手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

Category Archives: 銀行融資


今日はいわゆる「公庫の融資」の話です。

日本政策金融公庫(②)1

日本政策金融公庫は100%政府が出資している特殊な法人です。株式会社ですが、実質的には国の運営する金融機関です。

店舗数は日本全国に152店舗(平成29年9月現在)あり、貸出額は18兆3,397億円に上ります。貸出額だけ見れば、都市銀行のりそな銀行と三菱UFJ信託銀行の中間くらいに位置します。

中小企業への貸し出しがメインの金融機関で平均の貸出額は約700万円ということです。最も多い貸出額は300万円~500万円だと推測されます。

普通の銀行は、預金の預け入れをしてもらった資金を貸し出しに回すことで成り立っています。ですが、この「公庫」は銀行ではありませんから、預金を預け入れてもらうという機能はありません。

また、「保証」の機能もこの公庫自身で行います。民間の金融機関ですと、この「保証」の部分は担保を取ったり、保証協会での借り入れにして保証協会にしてもらったりするわけですが、そういった「保証」の機能は公庫自身で行います。

つまり、このような関係になります。

 

預金 貸出 保証
民間金融機関 ×
日本政策金融公庫 ×

 

保証協会の機能もあるけど、預金の預け入れ機能はない。そう考えると、民間の金融機関とはちょっと違う特殊な立ち位置にある金融機関だとお分かりいただけると思います。

 

さて、この公庫の融資ですが、まずはその特徴を知ることがまずは大事です。

 

公庫の融資と言えば、「創業融資」が特徴的です。

これは、政府が100%出資していることから由来しているものだと言えます。

国としても新しく事業を興すことを支援したいというメッセージでもあります。民間金融機関より、創業融資は積極的と言えます。

ただ、公庫の「創業融資」には決定的な特徴があります。その特徴を知っておくことが公庫の「創業融資」を成功させるコツだと言えます。

 

まず、公庫の「創業融資」は「ある決まったカタ」にはまっていることが非常に重要です。その「カタ」というのは、次のようなものです。

・経験を積んで来た業種での開業であること。

・開業までの準備期間にある程度の自己資金を用意していること。

・事業計画がきちんと立ててあり、資金使途が明確であること。

 

3つ目の要件はある意味、公庫の創業融資に限らず、どの融資でもいえることです。

 

特に、開業時の場合、定量評価(決算書など過去のデータによる評価)が当然、ありませんから、これからの部分の未来の評価となってきます。経営者の人柄や事業の将来性など目に見えない部分を評価しないと資金の貸し出しは出来ません。公庫の融資が「創業融資」で多いのは、政府系の金融機関であることから、民間の金融機関ではしづらいこうした「未来の評価」を積極的に融資の評価に入れる役割が期待されているためということもあるのではないかと思います。「定量評価」だけでした融資の評価がされなければ、いつまでだっても新しい事業をやる人が出てきませんからね。

公庫では、この「未来の評価」を一定の「カタ」に落とし込めて、その「カタ」にはまっていれば融資を受けつけるというスタンスを取っています。

 

たとえば、飲食店に10年勤務して、そのノウハウを活かしてお店を開くというようなケースです。この場合、かかる資金のうち、およそ3分の1程度を自己資金で用意しておくことができれば、融資を受ける際には有利に働きます。

 

さて、「公庫の融資」と言えば、まずは「創業融資」であることはいいと思います。

問題はここから先です。どういう特徴があって、どういうときに公庫の融資を考えるべきかということです。

 

公庫の特徴としては、今の話と多少矛盾する部分があります。それは、決算書などの定量評価が重視される傾向があること。それから、借り入れ実績があり、きちんと期日に返済していればそれも重視される傾向があるということです。

 

創業融資に積極的な「公庫の融資」ですが、実は過去の履歴が重要視されます。

最初は200万とか300万とかの融資であってもきちんと返済して決算書上も悪くなければ、次の融資では500万借りることも可能になります。それもきちんと返済していれば1000万借りることも可能ではなくなります。つまり、実際の公庫の融資は「過去の実績」という「定量評価」が重視され、その積み重ねがあって評価される形になっているのです。

 

一方で、「創業融資」は過去の評価である「定量評価」のない融資ですから、「定性評価」に重きを置かざるを得ません。「定量評価」を重視する公庫であっても「定性評価」を重視した融資をせざるを得ない、むしろ積極的に「定量評価」を重視した融資をしないといけないわけです。

 

そこで、公庫の融資は特徴的な考え方が融資に採用されます。つまり、「定性評価」といっても、目に見えるもの、創業融資の場合には、「過去の経験」だったり、「自己資金をいくら用意しているのか」だったり、といったことが融資の評価には非常に重要な要素になるわけです。

もし「過去の経験」や「自己資金」に問題があるのであれば、「保証人」を立てることも考える必要があります。

 

公庫の融資は、実務上は「名に見えない評価」、たとえば「将来性」とか、「事業の可能性」とか、は評価としては弱く、「過去の実績」「今までの経験」「自己資金」「担保」といった目に見える部分が重視されるということは知っておいていいでしょう。

 

こういうことは、顧問税理士がいても教えてくれないものです。それは、知らないからです。(税理士は銀行融資に対しては通常は門外漢です)

できれば、融資にも強い税理士を味方につけることが融資を成功に導くカギになるということも知っておいていいでしょうね。



さて、今日は銀行の話です。

そもそもどの銀行で口座を開き、どの銀行で借入をしたらいいのか、経営者の皆さんはどうやって決めているのでしょうか?

統計を取っているわけではないですが、「なんとなく」とか「大きな銀行だから」とか「近くにある銀行だったから」とか・・・

銀行選びも「経営戦略」だとしたら、どの銀行をメイン銀行にするのかというのは、経営を左右する重要な要素です。

kyoto_lb_01

では、どういう基準でメイン銀行を決めたらいいのでしょうか?

