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Category Archives: 労務管理


あけましておめでとうございます。

今年はまた本を出す準備をしていこうと思います。次回の私の書こうと思っている本は私の顧問先で実際に起こった話を中心に、読みやすい読みもの風のものにしていこうと思っています。ブログもその本のためにも大変重要なツールだと思っています。昨年以上にこのブログから情報発信していこうと思います。

さて、今日は、「障害者雇用促進法」という法律についての話です。

法律の名称を言ってもピンと来ないでしょうか?最近、公務員が障がい者の雇用を水増ししていて問題になったという事件がありました。民間企業は障がい者を一定数以上雇っていないと罰金を支払わないといけないのに、公務員は罰則の適用がないという、民間企業からしたら憤慨するのがもっともな話です。そのことが規定されている法律が「障害者雇用促進法」です。

さて、このブログではその国や地方自治体で起こっているそうした問題にコミットするのではなく、あくまでも中小企業目線で書いているブログです。今回もその視点で見ていこうと思います。

 

まず、障害者を雇わないといけない「障害者雇用率」についてみていきましょう。

障害者雇用率は昨年、平成30年4月から、民間企業は2.0%から2.2%に引き上げられました。この引き上げによって、民間企業では、平成30年3月までは従業員数50名以上で1名の障害者雇用が必要だったのが、45.5人以上で障害者1名となりました。障害者雇用のハードルが下がったということです。

ちなみに、国や地方公共団体では、平成30年4月以降は2.5%に引き上げられました。つまり、40名につき1名は障害者を雇わないといけないということです。

 

ここで言っている「従業者数」というのはどういう意味でしょうか。労働局のHPから抜粋してみましょう。

 

常用労働者・・・1年以上継続して雇用される者(見込みを含みます。)をいいます。そのうち、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である短時間労働者については、1人をもって0.5人の労働者とみなされます。なお、1週間の所定労働時間が20時間未満の方については、障害者雇用率制度上の常用労働者の範囲には含まれません。

 

おおむね雇用保険の一般被保険者が「常用労働者」で、週の労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」は0.5人でカウントするということのようです。

雇用保険に加入している人の数でカウントしていって、45.5人以上の場合、障害者を一人雇わないといけないということになります。

また、一般的に精神障害者は週の労働時間が週20時間以上30時間未満になるケースが多いとされていて、精神障害者に限っては、週の労働時間が20時間以上30時間未満であっても0.5人ではなく1人でカウントするとなっています。

 

では、この障害者雇用率を満たさなかった場合、どうなるのでしょうか?この場合、「障害者雇用納付金」と呼ばれる罰金を支払うことになります。では、いくら支払うのでしょうか?

不足する障害者1人につき、1か月あたり5万円を支払うことになります。

逆に、一定数以上の障害者を雇っている場合、報奨金をもらえることもあります

高齢・障害・求職者雇用支援機構のHPによると、以下のように書かれています。

 

「常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。」

 

対象はあくまでも、従業員数(ほぼ雇用保険被保険者数)が100人以下の事業所に限られますが、4%以上の障がい者を雇っていると、超過した人数に応じて21,000円が支給されます

 

また、障害者の雇用をめぐっては助成金もあります。特定求職者雇用開発助成金です。その他にも、障害者を雇用すると受給できる助成金が多く存在します。その辺については、私の以前のブログをご参照ください。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e9%9a%9c%e3%81%8c%e3%81%84%e8%80%85%e3%82%92%e9%9b%87%e3%81%86%e3%81%a8%e3%82%82%e3%82%89%e3%81%88%e3%82%8b%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91

 

また、東京都に関しては国の特定求職者雇用開発助成金を受給すると東京都独自の助成金として「東京都障害者安定雇用奨励金」というのが受給できます。受給額はなんと150万円(精神障害者の場合には180万円)です。

特定求職者雇用開発助成金は短時間労働者(つまり、週の労働時間が20時間以上30時間未満)でもでる助成金です。仮に、短時間労働者を雇い入れた場合、国から(特定求職者雇用開発助成金として)80万円、東京都から150万円であわせて230万円でます

国の助成金は2年間雇って受給できるものなので、たとえば、週の労働時間を20時間として2年間雇ったとします。時給1000円で計算すると、以下のようになります。

1,000円×20時間×4.5週=90,000円

90,000円×24ヶ月=2,160,000円

 

つまり、助成金受給額とほぼ同じか、むしろ助成金の金額の方が多いことになります。

障害者雇用に当たっては、こんなことも知っておくだけで違うかもしれません。

 

今日は「障害者雇用」について、中小企業の視点から考えてみました。



さて、ブログの更新が何日間かできていませんでした。意外とこの11月は忙しかったためです。

今日はなぜか最近、ご相談の多い、従業員さんの退職時の話、特に自己都合退職の場合の話について、書いていこうと思います。

 

まず、退職に当たって、特に自己都合退職の場合には必ず「退職届」はもらってください。これは意味としては二つあります。

一つは、手続きに必要だからです。離職票を発行するのに、自己都合退職の場合、自己都合であることの証明が必要です。それが「退職届」です。「退職届」は退職者本人の意思で退職したということを示す何よりの証明書です。ハローワークで手続きを取る際に、「離職票あり」の手続きをする場合と「離職票なし」の手続きをする場合があります。「離職票なし」の手続きの場合には特に証明書は求められないのですが、「離職票あり」の手続きの場合、自己都合退職であることの証明書が必要となります。その「自己都合退職であることの証明書」が「退職届」なわけです。「退職届」というのは自己都合退職であることのなによりの証明書と言っていいでしょう。だからこそ、ハローワークも手続きの際に「退職届」を出してもらうわけです。

