるのはこの辺の話があるからだと思います。マイナンバーが必要なのはあくまでも70歳以上の方の話です。

 

ちなみに、75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」に移行するため、社会保険は資格喪失しないといけません。つまり、そもそも75歳以上の方の算定基礎届はないわけです。

 

また、算定基礎届の対象になる方は7月1日現在の在籍者です。

ですから、たとえば6月30日に退職した方は算定基礎届の提出の対象にはなりません。(7月1日に資格喪失になるため、7月1日現在には在籍していないことになります)

また、4月から6月の間に固定的賃金(基本給や毎月、変更のない手当)に昇給もしくは降給があって、2等級以上変更しそうな場合、算定基礎届の提出者の対象からは外れます。月額変更届の提出に該当します。

 

たとえば、4月に昇給があった場合、4月~6月の月額変更となり、7月10日までに月額変更届を提出する必要があります。また、5月に昇給があった場合、5月~7月の月額変更となり、8月10日までに月額変更届を提出する必要があります。

 

つまり、4月昇給の場合は算定基礎届と同時に月額変更届を提出することで、7月の月額変更となります。(通常は8月の給与からの社会保険料の変更になります)

5月昇給の場合には、8月月額変更となります。この場合、算定基礎届は提出しなくていいことになります。備考欄に「8月月額変更」と書いておけば、給与の金額を報告する必要はありません。

 

また、パートに該当する場合、備考欄に「パート」というのがあるので、そこに丸印をつけて提出する必要があります。昨年までの算定基礎届ではこれば備考欄に手書きで書き入れていたので、ここは用紙が変わって変更になった点です。

 

また、4月~6月の間で入社した方の場合には、これも備考欄の「途中入社」に〇をつけないといけません

 

基本的な算定基礎届の報告の仕方は変わっていませんが、少し報告の仕方が変わっていますので注意が必要です。

 

次回も引き続き、算定基礎届の注意点について書いていきます。



この時期は税金の出費が多い時期です。また、事務処理すべき書類が多い時期でもあります。そのことは把握していますでしょうか?

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どんなものがあるのか、まとめてみました。

 

労働保険の申告納付・・・6月1日から7月10日

算定基礎届の提出・・・7月1日から7月10日

源泉所得税(納期の特例)の納付・・・7月10日

固定資産税の納付・・・6月末

普通徴収の住民税の納付・・・6月末

 

これらに加えて、算定基礎届に関しては、新規に社会保険に加入した事業所は社会保険の調査の案内が来ていると思います。また、算定基礎届にあわせて、調査対象になっている事業所もあるはずです。算定基礎届の提出時に、賃金台帳などの書類を用意しないといけません。

 

この他にも治療院の場合、「事業税のお尋ね」が来たりしていると思います。保険診療と保険診療以外の内訳のお尋ねです。この回答もだいたい今の時期です。

介護事業所の場合、7月は処遇改善加算の報告書の提出があります。ほぼすべての介護事業所で該当するはずです。提出期限は7月末です。

 

このように提出すべき書類や支払うべき税金が多いのがこの時期なのです。

これらについて、次回以降、順番にこのブログでご紹介していこうと思います。



さて、今日は前回のブログの続きです。社会保険の調査が入るとなったあとの対処方法を具体的に考えていきましょう

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社会保険の調査では、前回のブログの内容のようなポイントを確認されているのですが、これらというのは実は普段から確認していく必要がある点です。

では、「社会保険の調査」となる以前からどのような点に留意したらいいのでしょうか。

 

・時間数の多いパート・アルバイトを把握しておく

 

これは常に意識しておいた方がいいでしょう。時間数としてはおおむね130時間前後かそれ以上の方です。このようなパート・アルバイトで社会保険に加入していない場合、社会保険の加入が問題になります。時間を調整して130時間未満になるようにするのか、そもそも社会保険に入ってしまうのか、調査以前の段階できちんと決着をつけておかないといけません。社会保険の調査時に指摘されると最大で2年間さかのぼって加入しないといけなくなります。その場合、2年分の社会保険料の支払いを一辺にやらないといけなくなります。会社にとっては金銭的な負担の生じる話ですから、毎月の給与の支払い時にチェックを怠りないようにしましょう。

 

・新規採用者について2か月未満の雇用契約の締結を検討しよう

仮に「試用期間は社会保険に加入しない」としたいのであれば、2か月以内の有期雇用契約にし、2か月を超えて雇用する場合には、そこから社会保険に加入するという形にしないといけないでしょう。

