手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

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さて、今日は銀行の話です。

そもそもどの銀行で口座を開き、どの銀行で借入をしたらいいのか、経営者の皆さんはどうやって決めているのでしょうか?

統計を取っているわけではないですが、「なんとなく」とか「大きな銀行だから」とか「近くにある銀行だったから」とか・・・

銀行選びも「経営戦略」だとしたら、どの銀行をメイン銀行にするのかというのは、経営を左右する重要な要素です。

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では、どういう基準でメイン銀行を決めたらいいのでしょうか?

決める際の基準はまずは自社がどのくらいの年商規模があるかによります。

一般的に銀行の規模は次のような感じで考えていいと思います。

信用組合<信用金庫<地方銀行・第二地銀<都市銀行

 

「〇〇信用組合」というのは一般的にはかなり小規模の銀行です。信用金庫になると地域でそれなりの取引規模のある銀行という感じです。地方銀行は信用金庫よりもさらにエリアが少し大きいイメージです。都市銀行は全国規模になる感じです。

 

年商でいうと、

信用組合・・・年商数百万円~年商数千万円

信用金庫・・・年商数千万円~年商1億円程度

地方銀行・・・年商数千万円~年商10億円程度

都市銀行・・・年商10億円超

 

こんなイメージでいいと思います。

 

これは、各銀行が出している預金量と貸出額の数字を見ればイメージできます。

信用組合は、預金量や貸出額が1000億円以下の規模です。信用金庫になると1000億円くらいから1兆円くらいの規模になります。地方銀行になるとこれが1兆円を超える規模になります。都市銀行になるとこれが数十兆円規模になります。例外はありますが、だいたいこんな感じです。

 

具体的に数字を追ってみてみましょう。地方銀行の上位5位までは次のような感じです。

単位:億円

銀行名 横浜 千葉 福岡 静岡 常陽
預金額 122,284 100,733 84,244 87,151 77,287
貸出額 97,240 84,611 72,452 73,931 56,564
預貸率 79.5% 84.0% 86.0% 84.8% 73.2%
店舗数 209 188 170 205 179

 

この表で「預貸率」というのがあります。これは、銀行に預け入れしてもらっている預金額に対していくら貸し出しているかという率です。これについては、あとで改めて説明します。

金額が大きいのでピンと来ないかもしれませんが、地方銀行の上位5社までは、都市銀行に迫るくらいの大きな規模と言えます。

 

次に、信用金庫の上位5社です。

単位:億円

銀行名 京都

中央

城南 岡崎 埼玉懸 多摩
預金額 42,306 35,787 26,116 24,750 26,442
貸出額 22,342 21,479 14,791 13,930 10,134
預貸率 52.8% 60.0% 56.6% 56.3% 38.3%
店舗数 128 85 96 96 78

 

いずれも1兆円を超える規模です。結構大きいですね。ですが、地方銀行ほどではないことがわかります。

 

ちなみに、信用組合についても上位5社を調べてみました。

単位:億円

銀行名 近畿

産業

茨城県 長野県 大阪

協栄

大東京
預金額 13,338 11,371 9,194 5,728 5,652
貸出額 8,105 4,944 2,777 3,397 3,058
預貸率 60.8% 43.5% 30.2% 59.3% 54.1%
店舗数 33 84 51 13 45

 

 

信用組合は近畿産業信組のような大きな信用組合だと信用金庫並みの規模になります。また、京都中央信金のような大きな信用金庫だと地方銀行並みです。横浜銀行は地方銀行というより、都市銀行に近い大きな規模の地方銀行です。しかし、これらは例外で、ほとんどが信組だと、信用金庫の半分以下の規模で、信用金庫は地方銀行の半分以下の規模と言えます。

 

こうした銀行の規模感というのは「どの銀行に口座を開くか」「どの銀行で借りるか」を決める際の重要な要素です。年商が1000万円程度かそれ以下の事業だったら都市銀行や地方銀行では、ちょっと大きい銀行になってしまいます。信用組合や信用金庫で検討すべきです。

逆に、年商が10億円近くある会社であれば、信用組合や信用金庫ではちょっと小さすぎます。地方銀行や都市銀行で検討すべきです。

 

また、預貸率(預かっているお金をどれくらい貸し出しているか)というのも重要な要素です預貸率が高いほど、銀行の本業である「お金を貸す」ことに熱心であることを示しています。つまり、お金を貸すことに積極的であるということです。一つの判断基準として、預貸率の平均値は約50です。もちろん、預貸率はいろいろな要素が影響しているわけですが、預貸率をメルクマーク(指標)の一つと捉えてみるのもいいと思います。

 

ちなみに、私の事務所のある東京の府中やその周辺の金融機関をいくつか調べてみました。多摩信用金庫と大東京信用組合は上記に挙がっていますので、それ以外の金融機関について、下記に挙げておきます。

単位:億円

銀行名 西武

信用

八千代 東日本 昭和

信用

預金額 17,490 21,227 18,501 4,057
貸出額 14,470 14,660 15,559 1,800
預貸率 82.7% 69.1% 84.1% 44.4%
店舗数 73 84 80 19

 

西武信用金庫や東日本銀行の預貸率の高さが目立ちますね。

年商が1000万円未満であれば、昭和信用でもいいかもしれませんが、やや預貸率が低めなのが気になります。

 

これらの上記に上げたような数字は、ネットで調べればすぐにわかるものばかりです。こうした数字を把握したうえで、自社のメイン行を決めてみてはいかがかと思います。

銀行は経営を左右する重要なパートナーです。今取引のある銀行についても、この際、検討してみてはいかがでしょうか?