 

「退職届」を取るもう一つの意味は、あとで揉めないためです。

その退職される従業員さんと良好な関係のまま退職に至る場合にはいいのですが、何かいろいろとあって辞める場合が問題です。よくあるのは、いろいろと問題があって辞めることになってその後、「やっぱりやめない。続けます。」とあとから言い出すケースです。ひどい場合には、確かに辞めると言ったのに、辞めるとは言っていませんとか言い出すようなケースもあります。いろいろとあって揉めている従業員さんがいたとして、その従業員さんが「辞める」言ってきたとします。社長としては「ああ、辞めると自分から言ってくれた」とホッと一安心だったとします。つまり、辞めてほしい人が自分から辞めると言ってきたようなケースです。このような場合、あとから話をひっくり返すようなことがないように、まずは「退職届」をもらうことが肝要です。その場で書いてもらえれば書いてもらったほうがいいでしょう。

実は、この手の相談は結構あります。

本人的には「辞める」と言ったものの、いざ再就職活動をしてみると、再就職が厳しいのがわかって本人から前言を翻したいと言ってきたようなケースです。社長としては、次の人材確保のために採用活動を始めていたり(場合によってはすでに代わりの人材確保をしていたり)していて、もう、あとには引けないというような状況です。こんな状況で「やっぱり辞めるのを止めます」と言われると、これは困るわけです。「ウチは二人も採用している金銭的な余裕はない」となるとますます困った話です。

そのようなことにならないためにも、辞めるという話があって会社としては了承した場合、まずは「退職届」を取ることが重要となるわけです。

 

また、退職届のひな形ですが、これは特にきまった雛形があるわけではありません。

最低限、以下のような項目があればいいでしょう。

 

① 宛名に「会社名」「社長名」が入っているか(もしくは社長名の代わりに責任者の名前になっているか)

② 退職年月日(退職予定年月日)があるか

③ 自己都合退職である旨が書いてあるか(通常は「一身上の都合による」という文言があるか)

④ 本人の名前が入っているか

 

なお、名前が自筆であれば印鑑は捺印してあってもしてなくてもいいでしょう。また、ご自身のお名前くらいは自筆で書いたほうがいいでしょう。すべてパソコンで打ったものだと本人の意思で書いたかどうかが判然としません。せめてお名前くらいは自筆にしたほうがいいです。

 

さて、自己都合退職の場合、「退職届」が必要というのはお分かりいただけたのではないかと思います。では、(これもよくある質問ですが)「退職確認書」のようなものを取ったほうがいいかということです。

たとえば、退職後も顧客情報を持ち出さないとか、一切の金銭債権債務は存在しないとか、退職後は在籍中に知ったことを他に漏らさないとか、そういったことを書いた書類に署名・捺印をしてもらうというようなものです

 

私はこれに対しては「ケースバイケースで対応したほうがいいでしょう」とお答えすることが多いです。要するに、どんなケースなのかで「退職確認書」を取ったり取らなかったりという形になるものだと思っています。

なぜでしょうか?

基本的には「退職届」を取っておけば「自己都合退職」で「○月○日に退職」という合意は出来ているわけです。私はそれだけで十分だと思います。

ですが、改めてそれとは別に書面を取るということは、何かあるから取るわけです。例えば、未消化の有給休暇について揉めているとか、未払の残業代があるとか、あるいは従業員さんが在籍中に情報を持ち出そうとしているとか、そういうことです。

そういうような「別に何かある」ような場合、これは書面を別途、取らないといけないとなるわけです。

逆に、何も問題がないのに「退職確認書」のような書類を別途取るというのはどうでしょうか?その従業員さんからしたら「信用されていない」と捉えかねません。わざわざ波風を立てるようなことはしないほうがいいというのが私の考えです。

 

また、仮に「退職確認書」を取ったとしても、あとから「未払残業代」について訴えを起こされることはあり得ます。いくら書面を取ったところで、実際に「未払残業代」があったような場合、この「退職確認書」は無効になる可能性はあります。たとえば、「この退職確認書を取った時点ではよくわからなかったが、あとから調べてみると未払残業代があった」とか言われたらどうでしょうか。また、『「この退職確認書にサインをしないと退職の手続きをしない」と言われたので、とりあえずその場ではサインしただけです』と言われたらどうでしょう。そのように言われた場合、せっかく取った「退職確認書」は無効になる可能性はあり得るのです。つまり、なんでも書面を取ってサインさせれば安心といって書類にサインさせるのは意味がない(場合によっては逆にもめ事を誘発してしまうのでむしろやらないほうがいい)というわけです。

 

繰り返しですが、自己都合退職であれば「退職届」は必ず取ったほうがいいでしょう。その上で、「退職確認書」を取ったほうがいいのかどうかは慎重に判断したほうがいいでしょう

 

以上、今日は自己都合退職の場合の会社のやるべきことというお話でした。



さて、今日はよく経営者の皆さんが勘違いする論点、月給制と日給月給制の違いについてみていこうと思います。

まず、月給制と日給月給制の違いについて、ちゃんと説明できますでしょうか?

