さて、今日は、社会保険料の控除の仕方の基本的なルールについてのお話です。
今日のブログはちょっと長くなりますが、このブログを最後まで読んで理解していただければほぼ社会保険料の控除の仕方は理解できたといっていいと思います。じっくり読んでしっかりマスターしていきましょう。
社会保険料といっても健康保険と厚生年金の社会保険料の他に、雇用保険料があります。
健康保険・厚生年金の社会保険料と雇用保険料は徴収のルールに対する考え方がそもそも違います。社会保険料は原則として、「月」ごとに保険料を徴収することになっていますが、雇用保険料については、給与が発生するごとに徴収していきます。つまり、雇用保険は割と単純で、給与が発生していれば控除していきます。まず、ここは基本の「キ」ですからきちんと頭に入れておきましょう。
雇用保険料は給与が発生するごとに徴収する
雇用保険料は難しく考えなくていいです。とにかく加入している期間中に給与が発生したらすべて控除する、そう理解しておけばいいです。
問題は社会保険料です。健康保険・厚生年金の社会保険料の考え方は「月ごとに徴収」です。こちらは結論を先に言えば、こうなります。
月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる
実は厳密には、違う場合があるのですが、ここではその例外の話は置いておくとして、上記でほぼ整理がつくとお考え下さい。
締日と支払日の関係によって変わってきますので、図を書きながら理解してみましょう。
社会保険料は「月」ごとに徴収されます。ですので、上記のような図を書いていたらいかがかと思います。この図は、四角枠の月の社会保険料をいつ支給される給与から引くのかというものです。
具体例で考えましょう。
3月1日に入社した人がいたとします。月末締め15日払いの会社です。
この場合の社会保険料の徴収はどうなるのでしょうか?
図の書き方ですが、締日で線を引きます。支払日には左わきの日にちのところに下線を引きます。1日が上にきて月末が下にきます。それから、社会保険に加入した日(もしくは社会保険の資格喪失日)に〇をします。
このケースでは、月末締めなので、月末に線が引かれます。
社会保険料の原則的な徴収の理解の仕方は、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。図でいえば、四角枠の月の翌月の給与で社会保険料を引きます。
さて、この場合、3月1日入社ということは、最初の給与の支給は4月15日です。ということは、3月の四角枠の社会保険料は4月に支給される給与、つまり、4月15日支給の給与から引きます。これはわかりやすいです。
次に行きましょう。
15日締め、月末払いの場合です。
締日のところで線を引きますから、15日のところに線が引かれます。
先ほど書いた通り、社会保険料の原則的な徴収の仕方は、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。ですから、3月の四角枠の社会保険料は、3月末時点で在籍していることから、その翌月の4月30日に支払われる給与から引きます。このケースでは、3月1日~3月15日分の給与が3月31日に支払われますが、この3月31日支給の給与からは社会保険料は引かないわけです。3月の四角枠の給与の社会保険料はその翌月に支給される給与から引くからです。
では、月初ではなく、月の途中で入社した場合はどうなるのでしょうか。
3月20日に入社した場合です。
|
3月 |
4月 |
5月 |
1日 |
|
|
|
|
|
|
|
15日 |
|
|
|
20日 |
|
|
|
31日(30日) |
|
|
|
締日は15日でその月の月末に給与が支払われる会社だとします。
このケースでは、3月20日に入社した場合、「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」ため、4月15日締めで4月30日支払いの給与から控除されます。3月の四角枠の社会保険料は4月30日の給与から控除されるわけです。
では、退職の場合にはどうなるのでしょうか。
退職の場合も考え方は同じです。この四角枠で考えればわかります。
|
3月 |
4月 |
5月 |
1日 |
|
|
|
|
|
|
|
15日 |
|
|
|
20日 |
|
|
|
31日(30日) |
|
|
|
月末締めで翌月15日払いの会社だとします。4月20日に退職したとします。
この表では、今度は退職日に〇をつけます。
そうすると、3月の四角枠の社会保険料は4月15日支払いの給与から社会保険料は引かれます。では、4月1日から4月20日の社会保険料はどうなるでしょうか。「月末に在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれる」です。4月30日まで在籍していて初めて5月15日支給の給与から控除されるわけです。4月20日退職ですから、4月末には在籍していないため、5月15日に支給される給与からは社会保険料は引かれません。
このように、入社・退社通して言えるのは、月末まで在籍していれば翌月支給の給与から社会保険料が引かれるということです。この基本ルールを理解していれば、次のケースもお分かりになると思います。
15日締めの月末払いで、4月30日退職の場合です。
3月の社会保険料(3月の社会保険料の四角枠)は4月30日支払いの給与から引きます。これはいいですね。では、4月16日から4月30日の給与が5月31日に支払われますが、この給与から社会保険料は引くでしょうか。
これは4月30日時点は退職日当日ですから在籍扱いとなります。あくまでも社会保険の資格喪失日は退職日の翌日だからです。そうすると、4月の社会保険料の四角枠があることになります。その部分は翌月の5月31日支払いの給与から社会保険料は引きます。
このように、「月末に在籍していたら社会保険料は引く」という原則を頭において、あとはその月の四角枠はその四角枠の翌月に支給される給与から引くと理解しておけば、間違えることはほぼ、ありません。
さて、上記がわかればちょっとだけ複雑な応用問題です。
Aさんは3月30日にA社を退職し、B社に3月31日に再就職しました。
締日・支払日はA社は15日締め25日払い、B社は月末締めの翌月15日払いです。
3月分の社会保険料はどちらの会社でどの給与から控除されるでしょうか。
A社は3月30日退職ですから、3月31日で資格喪失です。つまり、A社は3月末では在籍していません。一方で、B社は3月31日に入社していますから、3月末時点では在籍しています。ですから、3月の社会保険料の四角枠は4月支給の給与から控除されます。さらに、在籍はB社となりますから、B社の給与から控除します。3月16日~3月30日のA社の給与は4月25日に支払われますが、ここからは控除しません。3月31日から4月15日のB社の給与から控除されます。
ちょっと複雑でしたか?
ですが、これが理解できれば9割以上は理解できています。実務上はほぼ大丈夫です。
次回はもう少し複雑な話で、入社した月に退社した場合の社会保険料の取り扱いを見ていきましょう。しゃかい