決める際の基準はまずは自社がどのくらいの年商規模があるかによります。

一般的に銀行の規模は次のような感じで考えていいと思います。

信用組合<信用金庫<地方銀行・第二地銀<都市銀行

 

「〇〇信用組合」というのは一般的にはかなり小規模の銀行です。信用金庫になると地域でそれなりの取引規模のある銀行という感じです。地方銀行は信用金庫よりもさらにエリアが少し大きいイメージです。都市銀行は全国規模になる感じです。

 

年商でいうと、

信用組合・・・年商数百万円~年商数千万円

信用金庫・・・年商数千万円~年商1億円程度

地方銀行・・・年商数千万円~年商10億円程度

都市銀行・・・年商10億円超

 

こんなイメージでいいと思います。

 

これは、各銀行が出している預金量と貸出額の数字を見ればイメージできます。

信用組合は、預金量や貸出額が1000億円以下の規模です。信用金庫になると1000億円くらいから1兆円くらいの規模になります。地方銀行になるとこれが1兆円を超える規模になります。都市銀行になるとこれが数十兆円規模になります。例外はありますが、だいたいこんな感じです。

 

具体的に数字を追ってみてみましょう。地方銀行の上位5位までは次のような感じです。

単位:億円

銀行名 横浜 千葉 福岡 静岡 常陽
預金額 122,284 100,733 84,244 87,151 77,287
貸出額 97,240 84,611 72,452 73,931 56,564
預貸率 79.5% 84.0% 86.0% 84.8% 73.2%
店舗数 209 188 170 205 179

 

この表で「預貸率」というのがあります。これは、銀行に預け入れしてもらっている預金額に対していくら貸し出しているかという率です。これについては、あとで改めて説明します。

金額が大きいのでピンと来ないかもしれませんが、地方銀行の上位5社までは、都市銀行に迫るくらいの大きな規模と言えます。

 

次に、信用金庫の上位5社です。

単位:億円

銀行名 京都

中央

城南 岡崎 埼玉懸 多摩
預金額 42,306 35,787 26,116 24,750 26,442
貸出額 22,342 21,479 14,791 13,930 10,134
預貸率 52.8% 60.0% 56.6% 56.3% 38.3%
店舗数 128 85 96 96 78

 

いずれも1兆円を超える規模です。結構大きいですね。ですが、地方銀行ほどではないことがわかります。

 

ちなみに、信用組合についても上位5社を調べてみました。

単位:億円

銀行名 近畿

産業

茨城県 長野県 大阪

協栄

大東京
預金額 13,338 11,371 9,194 5,728 5,652
貸出額 8,105 4,944 2,777 3,397 3,058
預貸率 60.8% 43.5% 30.2% 59.3% 54.1%
店舗数 33 84 51 13 45

 

 

信用組合は近畿産業信組のような大きな信用組合だと信用金庫並みの規模になります。また、京都中央信金のような大きな信用金庫だと地方銀行並みです。横浜銀行は地方銀行というより、都市銀行に近い大きな規模の地方銀行です。しかし、これらは例外で、ほとんどが信組だと、信用金庫の半分以下の規模で、信用金庫は地方銀行の半分以下の規模と言えます。

 

こうした銀行の規模感というのは「どの銀行に口座を開くか」「どの銀行で借りるか」を決める際の重要な要素です。年商が1000万円程度かそれ以下の事業だったら都市銀行や地方銀行では、ちょっと大きい銀行になってしまいます。信用組合や信用金庫で検討すべきです。

逆に、年商が10億円近くある会社であれば、信用組合や信用金庫ではちょっと小さすぎます。地方銀行や都市銀行で検討すべきです。

 

また、預貸率(預かっているお金をどれくらい貸し出しているか)というのも重要な要素です預貸率が高いほど、銀行の本業である「お金を貸す」ことに熱心であることを示しています。つまり、お金を貸すことに積極的であるということです。一つの判断基準として、預貸率の平均値は約50です。もちろん、預貸率はいろいろな要素が影響しているわけですが、預貸率をメルクマーク(指標)の一つと捉えてみるのもいいと思います。

 

ちなみに、私の事務所のある東京の府中やその周辺の金融機関をいくつか調べてみました。多摩信用金庫と大東京信用組合は上記に挙がっていますので、それ以外の金融機関について、下記に挙げておきます。

単位:億円

銀行名 西武

信用

八千代 東日本 昭和

信用

預金額 17,490 21,227 18,501 4,057
貸出額 14,470 14,660 15,559 1,800
預貸率 82.7% 69.1% 84.1% 44.4%
店舗数 73 84 80 19

 

西武信用金庫や東日本銀行の預貸率の高さが目立ちますね。

年商が1000万円未満であれば、昭和信用でもいいかもしれませんが、やや預貸率が低めなのが気になります。

 

これらの上記に上げたような数字は、ネットで調べればすぐにわかるものばかりです。こうした数字を把握したうえで、自社のメイン行を決めてみてはいかがかと思います。

銀行は経営を左右する重要なパートナーです。今取引のある銀行についても、この際、検討してみてはいかがでしょうか?

※ 上記の数字はなるべく最新の数字を調べてお示ししましたが、時点が必ずしも一致していませんので、その点、ご留意ください。



ある経理専門誌に書いてあった税理士の記事について、今日書いていこうと思います。銀行借入金についての見解を述べたものです。

要約すると、このような内容です。

「借入金の適正度の目安を表す数値が『借入金月商倍率』です、目安として借入金の月商倍率が6か月を超えると、倒産の危険水域に入っていると判断してもよいでしょう。平均的な売上高の経常利益率の会社でも月商の6か月以上の借入金があると、支払利息で経常利益が吹き飛んでしまうことになるからです。」

yjimage-3

 

こうした記事をお読みになると、書いているのは税理士ですし、皆さん、信用しますよね?

私はこの記事を読んで、即座に「はあ?何を言っているの、この人!何もわかっていないんだな。」と思いました。

 

この記事に見られるような考え方の会計の専門家である税理士や公認会計士は多いことと思います。しかし、月商の6か月の借入金が倒産の危険水域というのは、はっきり言って、的を得ていないどころか、私に言わせれば、この記事は嘘を書いているといってもいい話だと思います。

 

具体例で考えればわかりやすいでしょう。

 

たとえば、月商が300万円の会社があったとします。月商300万円ですから、年商3600万円です。中小企業だったら、これくらいの会社は普通にありますよね。

 

この月商300万円の会社が月商6か月分の借入金があったとします。そうすると、1800万円ですね。わかりやすく、2000万円の借入金があったとします。

そうすると、利率は現状の市場金利からすると1%~2%というところでしょうから、仮に利率が2%だったとします。そうすると、年間の支払利息は約40万円くらいの話です。年間40万円の利息で、この税理士が言うように「支払利息で経常利益が吹き飛んでしまう」とか「倒産の危険水域」なんて話はあり得るのでしょうか?