ある従業員さんが休んだとします。給与はどう取り扱いますか?休んだ分を給与から引きますか?もし給与から引くのであれば月給制ではなく、日給月給制です。

 

つまり、日給月給制というのは、欠勤したら控除することを言います。月給制といいつつ、休んだら休んだ日数(もしくは時間数)を控除するわけですから、事実上、日給制と同じだという意味です。

一方で、月給制というのは、休んでいても休んでいなくても毎月の給与は同じというのが月給制です。

世間で一般的に、言っている「月給制」というのは実は「日給月給制」であることがほとんどです。

 

基本給はほとんどの会社は日給月給制になっていると思います。一方で、各種手当はどうなっていますでしょうか

たとえば、役職手当はどうでしょうか?資格手当はどうなっていますでしょうか。

これらの手当は、休んだか休んでいないかで支給額に違いがある形になっていますでしょうか。

たとえば、資格手当は何らかの資格があることで支給される手当です。介護施設だと、介護福祉士、ケアマネージャー、初任者研修など多くの資格があります。その資格があることで配置基準が算定されるといった事情があることを考慮して、資格手当は休んでいても支給される形になっていることが多いと思います。つまり、この場合の資格手当は「月給制」の手当と言えます。

 

一方で、たとえば、欠勤したら欠勤した分は控除する手当、あるいは欠勤の日数が月5日以上になったら休んだ分を支給しない手当があったとします。たとえば、役職手当がそういう手当だったとします。

欠勤の日数が多いと、役職者としての仕事をしていないとして控除するのであれば、その手当は「日給月給制」の手当と言えます。

 

つまり、基本給は「日給月給制」である一方で、手当の中でも休んでも支給される手当(「月給制」的な手当)と休んだら休んだ分は支給されない手当(「日給月給制」的な手当)があるわけです

就業規則では、諸手当が、この「月給制」か「日給月給制」のどちらに属するかを書いてあるはずです。

 

また、たとえば、「日給月給制」的な手当なんだけれども、欠勤した日数によって支給したり支給しなかったりする手当もあります。たとえば、通勤手当などはそのような規定になっていることもあると思います。あるいは仕事の内容によって支給される職務手当のようなものがあったとします。職務手当は仕事の内容によって支給される手当なので、欠勤の日数がたとえば5日以上になると休んだ分を控除するとか規定するということはあり得ます。

このように1日や2日休んだところでは控除されないが、ある一定程度休んだら控除される手当もあります。

 

問題なのは、どの手当が「月給制」的な手当で、どの手当が「日給月給制」的な手当なのか、を把握しておく必要があるのに、どちらに属する手当なのかがよくわかっていないで運用していることが多いということです。多くの経営者がこの辺がきちんと整理されていないことに気づかされます。

 

たとえば、ある会社さんの就業規則では通勤手当は休む休まないにかかわらず支給される手当だったとします。それなのに、「○○さんは病気で2週間休んだ。その間、会社に出勤していなかったから休んだ日数は支給しないことにしたい」といったことをおっしゃったりすることがあります。

役職手当などでもそうした例があります。

役職に就くのを、給与の締日事に1か月単位で就くことにするなどすれば、「月給制」的な手当にすればこうした勘違いは起こらないと思います。

 

どの手当を「月給制」的な手当にして、どの手当を「日給月給制」的な手当にするのか、今一度、確認してみてはいかがかと思います。

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さて、今日は、健康診断費用の話です。

実際に、私の顧問先からあった質問でもあるのですが、従来からたまに質問がある項目でもあります。健康診断の費用の負担は会社が全部もつべきなのでしょうか?

健康診断費用については、法律上、特に会社が負担すべきかどうかの明記はありません。ですが、労働安全衛生法という法律の基本通達(法律の取り扱いについて細かく定めている役所の内部文書)「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」(昭和47.9.1 基発第602号)」というものがあり、そこに取り扱いが書かれています。昭和47年の通達ですから結構古い通達ですが、これが根拠になっています。この通達には「健康診断の費用はできれば会社が負担すべき」と書いてあります。そこで言っている健康診断というのは法律上、義務付けられている健康診断のことです。一般的には年1回やる健康診断のことです。その健康診断の中身も具体的にどこまでやらないといけないのか決まっています。いわゆる生活習慣病検診をやると、労働安全衛生法という法律で言っている健康診断はクリアされます。協会けんぽでやっている「生活習慣病検診」をやればそれで安全衛生法でいう健康診断の項目はクリアされます。

また、この健康診断は法律で義務が課せられており、そのためにその義務の範囲において費用も会社が負担するという話になっているわけです。その趣旨からしても、全額、会社負担で健康診断を受けさせるのがいいのだろうと思います。

その上で、では、付加検診はどうすべきでしょうか?付加検診というのは、たとえば、乳がん検診や子宮がん検診、アレルギー検査、胃カメラ検査など、法定検診を超えた検査です。この付加検診をした場合、これは会社負担にすべきでしょうか?