※ 上記の数字はなるべく最新の数字を調べてお示ししましたが、時点が必ずしも一致していませんので、その点、ご留意ください。



今回は前回の個人事業税の話と対比して、法人事業税の話です。

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法人事業税の話と言っても、実はいたってシンプルです。

個人事業税のような「非課税」部分は法人事業税にはありません。

つまり、法人事業税は法人税の金額が出た場合、通常の法人と同じように計算するわけです。

 

個人事業の治療院の場合、社会保険診療にかかる部分は非課税でした。この話を前回のブログでしました。ですが、法人になると治療院の事業税が非課税になる規定はありません

 

法人の事業税が非課税になる規定は、地方税法第72条の23第1項というのが根拠になっています。

これによると、法人事業税が非課税になるのは、「医療法人」や「農業協同組合」が社会保険診療を行った場合に限定されています。

ですので、普通法人の治療院は事業税が課税されるわけです。

 

医療法人は医師(もしくは歯科医師)でないと設立できない法人です。

柔道整復師や鍼灸師は医療法人を設立できません。法人化するとしたら普通法人(つまり、株式会社や合同会社など)になります。そうすると、法人事業税は課税されてしまうわけなんです。

 

ということは、医療法人の中でやっている治療院だったら、どうかというと、これは、社会保険診療の非課税の規定が適用されます

同じ治療院でも、医療法人の分院としてやっている治療院だったら社会保険診療部分は、個人の場合にあったように法人事業税の非課税の規定が適用されるわけです。

 

医療法人だけ優遇されていて、なんだか変な感じがしますが、医療法人の一部だったら法人事業税は非課税だが、それ以外は通常通り課税される。今の税法はそうなっているんです。

 

ちなみに、薬局なんかも、普通法人でやっているケースがありますが、これも同様です。法人事業税は課税されます。

 

ということで、治療院を個人から法人にした場合、法人事業税も通常の事業と同じように課税される点は、治療院を法人なりした場合のデメリットと言えます。

 

では、法人事業税はどのように計算されるのでしょうか?

 

まず、法人事業税は、収入から経費を引いた後の所得金額がいくらかによって税率が異なります。おおむねその所得金額の5%~9.6%の税金が課税されます。

 

計算がやや複雑な部分があるので、ここでは、所得金額に対して税率を乗じるんだという理解でいいです。

ですから、たとえば、赤字の場合、所得金額がゼロ以下になるので、法人事業税はありません。

 

治療院の先生としては、細かい税額計算の方法は置いておいて、「法人になると、個人に合ったときのような事業税の非課税というのはないんだ」と理解していただければいいかなと思います。つまり、法人の場合には事業税に関しては「保険診療から自費診療中心へ移行した場合」の問題というのは、基本的には考えなくてもいい問題ということになります。

ということで、消費税から事業税まで、「保険診療中心から自費診療中心へ移行した場合」の税金の問題についてでした。



今日で8月も終わりですね。

8月というと、夏休みだったりで、休みが多い季節です。少し中だるみになっている方も多いのではないかと思います。9月からまた頑張りましょう。

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さて、治療院が保険診療中心から自費診療中心に移行する場合の税金の問題をいくつか書いていました。もう一つ、税金の問題として事業税の問題があります。治療院の事業税って、いったいどうなっているんでしょうか。

 

というより、そもそも事業税って何?と思われるのではないかと思います。

事業税といっても個人の場合は「個人事業税」、法人の場合には「法人事業税」があります。

今日は、個人事業税について、理解していきましょう。

 

個人事業税は、収入-必要経費―専従者給与」の金額が290万円以上の場合に課税されます。つまり、青色申告特別控除前の金額が290万円以上の場合に課税されます。

そして、治療院の場合、さらに社会保険診療にかかる部分は非課税になります。

つまり、自費診療部分だけで290万以上だったら事業税が課税されます。

 

具体的な数字で考えてみましょう。

 

収入  保険診療収入     800万円

自費診療収入  1,200万円

収入の合計     2,000万円

経費合計         800万円

青色事業専従者給与    100万円

青色申告特別控除      65万円

差引所得        1,035万円

 

こんな感じだったとします。

事業税を計算するときは、次のような算式で計算します。

 

収入―経費―専従者給与―一定の控除額(290万円)

 

この例ですと、2,000万円―800万円―100万円―290万円で810万円ですね。この810万円から、治療院の場合、保険診療に係る部分は非課税ですからこれも引いて計算します。

この事業税のかからない保険診療部分の金額を求めるのに、収入金額の合計2,000万円から経費の合計800万円を引いた1,200万円を自費収入と保険収入の収入金額の比で按分します。

ですので、事業税の非課税の対象になる金額は、1,200万円×800万円÷2,000万円=480万円となります。

ということで、事業税の課税対象は810万円-480万円の330万円です。

 

そして特徴的なのが税率です。

個人事業税は通常の業種は、事業税率は5%なんですが、治療院の場合には税率は3%です。

ですから、この例ですと、事業税の課税対象の330万円に3%を掛けた金額が事業税です。ということで、330万×3%の99,000円が事業税の金額となります。

 

では、事業税の課税対象になるのは、どんな収入でしょうか?

まずは「自費収入」です。その他、たとえば、もし物品販売(サポーターなど)をしていたらそういったものも入ります

あとは、自賠責保険の収入です。交通事故などの自賠責保険に力を入れている治療院も多いですが、こうしたものも「自費収入」として事業税の計算には入れて計算します。

 

逆にいえば、事業税が非課税になるのはあくまでも、保険診療部分だけです。保険診療の収入以外は「自費収入」としてカウントします。

ということで、自賠責保険の収入は消費税は非課税ですが、事業税はかかります

 

ちなみに、細かい話ですが、預金利息はそもそも個人の場合、収入計上しませんので、その点はご注意ください。(個人の場合、「利子所得」という所得区分になるため、「事業所得」の計算にはそもそも入りません)

 