2か月未満の雇用契約についても、2か月後の契約更新が約束されている状態だと、最初から社会保険料を逃れるためとみられてしまいます。契約書もきちんと残し、2か月の有期雇用契約である旨の資料がないといけないので注意が必要です。

 

・基本給や通勤手当、その他の手当に変動があった場合、社会保険の月額変更に該当するかをチェックしよう

 

社会保険の月額変更は、基本給や通勤手当など固定的賃金(毎月、同じ額が出る手当)に変動があった場合です。さらにその変動があった月から3か月間の平均値をみます。つまり、固定的賃金の変動があった後、4か月目に月額変更の検討をして、該当するのであれば月額変更届を出すという流れになります。

変動があった後は確認が必要になりますので、固定的賃金の変動があった場合、その4か月後には注意しましょう。

 

さて、社会保険の調査があった時に必要書類に「源泉所得税の納付書の控え」があったと思います。これは何をみているのでしょうか?

もちろん、税務署ではありませんから源泉所得税が払われているかとかをみているわけではありません。主に、その納付書に書かれている人数の部分をみています。給与を支払っている人数が何人なのか、これを確認しているわけです。これも社会保険の調査にあたっては、知っておいていいことでしょう。

 

社会保険の調査は書類が整っていれば、調査自体は30分もかからずに終わるケースもあります。社会保険の調査は、調査までに多少、時間がありますから、その時間を使って一度、書類をよく見なおしたほうがいいでしょう。

 

とはいえ、社会保険の調査というのは、調査の連絡があってから対処しないといけないことがほとんどです。たとえば、先ほどの例のように、たとえば時間数の多いパートタイマーがいたらどのように対処したらいいのでしょうか。

 

結局、労働時間数はごまかせませんから、時間数が多いことが常態化しているのであれば、どこからかで社会保険に加入する形をとるかしかないでしょう。そうであれば、社会保険の調査が来ることになってから本人と話をして、調査前に先に社会保険に加入してしまうのは一つの方法です。調査に来てから社会保険に加入することになった場合、最大で2年さかのぼって加入しないといけなくなるからです。この辺は本人負担がある話ですから、ご本人とよく話し合って決めてみてください。

 

また、新規設立法人や社会保険に新規に加入した事業所は1年以内に一度、社会保険の調査があります。これも知っていれば、調査の案内が来ても驚きません。事業所として社会保険に新規に加入すると調査がある、という点は知っておいていいでしょう。

 

今年、社会保険の調査という書面が来てしまった方たち。

上記のような点に注意しながら、社会保険の調査に臨みましょう。まずは事前に問題点を把握することです。書類を揃えてみて、問題点を把握したうえで調査に臨んでみてはいかがでしょうか。



さて、今日は社会保険の調査についてです。

私の顧問先でも、社会保険の調査についての案内の文書が届き、「こんなのが届いているんですけど、どうしたらいいんですか?」と不安そうにお電話いただいたりすることもあります。この社会保険の調査とはどんなものなのかについて書いていきたいと思います。

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社会保険の調査として代表的なものは二つあります。

一つは「〇月△日に事業所へお伺いして調査したい」というものです。年金事務所の職員が会社へ行って調べるというものです。税務調査の社会保険版のようなイメージですね。

もう一つは、年金事務所へ出向くというものです。通常は、算定基礎届の案内と一緒か、それよりも少し早く会社に案内が届きます。

 

どちらの調査も以下のような書類を求められます。

 

・賃金台帳

・タイムカード(出勤簿)

・就業規則

・雇用契約書

・源泉所得税の納付書の控え

・社会保険の提出書類の控え

 

さて、これらを求めて、年金事務所の職員は何を調べているのでしょうか?

