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経営者からいただく銀行融資の質問で多いことの一つにこういった質問があります。

銀行からの借入金というのはどのくらいが適正なのか」というような質問です。

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銀行は決算書や試算表などの財務データをもとにその会社の財務状況をコンピュータ解析しています。「一次審査」のようなものでしょうか?それに、経営者から聞いた事業見込みや担当の銀行員の独自の考えなどを加味してその会社を「診断」します。

借入金などの数字が適正かどうか(借りすぎていないか)は、一般的にこの「一時審査」とも言うべきコンピュータ解析の段階でチェックされる項目です。

 

一般的に、「借りすぎていないか」というのはどういう基準で判断されているのでしょうか。

 

一般論としてですが、月の平均売上高の4ヶ月前後というのが借入金の多いか少ないかのポイントとなっているようです。

1か月の売上高の4ヶ月分より少なければ、対売上比で借入金が少ないと判断されます。4か月以上8か月未満程度だとやや多いと判断され、年商の3分の2以上だとかなり多いという感じです。この範囲になると新規融資には慎重になる感じです。

また、経常利益で借入金を返済するわけですから、経常利益で借入金の年間返済額をまかなえているかもポイントになるでしょう。決算書のうち、減価償却費は現金支出のない経費ですから、「経常利益+減価償却費」が借入金の年間返済額未満かどうかも「一時審査」のチェックポイントです。借入金が膨らんでいて年間返済額が「経常利益+減価償却費」を上回っていると、これも新規融資が受けづらいと判断されるかもしれません。

 

また、たとえば、「リース債務」など、「借入金」に近い性質のものがあればこれも借入金と考えてコンピュータ審査は行われます。リースがあればそれも借入とみなして、「月商の何か月分か」あるいは、「経常利益+減価償却費」の金額の範囲に「借入金の返済+リースの返済額」が収まっているかもチェックしてみるといいでしょう。

 

ただ、いずれにしても上記はいわゆる「一時審査」であるコンピュータ審査の段階の話です。事業の可能性だったり、事業の継続性だったり、そういう数字には表れない部分は人間が判断します。つまり銀行員自身が評価します。銀行融資というのは、「一時審査」にそれらを加味して総合的に判断されるわけです。ですから、「一時審査」の判断要素である「月商に対しての借入金」というのはあくまでも目安であると理解しておいた方がいいでしょう。

 

もう一つ。あまり「借りすぎではないか」ということを過剰に意識しないほうがいいということもあります。「借入金の金額が多くなってきたから今回は借りないで自分の預金から資金繰りに回そう」と考える経営者も多いです。以前にもこのブログで触れましたが、経営者の個人の資金を出す前に銀行融資を優先すべきです。上記の「月の売上の約4ヶ月分」というのは一般的な目安にすぎず、それよりも目の前の資金繰りが回るのかどうなのかがまずは重要なのです。「月商の4ヶ月分」と言ってしまうと、それが独り歩きしてしまうのですが、これは単なる目安です。ケースバイケースであることは理解しておく必要があります。

 

また、銀行が貸すと言っているのに借りるのに必要以上に慎重になる経営者がいます。それらの多くは誤解があると思われるものです。そもそも銀行というのは融資になる慎重な部分があります。もし回収できなかったとしたら、利息であげる収益の何倍もの損失を出してしまうこともあるわけですから当然です。

銀行員には「融資畑」と「営業畑」の2種類がいます。「営業畑」の銀行員は、貸し出すことに意味を見出すので、貸すことを前提に物事を考えます。一方で、「融資畑」で長年審査を担当してきた銀行員は融資の審査が辛くなりがちです。返せなくなることを考えて融資をするからです。

その「融資畑」の審査も無事に通過していて、晴れて銀行がお金を貸すと言っているのに過剰に「借りすぎではないか」と反応してしまうのも変な話です。きちんと銀行の審査を通っているのであれば、それは返すだけの根拠があるから銀行も貸しているわけです。堂々と借りて問題ないわけです。

借りられるときに借りられるだけ借りておく」これは対銀行対策の鉄則です。一般的な言い回し(たとえば、月商の4ヶ月分というようなこと)はわかりやすいですから、私も使うわけですが、あまりそれにこだわらなくていいと思います。

 

いずれにしても、銀行融資に対しての一般的な考え方を知っておくのはいいことです。

その意味で、適正な借入金というのを一般論として知っておくことは有意義だと思います。



さて、今日も銀行融資の話です。

以前に顧問先からこんな相談がありました。

「少し資金ができたし、借入金の残高が少なくなってきたので、A銀行の融資を繰り上げ返済しようと思うんです。返済してしまっていいと思いますか?」

さて、このご相談に皆さんだったらどのように回答されるでしょうか?

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その前に、「借金=マイナスの資産」だから借入金が少なければ少ないほどいい経営をしているという考え方は、誤解があるというのはこのブログでは何度も書いてきたことです。それよりも大事なのは、現預金をなるべく多く持つということです。「借金をしたくないから個人の預金を資金繰りに回す」というのは本末転倒です。

 

この基本的な考え方を元に、繰り上げ返済について考えてみましょう。

 

まず、繰り上げ返済というのは銀行はどうとらえるのか?