また、この治療院の事業税ですが、「あんま、マッサージ又は指圧、はり、きゅう、 柔道整復その他の医業に類する事業」となっています。

つまり、同じ治療院でも、民間資格である「カイロプラクティック」とか「整体院」は普通の事業での計算になります。

ですので、カイロプラクティックや整体院の場合、税率は5%です。もちろん、こうした治療院では、社会保険診療はないですから、非課税部分もないです。

 

保険診療中心だと事業税は非課税のためかからないわけですが、自費診療中心に移行すると、事業税の問題があるというのは、顧問税理士がいても説明されない部分かもしれません。

消費税に加え、事業税の問題があることも知っておいてほしいことです。



何回かに分けて「保険診療から自費診療に移行する場合の税金の問題」について書いています。今日は、自費収入の消費税を実際に患者さんからもらうことについて書いていこうと思います。

まず、治療院の先生からの質問でよくある質問です。

「うちは自費収入などの課税売上は1000万円にならないから消費税は払わなくていいわけだけど、患者さんから消費税を取っていいの?」

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結論としては、消費税という名目で患者さんの治療費に上乗せしてもらっても問題はありません。たとえば、1000円の自費治療だったら80円の消費税ということになり、1,080円を患者さんからもらうことになりますよね。消費税を納める必要がないのにこういうもらい方をしていいのかということです。消費税法上の考え方として、消費税の名目としてもらっているかどうかいうのは考慮せず、消費税という名目でもらった金額も含めた治療の対価としてもらった金額から消費税の計算をします。そのため、消費税という名目でもらって消費税を支払わなくても問題にはなりません。

消費税という名目でもらっても、結果として治療院の自費売上などの消費税のかかる売り上げが1000万円を超えなければ、それは結果としては国には納付しないことになりますが、それは消費税法の問題です。預かっている消費税を国に納めないという、これを俗に「益税」と呼びます。

 

上記のような治療院の先生からの質問に、ある税理士から聞いたという話で、「消費税は患者さんからもらっても問題ないんですよ。だって、いろいろと払う消費税があるでしょう。だから、患者さんから消費税をもらっても問題ないんです」と説明されたと言われたことがあります。これは間違いです。払っている消費税があるから患者さんからもらっていいというのは、消費税法の理屈からしておかしな話です。

消費税というのは、最終消費者が負担する税金なので、払っている消費税というのは最終消費者だから払っているだけです。

つまり、

消費者 ⇒ 事業者 ⇒ 国

という形で、最終的な消費者から事業者が受け取って、事業者が代わりに納めるのが消費税です。もらう消費税があるというのは、上記の事業者に該当するからもらうわけで、払う消費税があるというのは、消費者の立場になっているから払っているだけです。払った消費税は、原則的には、事業者を通じて国に納められます。

立場が違うから、治療院の自費売上は消費税を受け取っていいというだけです。

ただ、消費税法上の問題で、今は売り上げが1000万円以上にならなければ消費税を納めなくていいので、上記で言えば「事業者⇒国」の部分のお金の流れがないという話です。

(同じ税理士として、この辺はきちんと説明してほしいとは思います。)

 

私が「消費税分を患者さんからもらってもいい」と言っているのは、もう一つ、別の理由があります。それは、たとえばこういうことを考えてみればわかります。

個人事業者で、平成27年は自費売上が1000万円を超えていなかったのに、平成28年は自費売上が1000万円を超えて消費税を納めなければいけなくなってしまったとします。その場合、平成30年1月から消費税の課税事業者になります。

今まで、消費税分は特に患者さんからもらっていなかったとすると、平成30年1月からは患者さんから消費税をもらわないといけなくなります。

では、平成29年12月までは1000円だったのを平成30年1月から1080円にするのかという問題があります。患者さんにとっては、1000円でよかったのが1080円支払わないといけなくなるのであれば、ひょっとしたら他の治療院に行ってしまう患者さんもいるかもしれません。

課税事業者になったからそこから患者さんから消費税分をもらうようにする、というのは理屈としては合っています。合っていますが、理屈通りにすると、治療院の経営上の心配が出てくるわけです

では、どうするかということです。

どこかから消費税の課税事業者になる可能性があるのであれば、最初から消費税分をもらってしまう、もしくは途中から値上げをして消費税分をもらってしまうということが考えられます。

また、たとえば、上記の例で、平成29年は自費売上が1000万円を超えなかったとします。そうすると、平成31年は消費税を納めなくてよくなります。

課税事業者のときは患者さんから消費税をもらい、課税事業者でなくなったのであれば患者さんから消費税はもらわないというやり方をすれば、平成30年1月から12月の自費治療は1080円だったのが、平成31年1月からはまた1000円になるわけです。

このように料金が変わってしまうのは、患者さんから見たらどうでしょうか?大変わかりづらい話ですよね?

要するに、経営上の問題や患者さんの視点から考えて、最初から消費税をもらったほうがいいのではないかということです

 

もちろん、逆も考えられます。

つまり、消費税分は最初からもらわないというやり方です。課税事業者になっても消費税をもらわずにやるということです。この場合、実質的には事業者である治療院が消費税を負担することになります。消費税分を値上げしてしまうと患者さんが離れてしまうことを懸念して消費税分はもらわないという判断です。実務上は、消費税を納める金額がいくらくらいになるのかによって、消費税分を患者さんからもらわずにやるという選択を考えることになるでしょう。

 

さらにもう一つ加えていえば、たとえば、1080円ではなく、いっそのこと1100円にしてしまうことも考えられます。消費税が10%に上がることを見込んで、先に1100円にしてしまうということです。消費税が10%に上がったとき、値上げをしない形にすれば、他の治療院がこぞって値上げする中、値上げしなければ経営上、有利に働くこともあり得ます。

 

自費治療中心に変えていくことは、消費税の課税事業者になることもあり得る話で、料金設定にも大きな影響があることです。「保険診療中心から自費診療中心」への移行にあたっては、この辺の話も考えていかないといけません。



さて、前々回まで、治療院の消費税に絞っていくつか書いていきました。

治療院が「保険診療から自費に移行する」と起こる税金の問題として、消費税のことがあることは書きました。その消費税の納税義務は法人化することで最大、2年間、納付を逃れることができるということを聞いたことのある方も多いと思います。

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これは、消費税の判定の仕組みに由来します。

消費税を納める事業者であるかどうかは、2年前の課税売上が1000万円を超えるかどうかによって判定します。たとえば、平成29年1月から12月の期が課税事業者かどうかは、平成27年1月から12月の期の課税売上が1000万円を超えているかどうかで判断します。この辺の話は以前のブログを再度、ご参照ください。↴

自費中心診療の問題点 治療院の消費税について考えてみよう!

