さて、今日は融資の話です。
実際に、私の顧問先であった話で、「社団法人で銀行からお金を借りようと思ったらできなかった」という話がありました。今日はこの話を参考に社団法人は銀行からお金を借りることができないという話をしていきます。
まず、一般社団法人とは営利を目的としない法人とされています。(社団法人と財団法人もありますが、どちらも非営利法人です。今日は主に社団法人について書いていきます)
「営利を目的としない」というと、お金を稼いではいけないと思われてしまいますが、ここで言っている「営利を目的としない」というのは株式会社などでいう利益の配当のことを言っています。株式会社や合同会社は利益が出たら、株主(出資者)に配当をすることができます。営利法人の大きな特徴です。社団法人はその配当ができないのです。それを「営利を目的としない」と言っているのです。ですから、社団法人であっても収益を上げて、収益が上がったらその分を従業員に給与として支払っても何ら問題はないとされています。
私の顧問先でも、介護事業所で社団法人になっているケースがあります。一般的には社団法人でも一般法人同様に、利益が出れば法人税も払います。その意味では何ら株式会社などの一般の営利法人とかわらないのです。
さて、この社団法人と株式会社などの営利法人の大きな違いとして「融資」があります。社団法人の場合、融資を受けづらいということがあります。法人設立の際にこれは知っておいていい話でしょう。
たとえば、銀行で初めて融資を受けようとする場合、営利法人だったら制度融資を勧められると思います。制度融資というのは銀行の融資で保証協会の融資のうち、市区町村や都道府県が保証する保証協会の融資のことを言います。銀行は制度融資は融資が通りやすいので、特に初めて融資をするような場合には、制度融資を勧めてくることが多いです。
この制度融資は、対象となるのが営利法人です。社団法人は非営利法人と区分されているため、原則的には、社団法人に制度融資は使えません。
また、制度融資に限らず、保証協会の融資自体が営利法人を対象としているため、難しいです。保証協会というのは、営利法人を支援して営利法人が収益を上げ、雇用をして地域の経済を活性化させることを支援するというのが基本的な立場なようで、非営利法人とは立ち位置が違うということのようです。
では、銀行の融資が全く受けられないかというと、あとは保証協会の融資ではなく、保証協会の保証を取らずに銀行が直接融資するプロパー融資があります。プロパー融資であれば可能性はゼロではないです。社団法人としての実績や土地や建物などの担保があるとかというのがあれば、社団法人でもプロパー融資は可能なようです。
しかし、実際には、社団法人がはじめて融資を受ける場合、銀行がいきなりプロパー融資をするというのは考えづらいです。
そこで、社団法人の融資として可能性が浮上するのが日本政策金融公庫による融資です。
日本政策金融公庫の場合、保証協会のように非営利法人が対象外ということはありません。NPO法人であっても、社団法人であっても、融資することが可能な事業であれば融資できます。したがって、社団法人で融資を受ける場合、まずは日本政策金融公庫での融資を検討することになります。
あとは、どうやって融資を受けるかです。
社団法人が日本政策金融公庫で融資を受ける場合、重要なのが事業計画書です。
社団法人なのに融資が必要な理由です。何に使って、どう収益に反映させていくのか。一般の営利法人以上に事業計画が非常に重要になってきます。
そもそもですが、社団法人というのは数名の社員がお金を出し合って、地域のためといった非営利の目的が事業の目的としてあるはずです。(建前かもしれませんが・・・)お金を出し合った範囲で事業を始めて、そのお金を出し合った以外に融資が必要というのは何か理由があるはずです。営利法人のような運転資金ということで借りたいのであれば、営利法人でやるべきです。その方が融資も受けやすいからです。また、法人税の計算の仕方も営利法人と社団法人では何も変わりません。税務上のメリットも通常の社団法人なら特段あるわけではありません。(財団法人なら法人税がかからない等の税務上のめりっともあります)それでも、社団法人にして融資を受ける必要があるというのは、何らかの事業目的があるからのはずです。営利法人以上に明確な目的があるはずです。それを事業計画に落とし込んでいけば自ずと事業計画書になるはずです。
社団法人が日本政策金融公庫で融資を受ける場合、事業計画書をきちんと作成するのがまずは重要なことだということはよく理解しておいた方がいいでしょう。
また、銀行の融資もまったく受けられないわけではありません。制度融資などの信用保証協会の融資は難しいですが、プロパー融資であれば融資を受けられる可能性はあります。プロパー融資が受けられるか、相談くらいはしてもいいと思います。
ちなみにですが、社団法人だとたとえば「小規模事業者持続化補助金」が受けられないといったような論点もあります。融資以外にも社団法人には意外とできないことがあるということです。
いずれにしても、社団法人で融資を受ける場合は、日本政策金融公庫に相談してみること、そして、事業計画書をきちんと作成すること、この点は押さえておきましょう。