銀行は銀行にとっての商品である「お金」という商品を貸し出して、利息をもらって収益を上げる商売です。その貸し出しているお金を期日前に返されてしまうというのは、銀行にとってはあてにしていた金利がもらえなくなります。しかも、期日前に返済されてしまうというのは予期していないことです。営業するなりして、期日前に返された分は他に貸し出さないといけません。経費を使って営業活動して新たな貸出先を探さないといけません。つまり、銀行にとって繰り上げ返済されるというのは、少なからず負担になるわけです。

 

では、経営者側から見た場合、繰り上げ返済はどういう効果があるのか、考えてみましょう。繰り上げ返済されれば基本的には銀行は「なんで早く返すんですか?」とは言いません。何も言わずにそのまま受け付けます。返すと言っているものを返さないでくれとは言えないわけです。それはそうなのですが、繰り上げ返済して借入金がゼロになってしまうと、経営者側からすると、その銀行との関係が切れてしまうということを意味します。一般的に、繰り上げ返済するよりも新たに借入する方がエネルギーがいります。つまり、もうその銀行と付き合わないのであれば繰り上げ返済してもいいでしょうが、何かあったら(資金繰りで困ることが起こったら)また借りようと思っているのであれば、基本的には繰り上げ返済はしないほうが無難です。

また、そもそもなのですが、なぜ繰り上げ返済しようとするのでしょうか?

「早く返してしまいたい」ということでしょうか?あるいは、利息はもったいないということでしょうか?

経営というのはいい時はいいですが、悪くなると短期間に資金繰りが悪くなってしまうことはよくあることです。それでも繰り上げ返済したいのであれば、最悪の事態を想定しても問題ない範囲で、全部ではなく借入金の一部を繰り上げ返済するくらいでいいのではないかと思います。

 

また、たとえば「日本政策金融公庫で融資を受けられたので、銀行の借入金を返済してしまおうと思う」というような話もよくあります。

これも慎重にやる必要があります。ケースバイケースですので、公庫で受けた融資で民間の金融機関の融資を一括返済するのがいい場合もあるかもしれませんが、その場合であっても、「公庫で融資を受けられたからそのお金で一括返済する」などということを銀行に言ってしまうようなことはやめたほうがいいです。こんなことを言ってしまっては銀行側の心証はかなり悪くなります。先ほども書きましたが、銀行にとって繰り上げ返済されるのは、収益が減ることを意味します。決してうれしいことではありません。それを「他で借りたからそのお金で返す」などという話を正直にしてしまっては、今後、その銀行との付き合いがやりにくくなります。返すにしても「資金が潤沢になってきたので繰り上げ返済しようと考えています」などと言ったほうがいいでしょう。

 

ということで、まとめますと、繰り上げ返済は基本的にはやめておいた方がいいです。ですが、どうしても繰り上げ返済したいのであれば、全部ではなく一部にしたほうがいいです。さらに、全部を繰り上げ返済するのであれば、「資金があるので返済したい」などと言っておく といったところです。

 

銀行は企業経営にとっては要になる重要な部分です。その意味でも、銀行がどう考えているかを知ることは大変重要です。しかし、銀行の話というのは誰も教えてくれません。このブログでは何度も説明していますが、税理士が関与していても税理士も融資に関しては素人同然の人も多いため、結局、どうするのが一番いいのかわからずにいるという経営者が多いように思います。

次回も引き続き融資の話をしたいと思います。



さて、前回の続きです。

前回は「定期預金」の話をしました。今回は「定期積金」について考えてみましょう。

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定期預金と並んで定期積金も銀行から要求されることが多いものです。

まず、定期積金というのはどういう商品かの確認です。

定期預金と定期積金とは似て非なるものです。

定期預金は位置づけとしては、「預金」です。つまり、銀行的には普通預金や当座預金と同じような扱いで、預金の一つとして「定期預金」があるわけです。では、定期積金」はというと、これは「金融商品」に近いものです。感覚的には、個人年金保険とかに近いです。定期積金というのは毎月、一定額が口座から「定期積金」という口座に振替えられます。毎月一定額が振り替えられることから、ある一定金額を貯めたいというような場合には適した商品です。ただ、たまったお金の意味としては「定期預金」と同じです。ある一定額の拘束されているお金があるという意味では同じだからです。

 

さて、銀行から「定期積金をやってもらえませんか」と言われた場合、どう考えればいいのかというのが今回の論点です。

 

銀行としては前回の定期預金と同じで意味としては二つ考えられます。つまり、

1.借入金の保全を図ろうとしている

2.実効金利を上げることを考えている

ということです。ですが、定期積金の場合、もう一つ意味があるように思います。それは、

3.「定期積金」という商品を販売したことが営業マンの営業成績となる

ということです。

定期積金はどちらかというと、信用金庫や信用組合のような金融機関でよく勧められる商品です。これは信金や信組では営業マンのノルマの一つに上がっていることが多いことが要因になっているようです。銀行の営業マンは、通常、融資だけでなく、様々な金融商品の販売もノルマになっています。「定期積金」の販売実績もその一つだということです。

 