たとえば、平成27年の1月から12月の期の課税売上が1000万を超えたとします。普通にやれば、平成29年1月以降の期で消費税を納付することになります。それを、たとえば、平成29年1月に法人化したとします。12月決算の法人だったとすると、平成29年、平成30年まで消費税を納めなくてよくなる、ということです。

これは、法人化した場合、平成29年・平成30年は2年前がないことになるため、そもそも2年前の課税売上が1000万という判定自体ができないためです。

結果、最大2年間、消費税の納付を逃れることができるわけです。

ここまでの話は、少し勉強されていたり、どこかで聞いたことのある方も多いと思います。

治療院の場合、さらにもう一点踏み込んで知っておく必要があります。

それが、「特定期間の課税売上高の判定」というものです。

 

先ほどの例ですと、平成29年1月に法人化しています。この場合、平成29年1月~平成29年6月までの半年間で売り上げが1000万円を超えている場合、平成30年1月から消費税は課税事業者になるというものです。これが、「特定期間の課税売上高の判定」の話です。

この場合、免税となる期間は平成29年の1年のみとなります。

ただし、仮に平成29年1月から6月までの売上が1000万円を超えていても、平成29年1月から6月の給与等の金額が1000万円を超えていない場合には、平成30年1月から課税事業者になることはありません。

給与等の支給額というのは、特定期間中に支払った源泉所得税の対象となる給与等の金額のことをいいます。源泉徴収簿などから算出するため、金額の計算はすぐに出るはずですよね。

 

結局、この特定期間の判定を使うのは、売上と給与等の両方が法人設立から6か月で1000万円を超える場合だと押さえておいていただければいいかと思います。

 

また、たとえば、半年で消費税の課税売上が1000万円を超えるし、半年の給与の金額も1000万円を超えることが明らかな場合、どうするのかという問題があります。

 

消費税が免税事業者になる期間をなるべく多くとりたいということであれば、たとえば、上記の例の場合、1期目の決算を平成29年7月とした場合、1期目は平成29年1月から7月となり、特定期間自体がないことになります。1期目が7ヶ月の場合、この特定期間の消費税の判定を行わないというルールがあるためです。つまり、1期目を平成29年7月で終わる7月決算法人とすると、2期目の平成29年8月から平成30年7月までの期も免税事業者となり、結果として、平成29年1月から平成30年7月までは消費税が免税になることになります。

 

この辺の話はちょっと複雑な部分もあるため、もし半年で課税売上が1000万円を超え、なおかつ、給与等の金額も1000万円も超える場合、決算期をいつにするのか、給与の設定をどうするのかについて、税理士などの専門家の意見を聞きながら決めていただいたらいいのではないかと思います。

 

法人化すると、最大2年間、消費税が免税になるという話、おおよそ理解できたでしょうか?



ある経理専門誌に書いてあった税理士の記事について、今日書いていこうと思います。銀行借入金についての見解を述べたものです。

要約すると、このような内容です。

「借入金の適正度の目安を表す数値が『借入金月商倍率』です、目安として借入金の月商倍率が6か月を超えると、倒産の危険水域に入っていると判断してもよいでしょう。平均的な売上高の経常利益率の会社でも月商の6か月以上の借入金があると、支払利息で経常利益が吹き飛んでしまうことになるからです。」

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こうした記事をお読みになると、書いているのは税理士ですし、皆さん、信用しますよね?

私はこの記事を読んで、即座に「はあ?何を言っているの、この人!何もわかっていないんだな。」と思いました。

 

この記事に見られるような考え方の会計の専門家である税理士や公認会計士は多いことと思います。しかし、月商の6か月の借入金が倒産の危険水域というのは、はっきり言って、的を得ていないどころか、私に言わせれば、この記事は嘘を書いているといってもいい話だと思います。

 

具体例で考えればわかりやすいでしょう。

 

たとえば、月商が300万円の会社があったとします。月商300万円ですから、年商3600万円です。中小企業だったら、これくらいの会社は普通にありますよね。

 

この月商300万円の会社が月商6か月分の借入金があったとします。そうすると、1800万円ですね。わかりやすく、2000万円の借入金があったとします。

そうすると、利率は現状の市場金利からすると1%~2%というところでしょうから、仮に利率が2%だったとします。そうすると、年間の支払利息は約40万円くらいの話です。年間40万円の利息で、この税理士が言うように「支払利息で経常利益が吹き飛んでしまう」とか「倒産の危険水域」なんて話はあり得るのでしょうか?

 

「借入金は利息の返済だけではなく、元本の返済もある。利息だけでなく元本の返済も返せなくなるから倒産に至る」と反論するかもしれません。

しかし、借り入れが2000万円だとして、標準的な5年返済の長期借入金だったとすると、年間の元本返済額は約400万円です。月にすれば30万円ちょっとです、利息もあわせても返済額は35万円くらいといったところです。

月商300万の会社だったら、月の売上の1割程度が借入金の返済ということになります。借入金を返済した残りの9割のお金で経営していくわけです。十分、やっていけるはずです。加えて、返済に係るお金が毎月これくらいなのであれば、十分に利益も出せますよね。果たしてこれで倒産すると言える状況なのでしょうか?