見ている項目はおおよそ次のようなものです。

 

・社会保険に加入すべき者を加入させているか

 

もっとも重点的に見ているのはここでしょう。

規定上は、常勤者の4分の3以上の労働時間がある場合、社会保険に加入しないといけません。たとえば、よくあるケースとしては、パート・アルバイトで勤務時間が増えているようなケースで、社会保険に加入していない場合です。社会保険の調査ではほぼこの点をチェックしているといっても過言ではないでしょう。

たとえば、常勤者の勤務時間が月間170時間だったとすると、月間の勤務時間が約130時間を超えているような方は社会保険の加入対象になる可能性があります。

もちろん、たまたまその月だけが130時間を超えてしまうということもあるはずです。たまたまなのか、常に130時間を超えているのか、その辺を賃金台帳、タイムカード、雇用契約書などから確認していくわけです。

賃金台帳・タイムカード(出勤簿)、雇用契約書などから判断して、社会保険の加入について、調査のあった日以前にさかのぼるということもあり得ます。遡りは調査時点から最大で2年です。2年分の社会保険料となると結構な金額になってしまいます。

調査がある場合、この社会保険に入らないといけないのに入っていない人、特にパート・アルバイトを重点的に再度、調べて調査に臨む必要があります。

 

・新規採用者の加入年月日が適正か

これもチェックポイントです。

会社さんによっては「試用期間中は社会保険には加入しないことになっている」と言われることがあります。これは社会保険加入の基本的なルールからは外れています。2か月以上の雇用契約のある者については、加入義務があります。逆に、雇用期間が2か月未満である者については社会保険に加入する必要がないことになります。ただし、この場合であっても2か月たった時点で継続して雇用されているのであれば加入義務が発生します。

 

・賞与の支払いがされている場合、給与から天引きして賞与支払届が提出されているか

賞与の支払いがあって、賞与支払い届が出ていなければ、これは指摘事項です。またきちんと給与から社会保険料が天引きされているのかも確認されます。

 

 

・報酬の変更があった場合、月額変更届がきちんと出ているのか

社会保険料は、算定基礎届の提出があって毎年9月分の社会保険料から改定が行われます。

原則的には、その社会保険料は1年間同じ金額です。しかし、年の途中で①固定的賃金(基本給など)に変動があり、②3か月以上の給与を平均した金額が③社会保険料の料率表で二等級以上変動があった場合、月額変更があって、9月を待たずに社会保険料が変更されることがあります。この月額変更の要件に該当するのか、該当しているのであれば月額変更届が出されているのかもよく確認されるポイントです。

 

今日はここくらいまでにしましょう。

次回、社会保険の調査ではどのような点に注意したらいいのか、お伝えしたいと思います。



実際に最近、私の顧問先から受けた質問について書いてみようと思います。

4月で入社する社員は多いことと思います。質問のあった会社さんも例にもれず、4月1日採用の社員がいたのですが、2週間ほどで辞めてしまうことになったわけです。こんなこともあり得ますよね?さて、社会保険料の徴収はどのようにしたらいいのでしょうか?

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このように入社した月に退社してしまうことを「同月得喪」といいます。同じ月に資格の取「得」と資格「喪」失があるために、そのように言います。

さて、この入社した月に退社した場合、社会保険料はどうなるのでしょうか。

 

結論から言いますと、「保険料は徴収する」というのが原則です。

ただし、次のようなことをきちんと把握しておかないといけません。

 

まず、社会保険料の控除は原則、「月ごと」です月末に在籍している者についてはじめてその翌月に「支給」される給与から控除します。ですが、その例外がこの「同月得喪」です

「同月得喪」の場合には、月末に在籍していなくても社会保険料が引かれます。

 

これはたとえば、健康保険に加入して病院にかかった時を考えれば理解できます。

仮に4/1入社で4/15退社の場合、月末まで在籍していないので社会保険料を徴収しないとすると、この間に病院に係ると医療費は3割負担で済むのに、保険料は負担しないということが想定されます。さすがにそれはまずいわけです。そのため、「同月得喪」の場合には、月末に在籍していなくても社会保険料が引かれるわけです。

 

ただ、一方で、年金のことを考えるとどうでしょうか?

年金は「月」で加入したかどうかを判断します。仮に、4/1入社で4/15退社の場合、4/20に別の会社に再就職したとすると、4月分は年金の保険料が二重に控除されることになります。あるいは、4/1入社で4/15に退社した場合に、再就職しなければ国民年金に移行します。この場合、4月分の国民年金の保険料が発生します。つまり、再就職するかしないかにかかわらず、2か月分の年金の保険料が発生することになります。

 

健康保険は保険証を使うことを考えると保険料が発生するのは理解できるのですが、年金は「月」ごとに判断するため、保険料が二重になってしまうという問題があるわけです。

 

実は、この論点は以前から問題があるとされていて、平成27年に改正があった点です。

つまり、このように保険料が二重に発生してしまう場合、今回の例でいえば、4/1~4/15に在籍していた会社の分の厚生年金保険の保険料はいったんは徴収しますが、その後、二重になっていることが確認できた場合、その厚生年金に入っていた会社に戻すことになったわけです。