「定期積金」のそもそもの目的は「毎月、少しずつお金を貯める」ということです。つまり、定期積金は何か購入したり消費したりする目的のものがあって始めるというのが本来の趣旨です。「定期預金」はある一定期間、当面、使う予定のないお金を普通預金ではない口座よけておく(しかも普通預金よりも金利が高いことから投資的な側面も少しある)というのとは意味が違います。

たとえば、車の買換えに備えて毎月積み立てておくというような趣旨であれば、「定期積金」にするのは意味があるということです。

 

ただ、定期積金も銀行は崩す際には「何の目的に使うのか」というのは聞かれます。場合によっては抵抗される場合もあるでしょう。その意味では、定期預金と同様に、拘束性のある預金と言えます。

仮に定期積金」をやるとしても、ポイントは毎月一定額を振替えるのが負担にならないかということが一番に考慮に入れるべきことです。別に積み立てられているとはいえ、普通預金のように簡単には引き出せないわけですから、「資金繰りの邪魔にならない」ということを考える必要があります。また、定期積金にも満期があります。満期が来てたまったお金を今度は「定期預金」に回すというのであれば、本来の「定期積金」とは意味が違ってしまいます。何かの目的でためていて、その金額まで積みあがったお金をまた拘束性のある口座に入れてしまうことなので、せっかく「定期積金」をやった意味がないです。「満期が来たら普通預金に入れる」のが常道です。

定期預金と同じように、定期積金についても、「なぜ銀行は『定期積金』をするように言ってきたのか」をよく考えてみましょう。その上で、やるにしても資金繰りに影響のない程度の少額にとどめておくのが常道だと思います。



さて、今日も銀行の話をしたいと思います。

銀行融資は経営にとっては中心を占める大事な話です。経営者が理解しておくべくことも多いです。

銀行から定期預金(あるいは定期積金)を組むように言われたのですが、どうしたらいいのでしょうか?

これは銀行に関係することでよく質問されることでもあります。今回はそのうち、定期預金について、考えてみようと思います。

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銀行から定期を組んでほしいと言われるということはその銀行で借入金があるということだと思います。借入金がある銀行で「定期を組んでほしい」と言われるというのは意味としては二つあると思われます。

 

  1. 借入金の保全を図ろうとしている
  2. 実効金利を上げることを考えている

 

まず、①の方ですが、この場合には警戒する必要があると思います。たとえばその銀行から1000万の借入があって、定期組んでほしいと言われて500万の定期を組んだとします。そうすると、実質的に銀行は1000万の借入ではなく500万の借入と同じということになります。仮に返済不能になったとしても500万は定期を組んでいるわけですから、500万は担保に取られているのと同じです。実質的な借入金は500万ということと同じということです。ですが、利息は1000万に対しての利息が銀行の収入になります。500万部分はいざ返せなくなったとしても銀行からしてみれば押さえていながら1000万の利息収入が入るわけです。銀行からすれば都合がいいわけです。

 

さて、問題は、なぜこういうことを銀行は要求してくるのかということです

融資をする際には、銀行はその会社を「格付け」しています。銀行は融資をする際には同時に「保全」といってその企業が貸していたお金を返せなくなった場合のことも考えないといけません返せなくなる可能性が高い企業には「貸倒引当金」という返せなくなる場合のお金を余計に積んでおかないといけません。つまり、返せなくなる可能性がより高い企業にお金を貸す場合、銀行の「貸倒引当金」が増えることになり、銀行の収益が悪化します。そのために「保全」というのを行います。たとえば、それが「定期預金」だったり、土地などの不動産の「担保」だったりします。銀行はそうやって「保全」を図るわけです。「保全」が図れればその分、銀行が積まないといけない「貸倒引当金」は減ります

要するに、「定期を組んでほしい」と言われたということは、保全」を図るくらい銀行からしたら「格付け」は高くないということを意味しています。

「銀行融資で資金調達するのも今は出来ていても少し業績が悪化したら難しいかもしれない」と考えてもいいかもしれません。

 

ちなみにですが、「定期を組んでくれたら融資します」というような言い方は禁止されています。銀行は企業に対しては優越的な位置にいます。その銀行がこのような言い方をすれば企業は応じざるを得ないわけで、これはやってはいけないことの一つです。銀行もそのことはよくわかっていますから、「定期を組みませんか」と促すように言ってきます。促すように言って、それに応じて定期を組むか組まないかは、企業側の問題です。それであれば、問題ないということです。

 

なぜ銀行がこうしたことを言ってくるのかということは銀行側の発言などからよく考えておく必要があります。

 

また、②の「実効金利」を引き上げることを目的としていることも考えられます。この辺の話は以前のブログでも書きました。↴

定期預金ってやった方がいい?銀行との付き合い方を考える

銀行としては少しでも業績をよくしたいので定期を勧めてきているということです。

銀行の決算間際で、収益を少しでも良くしたいことが目的だったり、担当の営業マンのノルマ達成が目的なのかもしれません。

 

いずれにしても、①なのか②なのか、はたまた両方の目的があるのか、その辺の真意を測ることは大変重要です。

 

さて、そもそもですが、よく多くの企業で「定期預金」を銀行で組みます。いろんなきっかけがあってそうするのでしょうが、基本的に私は銀行に定期預金を組むことはすべきではないと言っています