こうした付加検診は、安全衛生法でいう健康診断の項目にはないものです。つまり、通常の健康診断よりもより高度な検査になります。付加検診についてどうすべきかははっきりと法律に書かれているわけではありませんが、法律の趣旨からすれば、安全衛生法でいう健康診断を超えた検査なわけですから、そこまで会社は負担する義務はないことになります。

ただ、付加検診についても会社である程度負担を認める形にしたい場合、では、どこまでを範囲にするのかという問題がでてきます。

付加検診にもかなりの数があります。たとえば、超音波検診や骨密度検査、腫瘍マーカー検査、もっと言えば、人間ドックで1日がかりの検査の場合、費用が数万円になるものもあります。これについて、どこまでを会社負担ですることを認めるのかということです。

たとえば、役職に応じて、認める範囲を決めるということも考えられます

役員以上は人間ドックの費用を〇万円まで、主任以上は付加検診は〇千円までという感じで役職に応じて認める形です。また、入社年数に応じて、胃カメラ検診は認めるとかいうような方法も考えられます。

そもそも、付加検診を規定で範囲を限定するというのはなぜなのでしょうか? たとえば、単純に認めてしまうと、入社数か月の人と入社数年の人が同じ扱いということになるということもあります。また、付加検診の範囲に制限を設けなければ検診費用が高額になってしまう可能性があることもあります。また、税務上の観点からも規定に則った制度運用をしないと、付加検診部分が福利厚生費ではなく、その本人に対する「給与」と判断されてしまう可能性があるということもあります。いずれにしても、付加検診を会社負担で見る場合、なんらかの規定を設けておく必要はあるでしょう

加えて、この健康診断については、助成金が使えることもあることは知っておいていいことでしょう。

健康診断についての助成金というのは、キャリアアップ助成金にもあります有期雇用契約労働者を対象にして、法定外の健康診断制度を就業規則に新たに規定して、その対象者が4人以上いる場合、1事業所当たり38万円(生産性要件に該当すれば48万円)が受給できます。

非正規雇用に健康診断制度をやろうとする場合、こうした助成金の制度があることは知っておいていいことでしょう。

 

また、助成金でいえば、65歳超雇用推進助成金の高齢者雇用環境整備コースでも、60歳以上の雇用保険加入者に健康診断制度を導入した場合、助成金の対象になるケースがあります。

これについては、また機会があれば詳しく書いていこうと思います。

 

いずれにしても健康診断制度については、安全衛生法という法律での問題の他にも、就業規則などの制度設計の問題や助成金や税務上の観点など、実は健康診断にかかわる問題は多岐にわたります。その辺を踏まえたうえで、実施の仕方についてよく検討してみてはいかがかと思います。

ちなみに、以前にも似たような記事をこのブログで書いています。ついでに下記の記事も参考にしてみてください。↴

健康診断の費用とその時間の賃金も会社は負担すべき?

 

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しばらくブログの更新ができませんでした。今年の9月は平日の日数が18日しかなく、その少ない日数でいろいろとやりくりしないといけないので、実は結構、大変でした・・・
さて、ちょっと言い訳をしたところで、今日のテーマは「最低賃金」です。

もうご存知の方も多いことと思いますが、10月1日から最低賃金が更新されます。
東京都は985円になります。958円が985円になるので、わかりやすいでしょうか?
その他の都道府県の一覧は下記を参照してみてください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

この最低賃金は10月1日以降の労働について適用されます。ですから、たとえば15日締めであっても、9月16日~9月30日の分と、10月1日~10月15日の分は別です。
それから、時給の計算はもちろんですが、月給者についても最低賃金を割らないように注意が必要です。

また、助成金の申請時には、最低賃金を割っていないかのチェックがされます。助成金受給を考えている場合には、より注意が必要です。

最低賃金の確認をしましょう!

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さて、前回のブログで、「同一労働同一賃金」を進めるにあたって、就業規則等を変更していった場合、一部の従業員にとって、不利益な変更になってしまう場合、どのように対処していったらいいのかについて考えてみようと思います。

一般的に、就業規則や労働契約などが使用者側の都合で変更され、その変更後の内容が従業員さんにとって不利な変更になることを「不利益変更」と呼びます

就業規則や労働契約を変更する場合には、この不利益変更がない形で変更していくことも重要です。

 

ですが、会社もいくらでもお金を持っているわけではありません。会社には給与で支払える金額の限度があります。ある社員の処遇をよくすれば、一方で、別の社員の処遇が悪くなることはあり得る話です。「同一労働同一賃金」を目指し、給与体系の変更を考えるということは、変更の仕方によっては処遇が悪くなる社員が出てしまうことを意味するわけです。

 

これを考えるにあたって、まず法的にどういう問題があるのかを考えてみましょう。

まず、法律的には「不利益変更」は原則的にはいけない話です。ですが、「合理的な理由」があれば認められるとされています。では、「合理的な理由」とは何かということです。これは裁判例から答えを導き出せます。「ノイズ研究所事件」というものです。

この裁判では、年功序列型の賃金体系(年齢が上がっていくにつれて給与が上がる仕組み)から成果主義型の賃金形態(会社への貢献度が高ければ給与が上がる仕組み)に切り替えた場合、一部の社員についての給与が約1割下がったことが「合理的な理由」による不利益変更として認められるのか、というものです。

 

この裁判では、会社側の主張がほぼ認められる結果となっています。

主な理由としては、次のようなものです。

  1. 賃金形態の変更は競争が激化する業界に合って必要不可欠であったこと
  2. 今回の給与体系の変更によって、賃金総額全体については大きな変更はないものであること
  3. 頑張れば昇給する機会も平等に与えられているものであること