 

「借入金は利息の返済だけではなく、元本の返済もある。利息だけでなく元本の返済も返せなくなるから倒産に至る」と反論するかもしれません。

しかし、借り入れが2000万円だとして、標準的な5年返済の長期借入金だったとすると、年間の元本返済額は約400万円です。月にすれば30万円ちょっとです、利息もあわせても返済額は35万円くらいといったところです。

月商300万の会社だったら、月の売上の1割程度が借入金の返済ということになります。借入金を返済した残りの9割のお金で経営していくわけです。十分、やっていけるはずです。加えて、返済に係るお金が毎月これくらいなのであれば、十分に利益も出せますよね。果たしてこれで倒産すると言える状況なのでしょうか?

 

借入金は、業績が悪くなった時のために備えて、業績が回復するまでの間の時間を買っているんだ」と言った社長さんがいらっしゃいました。毎年、利益を出し続けている中小企業の社長さんのお言葉です。これは大変、的を得ていてわかりやすい表現だと思います。

倒産する会社というのは、決して「借入金の多い会社」ではありません。「現預金のない会社」が倒産するのです。現預金があるうちは倒産しません。至極、当たり前の話ですが、経営としていくと中小企業の社長さんはここがわからなくなるようです。そして、税理士や会計士と言った専門家ですら、この辺の話がわかっていないのです。

「借金は怖い」と思い、「なるべく借入をしないで経営する」方向に行ってしまうのです。倒産するのは、「現預金がなくなくなってきて」その後、「銀行からも融資を受けられなくなった」場合です。この辺の話は以前の私のブログを読んでみてください。↴

借入金なしの経営は危険!手元資金に不安がなくても借入しよう!

 

一般的に、税理士や会計士は借入金に対して大きな「誤解」がある人が多いです。借入金に対して最初からマイナスイメージがあるために、「月商の6か月が倒産ライン」という全くナンセンスな話を何万分も発行しているような雑誌に書いてしまうのです。そのために、こうした情報が独り歩きして、「借入金が多いことは会社経営にはよくない」という「神話」がまかり通ってしまうのです。

 

現に、月商の6か月以上の借入金があっても、倒産どころか順調に業績を伸ばしている中小企業はたくさんあります。月商の6か月どころか、年商に近い借入金の会社が私の顧問先にもあります。では、そういう会社は倒産危機かと言えば、全く違います。むしろ、業績を伸ばしているため銀行はさらに追加融資を申し込みに来ているくらいです。倒産しそうな会社に銀行が貸したいと思うでしょうか?

 

「倒産の危険水域」ということで言えば、借入金の残高ではなく、手元の現預金が月の販売管理費以上あるかどうかは重要なポイントだと思っています。理想的には、1か月に必要な資金(販売管理費の1か月の金額)の3か月から6か月分手元に現金として思って経営する必要があると私はよく話をします。逆に、販売管理費の1か月分も現預金に残高として残っていない会社であれば、借入金が全くない会社であっても「いつ倒産してもおかしくない会社」であると言わざるを得ないでしょう。

 

たとえば、震災などの災害や何らかの原因で休業せざるを得なくなった時などを想定してみればわかります。手元の現預金が3か月以上あれば、仮にしばらく収入が入ってこない状況になっても3か月は会社は持ちこたえることができるわけです。もし緊急事態なのであればその3か月のうちに、何らかの次の手を打てますよね。その意味で、先ほどの中小企業の社長さんの話ではないですが、「借金をしてそのお金で時間を買っている」ともいえるわけです。

 

また、借入金をして経営をすることは、必要な時に必要な資金を引き出せるという意味で、リスクテイクにも役立ちます。多くの人は経営状況が悪くなってから銀行借入を考えます。しかし、経営状況が悪くなってから借りたのでは、審査が厳しくなり、不利な条件になってしまいます。経営状況がいい時こそ借りる。これは企業経営の鉄則です。

その結果、借り入れが増えても、現預金が増えるのであればまったく問題ないわけです。

加えて、借入して返済することで、「信用」という利息をもらえます。銀行審査で何が一番有利になるかと言えば、約定通りに返済してきたという履歴です。この返済履歴が1年よりも2年、2年よりも5年、5年よりも10年あった方が、より信用度が高くなります。「借りたものはきちんと期日に返す」この当たり前のことができると、銀行の信用度は上がります。銀行の信用度が上がれば上がるほど、必要な時に必要な資金をより迅速に用立てすることができる可能性が高くなります。

 

件の税理士などはおそらく銀行借入のない無借金経営が一番いい経営だと思っているのではないかと思います。とんでもない話です。無借金経営ほど企業経営にリスクのあるものはありません。銀行借入がないということは銀行との取引がないということです。その状況では、いざという時に銀行に相談に行っても、融資が下りるまでにまずは時間がかかります。しかも、借入がないということは、銀行に「どんな会社か」を判断する要素が少ないため、審査も厳しくなりがちです。

 

ということで、皆さんに知っておいていただきたいのは、まずは「借入金の残高よりも現預金の残高の方が重要」ということと、「税理士や会計士と言っても、銀行融資のことをよく理解していない人が多い」ということです。

一人でも多くの経営者がこの事実に気付いてほしいと心から願います。



3月決算法人(5月申告)の対応に追われ、ブログの更新ができませんでした。

ようやく、月末の最終日に落ち着いたところです。

さて、今日は私が銀行との関係について顧問先によくする話です。3月決算法人の私の顧問先の会社さんにもこの話をずいぶんとしました。

決算が出て税理士から申告書が送られてきたらみなさんはどうされますか?送られてきた決算書はそのまま棚に入れてしまって終わりでしょうか?それとも、じっくりといろいろとみてみるでしょうか?

imasia_6014568_M

 

もちろん、自社の経営状況の確認のため、送られてきた決算書を隅々までよく確認するのも大事でしょう。というよりかは、そういう経営者は経営者として大変立派です。

たいていの会社はなにかしら銀行融資があるはずです。(全くないという会社さんは逆に潜在的にリスクを抱えているとも言えます。この辺の話は私の以前のブログ [https://vanguardwan.com/blog/%e5%80%9f%e5%85%a5%e9%87%91%e3%81%aa%e3%81%97%e3%81%ae%e7%b5%8c%e5%96%b6%e3%81%af%e5%8d%b1%e9%99%ba%ef%bc%81%e6%89%8b%e5%85%83%e8%b3%87%e9%87%91%e3%81%ab%e4%b8%8d%e5%ae%89%e3%81%8c%e3%81%aa%e3%81%8f ]をご参照ください)

私は顧問先に「取引のある銀行に決算書のコピーを言われなくても出してくださいね」と一言添えています。私が忘れていなければ、お伝えしていることです。

 

この「銀行に言われなくても」という点が大事です。

銀行というのは経営者の皆さんはどう考えていらっしゃるか、様々でしょうが、私は「最も大事な取引先の一つ」と定義しています。

もちろん、直接的なお客様(治療院であれば「患者さん」介護施設であれば「利用者さん」)は大事です。目の前の「お客様」ですよね。

ですが、銀行というのはそれと同じくらい大事な「お客様」です。

その銀行の視点に立って考えればなぜ「言われなくても決算書を出すこと」が大事なのかがわかります。

 

銀行はお金を貸した後、何に一番関心があると思いますか?