定期預金というのは、基本的には銀行にとっては、他の企業に融資をする際、原資としてあてにしている資金です。それを崩されると困るということもあるでしょうし、定期を崩されると実効金利が下がって銀行の収益に影響するという理由もあるでしょう。ケースバイケースで理由はあるでしょうが、基本的には銀行は嫌がります。つまり、定期預金というのは自社のお金であって自社のお金でないというものなのです。定期を崩すと「何のために使うのか」と必ず聞かれます。用途を言わないと引き出せないような「簡単に引き出せないお金」が定期預金なのです。

ですので、私は基本的に、定期預金は組まずに、普通預金のようないつでも引き出し可能な口座に入れておいた方がいいとお話します。定期預金の利息と言っても、今の低金利でしたらたいした利息にならないはずです。何か目的があって定期預金を組んでいるのであれば別です。大した目的もないのに自らわざわざ資金繰りに使いづらい口座に移す必要はどこにもないということです。

 

ということで、基本的な考え方として、銀行から定期を組むように奨められてもお断りするのが常道ではないかと私は考えています。

 

次回は、定期預金に少し似ている「定期積金」についてどう考えたらいいのか、お話したいと思います。



さて、今日は特に治療院の先生向けに書いていこうと思います。

銀行融資の話です。(主には治療院の先生向けに書きますが、一般の経営者の方にも役立つ話であると思います。)

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私は顧問先に治療院が多いです。(治療院経営の専門家と一応、自負しているので)

 

介護事業所はそうでもないのですが、治療院の先生のよくあるパターンとして開業時に創業融資を借入し、その後その返済が終わり近くなると銀行から「融資残高が少なくなってきたのでいくらか借入しませんか?」と言われることがあります。

私の経験上、ほとんどの治療院の先生はここで「借りない」という選択をします。

「借金=経営リスク」と考えていて、借入はない方がいいと、とにかくそういう思い込みがあるわけです。治療院の場合、毎月の収支は家賃や人件費など読めるものが多いです。患者数を現状維持か、少しずつでも増やしてきた治療院の先生は、借金をしなくても回せるので「いい経営というのは借金しないことだ」と思うわけですはっきり言いますが、この考え方は間違っています。銀行から借り入れすることは治療院経営にとっては、不可欠な話で、無借金経営ほど危険なものはありません。

 

たとえば、治療院を経営していて(治療院でなくてもいいのですが)、悪い時がありますよね?今月は患者が少なかった、自賠責保険の売上がなかった、あるいは思わぬ出費があった(たとえば店舗の冷暖房機が壊れた)というように必要経費が通常よりも多いこともあります。

治療院というビジネスは(多くのビジネスがそうですが)、月ごとに収支をみていくものです。たとえば、ある年の1月の売上の減少が極端に少なかったとします。悪い時には悪いことが重なります。2月は今度は自動ドアが壊れてこの修理で思わぬ出費があったとします。さらに、3月は自賠責保険で保険会社と揉めて入金予定だったものが入らなかったとします。偶然にもこうした出来事が3か月続いたとします。

治療院の預金通帳を見ると、残高がみるみるうちに減っているわけです。

4月はというと、個人の場合、所得税や消費税の振替納税があります。

税金のことを考えると足りません。

 

さて、こういう場合、治療院の経営者はどの時点でどう考えるのが一般的でしょうか?

 

ほとんどの治療院の経営者が4月の税金の納付前に、治療院とは別の個人の口座から税金分の資金を移動します。それで何とかしようとするわけです。

しかし、5月はゴールデンウィークもあり、もともと稼働日数が少ないです。売り上げがそれほど上がらなかったらどうでしょうか?そもそも保険収入は入金は4ヶ月から6か月先です。仮に患者さんが来たとしても、売上の少なかった1月の入金がようやく5月・6月くらいにあるわけです。そうすると資金繰り的には厳しいことは目に見えています。

こうしたとき、治療院の先生は「とにかく、目の前のお金のやりくりだけを考えてあのお金をこっちに持ってきてどうにかしよう」と考えるわけです。

 

経営で一番大事なことは何かというと、「現預金を多く持つ」ことです。

このことはこのブログでも何度も書いてきました。現金があれば倒産はしない。これが経営の鉄則であり、一番大事なことです。

銀行融資の鉄則、「晴れた時こそ傘を借りる!」

多くの治療院の先生がかたくなに思っている「借金=リスク」だから借入しないという選択はそもそも間違っています。(もともと預金残高が潤沢にあるのであれば別ですが)

 

治療院の経営で、上記のような状況になるというのは別に珍しいわけではなく、よくある話です。

こういう時、治療院の先生には、次の順番に考えてほしいとお伝えしています。

 

  1. まずは銀行からお金を借りる
  2. 銀行の返済ができなくなったら、銀行の返済をリスケジュール(返済猶予)する
  3. 経営者の個人の預金を事業の通帳に入れてつなぐ
  4. 経営者個人が借入して事業の通帳に入れる

 

ほとんどの経営者が3からやります

個人の通帳からお金を出すのはあくまでも銀行があてにできなくなってからなんです。この順番を間違えるわけです。

ちなみに、4まで言ってもどうにもならなくなったらその時に、税金や社会保険の滞納、支払先への支払いの延期という手段を使うことになります。(従業員の給与の遅配はさらにその後ということになります)