 

借入金は、業績が悪くなった時のために備えて、業績が回復するまでの間の時間を買っているんだ」と言った社長さんがいらっしゃいました。毎年、利益を出し続けている中小企業の社長さんのお言葉です。これは大変、的を得ていてわかりやすい表現だと思います。

倒産する会社というのは、決して「借入金の多い会社」ではありません。「現預金のない会社」が倒産するのです。現預金があるうちは倒産しません。至極、当たり前の話ですが、経営としていくと中小企業の社長さんはここがわからなくなるようです。そして、税理士や会計士と言った専門家ですら、この辺の話がわかっていないのです。

「借金は怖い」と思い、「なるべく借入をしないで経営する」方向に行ってしまうのです。倒産するのは、「現預金がなくなくなってきて」その後、「銀行からも融資を受けられなくなった」場合です。この辺の話は以前の私のブログを読んでみてください。↴

借入金なしの経営は危険!手元資金に不安がなくても借入しよう!

 

一般的に、税理士や会計士は借入金に対して大きな「誤解」がある人が多いです。借入金に対して最初からマイナスイメージがあるために、「月商の6か月が倒産ライン」という全くナンセンスな話を何万分も発行しているような雑誌に書いてしまうのです。そのために、こうした情報が独り歩きして、「借入金が多いことは会社経営にはよくない」という「神話」がまかり通ってしまうのです。

 

現に、月商の6か月以上の借入金があっても、倒産どころか順調に業績を伸ばしている中小企業はたくさんあります。月商の6か月どころか、年商に近い借入金の会社が私の顧問先にもあります。では、そういう会社は倒産危機かと言えば、全く違います。むしろ、業績を伸ばしているため銀行はさらに追加融資を申し込みに来ているくらいです。倒産しそうな会社に銀行が貸したいと思うでしょうか?

 

「倒産の危険水域」ということで言えば、借入金の残高ではなく、手元の現預金が月の販売管理費以上あるかどうかは重要なポイントだと思っています。理想的には、1か月に必要な資金(販売管理費の1か月の金額)の3か月から6か月分手元に現金として思って経営する必要があると私はよく話をします。逆に、販売管理費の1か月分も現預金に残高として残っていない会社であれば、借入金が全くない会社であっても「いつ倒産してもおかしくない会社」であると言わざるを得ないでしょう。

 

たとえば、震災などの災害や何らかの原因で休業せざるを得なくなった時などを想定してみればわかります。手元の現預金が3か月以上あれば、仮にしばらく収入が入ってこない状況になっても3か月は会社は持ちこたえることができるわけです。もし緊急事態なのであればその3か月のうちに、何らかの次の手を打てますよね。その意味で、先ほどの中小企業の社長さんの話ではないですが、「借金をしてそのお金で時間を買っている」ともいえるわけです。

 

また、借入金をして経営をすることは、必要な時に必要な資金を引き出せるという意味で、リスクテイクにも役立ちます。多くの人は経営状況が悪くなってから銀行借入を考えます。しかし、経営状況が悪くなってから借りたのでは、審査が厳しくなり、不利な条件になってしまいます。経営状況がいい時こそ借りる。これは企業経営の鉄則です。

その結果、借り入れが増えても、現預金が増えるのであればまったく問題ないわけです。

加えて、借入して返済することで、「信用」という利息をもらえます。銀行審査で何が一番有利になるかと言えば、約定通りに返済してきたという履歴です。この返済履歴が1年よりも2年、2年よりも5年、5年よりも10年あった方が、より信用度が高くなります。「借りたものはきちんと期日に返す」この当たり前のことができると、銀行の信用度は上がります。銀行の信用度が上がれば上がるほど、必要な時に必要な資金をより迅速に用立てすることができる可能性が高くなります。

 

件の税理士などはおそらく銀行借入のない無借金経営が一番いい経営だと思っているのではないかと思います。とんでもない話です。無借金経営ほど企業経営にリスクのあるものはありません。銀行借入がないということは銀行との取引がないということです。その状況では、いざという時に銀行に相談に行っても、融資が下りるまでにまずは時間がかかります。しかも、借入がないということは、銀行に「どんな会社か」を判断する要素が少ないため、審査も厳しくなりがちです。

 

ということで、皆さんに知っておいていただきたいのは、まずは「借入金の残高よりも現預金の残高の方が重要」ということと、「税理士や会計士と言っても、銀行融資のことをよく理解していない人が多い」ということです。

一人でも多くの経営者がこの事実に気付いてほしいと心から願います。



さて、今日も前回の続き、消費税の話です。

今日は簡易課税の話です。

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治療院の場合、ほとんどのケースが、本則課税ではなく簡易課税を選択したほうが税額が少なくなるはずです。ただし、たとえば複数店舗展開していて課税売上が5000万円を超える場合には簡易課税は選択できないことは、前回のブログで書きました。その場合には、簡易課税を選択したくてもできないわけですが、そういう事情以外は、たいていが簡易課税を選択する方が税額が少なくなり、有利になるはずです。

 

では、簡易課税とはどういう計算をするのでしょうか。

前回も少し説明しましたが、売上に係る消費税から控除する仕入税額控除の金額をみなし仕入税額控除として、売上にかかる消費税の何%と決まった率を掛けて計算します。

仕入税額控除をどういう割合にするかは第1種から第6種まであるどこに当てはまるかで変わってきます。

 

第1種・・・卸売業

第2種・・・小売業

第3種・・・製造業等

第4種・・・飲食業、第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない業種

第5種・・・サービス業

第6種・・・不動産業

 

仕入税額控除の率は、以下のようになります。

 

第1種・・・90%

第2種・・・80%

第3種・・・70%

第4種・・・60%

第5種・・・50%

第6種・・・40%

 