「また融資できないかな?」

それもあるでしょうね。

ですが、銀行的には「貸したお金がきちんと返ってくるのか」これが貸した後の一番の関心事です。 「保全」なんて言ったりします。もっとわかりやすく言えば、「貸した金はちゃんと返してくれるんでしょうね」という話です。ご自身が誰かにお金を貸したことを考えれば容易にそれがわかるはずです。

 

銀行が「貸した金は返ってくるのか」のチェックをするのに一番役に立つのは「決算書」です。 「決算書」というのは経営状況のだいたいが把握できる書類です。なかには粉飾決算していて決算書の数字よりも実態の経営状態が悪い会社もあります。しかし、そういったものも実は決算書をわかっている人がみればわかります。見る人が見ればわかる。これが決算書です。だいたい、経営状態の8割が決算書で分かると言っても過言ではないでしょう。

ちなみに、ここでいう「決算書」というのは「貸借対照表」や「損益計算書」の決算書だけではなく、法人税の申告書一式を指します。つまり、「法人税別表」だったり「勘定科目内訳書」だったり、そういったものも含めて「決算書」といいます。銀行から「決算書を出してください」と言われたら、要するに「税務署に提出した申告書一式」と思っていただればいいと思います。たまに「銀行から決算書がほしいと言われた」と言って、「貸借対照表」や「損益計算書」だけを提出する経営者がいらっしゃいますが、銀行が「決算書」と言ったらそれ以外の法人税申告書の別表や勘定科目内訳書を含めた申告書一式ですのでご注意を。

 

さて、本題です。銀行から言われなくてもなぜこの決算書を出したほうがいいのかという話です。ここまで読み進めた方はお分かりかと思いますが、要するに「信頼関係」の問題です。お金を貸した後、銀行が一番気になるのは「貸したお金は回収できるのか」です。それを確認するには「決算書」が一番です。要は、「うちの会社は大丈夫。ちゃんと借りたものは返します。決算書を見ればわかりますよね」というアピールでもあります。

じゃあ、決算の内容が悪ければ見せないほうがいいとも思うかもしれません。

これはむしろ逆です。悪いのであれば、それを早めに見せたほうがいいです。その上で、「昨年は×××円の赤字決算でしたが、来期(進行年度)は××という新規事業も立ち上げて挽回します」とか説明を加えます。それだけでいいのです。

逆に、赤字決算だった時に決算書をなるべく見せまいとして銀行に言われるまで決算書を開示しなかったらどうでしょうか。仮に上記のような説明を聞いても言い訳のように聞こえないでしょうか?

経営をしていたらいい年もあれば悪い年もあります。毎年、黒字決算なんて言うのはなかなか難しいです。(無理とは言いませんが、難しい話ですよね)問題は、悪い時に悪い情報を隠す方が銀行はあまりいい印象を持たないということです。 

また、銀行に言われなくても決算書を出す会社は信頼度が高くなることは間違いないです。それが融資の審査にいい影響はあっても悪い影響があるはずはありません。銀行は大事な「取引先」だからこそ銀行の一番欲している資料を先に出すのは「いい信頼関係」を構築する上でも当然だと思います。

 

ついでにもう一つ付け加えますと、毎月でないにしても例えば、決算から半年たった時点(決算までの中間の時)に試算表(半年の途中経過の「貸借対照表」と「損益計算書」)も出せたら出したほうがいいと思います。決算までの途中の状況を報告をすることはより信頼関係を構築するのにはプラスに働くはずです。なにか銀行に支払いに来たついでといって試算表を渡せばいい話です。税理士が関与していれば(1年に1回の関与でなければ)試算表は定期的に出してくれるはずです。それを渡せばいいだけの話です。そんなに難しいことではないはずです。

 

銀行は会社経営を円滑に進めるために必要不可欠な存在です。銀行という「取引先」とううまくやっていくのは「コツ」などというものはなく、一にも二にもそうしたちょっとしたことをやってこつこつ積み重ねていく「信頼関係」だということを経営者の方には是非、肝に銘じていただきたいと思うところです。



経営者からいただく銀行融資の質問で多いことの一つにこういった質問があります。

銀行からの借入金というのはどのくらいが適正なのか」というような質問です。

yjimage

 

銀行は決算書や試算表などの財務データをもとにその会社の財務状況をコンピュータ解析しています。「一次審査」のようなものでしょうか?それに、経営者から聞いた事業見込みや担当の銀行員の独自の考えなどを加味してその会社を「診断」します。

借入金などの数字が適正かどうか(借りすぎていないか)は、一般的にこの「一時審査」とも言うべきコンピュータ解析の段階でチェックされる項目です。

 

一般的に、「借りすぎていないか」というのはどういう基準で判断されているのでしょうか。

 

一般論としてですが、月の平均売上高の4ヶ月前後というのが借入金の多いか少ないかのポイントとなっているようです。

1か月の売上高の4ヶ月分より少なければ、対売上比で借入金が少ないと判断されます。4か月以上8か月未満程度だとやや多いと判断され、年商の3分の2以上だとかなり多いという感じです。この範囲になると新規融資には慎重になる感じです。

また、経常利益で借入金を返済するわけですから、経常利益で借入金の年間返済額をまかなえているかもポイントになるでしょう。決算書のうち、減価償却費は現金支出のない経費ですから、「経常利益+減価償却費」が借入金の年間返済額未満かどうかも「一時審査」のチェックポイントです。借入金が膨らんでいて年間返済額が「経常利益+減価償却費」を上回っていると、これも新規融資が受けづらいと判断されるかもしれません。

 