また、銀行からの返済が滞る前に、税金の滞納をする人がいますが、これはもってのほかです。税金を滞納すると銀行はお金を貸してくれませんし、そもそも税金の滞納には延滞税や加算税という高い利息が付きます。いいことは一つもなく、だったら2のリスケジュール(銀行の返済を猶予してもらう)をすべきです。

 

さて、上記の治療院の例ですが、私は顧問先の治療院には1月の売り上げが減少する前に借り入れが少なくなった時点で融資の申し込みをするように奨めます。つまり、比較的状態のいい時に借入するように話をします。「晴れたら傘を貸し、雨が降ったら傘を借さない。」この銀行融資の原則からしても、まだ状態のいい時に借りたほうが借りやすくなります。経営のリスクを回避するというのはとにかく現預金を多く持っておくことですから、1月以降のような良くないときに借りるべきではありません。また、仮に12月までに銀行からの借入をしなかったとしても、遅くとも1月か2月の時期に借りておくべきです。3月くらいに融資が下りれば少なくとも4月の納税時期には間に合います。仮に個人のお金も手元になく、納税できなかったら銀行からの借入もできないことになり、坂道を転げ落ちるように一気に経営危機に陥りかねません。この例であれば、遅くとも3月には融資をしておくべき(確定申告が終わってすぐに融資を受ける)ということになります。

 

治療院に限りませんが、経営にとっての本当のリスク管理が何なのか、今一度、考えてみてはいかがでしょうか。



前回に引き続き、銀行の話を今日もしてみたいと思います。

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よく、銀行口座を作って銀行との関係を作るというような話をする経営者がいます。

口座を開いてお金を預け入れすれば関係が作れるというような話です。

 

これを銀行側から考えてみましょう。

銀行側から見ると、預け入れてもらったお金は、引き出したいと言われたらすぐに返さないといけないお金です。当たり前の話ですが、こういう当たり前のことが重要なんです。

この当たり前の話を銀行側からすると、預金者の預け入れのお金は「負債」勘定となるものです。

預け入れする我々預金者の側は預金通帳の残高は「資産」ですが、銀行からすると「負債」なわけです。当然と言えば当然なのですが、誰かの資産は誰かの負債になっています。「簿記」というよりかは「経済」の基本的な考え方です。

 

さて、銀行口座を開いて関係を作るという話です。

口座を開いただけでは、銀行側からすると、ただ「負債」が増えるだけです。(もちろん相手勘定である「現金」も増えていますが)つまり、銀行的には収益に貢献できているわけでもないわけです。

前回のブログでも書いた通り、銀行の本質は「金貸し」です。「お金」という銀行にとっての「商品」を誰かに貸すことによって「利息」という収益を得るビジネスモデルです。

本来は、預け入れてもらった預金を他の誰かに貸すことによって収益を得ているわけで、預金してもらうことも銀行の大事な業務なわけですが、今、銀行の置かれている状況というのは空前のカネ余り状態です。銀行が大量に持っている国債を日銀に売って売った代金である日本円が銀行の手元にあるわけです。(日銀から売却するよう言われたから売ったわけですが)

ご存知だと思いますが、今は「マイナス金利」という時代です。銀行は手元に一定程度お金があると日銀に預け入れしないといけません。預け入れすれば本来は「利息という収益を得る」ことができるわけですが、マイナス金利というのは逆に「利息を払う」ことになるわけです。銀行にとってはそれは損な話ですよね?だから、手元にあるお金を誰かに貸して収益を得るようにしたいわけです。日銀のマイナス金利政策というのは、つまるところ、日銀が銀行から国債を買い取って銀行が手元に持っている現金という商品を誰かにお金を貸すことによって景気を活性化させよう(デフレを脱却させよう)という政策なわけです。

 

ちょっと経済の話に飛びましたが、要するに、「口座を開いて銀行との関係を作る」というような経営者の話は少しピントがずれているというのはわかりますか?

銀行にとって関係というのは、あくまでもお金を借りることによって築かれるものなんです。特に、今のような経済の状態(マイナス金利の状態のことです)では、銀行にとっては預金を預け入れしてもらうことよりも、お金を借りてくれる人の方が「いいお客さん」なわけです。

 

よく考えてみてほしいのですが、今、普通預金の利息って何%くらいでしょうか?

0.01%~0.02%くらいです。

1千万円預け入れしてもたったの1年で1000円から2000円程度にしかなりません。

それに対して、借入した時の利率はおおよそ1%~3%の範囲です。

史上空前の低金利時代です。

これを銀行の視点から解釈すると、貸出金利が安いというのは、借入金という商品をみんなに買ってもらいたいからですよね。だから、借りた時の金利が安いわけです。逆に、銀行にとっては「負債」になる預け入れの金利が安いというのは「今は預金に預け入れしてもらっても困る」というメッセージでもあるわけです

 

さて、銀行の口座を開くということの銀行側からすると特に「関係を築く」と言えるほどではないというのはわかったと思います。

 

ここでやや応用的な話です。

 