 

つまり、不利益な変更がやむを得ない理由があり(①の理由)、会社側の一方的な都合によるものとは認められないものであり(②の理由)、変更によって一時的に不利益を受けたとしても昇給の余地があるなどによって回復することができる(③の理由)といったことが認められた理由です。

 

「同一労働同一賃金」を目指し、賃金体系の変更をする場合、原則は賃金の原資が増えるわけではないですから、特に正規雇用の社員に不利益変更が生じてしまう可能性があります。今までついていた手当がなくなったり、もしくはなくならないまでも金額が減ることもあるでしょう。あるいは、ある手当を別の手当てに統合することで結果的に不利益変更となってしまう人が出てくる可能性があります。しかしこれはやむを得ない部分です。一つ一つの手当の意味、基本給などの設定の仕方の方法、評価の方法など、丁寧に、検討していけば道は開けます。

 

また、もう一つ大事なのは、不利益変更が生じてしまう社員がいる場合には特に、従業員説明会など、社員にその事情を説明し、新しい賃金制度について理解してもらう努力をすることは大前提としてあります。このような話をするとよく「揉めてしまうし、説明会のようなことを収拾がつかなくなるからやらない」というような話をされる経営者も少なからずいらっしゃいます。しかし、それでは逆効果です。不利益変更があるのであればなおさら、説明会はやったほうがいいです。そして、最終的に不利益変更について承諾しない社員がいたらどうするかです。これはまずは十分に話し合うことです。その上で、不利益変更を認めない社員についてはその反対する社員も含めて、就業規則の変更は認められるとした裁判例があります。(秋北バス事件【最高裁1968年12月25日】)

この裁判では就業規則の不利益変更があった場合、まず大前提として、社員に「今回の不利益変更が合理的であること」について説明会を行い、十分に説明を行っていることがあります。

 

面倒と思って従業員への説明を省くようなことはかえって経営者の首を絞める結果になります。不利益変更がある場合には、まずは従業員の皆さんにご理解いただくことが大切なわけです。

 

改正パートタイム労働法は2020年に改正されます。(中小企業はその1年後の2021年)

ここでは、非正規雇用の従業員から求められたら正社員との処遇の違いについて説明しないといけないこと、正規雇用と非正規雇用とで不合理な違いを設けてはいけないことなどが明記されています。

こうした法改正の流れを考えても、「同一労働同一賃金」を見据えた規定の整備、不利益変更になる従業員への説明など、経営者はやらないといけない課題であることを認識する必要があるものと思います。



さて、前回のブログでいわゆる「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決について、書きました。このハマキョウレックス事件は、正規雇用と非正規雇用の格差についての労働契約法第20条をめぐる裁判であるという話をしましたが、同時にこの裁判は、 「同一労働同一賃金」をめぐる裁判とも言われています。このハマキョウレックス事件の最高裁判決を受けて、今後、中小企業がどう対処していったらいいのかというのは、この「同一労働同一賃金」とは何のことなのかがわかると見えてきます。

 

「同一労働同一賃金」というのは要するに、同じ種類の仕事をしているのであれば賃金は同じでなければいけないという考え方です。

もともとこの「同一労働同一賃金」という考え方自体は欧米から来ているものです。欧米では、職務ごとの労働組合というものがあり、職務ごとに賃金形態が決まっているという経緯があります。一方で、日本では会社ごとに労働組合が組織され、会社ごとに賃金形態が定められるため、同じ仕事内容でも、A社の賃金とB社の賃金が違うのは当たり前のことと思われています。

実際、たとえば正規雇用の場合、たとえばパート労働者と同じ仕事もしている一方で、パート労働者の雇用管理(シフト組み)をやったり、残業が必要な時は正規雇用の人が残業をしたり、正規雇用には配置転換や異動があるなどするため、正規雇用の方が賃金が高いのは当たり前と受け取られる向きがありました。これをいけないとしたのが「丸子警報機事件」と呼ばれる裁判です。この裁判では、「正規雇用と非正規雇用に役割の差があったとしても著しく差があるのはいけない」としています。

「日本型同一労働同一賃金」というのは、「正規雇用と非正規雇用とで役割の違いがあるのはある程度は容認するが、まったく同じ仕事の部分は賃金などの処遇も同じにしないと不合理とみなします」というものです。ということは、職務内容、つまり仕事の中身をきちんとわけないといけないということになります。

 

今まで、なんとなくあいまいにしていた仕事の内容というのをまず分解して考えていかないといけないわけです。では、介護事業所で、デイサービスの場合を例にとって考えてみましょう。

デイサービスの業務の場合、このような業務が考えられます。

 

  1. 送迎
  2. 食事介助
  3. レクリエーション
  4. 身体介助などの利用者介助
  5. 事業所内の清掃
  6. 入浴介助
  7. 事務作業
  8. ケアマネージャーとのミーティング
  9. 家族との連絡、日程の調整
  10. パートなどの勤務時間の調整
  11. クレーム対応

 

他にもあると思いますが、思いつくものを書いていくとこうした業務が浮かびます。

この業務の洗い出しをまずしたうえで、どれが正規雇用の仕事でどれが非正規雇用の仕事かを考えていきます。

たとえば、非正規社員は①から⑥の業務を行うとします。一方で、正規雇用は②から⑨の業務を行うのを原則として、さらに、役職者は⑩と⑪の業務を行うとする、といった具合です。