また、たとえば、「リース債務」など、「借入金」に近い性質のものがあればこれも借入金と考えてコンピュータ審査は行われます。リースがあればそれも借入とみなして、「月商の何か月分か」あるいは、「経常利益+減価償却費」の金額の範囲に「借入金の返済+リースの返済額」が収まっているかもチェックしてみるといいでしょう。

 

ただ、いずれにしても上記はいわゆる「一時審査」であるコンピュータ審査の段階の話です。事業の可能性だったり、事業の継続性だったり、そういう数字には表れない部分は人間が判断します。つまり銀行員自身が評価します。銀行融資というのは、「一時審査」にそれらを加味して総合的に判断されるわけです。ですから、「一時審査」の判断要素である「月商に対しての借入金」というのはあくまでも目安であると理解しておいた方がいいでしょう。

 

もう一つ。あまり「借りすぎではないか」ということを過剰に意識しないほうがいいということもあります。「借入金の金額が多くなってきたから今回は借りないで自分の預金から資金繰りに回そう」と考える経営者も多いです。以前にもこのブログで触れましたが、経営者の個人の資金を出す前に銀行融資を優先すべきです。上記の「月の売上の約4ヶ月分」というのは一般的な目安にすぎず、それよりも目の前の資金繰りが回るのかどうなのかがまずは重要なのです。「月商の4ヶ月分」と言ってしまうと、それが独り歩きしてしまうのですが、これは単なる目安です。ケースバイケースであることは理解しておく必要があります。

 

また、銀行が貸すと言っているのに借りるのに必要以上に慎重になる経営者がいます。それらの多くは誤解があると思われるものです。そもそも銀行というのは融資になる慎重な部分があります。もし回収できなかったとしたら、利息であげる収益の何倍もの損失を出してしまうこともあるわけですから当然です。

銀行員には「融資畑」と「営業畑」の2種類がいます。「営業畑」の銀行員は、貸し出すことに意味を見出すので、貸すことを前提に物事を考えます。一方で、「融資畑」で長年審査を担当してきた銀行員は融資の審査が辛くなりがちです。返せなくなることを考えて融資をするからです。

その「融資畑」の審査も無事に通過していて、晴れて銀行がお金を貸すと言っているのに過剰に「借りすぎではないか」と反応してしまうのも変な話です。きちんと銀行の審査を通っているのであれば、それは返すだけの根拠があるから銀行も貸しているわけです。堂々と借りて問題ないわけです。

借りられるときに借りられるだけ借りておく」これは対銀行対策の鉄則です。一般的な言い回し(たとえば、月商の4ヶ月分というようなこと)はわかりやすいですから、私も使うわけですが、あまりそれにこだわらなくていいと思います。

 

いずれにしても、銀行融資に対しての一般的な考え方を知っておくのはいいことです。

その意味で、適正な借入金というのを一般論として知っておくことは有意義だと思います。



さて、今日も銀行融資の話です。

以前に顧問先からこんな相談がありました。

「少し資金ができたし、借入金の残高が少なくなってきたので、A銀行の融資を繰り上げ返済しようと思うんです。返済してしまっていいと思いますか?」

さて、このご相談に皆さんだったらどのように回答されるでしょうか?

yjimage

 

その前に、「借金=マイナスの資産」だから借入金が少なければ少ないほどいい経営をしているという考え方は、誤解があるというのはこのブログでは何度も書いてきたことです。それよりも大事なのは、現預金をなるべく多く持つということです。「借金をしたくないから個人の預金を資金繰りに回す」というのは本末転倒です。

 

この基本的な考え方を元に、繰り上げ返済について考えてみましょう。

 

まず、繰り上げ返済というのは銀行はどうとらえるのか?

銀行は銀行にとっての商品である「お金」という商品を貸し出して、利息をもらって収益を上げる商売です。その貸し出しているお金を期日前に返されてしまうというのは、銀行にとってはあてにしていた金利がもらえなくなります。しかも、期日前に返済されてしまうというのは予期していないことです。営業するなりして、期日前に返された分は他に貸し出さないといけません。経費を使って営業活動して新たな貸出先を探さないといけません。つまり、銀行にとって繰り上げ返済されるというのは、少なからず負担になるわけです。

 

では、経営者側から見た場合、繰り上げ返済はどういう効果があるのか、考えてみましょう。繰り上げ返済されれば基本的には銀行は「なんで早く返すんですか?」とは言いません。何も言わずにそのまま受け付けます。返すと言っているものを返さないでくれとは言えないわけです。それはそうなのですが、繰り上げ返済して借入金がゼロになってしまうと、経営者側からすると、その銀行との関係が切れてしまうということを意味します。一般的に、繰り上げ返済するよりも新たに借入する方がエネルギーがいります。つまり、もうその銀行と付き合わないのであれば繰り上げ返済してもいいでしょうが、何かあったら(資金繰りで困ることが起こったら)また借りようと思っているのであれば、基本的には繰り上げ返済はしないほうが無難です。

また、そもそもなのですが、なぜ繰り上げ返済しようとするのでしょうか?

「早く返してしまいたい」ということでしょうか?あるいは、利息はもったいないということでしょうか?

経営というのはいい時はいいですが、悪くなると短期間に資金繰りが悪くなってしまうことはよくあることです。それでも繰り上げ返済したいのであれば、最悪の事態を想定しても問題ない範囲で、全部ではなく借入金の一部を繰り上げ返済するくらいでいいのではないかと思います。

 

また、たとえば「日本政策金融公庫で融資を受けられたので、銀行の借入金を返済してしまおうと思う」というような話もよくあります。

これも慎重にやる必要があります。ケースバイケースですので、公庫で受けた融資で民間の金融機関の融資を一括返済するのがいい場合もあるかもしれませんが、その場合であっても、「公庫で融資を受けられたからそのお金で一括返済する」などということを銀行に言ってしまうようなことはやめたほうがいいです。こんなことを言ってしまっては銀行側の心証はかなり悪くなります。先ほども書きましたが、銀行にとって繰り上げ返済されるのは、収益が減ることを意味します。決してうれしいことではありません。それを「他で借りたからそのお金で返す」などという話を正直にしてしまっては、今後、その銀行との付き合いがやりにくくなります。返すにしても「資金が潤沢になってきたので繰り上げ返済しようと考えています」などと言ったほうがいいでしょう。

 

ということで、まとめますと、繰り上げ返済は基本的にはやめておいた方がいいです。ですが、どうしても繰り上げ返済したいのであれば、全部ではなく一部にしたほうがいいです。さらに、全部を繰り上げ返済するのであれば、「資金があるので返済したい」などと言っておく といったところです。