取引銀行から1000万円の借入金があったとします。金利が2%だったとします。

そうすると、年間の利息は20万です。

この状態のとき、銀行の担当者が「定期預金を組んでほしい」と話しに来たとします。

これはどういうことでしょうか。

 

銀行にとって考えてみればわかる話です。

たとえば、上記の状態で500万円の定期を組んだとします。

そうすると、銀行にとっては実質的に、「1000万円-500万円」ということで500万円貸しているのと同じということになります

つまり、利息収入は20万円なのに対して、借入金は500万円なわけですから実質的には20万円÷500万円で、年利4%で貸しているのと同じと考えるわけです

 

銀行からすると、すでに借入金がある先に「定期を組んでほしい」という話をするのはこういう効果が期待できるからです。こういうのを実質金利といいますが、この実質金利という数字を得たいために、こんな話をしてくるわけです。500万の定期を組んでもらって銀行の手元の現金を増やしたいわけではないということです。

 

さて、預金と借入金のこうした基本的な話というのは経営者としては必ず理解しておくべきことだと私は思います。本来はこうした話は顧問税理士がいればその税理士からしないといけないわけですが、こういう銀行の考え方のような話をしてもらったという話をほとんど聞きません。税務や経理処理も大事ですが、経営というのはそれだけで成り立っているわけではありません。むしろ税務申告や経理というのは経営にとってはほんの一部分でしかありません。

もしこのブログをお読みの方が依頼されている税理士からあまりこういう話を聞いたことがないのであれば、その関係を考えないといけないと私は思います。

 

また機会があったらこうした銀行の話を書いていこうと思います。

 



だいぶブログの更新ができていませんでした。処遇改善加算対応やらなにやら、結構、確定申告が終わっても忙しい日々でした・・・

さて、今日は銀行融資の話です。

顧問先でこの話をすると感心されることが多いので、書いてみます。

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みなさん、経営にとってもっとも大事なことは何だと思いますか?

言い方を変えれば、「倒産」しないようにするにはどうしたらいいと思いますか?

 

多くの経営者が銀行の借入金をとにかく少なくしようとそればかり考えています。経営者によっては5年返済の借入金を少し現金ができたからと言って、繰り上げ返済してまで先に返そうとします。「借金」があることはとにかく「リスク」と思っているわけです。「借金=リスク」という思い込みは経営にとっては百害あって一利なしではないかと私は思います。

 

たとえば、銀行から借り入れをするとき、1000万は融資が下りるだろうとなったとします。

でも、500万くらいあれば足りるとします。そうすると、500万しか借りないわけです。

しかも、7年返済でやろうと思えばやれるのにわざわざ5年とか、場合によっては5年よりも短い期間に設定しようとするわけです。

 

こうした経営者の思考法は、「借入=リスク」という思い込みによるものだと私は思っています。もちろん、借入金あれば一定程度のリスクはあります。しかし、経営にとって借入金の残高よりも怖いことがあります。それは「手元の現金がなくなること」です

よく考えてほしいのですが、なぜ倒産するのでしょうか?それは「現金がなくなる」からです。つまり、借入金がたくさんあるから倒産するわけではありません。借入金があってもそれだけでは倒産はしません。会社経営が継続できなくなるのは、現金がなくなった時です。

 

最近の倒産事例として有名になったのは旅行代理店の「てるみくらぶ」です。確かに借入金がたくさんあった(正確には多額の負債があった)ようですが、倒産した本質は借入金がたくさんあったからではなく、現金がなくなったからです。手元の現金以上に支払う必要のあるものがあったためです。

 

つまり、経営にとって大事なのは、より多くの手許現金を持っておくことなわけです。現金があれば倒産からは遠くなります。借入金をいかに少なくするか、という思考法は本当に大事な部分がおざなりになっていると思います。

 

少し乱暴な言い方をすれば、お金を作るのであれば売上でお金を作るのではなく、誰かに出資てもらう方法でもいいですし、もちろん借入金でもいいわけです。「現金を最大化する」これが経営にとって最も重要なことです。

 

こういう話をすると、「そういっても借りれば返さないといけないし、なにより銀行に利息を払わないといけないのがもったいない」なんていう話をする方がいます。

よく考えてほしいのですが、年利は今1%~2%といったところです。仮に100万借りたとして年利で1%~2%だったら、年間の利息は1万円~2万円です。実際にはそれを12で割った金額が1か月の利息です。これって、何かの会費程度の話ですよね?

借入をなるべくしないで経営するのが一番いいと考えて、とにかく手元の現金をやりくりで毎月ギリギリでなんとかしている経営者がいますが、私から見ますと、こんな危なっかしい経営の仕方はないと思うわけです。

 

そして、「借入するのは経営の状況が悪くなった時」と考えている方も非常に多いです。こういう方はよく考えてほしいのですが、銀行は経営状況が悪くなれば、当然、金利や返済期間などの条件は厳しい条件を出してきます。かなり悪い経営状態なのであればそもそも借入自体できないこともあり得ます。つまり、「悪くなってから借りる」というのは自分の理屈であって、銀行サイドの事情は全く加味していません。

 