さて、治療院の場合ですが、第5種のサービス業に該当します。第何種に該当するかは、原則として「日本標準産業分類」というものによるのですが、この分類のうち、大分類のサービス業の中に「医療、福祉」というものがあり、これに該当するためです。

 

ということで、第5種の50%で計算します。

ですから、治療院の自費売上が1万円で預かっている消費税が800円だとしたら、その50%の400円を仕入れ税額控除して、400円が納付税額になるわけです。

 

この簡易課税の難しいのは、一つ一つの売り上げの内容によって第何種かを分ける必要があるということです

どういうことかと言いますと、たとえば、治療院でコルセットや包帯を販売したとします。物品販売は簡易課税では第1種か第2種になります。第1種は卸売業(業者への販売)ですから、治療院の場合には第2種の小売業(消費者への販売)になります。コルセットや包帯の販売は消費者への販売なりますから、第2種、つまり仕入れ税額控除は80%で計算するわけです。

また、往診で使っている車を売却した場合には、「第1種から第3種・第5種・第6種のいずれにも該当しない」ということで第4種になります。

これらは、第2種だったり、第4種だったりと、通常の第5種よりも仕入税額控除の%の率を高く計算できるため、売上の区分をきちんと分けたほうが消費税の金額が少なくなります。

簡易課税は、特例計算というのがあり、第2種にあたる物品の販売や第4種にあたる車の売却をすべて第5種で計算しても間違いではありません。これはどういうことかといいますと、何種類かある売り上げのうち、1種類の課税売上の割合が全体の75%以上の場合、何種類かの売り上げがあってもすべての売上を1種類の事業とみなして全体の課税売上を計算してもいいという特例があるためです。したがって、治療院の場合、通常の治療院の治療による自費収入の売上が課税売上のうち75%以上なのであれば、全部を第5種として計算しても間違いではないです。ですが、治療院の場合、こうした別の業種区分と見ることができるものがあれば分けたほうが消費税が少なくなるので有利になります。ということで、治療院の場合、多少面倒でも、売上の種類を「通常の治療の自費収入」と「物品販売」と「その他の売上」くらいの感じで、できるだけ分けて計算したほうがいいでしょう。

 

さて、この簡易課税を選択した場合ですが、原則課税の方が税金が少なくなるケースがまれにあります。たとえば、設備投資をして高い治療器械を購入したり、往診車などの車を購入した場合など、数百万円するような固定資産を購入した場合です

この場合は、ケースバイケースですが、原則課税の方が税額が少なくなるケースもありますので、注意が必要です。

といいますのも、簡易課税は前回説明した通り、その事業年度の始まる前までに届け出しないといけません。そして、簡易課税を原則課税に戻す場合も、原則としては、課税期間が始まる前までに届け出を出さないと戻せません。

たとえば、平成29年中に治療器械と往診車を買う予定があったとします。計算してみると、簡易課税ではなく、原則課税を使ったほうが有利になりそうだったとします。その場合、平成28年12月31日までに「簡易課税選択不適用届出書」を税務署に出さないといけません。

 

ちなみにですが、少し複雑な話になるので、このブログではしませんが、1個の固定資産が数百万円の固定資産を購入する場合には、「調整対象固定資産」というのに該当する場合があり、この場合には原則課税でないほうがいい場合もあります。

 

いずれにしても、消費税のこの辺の話は税理士でも適用を間違えるケースがあるほど複雑です。治療院の先生方としては、基本的にはご自身では判断せず、税理士に聞くなり、税務署に聞くなりするのが無難だと思います。治療院の先生方としては、簡易課税の基本的な計算方法をまずは知っていただくことかと思います。



さて、今日は前回に引き続き、治療院の税金シリーズで、消費税の話です。

治療院経営にとって、消費税の知識は必須です。これを機会によく理解しておきましょう。

さて、前回は、消費税の課税事業者になる判定方法とどういう売り上げが消費税の課税売上になるのかの話でした。

今日は、もう少し具体的に数字を使って話をしようと思います。

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その前に、消費税の計算方法は本則課税と簡易課税と二通りありますが、それはご存知でしょうか。

 

本則課税は次のような計算方法です。

 

消費税のかかる売上・・・1万円(消費税は800円)

支払っている消費税・・・4000円(消費税は320円)

 

この場合、納める消費税は売り上げの消費税800円から支払った消費税320円の差額480円です。

支払っている消費税というのは、商品を買ったり、サービスの提供を受けたりして支払いをした時に消費税を払いますよね。そのことを指しています。

本来、消費者が直接、国に支払うべき税金を事業者が代わりに支払う税金が消費税です。つまり、

 

消費者(患者さん)800円⇒事業者(治療院)800円⇒国

 

という流れで、事業者である治療院は消費税を国に納めるわけです。

このとき、事業者である治療院が消費者の立場で支払っている消費税がありますよね。計算上はこれを控除するわけです。

 

消費者(治療院)320円⇒事業者320円⇒国

 

患者さんから受け取った消費税から消費者の立場で支払った消費税を控除して(消費税法では「仕入税額控除」と言います)、その差額を納付するのが消費税の基本的な仕組みです。

 

これに対して簡易課税は、この「仕入税額控除」の部分をだいたいで計算します。

治療院の場合、第5種事業に該当することがほとんど(次回のブログで詳しく説明します)なので、売上で預かった消費税の50%が仕入税額控除とみなして消費税の計算をします。

上記の例ですと

800円×50%=400円

を仕入れ税額控除とみなします

そうすると、消費税は800円-400円で400円を国に納めることになります

 

簡易課税というのは小さい事業者には消費税の仕入税額控除の計算が煩雑だろうということで、特別に売り上げから簡単に消費税が計算できる方法を認めたわけです。

 

さて、では、本則課税にすべきか簡易課税にすべきかというのがどちらでも選択できるのかということになります。これは選択できます。計算してみてどちらか少ないほうで申告すればいいわけです。ただし、簡易課税を選択する場合、その課税期間が始まる前までに届け出を出さないといけません。