 

勘違いしてはいけないのは、この規定を先回りして考えて、「同月得喪」の場合、厚生年金の保険料は最初から引かないようにする、と考えるのは正確ではないということです。あくまでも、厚生年金の保険料が会社に還付されたらそこで初めて本人に戻してあげる、ということです。

面倒かもしれませんが、そうすることが正しい手続きです。

 

まとめます。結論としては、このようになります。

「同月得喪」の場合、健康保険も厚生年金もいったん保険料を控除する。ただし、厚生年金については、その後、還付されたら本人に保険料を還付する。

 

さて、この「同月得喪」ですが、逆に、厚生年金の保険料を返さない場合というのはどういう場合があるのでしょうか?

 

・20歳未満の方、もしくは60歳以上の方

・「同月得喪」の月末までに海外に居住した場合

 

お分かりになりますでしょうか?つまり、これらのケースでは、そもそも年金に加入する義務がない方であるという共通点があります。退職後に年金に加入しなければ二重払いの問題もないわけです。

それから、規定に書いてはありませんが、たとえば、4/1入社4/15退職で、その後、国民年金の加入手続きなどを特に何もしておらず、保険料の支払いがなかったような場合も、やはり二重払いの問題がないので、4/1~4/15に在籍していた会社の厚生年金の保険料を戻してもらうこともないと思われます。

 

いずれにせよ、これらは4/1~4/15に在籍していた会社では判断できない話なので、「同月得喪」もいったん健康保険も厚生年金も引いておくことが正しいと思います。

 

ちょっと難しい話でしたが、理解できましたでしょうか。

今日は「同月得喪」の社会保険料の話でした。



さて、今日は、社会保険料の控除の仕方の基本的なルールについてのお話です。

今日のブログはちょっと長くなりますが、このブログを最後まで読んで理解していただければほぼ社会保険料の控除の仕方は理解できたといっていいと思います。じっくり読んでしっかりマスターしていきましょう。

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社会保険料といっても健康保険と厚生年金の社会保険料の他に、雇用保険料があります。

健康保険・厚生年金の社会保険料と雇用保険料は徴収のルールに対する考え方がそもそも違います社会保険料は原則として、「月」ごとに保険料を徴収することになっていますが、雇用保険料については、給与が発生するごとに徴収していきます。つまり、雇用保険は割と単純で、給与が発生していれば控除していきます。まず、ここは基本の「キ」ですからきちんと頭に入れておきましょう。

 

雇用保険料は給与が発生するごとに徴収する

 

雇用保険料は難しく考えなくていいです。とにかく加入している期間中に給与が発生したらすべて控除する、そう理解しておけばいいです。

問題は社会保険料です健康保険・厚生年金の社会保険料の考え方は「月ごとに徴収」です。こちらは結論を先に言えば、こうなります。

 

月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる

 

実は厳密には、違う場合があるのですが、ここではその例外の話は置いておくとして、上記でほぼ整理がつくとお考え下さい。

締日と支払日の関係によって変わってきますので、図を書きながら理解してみましょう。

 

3月 4月 5月
1日
15
31日(30日)

 

社会保険料は「月」ごとに徴収されます。ですので、上記のような図を書いていたらいかがかと思います。この図は、四角枠の月の社会保険料をいつ支給される給与から引くのかというものです。

具体例で考えましょう。

3月1日に入社した人がいたとします。月末締め15日払いの会社です。

この場合の社会保険料の徴収はどうなるのでしょうか?

図の書き方ですが、締日で線を引きます。支払日には左わきの日にちのところに下線を引きます。1日が上にきて月末が下にきます。それから、社会保険に加入した日(もしくは社会保険の資格喪失日)に〇をします。

このケースでは、月末締めなので、月末に線が引かれます。

 

社会保険料の原則的な徴収の理解の仕方は、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。図でいえば、四角枠の月の翌月の給与で社会保険料を引きます。

さて、この場合、3月1日入社ということは、最初の給与の支給は4月15日です。ということは、3月の四角枠の社会保険料は4月に支給される給与、つまり、4月15日支給の給与から引きます。これはわかりやすいです。

 

次に行きましょう。

15日締め、月末払いの場合です。

 

3月 4月 5月
1日
15日
31日(30日)

 