銀行を揶揄する言葉で、「晴れた時に傘を貸して雨が降ったら傘を貸さない」というのがあります。

厳しい時こそ銀行から借りたいのに貸してくれず、逆に、晴れているときに借りてくれと来る。それが銀行です。それを「勝手だなあ」と言っているわけです。

借りる側からすればそうでしょうね。ですが、よく考えてほしいのですが、銀行だって商売です。銀行はどんな商売かといえば、人にお金という銀行の商品を貸して利息をもらう商売なわけです。俗っぽく言えば、「金貸し」が銀行の仕事の正体です。

その「金貸し」からしたら、経営状況の悪いところに貸すよりいいところに貸したほうがいいに決まっています。つまり、先ほどの「晴れた時に傘を貸して雨が降ったら傘を貸さない」といいのを経営者がわかっているのであればなぜ「晴れた時に借りる」ことをしないのか、ということです。

「借りる必要がないから借りない」というのは借りる側の理屈です。銀行側の事情も加味して「借りる必要はないけど借りておく」という選択をすることでリスクヘッジしておくのが経営なわけです。しかも、経営状態がいい時に借りたほうが、利率や返済期間がこちらに有利になるわけです。つまり、「経営状態がいいからこそ借りる」という話になるわけです。

経営というのはいつどうなるかわかりません。いい時にこそ、銀行から借りるという選択をするのが経営におけるリスクヘッジだと思います。

 

銀行の話というのは、どうやら多くの税理士はあまり顧問先にしないようです。

「そんな話、初めて聞きます」と言って、大変感心されます。

 

次回も私がよく顧問先でする銀行の話を書いてみたいと思います。



今日の記事は、自分で言うのもなんですが、かなりこじ付け感が強いです。

タイトルの通り、浅田真央選手と経営を結び付けて考えてみたいと思います。

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新聞の一面にも出るくらいの大きな話題になりました。浅田真央選手の現役引退。

小さいころからみんなが見てきたこともあり、思い入れが強いんでしょうね。大きな話題となっています。

2016年の「好きなスポーツ選手」のランキングで浅田真央選手は女性の3位となっています。2016年は夏季オリンピックの年です。リオデジャネイロで活躍した選手が上位になると思いきや、冬季オリンピックの選手で、しかもその年の世界選手権に出ているわけでもない選手が選ばれるわけですから、考えてみればすごい話です。

 

さて、以前に経営者はスポーツと自分自身の会社経営を重ね合わせて考える傾向があるというような話をしました。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%83%94%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%92%e7%b5%8c%e5%96%b6%e8%80%85%e3%81%ae%e8%a6%96%e7%82%b9%e3%81%8b%e3%82%89%e8%80%83%e3%81%88%e3%81%a6%e3%81%bf%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%81

 

浅田選手の場合、経営者が自分自身の会社と重ね合わせるとしたらどんなことを考えるのだろうと考えてみました。

 

まず、浅田選手はなぜこれほどまでに愛されるのかということです。多くの人に好かれるのはいろんな理由があるでしょうが、「ひたむきである」ことがあるだろうと思います。

イチロー選手や、テニスの錦織選手なんかにも通じています。その競技に対して素直にまっすぐに向き合う姿勢。これは広く好かれる理由でしょう。ひたすら「自分自身に向き合う」姿は多くの人の心を打つのでしょうね。浅田選手の場合、海外の選手からも好かれていたことからしても、このような姿勢に好感を持つというのは日本人特有ということでもないようです。

 

そして、結局、オリンピックの金メダルには届かなかったこと。これも大きいのではないかと思います。成功したことよりも失敗したことの方が学ぶことが多いですよね。浅田選手は結果的には一番の目標であった「オリンピックの金メダル」は手にできませんでした。しかし、私にはそれ以上のものを手に入れているように思えます。手にできなかったからこそ分かる辛酸というのは何にも代えがたい人生の教訓です。その経験が必ず肥やしになってどこかで活かされる時が来ます。そういうことを浅田選手を通して多くの人が感じているように思えます。浅田選手はオリンピックの金メダルを取れなかったからこそ、もっと大きなものを得たように思います。

 

私は、経営というのは、スポーツのどこかのシーンと重なる部分が多いと思います。

浅田選手の「ひたむきさ」は“仕事に対して”あるいは“お客さんに対して”、真摯であることを思い起こさせます。

経営における失敗は次への教訓として活かされるはずです。

そんなことで、浅田選手からも多くのことを学べるのではないかと思うわけです。



2017年度の税制改正の大きな話として、配偶者控除の改正があります。

現在、配偶者控除を受けられるのが103万円であるのが150万円に変わるというものです。ニュースでも話題になっているのでご存知の方も多いことだと思います。3月27日の参議院本会議で賛成多数で可決され、正式に成立しました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170327/k10010926701000.html

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改正でますます複雑な印象を持たれる方も多いでしょう。

どこが改正されるのか、今後はどうなるのかを整理してみたいと思います。

 

まず、その前に、今回の改正は、平成30年から適用開始です。

平成29年は今まで通りです。いつから適用なのかは大事な点ですからまずはそこを確認しましょう。

 

その上で、配偶者控除は今は給与でいうと年間103万円です。それが年間150万円に拡大されます。これに伴い、配偶者特別控除も変わります。現在、配偶者控除がぎりぎり受けられない人、具体的には給与でいうと年間103万円以上141万円未満の方は、配偶者控除ではなく、配偶者特別控除が受けられます。103万円から控除額が徐々に少なくなり、141万円を超えたところで控除額がなくなります。