たとえば、平成29年から簡易課税にしたいのであれば、平成28年12月31日までに税務署に「簡易課税選択届出書」という書類を出さないと簡易課税を選択できません。平成29年の計算をしてみたら本則課税よりも簡易課税の方が税金が少なかったと気づいても、平成28年12月31日までに出していなければ簡易課税では計算できません。

平成29年が消費税の課税事業者かどうかは、平成27年の申告書を出した時点ではわかっていますから、平成28年12月31日までには簡易課税の届け出は出せるはずですよね。

 

この簡易課税かどうかというのは治療院経営にとっては大変重要です。ちなみに、ほとんどの治療院では、簡易課税が有利になるはずです。一応、計算してみたほうがいいとは思いますが、治療院の場合、ほぼ簡易課税を選択することになるはずです。

 

また、簡易課税が有利でも簡易課税を選択できない場合もあります。

これにはいくつかありますが、代表的なものは 課税売上が5000万円を超えるケースがあります。課税売上が5000万円を超えるというのはほとんどが複数の治療院の店舗を構えているケースです。一店舗で課税売上が5000万円を超えるケースというのはほとんどないですよね?

2店舗、3店舗とやっていくと課税売上で5000万円を超えることはあり得ます。その場合には、一法人で本則課税でやっていくのがいいのか、あるいは、法人をいくつかに分けて簡易課税で計算していった方がいいのか、どちらが有利になるのかを計算する必要があります。まあ、ここまで売り上げが上がってしまっているのであれば、治療院の先生ご自身で計算するのではなく、税理士などの専門家に計算してもらったほうがいいと思います。

 

ちなみに、この課税売上が5000万円を超えた場合ですが、5000万を超えたら即、本則課税になるわけではありません。課税売上が5000万円を超えた翌々年から本則課税になります。この辺は前回、ご説明した消費税の判定の仕組みと考え方は同じです。この5000万円のルールは、簡易課税を選択していても、強制的に本則課税になりますので、注意が必要な点です。

 

さて、今日はもう少し数字を使ったお話をしていきましょう。

先ほどの本則課税の例というのは、わかりやすく説明するために書きましたが、実際には治療院の売上は、保険診療などの非課税売上と自費などの課税売上が混在しています。この場合には、実は計算が少し複雑になります。

できるだけ単純化した例で説明します。

 

<売上>

自費売上 1万円(消費税800円)

保険診療売上 1万円(消費税0円)

<仕入税額控除>

支払った消費税 8000円(消費税320円)

 

この場合、この支払った消費税が自費売上に対応するものなのか、保険診療に対応するものなのか、不明だったとします。(ほとんどが不明なものだと思います)

その場合、この320円は全額仕入税額控除できません。売り上げの割合で、自費に対応する割合しか控除できません。つまり、

 

320円×1万円(自費売上)/1万円(自費売上)+1万円(保険診療)=160円

 

という形で、売り上げ全体のうち、自費売上部分しか控除できません。

結果、治療院が納める消費税は800円-160円=640円 となります。

 

一方で、この支払った消費税が自費売上に対応する消費税というのが明らかにわかっていれば、全額控除できます。たとえば、支払った消費税は自費売上の鍼の仕入だったとします。そうすると、保険診療ではなく、自費売上に対応するものというのが明らかです。この場合には、全額、仕入れ税額控除できます。結果、治療院が納める消費税は

 

800円-320円=480円

 

となります。

 

この辺の話は税理士や会計事務所にお勤めの方にはいたって当たり前の話です。しかし、治療院の先生には縁遠い話なので、図を描いてみたりして説明はしますが、いつも説明に苦慮する部分です。できるだけわかりやすくは書いたつもりですので、上記のような基本的な部分だけは理解していただけるといいかなと思います。

 

次回は、この続きで、治療院の消費税で、簡易課税の計算について少し突っ込んだ部分も含めて話を進めていきたいと思います。



先週は一週間、夏季休暇としていました。今日から再開します。

さて、夏季休暇前に治療院は保険診療中心から自費診療中心に切り替えるべきという話をしました。その関連で、その場合に、税金などにどういった影響があるのかについて、何回かに分けて書いていこうと思います。

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保険診療中心から自費診療中心に移行していくと、実はいくつかの税金の問題が発生します。大きな問題としては、消費税の問題です。これらも知ったうえで、保険から自費への転換を図っていく必要があります。

基本的な部分からご説明いたしますので、治療院の経営に役立ててみてください。(実際には細かい話もありますが、多少、割愛します)

治療院の消費税の問題というのは「保険診療中心だったころは、免税事業者で消費税を払ったことがなかったのに、自費中心にすることで課税事業者になって消費税を払わないといけなくなる」というものです。

 

治療院の収入は内容によって消費税がかかるものとかからないものがあります。

保険診療は消費税は非課税です。一方で、自費治療(実費治療)は消費税は課税取引になります。

消費税は課税とされる売上が年間で1000万円を超えると、1000万円を超えた年の翌々年から消費税の課税事業者になります

ですから、たとえば、個人事業者の場合、平成29年1月から12月の課税売上が1000万円を超えると、平成31年は消費税を支払う事業者になります。ですが、平成30年の課税売上が1000万未満であれば、翌々年の平成32年は消費税は免税事業者、つまりかからないわけです。

1年ごとに消費税がかかるかからないを判断して、原則として翌々年が課税事業者になるというわけです。なぜ翌々年かというと、これはたとえば平成29年が売り上げが1000万円を超えているかどうかがわかるのは、平成30年に入ってからのはずです。1月か2月か、そのくらいにわかるわけです。わかるころにはすでに平成30年は始まっています。消費税というのは、消費者に転嫁される税金なので、治療院の場合、平成29年が1000万円を超えていたのであれば、治療院の患者さんに消費税をその分、上乗せしてもらう必要があります。平成29年が1000万超えていたからといって、平成30年から消費税の課税事業者にしてしまうと、すでに経過してしまった1月や2月の売上分は消費税をもらわなかったということになってしまいます。そのために、翌々年、つまり平成31年から徴収するようにしているわけです。

この考え方は消費税法に共通してある考え方ですので、是非、知っておきましょう。

 

さて、いつから消費税がかかるのかは分かったと思います。

では、どの売り上げが消費税がかかるのでしょうか?