加えて、入浴介助は負担が大きいことから入浴介助を行った場合には、正規・非正規に関わらず、手当を加算するとか、人事異動の可能性がある正規雇用には住宅手当を支給するとか、本来、正規雇用の役割でない送迎業務を正規雇用が行った場合には手当を支給するといったような形で、仕事の内容や、役割によって仕事に差を設けていくという形にしていくのが「同一労働同一賃金」の基本的な考え方です。

 

今回のハマキョウレックス事件の最高裁を受けて、経営者がやるべきことは、まず「同一労働同一賃金」の前提になる職務内容の洗い出しです。その上で、非正規雇用はどの業務をやり、正規雇用がやらないといけないのはどの業務かを明確にしていくこと、これが経営者がやるべきことなわけです。

 

ただ、今、実際に運用している賃金体系がこのように職務内容を考慮したものになっていない場合が問題です。職務内容にあわせて変えていく作業をしていかないといけません。

現行の制度を新しい制度に変えていく場合、ある労働者にとっては変更後の内容が不利益な変更になることを「不利益変更」といいます。原則として、この不利益変更には各労働者の同意が必要です。つまり、不利益変更のある従業員さんの同意が得られない場合、変更できないという問題があります。

 

これについては、また次回書いていこうと思います。



さて、今日は「ハマキョウレックス事件」とか「長澤運輸事件」とかと呼ばれる最高裁判決の話です。これは今年の6月1日に判決があったかなり最近の裁判例です。

特に介護事業所の経営者は関係するところの多い話だと思いますので、その概略だけでも知っておいた方がいい話でしょう。

この判決の話は、実は前からこのブログで是非ともご紹介したいと思っていた話です。少し長くなりますが、お付き合いください。

この判決は「労働契約法第20条」の話です。

なんだか難しそうだと思いましたか?簡単にいえば、非正規雇用と正規雇用というものに、適当に差をつけるようなことはしてはいけないという話です。

非正規雇用と正規雇用というのが混在するのが常態の介護事業所では、この話はぜひとも知っておいていただきたい話です。

今回と次回の二回に分けて、この「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決の話をしていこうと思います。

 

さて、まず「ハマキョウレックス事件」の「ハマキョウレックス」って、ご存知でしょうか?

ハマキョウレックスというのは物流を主な事業にしている上場企業です。

2018年3月決算では、連結ベースで売り上げが103,476百万円、経常利益で9,516百万円となっています。

物流の会社さんであること、そして全国規模で展開する比較的大きな会社であることはまず前提として押さえておきましょう。

 

その上で、このハマキョウレックス事件で今回の裁判で問題となった労働契約法第20条は次のように書かれています。

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

文章にするとわかりづらいかもしれません。

要するに、期間の定めがあるのとないのとで、給与や福利厚生などで不合理な差を付けてはいけないという話です。

では、ここでいう不合理な差というのは何なのでしょうか?

裁判で争われたものまさにその点です。

 

その前に、この話の大前提として、「業務の内容は責任の程度に差がない」ということがあります。正規雇用と非正規雇用とで、ほぼ同じ業務に従事していること。これが前提にあります。まずはこれを頭に置いておきましょう。

 

確かに、正規雇用の場合、転勤や出向する可能性はあります。全国にある支社に転勤する可能性があります。一方で、非正規の場合、原則、転勤はありません。また、責任ある地位に就くのも正社員です。非正規が責任のある地位に就くことはありません。その意味での差はあります。しかし、この会社の主な事業は物流です。物を運ぶ仕事です。物を運ぶという意味においては正規雇用と非正規雇用とで差は生じません。もちろん現場と事務方とでは差はあるでしょうが、基本的には「物を運ぶ仕事」において大きな差はないというのがあります。

そうした状況で、たとえば通勤手当を正規雇用には支給する一方で、非正規雇用には支給しないとしたらどうでしょうか?

確かに正規雇用と非正規雇用とでは責任の程度に違いがあるのは分かりますが、非正規雇用の人だって通勤します。それに対して、どこに住んでいようが通勤手当は支給しないというのは、「合理的」と言えるでしょうか?

また、たとえば、皆勤手当もそうです。休みなくきちんと出勤した場合に支給する手当で、まじめに働くことを奨励する手当です。これも正規雇用と非正規雇用とで支給するしないを分けるのは「合理的」と言えるでしょうか?