この配偶者特別控除の範囲は103万円を超え201万円までになります。

 

ただ、これは税法の改正であって、社会保険の扶養の基準に変更はありません。従来通り、130万です。また、今回の改正は所得税法の改正であって、住民税は変わりません。

 

こんな感じに書くと、どこがどう変わったの?と余計?がたくさんついてしまいますよね。

年間の給与の金額がいくらだったらどうなるのかを並べてみてみましょう。

 

年間給与100万円未満

住民税がかかりません。もちろん、所得税もかかりませんし、社会保険の扶養にもなれます。

年間給与100万円以上130万円未満

住民税はかかります。ただ、所得税の配偶者控除は受けられます。社会保険の扶養にはなれます。

年間給与130万円以上150万円未満

所得税の配偶者控除は受けられます。ただし、社会保険の扶養にはなれません。

年間給与150万円以上201万円未満

所得税の配偶者控除は受けられず、配偶者特別控除は受けられます。

 

従来と同じですが、配偶者特別控除は配偶者の所得が1000万円を超えると受けられません。また、社会保険の扶養についても、ご主人がお勤めの会社が社会保険加入者が501人を超えるような大企業の場合には、社会保険の扶養は年間給与が130万ではなく106万になります

また、配偶者(夫)の所得が1000万円を超えると配偶者控除は受けられなくなりました。従来は配偶者控除については特に所得の制限はありませんでしたので、この点も変わります。

 

ちょっとは整理がつきましたか?

 

繰り返しですが、この規定の適用は平成30年からになります。

来年の改正を踏まえ、今から対策が必要な方、よく考えておきましょう!



ようやく確定申告が終わりました・・・

私も税理士登録して初めての確定申告でもあり、思ったよりも業務量が多く、忙しい日々に突入してしまい、ブログの更新がなかなかできませんでした。

こまめにブログ更新をしていきたいと思います。

 

さて、今日は「非弁行為」というお話をします。

顧問先で、最近あった話ですが、「従業員との労働条件の交渉をやってもらえないんですか」というご質問をいただきました。

これは、明確に「できません」とお答えしました。これは「非弁行為」と呼ばれるものと関係しているためです。

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弁護士法第72条は次のように規定しています。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立、審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

 

私は社会保険労務士と税理士の登録をしていますが、弁護士ではありません。

つまり、社労士や税理士では、誰かの代理で業として、法律上の相談を受けることはできません。ただし、もちろん、社労士であれば労働相談業務は社労士業務ですからOKです。税理士としての税務相談業務もOKです。

ですが、それ以外の法律上の相談を業として(つまりお金や物をもらって)やることは、弁護士法という法律で禁止されています。

私の場合、できないものの代表例は、たとえば交通事故の示談交渉などです。これは社労士や税理士といった資格には根拠がないからできません。

お金の貸し借りについての代理、なんかもそうでしょう。

社労士や税理士という法律に根拠があるものは別として、それ以外の法律の代理は出来ない。それが「非弁行為」というものです。

 

さて、件の顧問先の社長さんのご質問です。

労働者との交渉を会社の代理人として私がする。これは、明確に会社の「代理人」となってしまいます。社労士法では、社労士ができるのは労働問題などの相談業務です。会社側の代理人として従業員と交渉するというのは、社労士法の範囲外です。したがって、弁護士法72条に違反することになります。

 

そういったことで、この社長さんには「労働法について、私が社長にアドバイスをし、社長自身からその労働者に説明するのはOKです。社長自身が労働法のことを把握したうえで、その従業員さんと十分にお話してみたらいかがでしょうか」とお伝えしました。

 

以前に社労士会の研修で、「社長が同席して、従業員と社長と社労士の3人で労使交渉するのは倫理規範としてOKか?」というような内容をやっていたことがありました。

この場合、明確に問題があるとは言い切れませんが、社労士は会社の顧問ですから社長の味方をします。そもそも会社から顧問料をもらう立場ですから、社長の立場に立って発言するはずです。そうすると、2対1になってしまいます。従業員さんとしては、労働問題の専門家の社労士が相手にいれば、とても「対等」とは言えません。

そういった理由で、「なるべくこうした交渉に同席するのは避けるべき」という話をしていました。

これには私も同感です。

 

ちなみにですが、たとえば社労士業務の分野で「社会保険料を削減します!」とか「100%会社の味方をします!」のような表現は、社労士法違反ではないですが、倫理規定には違反しています。

また、以前に「従業員をうつ病にり患させる方法」というブログを書いた社労士が社労士会から懲戒処分を受けたことがありました。

「モンスター社員をどうやったらやめさせられるか」という会社経営者の質問に「合法的にパワハラをしてうつ病にり患させる」というような内容を書いていたという話です。これなどは、こうした情報発信することが法律違反だということを言っているわけではなく、倫理上、問題があるという話です。

 

社労士や税理士といった専門家というのは、法律に違反していなければそれでいいというわけでもなかったりします。 「できること・できないこと」というのが存在します。経営者の皆さんにもこのことを認識しておいていただければと思うわけです。