 

銀行は企業経営にとっては要になる重要な部分です。その意味でも、銀行がどう考えているかを知ることは大変重要です。しかし、銀行の話というのは誰も教えてくれません。このブログでは何度も説明していますが、税理士が関与していても税理士も融資に関しては素人同然の人も多いため、結局、どうするのが一番いいのかわからずにいるという経営者が多いように思います。

次回も引き続き融資の話をしたいと思います。



さて、前回の続きです。

前回は「定期預金」の話をしました。今回は「定期積金」について考えてみましょう。

yjimage5648Z8LA

定期預金と並んで定期積金も銀行から要求されることが多いものです。

まず、定期積金というのはどういう商品かの確認です。

定期預金と定期積金とは似て非なるものです。

定期預金は位置づけとしては、「預金」です。つまり、銀行的には普通預金や当座預金と同じような扱いで、預金の一つとして「定期預金」があるわけです。では、定期積金」はというと、これは「金融商品」に近いものです。感覚的には、個人年金保険とかに近いです。定期積金というのは毎月、一定額が口座から「定期積金」という口座に振替えられます。毎月一定額が振り替えられることから、ある一定金額を貯めたいというような場合には適した商品です。ただ、たまったお金の意味としては「定期預金」と同じです。ある一定額の拘束されているお金があるという意味では同じだからです。

 

さて、銀行から「定期積金をやってもらえませんか」と言われた場合、どう考えればいいのかというのが今回の論点です。

 

銀行としては前回の定期預金と同じで意味としては二つ考えられます。つまり、

1.借入金の保全を図ろうとしている

2.実効金利を上げることを考えている

ということです。ですが、定期積金の場合、もう一つ意味があるように思います。それは、

3.「定期積金」という商品を販売したことが営業マンの営業成績となる

ということです。

定期積金はどちらかというと、信用金庫や信用組合のような金融機関でよく勧められる商品です。これは信金や信組では営業マンのノルマの一つに上がっていることが多いことが要因になっているようです。銀行の営業マンは、通常、融資だけでなく、様々な金融商品の販売もノルマになっています。「定期積金」の販売実績もその一つだということです。

 

「定期積金」のそもそもの目的は「毎月、少しずつお金を貯める」ということです。つまり、定期積金は何か購入したり消費したりする目的のものがあって始めるというのが本来の趣旨です。「定期預金」はある一定期間、当面、使う予定のないお金を普通預金ではない口座よけておく(しかも普通預金よりも金利が高いことから投資的な側面も少しある)というのとは意味が違います。

たとえば、車の買換えに備えて毎月積み立てておくというような趣旨であれば、「定期積金」にするのは意味があるということです。

 

ただ、定期積金も銀行は崩す際には「何の目的に使うのか」というのは聞かれます。場合によっては抵抗される場合もあるでしょう。その意味では、定期預金と同様に、拘束性のある預金と言えます。

仮に定期積金」をやるとしても、ポイントは毎月一定額を振替えるのが負担にならないかということが一番に考慮に入れるべきことです。別に積み立てられているとはいえ、普通預金のように簡単には引き出せないわけですから、「資金繰りの邪魔にならない」ということを考える必要があります。また、定期積金にも満期があります。満期が来てたまったお金を今度は「定期預金」に回すというのであれば、本来の「定期積金」とは意味が違ってしまいます。何かの目的でためていて、その金額まで積みあがったお金をまた拘束性のある口座に入れてしまうことなので、せっかく「定期積金」をやった意味がないです。「満期が来たら普通預金に入れる」のが常道です。

定期預金と同じように、定期積金についても、「なぜ銀行は『定期積金』をするように言ってきたのか」をよく考えてみましょう。その上で、やるにしても資金繰りに影響のない程度の少額にとどめておくのが常道だと思います。



さて、今日も銀行の話をしたいと思います。

銀行融資は経営にとっては中心を占める大事な話です。経営者が理解しておくべくことも多いです。

銀行から定期預金(あるいは定期積金)を組むように言われたのですが、どうしたらいいのでしょうか?

これは銀行に関係することでよく質問されることでもあります。今回はそのうち、定期預金について、考えてみようと思います。

yjimage

銀行から定期を組んでほしいと言われるということはその銀行で借入金があるということだと思います。借入金がある銀行で「定期を組んでほしい」と言われるというのは意味としては二つあると思われます。

 

  1. 借入金の保全を図ろうとしている
  2. 実効金利を上げることを考えている

 

まず、①の方ですが、この場合には警戒する必要があると思います。たとえばその銀行から1000万の借入があって、定期組んでほしいと言われて500万の定期を組んだとします。そうすると、実質的に銀行は1000万の借入ではなく500万の借入と同じということになります。仮に返済不能になったとしても500万は定期を組んでいるわけですから、500万は担保に取られているのと同じです。実質的な借入金は500万ということと同じということです。ですが、利息は1000万に対しての利息が銀行の収入になります。500万部分はいざ返せなくなったとしても銀行からしてみれば押さえていながら1000万の利息収入が入るわけです。銀行からすれば都合がいいわけです。

 

さて、問題は、なぜこういうことを銀行は要求してくるのかということです

融資をする際には、銀行はその会社を「格付け」しています。銀行は融資をする際には同時に「保全」といってその企業が貸していたお金を返せなくなった場合のことも考えないといけません返せなくなる可能性が高い企業には「貸倒引当金」という返せなくなる場合のお金を余計に積んでおかないといけません。つまり、返せなくなる可能性がより高い企業にお金を貸す場合、銀行の「貸倒引当金」が増えることになり、銀行の収益が悪化します。そのために「保全」というのを行います。たとえば、それが「定期預金」だったり、土地などの不動産の「担保」だったりします。銀行はそうやって「保全」を図るわけです。「保全」が図れればその分、銀行が積まないといけない「貸倒引当金」は減ります

要するに、「定期を組んでほしい」と言われたということは、保全」を図るくらい銀行からしたら「格付け」は高くないということを意味しています。

「銀行融資で資金調達するのも今は出来ていても少し業績が悪化したら難しいかもしれない」と考えてもいいかもしれません。

 

ちなみにですが、「定期を組んでくれたら融資します」というような言い方は禁止されています。銀行は企業に対しては優越的な位置にいます。その銀行がこのような言い方をすれば企業は応じざるを得ないわけで、これはやってはいけないことの一つです。銀行もそのことはよくわかっていますから、「定期を組みませんか」と促すように言ってきます。促すように言って、それに応じて定期を組むか組まないかは、企業側の問題です。それであれば、問題ないということです。