 

治療院の場合には、おおむね、以下のような形になります。

 

保険診療売上・・・非課税

自費売上・・・課税

物品販売売上・・・課税

自賠責保険売上・・・非課税

助成金などの補助金収入・・・不課税

受取利息・・・非課税

 

非課税と不課税というのは違うのですが、ここでは説明は省きます。

あとは、たとえば、整骨院で鍼灸マッサージをした場合には、その鍼灸マッサージ売り上げは課税です。訪問の鍼灸マッサージは保険診療となれば、非課税です。この辺は保険請求するかどうかで分かれますので、注意が必要です。

 

さて、今日は、消費税の判定の話と、どの売り上げに消費税がかかるのかというお話でした。

次回は、簡易課税など、もう少し突っ込んだ話をしていきましょう。



さて、今日は近年の治療院経営にとっては大変悩ましい問題である保険収入の件について、考えてみようと思います。

初めにこの話は、私の顧問先の治療院でもここ数年は大変大きな関心ごとの一つで、お伺いすると必ずと言っていいほど上がる話題が「保険診療をどうするのか」という話です。

つまり、保険を自費にどう切り替えていくべきかという治療院経営の根幹ともいえる大きな課題です。

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ひーりんぐマガジンという治療家向けの雑誌に品川の会計士の先生である上田先生も書かれているのですが、ここ近年の治療院の売上は軒並み、特に保険診療収入の減少は顕著です。理由は治療院の経営者の皆さんはよくわかっていると思いますが、一つに保険請求しても返戻される、つまり保険請求したレセプトが何らかの理由で返されてしまう割合がかなり増えているためです。5年前や3年前から比べても1割近く返戻率が上がったのではないかと思います。

これは柔整師などによる不正請求が後をたたず、その反動で別に問題ない請求をしている柔整師の保険請求も返戻されていることにもよります。

もう一つは、柔整師の先生自身が、請求する部位数を減らしていることもあると思います。保険が差し戻されるとその後の事務処理が大変、煩雑になります。そのため、問題がありそうな請求はそれ自体をしないという選択肢を取る先生もいらっしゃるわけです。結果、保険請求自体が減るという現象が起こっています。

 

いずれにしても、柔整師や鍼灸師などの治療院の保険請求は今後、ますます厳しくなることは確実です。

 

では、どうしたらいいのかです。

 

柔整師や鍼灸師などの治療院の市場規模は、年間で4000億円とも5000億円ともいわれます。これは今後も拡大する傾向にあります。問題なのは、整体院など保健所登録の必要ない治療院も含め、数が非常に多いことです。整骨院、鍼灸院の他に整体院など含めると治療院の数は全国に約10万件以上あるとも言われています。

 

私はこれはデータの見方の問題だと思っています。

要するに、市場規模はどんどん拡大していく傾向なわけです。市場規模が小さくなっていく他の産業に比べ、大変恵まれた環境です

しかし、治療院自体の数自体がそもそも多いということは、治療院の中でも淘汰されていくということにもなります。

 

10年前と違い、保険の請求単価は確実に下がっています。つまり、経営のポイントとしては「落ち目の保険はあてにせずいかに自費に移行していくか」ということになります。さらに言えば、その自費への移行を早く完了したところから、この保険診療の下落傾向という世の中の流れから抜け出せることになります。

また、近年、自賠責保険の請求も保険会社からの締め付けが厳しく、苦戦傾向が続いています。つまり、交通事故などの自賠責保険での売り上げも今後はどうなっていくのかが不透明です。

まとめると、保険や自賠責保険以外の自費でどのように売り上げを作っていくのか、これがここ数年の治療院経営の最大のポイントということになります。

 

今現在で、保険から自費にうまく移行できれば、治療院経営にとっては確実に、一歩リードと言えます。先ほど例に出した上田先生の出しているデータでも、保険診療が減っても自費にうまく移行できていない現状がうかがえます。

違う言い方をすれば、まだほとんどの治療院が保険から自費への移行にまでつながっていないわけです。だからこそ、今、この時期に自費に移行できれば他の治療院に一歩リードできるわけです。

 

私は、治療院のこうした保険診療の減少という現象は、考え方次第だと思っています。市場規模自体は拡大しているという恵まれた環境にあるわけです。なにも保険にこだわる必要はないわけで、保険以外の自費診療も含め、トータルで収入を増やせればいいわけです。そのためにも、治療家の先生方はどの方向で自費を増やすのかをじっくり考えて検討しないといけません

 

また、自費に移行することは、経営基盤の安定につながります。保険に頼った治療院の経営は、保険者の裁定次第のところが否めず、経営的には非常に不安定と言えます。一度、自費治療で売り上げができる仕組みを作れば、私が見ている治療院でも、それほど売り上げが下がることにはなっていません。つまり、自費中心の治療院を作ることは経営基盤の強化にもつながるわけです。

 

私は最近、顧問先の治療院の先生方に「保険と自費の売上の割合を2020年までに50%・50%にまで引き上げよう」と言っています。2020年、3年後までに売上の半分は自費に移行する形を作る。これができれば、治療院経営が安定する道筋ができたと言えると思います。

 

どうやって自費を増やすのか。これは先生がどのような治療を得意とするのかということにもよるため、治療院によって千差万別です。だからこそ、「保険から自費への転換」というテーマについて是非、時間を取ってじっくり考えてみてはいかがかと思います。