「マイナンバー」の話、すっかり落ち着いたように思います。
あまり周りで「マイナンバー」の話って出ませんよね?そんな気がします。
ですが、「マイナンバー」対策はまさにこれからです。
さて、前回のブログでこの10月から導入される106万基準の話を解説しました。↴
この106万基準の導入はマイナンバーと密接に関係があると私は考えています。
そもそも、中小企業の特に、総務経理の担当者の皆さんは私の感覚ではほとんど皆さんが勘違いしていると思います。マイナンバー制度の導入を「面倒な事務処理が一つ増えた」くらいに考えているんです。多くの中小企業の社長さんもそんな感じなのではないかと思います。
だから、「いつまでにマイナンバーを集めたらいいのか」とか「雇用保険の書類にマイナンバーは書かないといけないのか」とか「集めたマイナンバーはどうやって保管するのか」とかという、要は、事務処理の面からの話が多いわけです。
私は、「それも重要なんだけどなんか忘れていないですか?」と思うわけです。
つまり、「何のために『マイナンバー制度』が導入されるのか」という側面からの話をすっかり忘れてしまっている(もしくは、あまり考えていない)と思うわけです。
この106万基準の話を私の顧問先にもするわけですが、感度のいい経営者や総務経理の担当者は必ず「これって、マイナンバーも絡みますよね?」と聞いてきます。
鋭い!そうなんです。
もともとマイナンバー制度を政府が導入したがっていたのは、「税と社会保障の一体改革」の一環でした。つまり、「税金の情報と社会保険の情報を共有したらどうか」というところから始まっています。たとえば、社会保険の130万基準。この130万基準はそれほど厳格には運用されていませんでした。つまり、従業員さん本人から、「うちに妻は年収が130万を超えたので扶養から外れます」と言わない限り、扶養から外れることは原則としてなかったわけです。ですので、仮に年金事務所から扶養親族の所得に関しての調査があっても、「課税証明書」のような資料を出すことは原則としてはありませんでした。
年金事務所としても、本人から「課税証明書」や「給与明細」のような資料の提出がなければ把握しようがなかったわけです。それが、「マイナンバー制度」の導入によって、いちいち本人から資料を出してもらわなくても年金事務所側で「この方の扶養になっているこの人は年収が130万以上だ」とわかるようになるわけです。
さて、106万基準の対象となる企業は前回のブログでも書いた通り、「社会保険加入者が常時501名以上」の企業です。大きな会社さんが主な対象です。
こうした大きな会社さんでは、マイナンバー対策をきちんとされているところが多いと思われます。実質的にはマイナンバーは、今年の年末調整から始まるようなものというのが、ほとんどの中小企業の認識だろうと思います。ですが、「社会保険加入者が常時501名以上」のような大企業ではすでにマイナンバー対策がしっかり取られているところが多いだろうと想像がつきます。
とりあえずは、そういうマイナンバー対策がきちんと取られている大企業から106万の扶養基準の制度を導入して、試験的に社会保険の適用拡大を進めていこうということなのではないかと思うんです。
将来的には、中小企業にも広く106万基準を導入して、マイナンバーを通じてその情報を税務署と年金事務所で共有し、社会保険料をより広く徴収していこう。それにマイナンバーを活用しよう。そんな意図がうかがえるわけです。
マイナンバーの導入と106万基準の導入で健康保険・厚生年金の適用対象者を拡大する。これはみんな同じラインの上に乗っかった話なわけです。
その辺も踏まえたうえで、106万基準の話をとらえてみてはいかがでしょうか。