 

なぜ銀行がこうしたことを言ってくるのかということは銀行側の発言などからよく考えておく必要があります。

 

また、②の「実効金利」を引き上げることを目的としていることも考えられます。この辺の話は以前のブログでも書きました。↴

定期預金ってやった方がいい?銀行との付き合い方を考える

銀行としては少しでも業績をよくしたいので定期を勧めてきているということです。

銀行の決算間際で、収益を少しでも良くしたいことが目的だったり、担当の営業マンのノルマ達成が目的なのかもしれません。

 

いずれにしても、①なのか②なのか、はたまた両方の目的があるのか、その辺の真意を測ることは大変重要です。

 

さて、そもそもですが、よく多くの企業で「定期預金」を銀行で組みます。いろんなきっかけがあってそうするのでしょうが、基本的に私は銀行に定期預金を組むことはすべきではないと言っています

定期預金というのは、基本的には銀行にとっては、他の企業に融資をする際、原資としてあてにしている資金です。それを崩されると困るということもあるでしょうし、定期を崩されると実効金利が下がって銀行の収益に影響するという理由もあるでしょう。ケースバイケースで理由はあるでしょうが、基本的には銀行は嫌がります。つまり、定期預金というのは自社のお金であって自社のお金でないというものなのです。定期を崩すと「何のために使うのか」と必ず聞かれます。用途を言わないと引き出せないような「簡単に引き出せないお金」が定期預金なのです。

ですので、私は基本的に、定期預金は組まずに、普通預金のようないつでも引き出し可能な口座に入れておいた方がいいとお話します。定期預金の利息と言っても、今の低金利でしたらたいした利息にならないはずです。何か目的があって定期預金を組んでいるのであれば別です。大した目的もないのに自らわざわざ資金繰りに使いづらい口座に移す必要はどこにもないということです。

 

ということで、基本的な考え方として、銀行から定期を組むように奨められてもお断りするのが常道ではないかと私は考えています。

 

次回は、定期預金に少し似ている「定期積金」についてどう考えたらいいのか、お話したいと思います。



さて、今日は特に治療院の先生向けに書いていこうと思います。

銀行融資の話です。(主には治療院の先生向けに書きますが、一般の経営者の方にも役立つ話であると思います。)

yjimage

私は顧問先に治療院が多いです。(治療院経営の専門家と一応、自負しているので)

 

介護事業所はそうでもないのですが、治療院の先生のよくあるパターンとして開業時に創業融資を借入し、その後その返済が終わり近くなると銀行から「融資残高が少なくなってきたのでいくらか借入しませんか?」と言われることがあります。

私の経験上、ほとんどの治療院の先生はここで「借りない」という選択をします。

「借金=経営リスク」と考えていて、借入はない方がいいと、とにかくそういう思い込みがあるわけです。治療院の場合、毎月の収支は家賃や人件費など読めるものが多いです。患者数を現状維持か、少しずつでも増やしてきた治療院の先生は、借金をしなくても回せるので「いい経営というのは借金しないことだ」と思うわけですはっきり言いますが、この考え方は間違っています。銀行から借り入れすることは治療院経営にとっては、不可欠な話で、無借金経営ほど危険なものはありません。

 

たとえば、治療院を経営していて(治療院でなくてもいいのですが)、悪い時がありますよね?今月は患者が少なかった、自賠責保険の売上がなかった、あるいは思わぬ出費があった(たとえば店舗の冷暖房機が壊れた)というように必要経費が通常よりも多いこともあります。

治療院というビジネスは(多くのビジネスがそうですが)、月ごとに収支をみていくものです。たとえば、ある年の1月の売上の減少が極端に少なかったとします。悪い時には悪いことが重なります。2月は今度は自動ドアが壊れてこの修理で思わぬ出費があったとします。さらに、3月は自賠責保険で保険会社と揉めて入金予定だったものが入らなかったとします。偶然にもこうした出来事が3か月続いたとします。

治療院の預金通帳を見ると、残高がみるみるうちに減っているわけです。

4月はというと、個人の場合、所得税や消費税の振替納税があります。

税金のことを考えると足りません。

 

さて、こういう場合、治療院の経営者はどの時点でどう考えるのが一般的でしょうか?

 

ほとんどの治療院の経営者が4月の税金の納付前に、治療院とは別の個人の口座から税金分の資金を移動します。それで何とかしようとするわけです。

しかし、5月はゴールデンウィークもあり、もともと稼働日数が少ないです。売り上げがそれほど上がらなかったらどうでしょうか?そもそも保険収入は入金は4ヶ月から6か月先です。仮に患者さんが来たとしても、売上の少なかった1月の入金がようやく5月・6月くらいにあるわけです。そうすると資金繰り的には厳しいことは目に見えています。

こうしたとき、治療院の先生は「とにかく、目の前のお金のやりくりだけを考えてあのお金をこっちに持ってきてどうにかしよう」と考えるわけです。

 

経営で一番大事なことは何かというと、「現預金を多く持つ」ことです。

このことはこのブログでも何度も書いてきました。現金があれば倒産はしない。これが経営の鉄則であり、一番大事なことです。

銀行融資の鉄則、「晴れた時こそ傘を借りる!」

多くの治療院の先生がかたくなに思っている「借金=リスク」だから借入しないという選択はそもそも間違っています。(もともと預金残高が潤沢にあるのであれば別ですが)

 

治療院の経営で、上記のような状況になるというのは別に珍しいわけではなく、よくある話です。

こういう時、治療院の先生には、次の順番に考えてほしいとお伝えしています。

 

  1. まずは銀行からお金を借りる
  2. 銀行の返済ができなくなったら、銀行の返済をリスケジュール(返済猶予)する
  3. 経営者の個人の預金を事業の通帳に入れてつなぐ
  4. 経営者個人が借入して事業の通帳に入れる

 

ほとんどの経営者が3からやります

個人の通帳からお金を出すのはあくまでも銀行があてにできなくなってからなんです。この順番を間違えるわけです。

ちなみに、4まで言ってもどうにもならなくなったらその時に、税金や社会保険の滞納、支払先への支払いの延期という手段を使うことになります。(従業員の給与の遅配はさらにその後ということになります)