 

今回のハマキョウレックス事件の最高裁の判断は、こうした差は労働契約法第20条で言っている「期間の定めのあるなしで合理的とは言えない差を付けてはいけない」という部分に具体的に踏み込んだ判断をしています。

 

具体的には、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当といった項目について判断をしています

 

あまり詳しく書いていくと、法律上の難しい話になってしまうので、極力、理屈っぽい部分はこのブログでは書きません(そもそも我々実務家は、法律上どうという点ではなく、実務上、どう対応していくかが問題なので、その点に絞って書いていきます)

 

結論としては、上記の各手当のうち住宅手当は正規雇用と非正規雇用とで差を付けているのは不合理ではないとしました。ですが、残りの無事故手当、作業手当、休職手当、皆勤手当は、正規雇用と非正規雇用とで差を付けるのは合理的ではない、つまり、労働契約法第20条に違反するとしました

 

裁判で重要なのはその理由です。なぜそういう結論になったのかです。

そうした結論になったのは、手当の趣旨です。〇〇手当として支給している手当がどういう趣旨で支給されているのか。最高裁はそこに注目しました。

たとえば、無事故手当というのがありました。これは、優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得が大きな目的で支給されている手当です。

安全な輸送に正規雇用や非正規雇用は関係ないですよね?だから否定されたわけです。

 

また、作業手当というのも同じです。作業手当はこの会社では、特殊作業に対して支払われる手当としていました。しかし、実際には、正規雇用には一律に月額1万円が支給されており、実質的な意味合いがないことから、正規雇用と非正規雇用で差を付けてはいけない手当だと解釈されました。

 

給食手当は、従業員が休憩時間中に取る食事の補助として支給されているものということでしたが、これも非正規雇用であっても食事はとるので、否定されました。

 

皆勤手当や通勤手当も同様の趣旨です。

 

一方で、住宅手当は正規雇用と非正規雇用とで差があっていいとしたのはなぜでしょうか?

これは、正社員については配置転換で違う支社に行ってしまうことがあるから、としています。非正規雇用は基本的に転勤はありません。一方で、正社員は転勤があります。だから、住居の部分について手当に相違があってもそれは合理的な理由と言える、としています。

 

このように、この裁判例でわかるのは手当というのはどういう趣旨で支給されているのか、ということが大事だということです。

 

また、もう一つ、住宅手当や給食手当について、会社側は「住宅の費用の援助や福利厚生を手厚くすることは有能な人材確保に不可欠」という主張をしましたが、この主張は退けられています。

よく正規雇用との差を設けている理由に「有用な人材の確保」とか「正規雇用は長期雇用を前提にしている」とかいった理由を挙げることがあります。私も何度となく聞きます。しかし、これらの理由ではダメだといっているわけです。合理的な理由というのは、住宅手当のような差を設けているのに訳があるようなものです。そうでなく、設けている差はダメだといっています。

 

ハマキョウレックス事件の判決の要旨、おわかりいただけましたか?

 

また、たとえばこれらの項目について、もし無効とした場合、正規雇用と同じ手当の金額を支給しないといけないのか、という問題もありますが、難しくなりますのでちょっとその話は置いておきます。

 

では、この判決を受けて、会社側はどう対応していったらいいのかについて、次回は書いていこうと思います。



さて、今日の話は前回の続きです。

前回は、給与と外注とはどう違うのか?経営者側の視点、施術者側の視点、そして、それ以外に外注の場合にどんな問題があるのかについてお話していきました。今日は、「どういうケースが給与となり、どういうケースが外注となるのか」について、具体的に見ていきましょう。

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詳しくみていく前に、前回のブログに書きましたが、前提を整理しておきましょう。

「給与」=「雇用契約」=「労働をしたからお金を払う」

「外注」=「請負契約」=「仕事が完成したからお金を払う」

 

わかりやすく言えば、出勤後、大雪で治療院がお休みになった場合、「給与」の場合であれば、仕事をしていなくても出勤したこと自体を「労働」と判断して給与は出るが、「外注」であれば、仕事はやっていないので「仕事の完成」はしていないため、報酬はゼロになるということです。

 

さて、この基本的な理解を前提に考えていきましょう。

実は、この給与か、外注かというのは税務上も何度も問題になっており、裁判例がいくつかあります。それらを見ていくと、どう考えればいいのかがわかってきます。

 

たとえば、こんなケースです。

急病になって、自分でない代わりの職人を現場に派遣した大工さんのケースです。その場合であっても報酬は本人に支払われました。これは、結局、どういう形であれ、「仕事の完成」が目的だから代わりの人を寄越しても、報酬が支払われるということです。この場合には、「外注」とみなされる可能性が高いです。

 

また、こんなケースもあります。

現場監督から逐一、指示があり、指示に則って仕事をしているとか、仕事の時間が何時から何時と決まっているようなケースです。これは「仕事の完成」を目的としているというよりは、「労働」したからお金が支払われるという側面が強いです。この場合には、給与となる可能性が高いです。

 

また、本人はペンチ、ナイフ、ドライバー等を所持しておらず、もっぱら現場にある道具を使っているとか、通勤するための費用をもってもらうなどの場合など、これらは「給与」となる可能性が高いです。

 

実際に裁判になった例をいくつか、書きましたが、これらの特徴はどれか一つを見て「給与」か「外注」かを判断しているわけではないということです。いくつかの例をみて総合的に考えます。

 

さて、このブログでは、こうした「給与」か「外注」かの判断で、治療院の施術者の場合、どう判断するのかについて、書いていこうと思います。

これについては、施術者への支払いを「外注」として処理したことが実際に裁判となっている例があります。この判決の内容は以下のようなものです。

 

「営業時間、施術内容、施術料金、出退勤時間などの業務時間、服装、休憩及び業務上の心得等の業務規則が定められていて、それに従わないといけなかった」

「営業方針や業務規則に従わない場合には、経営者は一方的に契約を解除することができていた」

「施術者は、施術所内にある設備備品を使用し、業務に従事していた」

このようなことから「外注」ではなく、「給与」である。

 