締日のところで線を引きますから、15日のところに線が引かれます。

先ほど書いた通り、社会保険料の原則的な徴収の仕方は、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。ですから、3月の四角枠の社会保険料は、3月末時点で在籍していることから、その翌月の4月30日に支払われる給与から引きます。このケースでは、3月1日~3月15日分の給与が3月31日に支払われますが、この3月31日支給の給与からは社会保険料は引かないわけです。3月の四角枠の給与の社会保険料はその翌月に支給される給与から引くからです。

 

では、月初ではなく、月の途中で入社した場合はどうなるのでしょうか。

3月20日に入社した場合です。

 

3月 4月 5月
1日
15日
20日
31日(30日)

 

締日は15日でその月の月末に給与が支払われる会社だとします。

このケースでは、3月20日に入社した場合、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」ため、4月15日締めで4月30日支払いの給与から控除されます。3月の四角枠の社会保険料は4月30日の給与から控除されるわけです。

 

では、退職の場合にはどうなるのでしょうか。

 

退職の場合も考え方は同じです。この四角枠で考えればわかります。

 

3月 4月 5月
1日
15
20日
31日(30日)

 

月末締めで翌月15日払いの会社だとします。4月20日に退職したとします。

この表では、今度は退職日に〇をつけます。

そうすると、3月の四角枠の社会保険料は4月15日支払いの給与から社会保険料は引かれます。では、4月1日から4月20日の社会保険料はどうなるでしょうか。「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。4月30日まで在籍していて初めて5月15日支給の給与から控除されるわけです。4月20日退職ですから、4月末には在籍していないため、5月15日に支給される給与からは社会保険料は引かれません。

 

このように、入社・退社通して言えるのは、月末まで在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれるということです。この基本ルールを理解していれば、次のケースもお分かりになると思います。

 

15日締めの月末払いで、4月30日退職の場合です。

 

3月 4月 5月
1日
15日
31日(30日)

 

3月の社会保険料(3月の社会保険料の四角枠)は4月30日支払いの給与から引きます。これはいいですね。では、4月16日から4月30日の給与が5月31日に支払われますが、この給与から社会保険料は引くでしょうか。

 

これは4月30日時点は退職日当日ですから在籍扱いとなります。あくまでも社会保険の資格喪失日は退職日の翌日だからです。そうすると、4月の社会保険料の四角枠があることになります。その部分は翌月の5月31日支払いの給与から社会保険料は引きます。

 

このように、「月末に在籍していたら社会保険料は引く」という原則を頭において、あとはその月の四角枠はその四角枠の翌月に支給される給与から引くと理解しておけば、間違えることはほぼ、ありません。

 

さて、上記がわかればちょっとだけ複雑な応用問題です。

 

Aさんは3月30日にA社を退職し、B社に3月31日に再就職しました。

締日・支払日はA社は15日締め25日払い、B社は月末締めの翌月15日払いです。

3月分の社会保険料はどちらの会社でどの給与から控除されるでしょうか。

 

3月 4月 5月
1日
15
 

30日
31日(30日)

 

A社は3月30日退職ですから、3月31日で資格喪失です。つまり、A社は3月末では在籍していません。一方で、B社は3月31日に入社していますから、3月末時点では在籍しています。ですから、3月の社会保険料の四角枠は4月支給の給与から控除されます。さらに、在籍はB社となりますから、B社の給与から控除します。3月16日~3月30日のA社の給与は4月25日に支払われますが、ここからは控除しません。3月31日から4月15日のB社の給与から控除されます。

 

ちょっと複雑でしたか?

ですが、これが理解できれば9割以上は理解できています。実務上はほぼ大丈夫です。

 

次回はもう少し複雑な話で、入社した月に退社した場合の社会保険料の取り扱いを見ていきましょう。しゃかい



さて、もうご存知の方も多いでしょうが、5月1日より雇用保険の届け出にはすべてマイナンバーの記載が義務付けられることになりました。

原則、マイナンバーの記載がないと書類が返されてしまい、手続きができないということになります。

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原則、届け出が必要な書類は「資格取得届」「資格喪失届」「育児休業給付」「介護休業給付」などです。

詳しくは、ハローワークの案内文をご参照ください。↴

クリックして000208440.pdfにアクセス

 

いよいよ雇用保険はマイナンバーがないと届け出ができないということになりました。

では、マイナンバーをまだ回収していない従業員はどうしたらいいのでしょうか。

これから入社する方はこれは理解してもらい、マイナンバー通知書等の写しを提出していただく必要があります。問題は、現在の在籍者が退職する場合で、マイナンバーを回収していなかったらどうなるのかということです。