また、銀行からの返済が滞る前に、税金の滞納をする人がいますが、これはもってのほかです。税金を滞納すると銀行はお金を貸してくれませんし、そもそも税金の滞納には延滞税や加算税という高い利息が付きます。いいことは一つもなく、だったら2のリスケジュール(銀行の返済を猶予してもらう)をすべきです。

 

さて、上記の治療院の例ですが、私は顧問先の治療院には1月の売り上げが減少する前に借り入れが少なくなった時点で融資の申し込みをするように奨めます。つまり、比較的状態のいい時に借入するように話をします。「晴れたら傘を貸し、雨が降ったら傘を借さない。」この銀行融資の原則からしても、まだ状態のいい時に借りたほうが借りやすくなります。経営のリスクを回避するというのはとにかく現預金を多く持っておくことですから、1月以降のような良くないときに借りるべきではありません。また、仮に12月までに銀行からの借入をしなかったとしても、遅くとも1月か2月の時期に借りておくべきです。3月くらいに融資が下りれば少なくとも4月の納税時期には間に合います。仮に個人のお金も手元になく、納税できなかったら銀行からの借入もできないことになり、坂道を転げ落ちるように一気に経営危機に陥りかねません。この例であれば、遅くとも3月には融資をしておくべき(確定申告が終わってすぐに融資を受ける)ということになります。

 

治療院に限りませんが、経営にとっての本当のリスク管理が何なのか、今一度、考えてみてはいかがでしょうか。



前回に引き続き、銀行の話を今日もしてみたいと思います。

yjimage

よく、銀行口座を作って銀行との関係を作るというような話をする経営者がいます。

口座を開いてお金を預け入れすれば関係が作れるというような話です。

 

これを銀行側から考えてみましょう。

銀行側から見ると、預け入れてもらったお金は、引き出したいと言われたらすぐに返さないといけないお金です。当たり前の話ですが、こういう当たり前のことが重要なんです。

この当たり前の話を銀行側からすると、預金者の預け入れのお金は「負債」勘定となるものです。

預け入れする我々預金者の側は預金通帳の残高は「資産」ですが、銀行からすると「負債」なわけです。当然と言えば当然なのですが、誰かの資産は誰かの負債になっています。「簿記」というよりかは「経済」の基本的な考え方です。

 

さて、銀行口座を開いて関係を作るという話です。

口座を開いただけでは、銀行側からすると、ただ「負債」が増えるだけです。(もちろん相手勘定である「現金」も増えていますが)つまり、銀行的には収益に貢献できているわけでもないわけです。

前回のブログでも書いた通り、銀行の本質は「金貸し」です。「お金」という銀行にとっての「商品」を誰かに貸すことによって「利息」という収益を得るビジネスモデルです。

本来は、預け入れてもらった預金を他の誰かに貸すことによって収益を得ているわけで、預金してもらうことも銀行の大事な業務なわけですが、今、銀行の置かれている状況というのは空前のカネ余り状態です。銀行が大量に持っている国債を日銀に売って売った代金である日本円が銀行の手元にあるわけです。(日銀から売却するよう言われたから売ったわけですが)

ご存知だと思いますが、今は「マイナス金利」という時代です。銀行は手元に一定程度お金があると日銀に預け入れしないといけません。預け入れすれば本来は「利息という収益を得る」ことができるわけですが、マイナス金利というのは逆に「利息を払う」ことになるわけです。銀行にとってはそれは損な話ですよね?だから、手元にあるお金を誰かに貸して収益を得るようにしたいわけです。日銀のマイナス金利政策というのは、つまるところ、日銀が銀行から国債を買い取って銀行が手元に持っている現金という商品を誰かにお金を貸すことによって景気を活性化させよう(デフレを脱却させよう)という政策なわけです。

 

ちょっと経済の話に飛びましたが、要するに、「口座を開いて銀行との関係を作る」というような経営者の話は少しピントがずれているというのはわかりますか?

銀行にとって関係というのは、あくまでもお金を借りることによって築かれるものなんです。特に、今のような経済の状態(マイナス金利の状態のことです)では、銀行にとっては預金を預け入れしてもらうことよりも、お金を借りてくれる人の方が「いいお客さん」なわけです。

 

よく考えてみてほしいのですが、今、普通預金の利息って何%くらいでしょうか?

0.01%~0.02%くらいです。

1千万円預け入れしてもたったの1年で1000円から2000円程度にしかなりません。

それに対して、借入した時の利率はおおよそ1%~3%の範囲です。

史上空前の低金利時代です。

これを銀行の視点から解釈すると、貸出金利が安いというのは、借入金という商品をみんなに買ってもらいたいからですよね。だから、借りた時の金利が安いわけです。逆に、銀行にとっては「負債」になる預け入れの金利が安いというのは「今は預金に預け入れしてもらっても困る」というメッセージでもあるわけです

 

さて、銀行の口座を開くということの銀行側からすると特に「関係を築く」と言えるほどではないというのはわかったと思います。

 

ここでやや応用的な話です。

 

取引銀行から1000万円の借入金があったとします。金利が2%だったとします。

そうすると、年間の利息は20万です。

この状態のとき、銀行の担当者が「定期預金を組んでほしい」と話しに来たとします。

これはどういうことでしょうか。

 

銀行にとって考えてみればわかる話です。

たとえば、上記の状態で500万円の定期を組んだとします。

そうすると、銀行にとっては実質的に、「1000万円-500万円」ということで500万円貸しているのと同じということになります

つまり、利息収入は20万円なのに対して、借入金は500万円なわけですから実質的には20万円÷500万円で、年利4%で貸しているのと同じと考えるわけです

 

銀行からすると、すでに借入金がある先に「定期を組んでほしい」という話をするのはこういう効果が期待できるからです。こういうのを実質金利といいますが、この実質金利という数字を得たいために、こんな話をしてくるわけです。500万の定期を組んでもらって銀行の手元の現金を増やしたいわけではないということです。

 

さて、預金と借入金のこうした基本的な話というのは経営者としては必ず理解しておくべきことだと私は思います。本来はこうした話は顧問税理士がいればその税理士からしないといけないわけですが、こういう銀行の考え方のような話をしてもらったという話をほとんど聞きません。税務や経理処理も大事ですが、経営というのはそれだけで成り立っているわけではありません。むしろ税務申告や経理というのは経営にとってはほんの一部分でしかありません。

もしこのブログをお読みの方が依頼されている税理士からあまりこういう話を聞いたことがないのであれば、その関係を考えないといけないと私は思います。

 

また機会があったらこうした銀行の話を書いていこうと思います。