要約すると上記のような内容です。

実務上は、上記のようにいくつかの要素をみて総合的に判断しているわけです

 

また、よくあるケースとして、「歩合給」だから「外注」だということを主張される場合があります。しかし、「歩合給」というのは単に給与の支払い方の形態の一つであって、それだけで「外注」と判断するわけではありません。

 

「外注」とするにはいくつかのポイントがあります。そのポイントを一つでも多くクリアしていくことが不可欠というわけです。

 

上記に挙げたもののほかに、「給与」か「外注」かを判断する要素として、たとえば、こんなことが挙げられます。

 

〇「時間」に対して報酬が支払われているのではなく、施術した仕事に対して報酬が支払われていること(日給や時給、諸手当といった項目での支払いではないこと)

〇通勤手当は本人が負担していること

〇必要な施術道具などは本人が持参してくること

〇何時から何時までいないといけない、という契約になっておらず、仕事が終わったら帰れるようになっていること

 

また、もし「給与」ではなく「外注」としたいのであれば、きちんと「業務請負契約書」も交わしたほうがいいでしょう。その契約書には上記のようななるべく多くの要素を折り込んでいくべきです。

 

意外と奥の深い、「給与」か「外注」かの問題。これを機に、ちょっと考え直してみてはいかがでしょうか?



治療院をみていると似たような相談事例がいくつかあります。その相談の多い項目の一つが、施術師(柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師)への支払いは給与なのか、外注なのか、という話です。実はこの問題は大変奥が深く、やり方によっては治療院の経営を大きく左右するような問題になるという実に厄介な問題です。

今日は、なぜ給与なのか、外注なのかが問題になるのか という点について、まずはお話していきましょう。

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多くの治療院では、施術師への支払いは、経営者側の意図としては、できるならば給与ではなく外注にしたいと思います。なぜなのでしょうか。

 

給与だと、源泉徴収が必要になります。加えて、雇用保険にも加入しないといけないでしょう。社会保険にも加入しないといけなくなる可能性があります。特に、会社形態(株式会社や合同会社など)でやっている治療院の場合、給与にしてしまうとこの社会保険に加入しなければならないのが負担なわけです。個人であっても、雇用保険や労災保険には加入しないといけないわけで、いずれにしても、給与にすると雇用保険や労災保険、社会保険といった公的保険の負担が増えることが大きな問題になるというわけです。

 

また、施術師側も外注にすれば、かかった経費を自分で計算して税額を少なくすることも可能になります。正確にいえば、給与の場合には「給与所得控除額」という給与がいくらあるといくら控除できるのかというのが決まっているものがあるわけですが、その「給与所得控除」の金額を超える実額経費があれば外注にした方が税額が少なくなります

また、外注にして自分で申告する場合に、青色申告を選択したとします。その青色申告で申告する場合の「青色申告決算書」に貸借対照表をつけて提出すると、65万円の控除が受けられます。貸借対照表のない「青色申告決算書」の場合、10万円の控除になります。一方で、給与の場合の「給与所得控除額」には最低額、65万円というのがあります。つまり、給与の場合の給与所得控除額の65万円と、青色申告の場合に貸借対照表をつけると65万円とあるわけで、最低控除の65万円は同じです。外注にした場合、事業所得になるので、これに加えて自分でかかった実額経費を計上できるので、施術師側にとっても税額が少なくなる可能性があるわけです。

また、施術師にとっても、社会保険に入らなくていいのであれば手元に残るお金が多くなることから、外注にしてもらったほうがいいということもあるかもしれません。

 

このように、経営者側にとっても、施術師側にとっても、税金や社会保険の問題から給与でなく外注にしたがるということです。

 

しかし、外注にした場合、法律上の問題や税務上の問題などの様々な問題があります。

 

これを考える前に、「給与」で処理するというのはどういうことなのでしょうか?

逆に、「外注」で処理するのはどういうことを意味するのでしょうか?

 

給与ということは法律的には「雇用契約」にあるということです

一方で、外注ということは法律的には「請負契約」にあるということです

 

民法では、「雇用契約」というのは「労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」となっています。

一方で、「請負契約」というのは「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」となっています。

 

つまり、単純にいえば、「雇用」というのは「労働をしたからお金を払う」のであり、「請負」というのは「仕事が完成したからお金を払う」という違いがあります。ポイントは、請負契約の場合の「仕事が完成した」ということです。

 

では、「雇用契約」にせず、「請負契約」にした場合、どのような問題が生じるのでしょうか。たとえば、労災事故が起こったとします。施術中に施術者が何らかの理由でけがをしたとしましょう。雇用契約であれば労災が適用されますが、請負契約の場合、仕事の完成に対して報酬が支払われる契約のため、事故の直接の責任について、経営者側は負いません。(間接的に責任はあるかもしれません)

また、たとえば、何らかの事故(大雪で患者さんが来なかったとか、施術者自身が風邪をひいて休んだとか)があっても、雇用契約であれば経営者がある程度の範囲で補償があるかもしれませんが、請負契約では補償はありません。

つまり、「仕事の完成」という部分以外は施術者自身が責任を負う形が「請負契約」なわけです

 

このように労災のことなどまで考えると、給与か外注かという問題は、単純に「損」「得」の話だけではないように思えます。

さて、次回は、給与か外注か、どこが分かれ目なのかについて考えていきましょう。