 

マイナンバーを回収していなければ手続きはできませんから、まずはその旨を退職する従業員さんに言って、保険証と一緒にマイナンバー通知書の写し(もしくはマイナンバーカードの写し)をもらうことです。ですが、たとえば何らかの理由で回収できなかったらどうなるのか?これは次に再就職する際に、マイナンバーを書かないと手続きできないわけですから通常であれば、従業員さんの方から出してくるはずです。再就職の際にもマイナンバーを出さないと雇用保険の手続きができませんからね。前職で手続きがされていなければ困るのは従業員さん自身なわけです。

 

とはいえ、退職時にマイナンバーの通知書の写しなどを回収するのは手間でしょう。そこで、マイナンバーの登録(個人番号登録)をまだハローワークに行っていない会社はこの機会に従業員さん全員分のマイナンバー通知書の写しを回収するのは一つのやり方です。いっぺんに「個人番号登録」の届け出を出してしまうわけです。もし仮に、何らかの理由で急に従業員さんが辞めても、会社としては会社はすでに過去にマイナンバーの届け出を出している場合には、「マイナンバー届け出済み」と記載して手続きすれば手続きできます。

会社の手続き上の問題が後から発生しないように、個人番号登録を済ませてしまうことをお勧めします。

 

また、厚生労働省の発表によると、2020年からマイナンバーカードを保険証の代わりに使えるようにするという話が出ています。↴

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180420-00000057-jij-pol

 

マイナンバーカードは普及率がまだ1割程度らしく、マイナンバーカードの普及促進が狙いとか。

今のうちに、マイナンバーカードを作っておいた方が利便性は向上します。この機会に従業員さんにも周知してみてはいかがかと思います。



さて、今日は4月から変更している社会保険の書類の書式についてです。

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これはマイナンバーの導入と関係しています。

新しい社会保険の書式を見てみると、「マイナンバー」の欄が記載されています。もともと社会保険関係へのマイナンバーの導入は平成29年1月からを予定していました。年金事務所から基礎年金番号などの個人情報が100万人分以上流失してしまったのが、約3年前の話です。マイナンバー制度導入の直前での不祥事だったため、当面、延期となっていました。今回、予定よりも1年以上遅れて、社会保険もマイナンバー制度を導入するに至ったわけです。

 

社員が入社した際の資格取得届、退職した際の資格喪失届、給与の変更があった場合の月額変更届、毎年ある算定基礎届など様々な書類がマイナンバー対応の書式に変わっています。

 

さて、では、「マイナンバーを取得届に記載するようになる」というだけの改正なのでしょうか?

実はそうではありません。

 

資格取得届などの新しい書式をよくみると、「マイナンバーを記載したら住所は記載しなくていい」と書かれています。番号を書けば、住所とはもともと紐づいているので記載する必要がないわけです。また、基礎年金番号とマイナンバーがきちんと紐づいている人については、住所が変わった場合の「住所変更届」や姓が変わった時の「氏名変更届」も必要なくなりました。マイナンバーで一元管理するからです。

基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていない人は、昨年の12月以降2月くらいまでに「『マイナンバー等確認リスト』による情報提供の協力」ということで、文書が届いていた会社もあったと思います。そこに記載されている人はマイナンバーと基礎年金番号が紐づいていないということです。そういった書類は来ていないとか、『マイナンバー等確認リスト』に名前の記載がなかった人に関しては、マイナンバーと基礎年金番号も紐づきが完了していることになります

 

また、年金額がいくらになるのかとか、加入年月日の確認とか、そういった年金情報について、年金手帳がなくてもマイナンバーがあれば年金相談ができるようになりました。

マイナンバーカードを作っている方は、マイナンバーカードは身分証明書も兼ねていますから、マイナンバーカードだけあれば年金事務所に問い合わせをしたり、年金額の照会をしたりすることが可能になります。マイナンバーの記載されている通知書しかなく、まだマイナンバーカードを作っていない方は、マイナンバーの通知書の他に、本人確認できる身分証明書(免許証など)が必要ですので、注意が必要です。

年金のことを考えても、今後は、ますますマイナンバーカードを作ったほうが利便性が向上すると思います。マイナンバーカードをまだ作っていない方は、この機会に是非マイナンバーカードを作ることをお勧めします。

 

以上のような話は、日本年金機構のHPにも記載されていますので参考にしてみてください。↴

http://www.nenkin.go.jp/mynumber/kikoumynumber/1224.html

 

ちなみに、もう一つ、ご紹介しておきます。

届出書を以前の(前の古い書式の)届出書で提出しても受理してもらえるのでしょうか

この点は、年金事務所にも確認してみましたが、当面の間は大丈夫だそうです。旧様式での書類提出も問題なく受け付けるそうです。ただし、今は移行期間という位置づけでしょうから、徐々に新様式での提出に移行したほうがいいでしょう。

 

ということで、今日はマイナンバーと社会保険の話でした。



さて、今日は配偶者控除の改正の話です。

103万円が150万円になります。この1月(平成30年1月)から改正になっています。

どういう関係になっているのか、よくわからないという人も多いと思います。

シンプルにしてわかりやすく解説します

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まず、今回の改正は、一般的には「夫」の配偶者控除の話です。(夫の方が年収が多く、妻の方が年収が少ないという前提です)それ以外は何も変わっていません。つまり、一般的には「妻」の税金や社会保険の話は全く変わっていないという点です。

この配偶者控除の話でややこしいのは、税務と社会保険の両方が関係する点がまず一つあります。もう一つは、夫の税額に影響がある話と妻自身の税金や社会保険の話とが混在している点です。

 

その辺を考え、このブログでは、妻の年収(給与の場合に限った話です。事業所得の場合は当てはまりません)がどの金額になったらどうなるのか、もう一方で、夫の年収が変わるとどうなるのか、金額を順番に並べて考えてみることにします。

 

妻の年収100万以下・・・住民税が非課税になるライン。この金額を超えると「妻」の住民税が5,000円以上かかる。

妻の年収103万円以下・・・「妻」の所得税が非課税になる金額。所得控除(生命保険料控除など)が何もなくても、この金額以下だったら「妻」の所得税はかからない。

妻の年収106万円未満・・・「夫」の勤務先が従業員数501名以上の大企業の場合、「妻」は社会保険の扶養から外れる。この金額以上だと妻は単独で社会保険に加入(勤務先の社会保険に入るか、勤務先の社会保険に加入する基準に達していなければ妻単独で国民健康保険・国民年金に加入)しないといけない。

妻の年収130万円未満・・・「夫」の勤務先にかかわらず社会保険の扶養に入れる範囲。この金額以上だと妻は単独で社会保険に加入(勤務先の社会保険に入るか、勤務先の社会保険に加入する基準に達していなければ妻単独で国民健康保険・国民年金に加入)しないといけない。

妻の年収150万円未満・・・「夫」の配偶者控除(38万円)が取れる範囲。「妻」の年収が103万円以上であれば「妻」自身には所得税・住民税はかかる。

妻の年収150万円以上201万円未満・・・「夫」の配偶者特別控除が取れる。控除額38万円が段階的に少なくなり、201万円になった段階で、配偶者特別控除はゼロになる。

 

こんな形です。なんだか複雑ですね。

 

複雑に感じた所に悪いのですが・・・

もう一つ、今回の税法の改正で、「夫」の年収によって妻の配偶者控除が制限されるのも加わりました。夫の年収要件が以下です。

 

夫の年収が1120万円(所得金額で900万円)未満・・・この金額未満だったら「夫」は配偶者控除38万円を取れます。

夫の年収が1120万円以上1170万円(所得金額で900万円以上950万円未満)・・・「夫」は配偶者控除26万円を取れます。

夫の年収が1170万円以上1220万円(所得金額で950万円以上1000万円未満)・・・「夫」は配偶者控除13万円を取れます。

夫の年収が1220万円(所得金額1000万円)未満・・・「妻」の年収が150万円以上201万円未満の場合、「夫」は配偶者特別控除を取れます。

 

気にしないといけないが「夫」の税金なのか、「妻」の税金や社会保険なのかによって、違うという点です。ご自身が今、どの部分が問題になっているのかによって変わります。

「妻」自身の税金や社会保険の負担の問題なのであれば、妻の年収は100万円、103万円、106万円、130万円という話です。

「夫」の税金の話なのであれば、妻の年収は150万円、201万円、それから夫自身の年収1120万円~1220万円という話です。

 

このように金額を並べてみると、少し見えてくるのではないでしょうか。参考にしてみてください。